知的障害とは?子どもの特徴・年齢別のサイン・軽度〜重度の違いと、療育手帳・学校・使える支援【2026年版】
「同じ年の子より、できるようになるのがゆっくり」「健診で知的な遅れの可能性があると言われた」「療育手帳をすすめられたけれど、取ったほうがいいの?」。知的障害という言葉を初めて聞いたとき、ご家族の頭にはたくさんの疑問と不安が浮かぶと思います。
この記事では、知的障害とはどういう状態か、軽度から重度までの違い、年齢ごとの気づきのサイン、原因、ほかの発達障害との違い、診断と療育手帳、使える支援とお金、学校の選び方、家庭でできる関わり方を、ご家族向けにやさしくまとめました。ご家族からよく聞かれる悩みと、対応の例も紹介します。
- 知的障害(知的発達症)の3つの条件
- 軽度・中度・重度・最重度の違いと、年齢ごとの気づきのサイン
- 原因としてわかっていること、わかっていないこと
- 自閉スペクトラム症・ADHD・学習障害・境界知能との違い
- 診断と検査の流れ、療育手帳の取り方
- 療育・手当などの支援と、学校(通常の学級・支援学級・支援学校)の選び方
- 家庭でできる6つの関わりと、ご家族からよく聞かれる悩みへの対応の例
この記事は一般的な情報で、診断の代わりにはなりません。知的障害があるかどうか、どのくらいの支援が必要かは、検査の数字だけでなく、生活の様子を合わせて専門家が判断します。気になるときは、保健センターや小児科に相談してください。また、知的障害は育て方やしつけが原因で起こるものではありません。
結論|知的障害で最初に知っておきたい5つのこと
先に要点を並べます。
| どんな状態? | 考える・覚える・理解するといった知的な働きの発達がゆっくりで、そのために生活や学習で支援が必要な状態。発達期(おおむね18歳まで)にあらわれる |
|---|---|
| 判断のしかた | 知能検査の数字(IQ)だけでは決まらない。生活の中でどのくらいできるか(適応行動)を合わせて見る |
| 程度 | 軽度・中度・重度・最重度に分けられ、いちばん多いのは軽度。軽度は小学校に入ってから気づかれることも多い |
| 使える支援 | 療育(児童発達支援・放課後等デイサービス)、療育手帳、特別児童扶養手当、特別支援学級・特別支援学校など。療育は手帳がなくても使える |
| 相談先 | 迷ったら市区町村の保健センター。療育手帳は児童相談所で判定を受け、市区町村の窓口で申請する |
知的障害は「成長しない」という意味ではありません。ペースはゆっくりでも、子どもは確実に育ちます。その子に合った伝え方や環境を整えることで、できることは増えていきます。この記事が、お子さんのペースを知り、合った支援を選ぶ手がかりになればうれしいです。
知的障害とは|3つの条件
知的障害は、福祉や教育の場で使われている言葉です。医学では「知的発達症」(または知的能力障害)と呼ばれます。呼び方は違っても、指している状態はほぼ同じです。医学では自閉スペクトラム症やADHDと同じ「神経発達症」のなかまに入りますが、日本の発達障害者支援法の「発達障害」には含まれず、知的障害者福祉法などの制度で支援を受けるのが一般的です。
医学の診断基準では、次の3つがそろったときに知的障害(知的発達症)と考えます。

図:知的障害(知的発達症)の3つの条件
| 条件 | 内容 |
|---|---|
| 1. 知的な働きがゆっくり | 考える、覚える、理解する、問題を解くといった力が、同じ年齢の平均より明らかにゆっくり。知能検査ではIQがおおむね70前後より低いことが目安になる(検査には誤差があるため、数点の幅をもって見る) |
| 2. 生活の中で困りごとがある | 年齢に期待されることを、手助けなしでは行いにくい。見る領域は「考える力(言葉・読み書き・数・お金・時間)」「人との関わり(気持ちの理解・ルール・会話)」「生活の力(身の回りのこと・安全・お金の管理)」の3つ |
| 3. 発達期にあらわれる | 子どものうち(おおむね18歳まで)に始まっている。大人になってからの病気やけがで知的な力が下がった場合は、別の病名で考える |
ポイントは2つめです。以前はIQの数字で程度を決めることが多くありましたが、今の診断基準では「生活の中でどのくらい支援が必要か」を重視するようになりました。IQが同じくらいでも、生活の様子によって必要な支援は変わるからです。
どのくらいの人にある?
