発達性協調運動症(DCD)とは?不器用な子どもの特徴・年齢別のサイン・原因と、家庭と学校でできる工夫【2026年版】
「よく転ぶ」「お箸やボタンがいつまでも苦手」「なわとびや自転車が、練習してもなかなかできない」。運動会やお絵かきの時間がつらそうなわが子を見て、「ただの不器用なのかな」「もっと練習させたほうがいいの?」と悩むご家族は少なくありません。
その不器用さの背景には、発達性協調運動症(DCD)という発達の特性があることがあります。この記事では、DCDとはどういう状態か、年齢ごとの気づきのサイン、原因、ほかの発達障害との関係、相談と診断の流れ、療育や道具の工夫、学校でお願いできる配慮、家庭でできる関わり方を、ご家族向けにやさしくまとめました。ご家族からよく聞かれる悩みと、対応の例も紹介します。
- 発達性協調運動症(DCD)の4つの条件と、苦手が出やすい3つの動き
- 年齢ごとの気づきのサインと、原因としてわかっていること
- ASD・ADHD・学習障害との関係と、自信をなくさないための注意点
- 相談と診断の流れ、療育・リハビリでの支援
- 道具と環境の工夫、学校でお願いできる配慮
- 家庭でできる6つの関わりと、ご家族からよく聞かれる悩みへの対応の例
この記事は一般的な情報で、診断の代わりにはなりません。運動の苦手さには、ほかの病気がかくれていることもあるため、気になるときは小児科や保健センターに相談してください。また、DCDは本人のやる気や努力不足、育て方が原因で起こるものではありません。
結論|DCDで最初に知っておきたい5つのこと
先に要点を並べます。
| どんな状態? | 体のいくつかの部分を同時に、タイミングよく動かすこと(協調運動)が、年齢や練習の機会から期待されるより明らかに苦手で、生活や学校で困りごとが出ている状態 |
|---|---|
| どのくらい? | 5〜11歳の子どもの約5〜6%とされ、35人のクラスなら1〜2人ほど。男の子に多いとされる |
| 原因 | 脳が「体をどう動かすか」を組み立てる働きの違いと考えられている。努力不足やしつけのせいではない |
| 大切なこと | 苦手な動きをくり返し練習させるより、やり方のコツと道具の工夫で「できた」を増やし、自信を守ることが大切 |
| 相談先 | 迷ったら市区町村の保健センターやかかりつけの小児科。5歳ごろから判断しやすくなるため、5歳児健診も相談のよい機会 |
DCDのある子は、みんなと同じように練習しても、同じようには身につきにくい特性があります。それでも、その子に合ったやり方を見つければ、できることは少しずつ増えていきます。まずは「がんばっているのに、うまくいかない」本人の気持ちに目を向けることから始めましょう。
発達性協調運動症(DCD)とは|4つの条件
DCDは、英語のDevelopmental Coordination Disorderの頭文字です。日本語では「発達性協調運動症」または「発達性協調運動障害」と呼ばれます。発達障害者支援法の対象となる発達障害の一つで、自閉スペクトラム症やADHDと同じ「神経発達症」のなかまに入ります。
「協調運動」とは、目で見たことに合わせて手を動かす、右手と左手で別々の動きをする、手と足をタイミングよく動かす、といったいくつかの動きを組み合わせる運動のことです。走る、なわとびをする、ボタンをとめる、字を書く、お箸を使う、など、生活のほとんどの動きが協調運動です。
医学の診断基準では、次の4つがそろったときにDCDと考えます。

図:発達性協調運動症(DCD)の4つの条件
| 条件 | 内容 |
|---|---|
| 1. 協調運動が明らかに苦手 | 物を落とす・ぶつかる、はさみや鉛筆を使う、自転車に乗る、スポーツをするといった動きが、年齢や練習の機会から期待されるより明らかに遅い・不正確 |