知的障害は、人口のおよそ1%前後にあるとされています(調査の方法によって幅があります)。厚生労働省の「令和4年生活のしづらさなどに関する調査」では、療育手帳を持っている人は推計114.0万人で、前回の平成28年調査(96.2万人)より増えています。早く気づいて手帳を取る人が増えたことも、増加の理由の一つと考えられます。
軽度・中度・重度・最重度の違い
知的障害は、必要な支援の大きさによって4つの程度に分けられます。下の表は大まかなイメージで、同じ程度でも、子どもによって得意なことや苦手なことは大きく違います。

図:軽度・中度・重度・最重度の違い(イメージ)
| 程度 | 子どものころの様子(例) | 大人になってからの様子(例) |
|---|---|---|
| 軽度 | 幼児期は目立たないことも多い。小学校で読み書き・計算・時間やお金の理解に苦労しやすい。会話はできるが、こみ入った話や抽象的な話は苦手 | 身の回りのことはできる人が多い。仕事や家計の管理、契約などの判断で相談できる人がいると安心 |
| 中度 | 言葉や運動の発達が、幼児期からはっきりゆっくり。短い文で会話ができる子も多い。身の回りのことは、時間をかけて練習すると身につく | 簡単な読み書き・計算はできる人もいる。仕事や生活には日常的な支援があるとよい |
| 重度 | 話す言葉が少ない、または単語程度。食事・着替え・トイレなどに手助けが必要 | 生活の多くの場面で継続した支援が必要。身ぶりや絵カードなどで意思を伝えることも多い |
| 最重度 | 言葉でのやりとりは難しく、表情や声、体の動きで気持ちを伝える。体の障害や病気を合わせ持つことが多い | 生活のほぼすべてに支援が必要。安心できる人と環境がとても大切 |
以前の基準では、軽度はIQ50〜69程度、中度は35〜49程度、重度は20〜34程度、最重度は20未満程度とされていました。今も療育手帳の判定などで参考にされますが、今の医学の診断では、程度はIQではなく生活の様子で決めます。また、全体の中では軽度がいちばん多く、8割以上を占めるとされています。
軽度の知的障害は、見た目や会話ではわかりにくく、「やる気がない」「なまけている」と誤解されがちです。できないことを叱られ続けると、自信をなくし、不登校・不安・うつなどの二次的な問題につながることがあります。程度にかかわらず、早めに困りごとに気づいて支えることが大切です。
年齢別|気づきのサイン
知的障害に気づく時期は、程度によって大きく違います。重度の場合は赤ちゃんのころの運動の発達で、軽度の場合は言葉の遅れや、小学校に入ってからの学習で気づかれることが多くあります。

図:年齢別・気づきのサイン
| 年齢 | 気づかれやすいこと(例) |
|---|---|
| 0〜1歳ごろ | 首すわり・お座り・ハイハイ・歩き始めがゆっくり。あやしても反応が少ない(主に中度〜重度) |
| 1歳半〜3歳ごろ | 言葉が出ない・増えない、簡単な指示がわかりにくい、遊びが年齢より幼い。1歳半健診や3歳児健診で指摘されることが多い時期 |
| 3〜6歳ごろ | 集団での活動についていきにくい、ルールのある遊びが難しい、着替えやトイレなど身の回りのことに時間がかかる |
| 小学生 | 読み書き・計算の遅れが学年が上がるほど目立つ。時計やお金の理解、宿題の手順で困る。軽度の場合はこの時期に初めて気づかれることも多い |
| 中学生以降 | 学習の内容が抽象的になってついていけない、友だちとの会話の速さについていけない、だまされやすい |
当てはまることがあっても、それだけで知的障害とは限りません。言葉がゆっくりな理由はほかにもたくさんあります。言葉の遅れが気になるときは、言葉の遅れが気になるとき|1歳半・2歳・3歳の目安の記事も参考にしてください。
一度できていたことができなくなった(言葉や動きが減った、歩き方が変わった)、けいれんがある、体の発達も同時にゆっくり、というときは、様子を見ずに早めに小児科を受診してください。治療や対応ができる病気がかくれていることがあります。