| 2. 生活に困りごとがある | その苦手さのために、身の回りのこと、学校での学習や活動、遊びにはっきりと、続けて支障が出ている |
| 3. 小さいころから | 苦手さは発達の早い時期から始まっている |
| 4. ほかの理由では説明できない | 知的障害や視力の問題、脳性まひや筋ジストロフィーなど運動に影響する病気によるものではない |
ポイントは2つめです。運動が苦手な子はたくさんいますが、DCDは「苦手なせいで毎日の生活や学校で困っている」ことが条件になります。「体育で目立つ」だけでなく、着替えや食事、字を書くことなど、生活全体を見て判断します。
どんな動きが苦手?3つのタイプ
DCDの苦手さは、大きく3つの動きにあらわれます。どれか一つだけが苦手な子も、いくつも苦手な子もいます。

図:苦手が出やすい3つの動き
| 動きの種類 | 苦手さの例 |
|---|---|
| 体全体の動き(粗大運動) | 走り方がぎこちない、よく転ぶ・ぶつかる、ジャンプやスキップ、なわとび、鉄棒、自転車、ボール遊び、ダンスのまね |
| 手や指の動き(微細運動) | お箸やスプーン、ボタン・ファスナー・ちょう結び、はさみ、のりづけ、鉛筆で字や絵をかく、消しゴム、リコーダー、コンパス |
| 姿勢を保つ | いすに座ると体がぐにゃっとくずれる、ほおづえをつく、朝礼で立っているとふらふらする、すぐ疲れて寝ころぶ |
座っている姿勢がすぐくずれるのは、体をじっと支えておくこと自体が苦手だからかもしれません。何度注意しても直らないときは、叱るより先に、いすや机の高さ、足の裏が床につくかなどを見直してみてください。
年齢別|気づきのサイン
DCDは、5歳より前に診断されることはあまりありません。小さいうちは発達のペースの個人差が大きく、少し遅れていても追いつくことがあるからです。ただ、気づきのサインは小さいころから見られることがあります。

図:年齢別・気づきのサイン
| 年齢 | 気づかれやすいこと(例) |
|---|---|
| 0〜2歳ごろ | お座り・ハイハイ・歩き始めがゆっくり、よく転ぶ、スプーンを使うのが苦手、体を動かす遊びにあまり興味を示さない |
| 3〜4歳ごろ | 食べこぼしが多い、ボタンや靴がなかなか自分でできない、三輪車がこげない、ジャングルジムやブロック遊びがスムーズでない |
| 5〜6歳ごろ | 走り方がぎこちない、スキップができない、絵が何をかいたか伝わりにくい、はさみで線にそって切れない、お遊戯や運動会をいやがる。園で気づかれやすくなる時期 |
| 小学生 | 字が枠からはみ出す・書くのが遅い、板書が間に合わない、なわとび・鉄棒・球技・リコーダーが苦手、着替えに時間がかかる、体育のある日をいやがる |
| 中学生以降 | 球技や集団競技で自信をなくす、字を書くのに時間がかかりテストで書ききれない。苦手さは青年期まで続くことも多い |
当てはまることがあっても、それだけでDCDとは限りません。大切なのは、苦手さがときどきではなく「いつも」見られ、園でも家でも同じようにあらわれているかどうかです。
前はできていた動きができなくなった、歩き方が急に変わった、手足に力が入りにくい・痛がる、つまずきが増えてきた、というときは、様子を見ずに早めに小児科を受診してください。筋肉や神経の病気がかくれていることがあります。
DCDの原因|努力不足ではありません
DCDのはっきりした原因は、まだわかっていません。ただ、今有力とされているのは、脳の中で「体をどう動かすか」を予想して組み立てる働きがうまくいきにくい、という考え方です。
私たちは何か動くとき、「こう動けばこうなる」と頭の中で予想し、実際の動きとのずれを感じ取って直しながら、少しずつ上手になっていきます。DCDのある子は、この予想と修正のくり返しが進みにくいため、みんなと同じ回数練習しても、同じようには身につきにくいと考えられています。