知的障害の原因
知的障害の原因は一つではありません。原因がわかる場合もありますが、検査をしても原因がはっきりしないことも少なくありません。原因がわからなくても、支援の方法は変わりません。
| 時期 | 主な原因の例 |
|---|---|
| 生まれる前 | 染色体の違い(ダウン症候群など)、遺伝子の違い(脆弱X症候群など)、生まれつきの代謝の病気、妊娠中の感染症(風しんなど)やアルコール |
| 生まれるとき | お産のときの強い酸素不足、とても早く小さく生まれたこと |
| 生まれたあと | 脳炎・髄膜炎などの感染症、頭のけが、重いけいれんが続く病気 |
生まれてすぐに受ける新生児マススクリーニング(かかとから少し血をとる検査)は、フェニルケトン尿症や先天性甲状腺機能低下症など、早く治療すれば知的障害を防げる病気を見つけるためのものです。また、妊娠前の風しんの予防接種も、赤ちゃんを守ることにつながります。
一方で、育て方、しつけ、話しかけの量、テレビやスマホは、知的障害の原因ではありません。「自分のせいでは」と責める必要はありません。
自閉スペクトラム症・ADHD・学習障害・境界知能との違い
知的障害は、ほかの発達障害と一緒に語られることが多く、混乱しやすいところです。違いを簡単に整理します。

図:ほかの発達障害との違い
| 名前 | 中心になる特徴 | 知的な発達 |
|---|---|---|
| 知的障害 | 考える・覚える・理解する力の発達が全体的にゆっくり | 全体的にゆっくり |
| 自閉スペクトラム症(ASD) | 人とのやりとりの特性と、こだわり・感覚の特性 | 遅れがある人も、ない人もいる |
| ADHD | 不注意・多動・衝動性 | 遅れがないことが多い |
| 学習障害(LD) | 読む・書く・計算など特定の学習だけが特に苦手 | 全体的な遅れはない |
| 境界知能 | IQがおおむね70〜84くらい。診断名ではない | 平均と知的障害の間 |
知的障害と自閉スペクトラム症は、両方をあわせ持つことがよくあります。その場合は、知的な発達に合わせた伝え方と、やりとりや感覚の特性への配慮の両方が必要になります。くわしくは自閉スペクトラム症(ASD)とは、ADHDとは、学習障害(LD)とはの記事で解説しています。
境界知能は、知的障害の基準には当てはまらないものの、学習や生活で困りやすい状態です。療育手帳の対象にならないことが多いため、支援からこぼれやすいと言われています。診断がつかないときの支援は発達グレーゾーンとはの記事でまとめています。
診断と検査の流れ
知的障害かどうかは、主に小児科(発達外来)・児童精神科などの医師が、検査の結果と生活の様子を合わせて判断します。一般的な流れは次のとおりです。
気になることをメモしておく
いつ・どんな場面で・何ができて何が難しいかを、短くメモします。母子手帳や、保育園・幼稚園の連絡帳も役に立ちます。
保健センターや小児科に相談する
健診で指摘されたときは、その結果を持って相談します。必要に応じて、発達を専門に見る病院や療育センターを紹介してもらえます。専門の病院は予約が数か月先になることもあるので、迷ったら早めに予約を入れておくと安心です。
知能検査・発達検査と、生活の様子の聞き取り
年齢に合わせて、新版K式発達検査、田中ビネー知能検査V、WISC-Vなどを行います。あわせて、身の回りのこと・言葉・人との関わりなど、生活の中でどのくらいできるかを保護者から聞き取ります。原因を調べるために、血液検査や脳波などを行うこともあります。
結果の説明と、支援の相談
得意なこと・苦手なこと、必要な支援を聞きます。幼い子の場合は、成長とともに様子が変わることもあるため、すぐに診断をつけず、経過を見ながら判断することもあります。5歳未満で評価が難しい場合は、「全般性発達遅延」という名前で、しばらく様子を見ることもあります。
検査の種類や結果の見方は、発達検査とは?種類・受け方・費用と結果の見方の記事でくわしく解説しています。
療育手帳|取り方・区分・メリット