| わかっていること | 早く・小さく生まれた子(早産・低出生体重)に多いことが知られている。ほかの発達障害と合わせ持つことが多い。運動の調整に関わる小脳などの働きが関係しているという考え方もある |
|---|---|
| 原因ではないこと | 本人のやる気、練習不足、家での遊ばせ方や育て方。外遊びが少なかったから起こるものではない |
「練習が足りないから」と思って苦手な動きを何度もくり返させると、できない経験ばかりが積み重なり、運動そのものが嫌いになってしまうことがあります。
ASD・ADHD・学習障害との関係
DCDは、ほかの発達障害と合わせ持つことがとても多い特性です。DCDだけの子より、ほかの発達障害のある子の中で見つかることのほうが多いとされています。

図:ほかの発達障害と合わせ持つことが多い(イメージ)
| 合わせ持つことがある特性 | 関係 |
|---|---|
| ADHD | DCDのある子の30〜50%にADHDがあるとされる。反対に、ADHDのある子の半数以上に協調運動の問題が見られるという報告もある。不注意や衝動性があると、動きのぎこちなさがさらに目立ちやすい。くわしくはADHDとはへ |
| 自閉スペクトラム症(ASD) | 体の動きのぎこちなさや、まねっこ(動きの模倣)の苦手さが見られることが多い。軽いものも含めると、自閉スペクトラム症の子の約8〜9割に協調運動の問題があるという報告もある。くわしくは自閉スペクトラム症(ASD)とはへ |
| 学習障害(LD) | 特に字を書くことの苦手さと重なりやすい。手の動きの問題なのか、文字の形を覚える問題なのかを見分けることが大切。くわしくは学習障害(LD)とはへ |
| 知的障害 | 知的な発達の遅れに見合った運動の遅れの場合は、DCDとは考えない。くわしくは知的障害とはへ |
いちばん気をつけたいのは「自信をなくすこと」
DCDのある子は、小さいころから自分が運動が苦手なことに気づいています。体育で失敗を見られる、チーム分けで最後まで残る、字が汚いと言われる、といった経験が重なると、「どうせできない」と挑戦をやめてしまったり、友だちと遊ぶことを避けたりすることがあります。
そこから、不安や落ち込み、体育のある日の腹痛、登校しぶりにつながる場合もあります。研究でも、DCDのある子は自己肯定感が下がりやすく、思春期にはうつ状態になりやすいことが報告されています。運動の苦手さそのものより、苦手さが原因で自信や友だち関係が傷つくことを防ぐのが、支援の大きな目的です。
相談と診断の流れ
DCDは、発達障害の中でも見過ごされやすい特性です。運動が苦手なことは、家庭ではあまり問題にならず、「そのうちできるようになる」と思われがちだからです。気になったら、次の流れで相談してみてください。

図:相談と診断の流れ
困っている場面をメモする
「ボタンに10分かかる」「なわとびが1回も跳べない」など、いつ、どんな動きで、どのくらい困っているかを書き出します。動画を撮っておくと、相談のときに伝わりやすくなります。
園や学校の先生に聞いてみる
同じ年の子と一緒に過ごしている先生は、家では気づきにくい苦手さに気づいていることがあります。園や学校での様子を教えてもらいましょう。
健診・保健センター・小児科に相談する
3歳児健診や5歳児健診、市区町村の保健センター、かかりつけの小児科に相談します。その際は「運動や手先の不器用さで生活に困っている」と具体的に伝えると、話が進みやすくなります。
専門の医療機関で診察を受ける
小児神経科や児童精神科、発達外来などで、生まれたときの様子や発達の経過を聞き取り、体の診察や運動の検査を行います。ほかの病気がないかを確かめることも大切な目的です。片足立ちやつぎ足歩き、指を順番に合わせる動きなどの簡単な診察に加えて、運動の検査(M-ABCなど)や質問紙、必要に応じて発達検査も行われます。作業療法士や理学療法士が一緒に評価することもあります。
DCDのある子には、近視・乱視などの見え方の問題や、扁平足などの足の形の問題が、気づかれないまま重なっていることがあります。ボールが取れない、よく転ぶといった様子の背景にこうした問題がないか、眼科での視力検査や、診察のときに足の形も見てもらうと安心です。
日本ではまだ、DCDの評価に使える検査や、診断できる医療機関が十分ではありません。診断までに時間がかかることもありますが、診断がつく前から、療育の利用や園・学校での配慮のお願いはできます。検査の種類や結果の見方は、発達検査とは?種類・受け方・費用と、結果の見方の記事でまとめています。
支援の方法|療育・リハビリ・作戦を立てる練習
DCDの支援は、「苦手な動きを何度もくり返す」ことではなく、その子が「やりたい」と思っている動きを、やり方を工夫して身につけることが中心になります。
| 支援 | 内容 |
|---|---|
| 療育(児童発達支援・放課後等デイサービス) | 遊びや運動、生活の練習を通して体の使い方を育てる。作業療法士や理学療法士がいる事業所もある。診断や手帳がなくても、必要と認められれば使える |
| 病院のリハビリ | 医師の指示のもと、作業療法士(手先・生活動作)や理学療法士(体全体の動き)が、その子の苦手に合わせて練習する。健康保険が使える |
| 作戦を立てる練習(CO-OP) | 子ども自身が「目標を決める → やり方を考える → やってみる → うまくいったか確かめる」をくり返し、自分で作戦を見つける方法。国際的なガイドラインでもすすめられている |
| 体の感覚を育てる方法 | 感覚統合療法など、バランスや体の感覚を育てて動きの土台を整える方法。療育の場でよく取り入れられている |
| 見る力のトレーニング | 目でものを追う、形をとらえるなど「見る力」の苦手さが重なっている場合に、ビジョントレーニングなどを取り入れることもある |
| 保護者向けの支援 | ペアレント・トレーニングや相談を通して、家庭での声かけや工夫を一緒に考えてもらう |
国際的なガイドラインでは、5歳以降は、生活の中の具体的な動き(課題)に取り組む方法がすすめられています。それより小さいうちは、発達の個人差が大きいため、間隔をあけて何度か様子を確かめながら見ていくのが一般的です。
練習する動きは、大人が決めるより、「自転車に乗りたい」「ボタンを自分でとめたい」など、本人がやりたいことから選ぶほうが、続きやすく身につきやすいとされています。「もっと上手になりたいことはある?」と聞いてみてください。
療育を使うには、市区町村で「通所受給者証」をもらう手続きが必要です。手続きの流れは障害福祉サービス受給者証の申請方法、療育の内容は療育とは?児童発達支援でやること・費用・始め方、放課後等デイサービスの費用は放課後等デイサービスの料金の記事でまとめています。
道具と環境の工夫
DCDのある子にとって、使いやすい道具に変えるだけで、ぐっとラクになることがあります。「道具に頼るとできるようにならない」と心配される方もいますが、できた経験が自信になり、次の挑戦につながります。

図:道具と環境の工夫の例
| 場面 | 工夫の例 |
|---|---|
| 書く | 太めの鉛筆や三角の鉛筆、鉛筆にはめる補助具(グリップ)、すべり止めシート、マス目の大きいノート。高学年以降はタブレットやパソコンで書くことも選択肢 |
| 食べる | しつけ箸やバネつきの箸、すくいやすい形のスプーン、ふちが高いお皿、すべり止めマット |
| 着替える | 大きめで平たいボタンの服、マジックテープの靴、かかとに輪(ループ)がついた上履き、左右の靴ひもを違う色にする、座って着替える |
| 体を動かす | 持ち手が太くにぎりやすいなわとび、体に合った大きさの自転車、やわらかく大きめのボール |
| 座る | 足の裏が床につく高さのいす(足台を置く)、すべりにくいクッション。長く座る時間の途中に、立ったり動いたりする時間をはさむ |
学校でお願いできる配慮
小学校では、字を書く、道具を使う、体育をするなど、学校生活の多くの時間に手先や体の動きが必要になります。困りごとが大きいときは、担任の先生や特別支援教育コーディネーターに相談し、配慮をお願いできます。
| 場面 | 配慮の例 |
|---|---|
| 板書・ノート | 書き写す量を減らす、プリントを配ってもらう、黒板を写真に撮る・タブレットで記録することを認めてもらう |
| テスト | 解答欄を大きくする、時間を延ばす、字の形の整い方では減点しない |
| 体育 | 動きを小さく分けて教える、練習の目標をその子に合わせる、みんなの前で一人ずつ失敗する場面を減らす、チーム分けは先生が決める |
| 図工・家庭科・音楽 | 使いやすいはさみや道具を使う、作業の時間に余裕をもたせる、リコーダーの穴をふさぎやすくする補助を使う |
| 宿題 | 書く量の多い宿題を減らす、タブレットでの提出を認めてもらう |
| からかい | 動きや字をからかわれたら、先生がすぐに止める。苦手なことは人それぞれだと、クラスで伝えてもらう |
障害者差別解消法により、学校には合理的配慮の提供が求められていて、2024年4月からは私立の学校や園でも義務になりました。診断がなくても、困りごとがあれば相談できます。
「わがまま」ではなく、「この方法ならできる」という形で伝えると、先生も対応しやすくなります。家でうまくいった道具や工夫があれば、具体的に伝えましょう。ASD・ADHD・学習障害などを合わせ持つ場合は、その特性に合った学びの場(通級や特別支援学級)を相談できることもあります。就学相談については、支援級と通常級どっちがいい?就学相談の進め方の記事でくわしく解説しています。
家庭でできる6つの関わり
家庭では、特別な訓練より、毎日の遊びや生活の中で体を動かす機会を増やし、「できた」を積み重ねることが大切です。
楽しく体を動かす遊びを増やす
公園の遊具、布団の上でのごろごろ遊び、風船バレー、片足立ちや線の上を歩くバランス遊び、音楽に合わせて体を動かす遊びなど、上手・下手を気にせず楽しめる遊びを増やします。手先なら、粘土や折り紙、ビーズ通しもおすすめです。うまくできるかより、楽しかったかを大事にします。
手先を使うお手伝いをお願いする
洗濯ばさみで靴下を干す、野菜をちぎる、おにぎりをにぎる、シールを貼るなど、手や指を使うお手伝いは、遊び感覚で指先を使う練習になります。
動きを小さく分けて、言葉にする
なわとびなら「なわを回す」「跳ぶ」を別々に練習し、「まわして、ジャンプ」と動きを言葉にしてリズムをつけると、タイミングがつかみやすくなります。
最後の一歩だけ任せる
ボタンなら、大人がボタンを穴に半分通し、引き出す最後のところだけを子どもにしてもらいます。できたら、任せる部分を少しずつ増やします。
時間に余裕をもつ
着替えや食事は、どうしても時間がかかります。朝は早めに起きる、前の晩に服を用意しておくなど、急がせなくてすむ工夫をすると、親子ともにラクになります。
結果より、やり方と挑戦をほめる
「上手にできたね」だけでなく、「さっきより足がそろってたね」「最後までやったね」のように、工夫や挑戦したことをほめます。ほかの子やきょうだいと比べないことも大切です。
運動が苦手でも、お話を作るのが得意、虫にくわしい、絵の色づかいがすてき、など、その子の得意なことはたくさんあります。苦手を減らすことと同じくらい、得意を伸ばすことが自信につながります。
ご家族からよく聞かれる悩み|対応の例
Yahoo!知恵袋やSNSでは、子どもの不器用さについて次のような悩みがよく見られます。個々の投稿をそのまま載せるのではなく、よくある悩みをまとめて書き直しています。考え方と、対応の例をあわせて紹介します。
「運動会や体育がいやで、学校に行きたがりません」
みんなの前で失敗するのがつらい、という気持ちが背景にあることが多くあります。まず「いやだ」という気持ちを受けとめることが大切です。
対応の例
- 何がいちばんいやなのか(競争・見られること・特定の種目)を本人に聞く
- 担任の先生に相談し、練習のしかたや出場する種目を一緒に考えてもらう
- 腹痛や登校しぶりが続くときは、無理に行かせず、学校やかかりつけ医に相談する
「字が汚くて、何度書き直させても直りません」
書き直しをくり返すと、書くこと自体が嫌いになってしまうことがあります。字の整い方より、読めることと内容を大切にしましょう。
対応の例
- マス目の大きいノートや、太い鉛筆・補助具を試す
- 書き直しは「読めない字」だけにする
- 書く量が多い宿題は、量を減らせないか先生に相談する
「体操教室やスポーツの習い事に通わせたほうがいいですか?」
習い事は、上達よりも楽しく通えるかどうかを優先するのがおすすめです。できない経験ばかりになると、逆効果になることもあります。
対応の例
- 体験に行き、少人数か、一人ひとりのペースを大事にしてくれるかを見る
- 水泳など、ほかの子と比べられにくいものから選ぶ方法もある
- 本人がいやがったら、いったんやめてもよいと考えておく
「ただの不器用なのか、DCDなのか、わかりません」
家庭だけで見分けるのは難しいものです。目安は、苦手さのせいで毎日の生活や学校で困っているかどうかです。
対応の例
- 困っている場面を1〜2週間メモして、先生にも様子を聞く
- 5歳児健診や保健センターの相談で、メモを見せて相談する
- 診断がつかなくても、困りごとがあれば療育や配慮は相談できる
「祖父母や周りから『練習が足りない』『甘やかしている』と言われます」
DCDは見た目にはわかりにくく、周りの理解が得にくい特性です。ご家族が責められる必要はありません。
対応の例
- 「脳の動きの組み立て方の特性で、練習の量では解決しにくい」と短く伝える
- 医師や療育の先生から言われたことを、そのまま伝える
- わかってもらえないときは、無理に説得せず、相談できる人を別に持つ
よくある質問
Q. DCDは大きくなれば治りますか?
成長とともに上手になる動きは多くありますが、半数以上の人で、苦手さは青年期以降も続くとされています。ただし、道具や工夫で困りごとを減らし、自分に合ったやり方を身につけることで、生活の中で困る場面は減らしていけます。子どものころに気づかれず、大人になって仕事の細かい作業や運転などで苦手さを自覚する人も増えています。
Q. 何歳から診断できますか?
一般的には5歳ごろから判断しやすくなります。それより前は発達の個人差が大きいためです。ただ、気になる様子があれば、年齢にかかわらず相談してかまいません。
Q. DCDに効く薬はありますか?
DCDの運動の苦手さそのものを治す薬は、今のところありません。ADHDを合わせ持つ場合に、ADHDの治療で動きが落ち着くことはあります。薬については主治医に相談してください。
Q. DCDで療育手帳や障害者手帳は取れますか?
DCDだけで療育手帳の対象になることは基本的にありません。精神障害者保健福祉手帳は、発達障害として対象になる場合がありますが、生活への影響の大きさで判断されます。療育(児童発達支援・放課後等デイサービス)は、手帳がなくても使えます。
Q. 感覚の過敏さや鈍さとも関係がありますか?
DCDのある子の中には、触られるのをいやがる、力加減がわかりにくいなど、感覚の受け取り方に特徴がある子もいます。感覚の特徴への対応は、子どもの感覚過敏への対応の記事も参考にしてください。
- 自閉スペクトラム症(ASD)とは|特徴・年齢別のサイン・相談先
- ADHD(注意欠如・多動症)とは|子どもの特徴と、家庭でできる工夫
- 学習障害(LD)とは|読む・書く・計算のつまずきと学校での配慮
- 折れ線型自閉症とは|できていたことができなくなったとき
- 発達グレーゾーンとは|診断がつかないときの相談先と支援
- 療育とは|児童発達支援でやること・費用・始め方
- 発達検査とは|検査の種類・受け方と結果の見方
- 言葉の遅れが気になるとき|年齢別の目安・原因・家庭でできること
- 知的障害とは|子どもの特徴・療育手帳・学校の選び方
まとめ
- 発達性協調運動症(DCD)は、協調運動が年齢から期待されるより明らかに苦手で、生活や学校で困りごとが出ている状態
- 5〜11歳の約5〜6%。体全体の動き・手先・姿勢の3つに苦手が出やすい
- 原因は脳の働きの違いと考えられ、努力不足や育て方のせいではない
- ADHD・ASD・学習障害と合わせ持つことが多く、自信をなくさないことがいちばん大切
- 支援は、本人がやりたいことを、やり方と道具を工夫して身につけること。療育は診断がなくても相談できる
- 家庭では、楽しく体を動かす・小さく分ける・最後の一歩を任せる・挑戦をほめる、からできることを1つ
不器用さは、周りから「練習すればできる」と思われやすく、本人もご家族も苦しくなりがちです。でも、その子に合ったやり方が見つかれば、「できた」は少しずつ増えていきます。一人で抱えこまず、園や学校、身近な相談窓口を頼りながら、お子さんのペースで進んでいってください。