療育手帳は、知的障害のある人が支援やサービスを受けやすくするための手帳です。身体障害者手帳や精神障害者保健福祉手帳と違い、法律ではなく国の通知(昭和48年)にもとづいて、都道府県と政令指定都市がそれぞれ運用しています。そのため、地域によって名前や区分、判定の基準が少しずつ違います。
| 名前 | 「療育手帳」が一般的。東京都は「愛の手帳」、埼玉県は「みどりの手帳」など、地域によって呼び方が違う |
|---|---|
| 区分 | 国の通知ではA(重度)とB(それ以外)の2つ。地域によって A1・A2・B1・B2 や 1度〜4度 などに細かく分けている |
| 判定 | 18歳未満は児童相談所、18歳以上は知的障害者更生相談所。知能検査と生活の様子の聞き取りで判定する。IQの目安はおおむね70以下が多いが、75以下とする地域もある |
| 申請 | 市区町村の障害福祉の窓口で申し込み、児童相談所の判定の予約をとる。判定まで1〜3か月ほど待つ地域もある |
| 更新 | 子どものうちは、成長に合わせて数年ごとに再判定がある地域が多い |
療育手帳でできること(例)
- 税金の障害者控除(所得税・住民税)。重度の場合は控除額が大きくなる
- JRやバスなどの運賃の割引、有料道路の割引(区分や地域による)
- 美術館・動物園などの公共施設の割引、携帯電話料金の割引
- 特別児童扶養手当などの手当の手続きがスムーズになる
- 将来、障害者雇用の枠で働くときに、障害を確認する書類になる
療育手帳は、取ったら一生返せないものではなく、必要がなくなれば返すこともできます。また、手帳を持っていることが、学校や周りの人に自動的に知られることはありません。使えるサービスと、お子さんの今の困りごとを比べて決めてかまいません。
使える支援と、お金のこと
知的障害のある子どもと家族が使える主な支援です。療育(児童発達支援・放課後等デイサービス)は、療育手帳や診断がなくても、必要と認められれば使えます。
| 支援 | 内容 | 費用・金額 |
|---|---|---|
| 児童発達支援(療育) | 未就学の子が通い、遊びや生活の練習を通して発達を支える | 原則1割負担で月の上限あり。3〜5歳の3年間は無償 |
| 放課後等デイサービス | 小学生〜高校生が、放課後や長期休みに通う | 原則1割負担。月の上限は0円・4,600円・37,200円 |
| 特別児童扶養手当 | 障害のある20歳未満の子を育てる親などに支給(所得制限あり) | 2026年4月から月額 1級58,450円・2級38,930円 |
| 障害児福祉手当 | 重い障害があり、日常的に常に介護が必要な子に支給(所得制限あり) | 2026年4月から月額 16,560円 |
| 短期入所・日中一時支援 | 家族の用事や休息のために、子どもを短い時間・数日あずかる | 原則1割負担(地域による) |
| 自立支援医療(精神通院医療) | てんかんや、合わせ持つ発達障害などで通院を続けるときの医療費を軽くする | 医療費の自己負担が原則1割に |
| ペアレント・トレーニング | 保護者が、子どもへの伝え方やほめ方を学ぶプログラム。療育機関や自治体で開かれている | 実施先によって違う(無料のところもある) |
療育を使うには、市区町村で「通所受給者証」をもらう手続きが必要です。手続きの流れは障害福祉サービス受給者証の申請方法、療育の内容は療育とは?児童発達支援でやること・費用・始め方、放課後等デイサービスの費用は放課後等デイサービスの料金の記事でまとめています。
就学前は、保育園・幼稚園に通いながら療育にも通う「並行通園」を選ぶ家庭も多くあります。特別児童扶養手当は、療育手帳がなくても、医師の診断書で申請できます。手当の額や所得制限は毎年見直されるので、最新の内容はお住まいの市区町村で確かめてください。
学校の選び方|通常の学級・特別支援学級・特別支援学校
就学先は、知的障害のある子のご家族がいちばん悩むことの一つです。主な学びの場は3つあります。

図:知的障害のある子の主な学びの場
| 学びの場 | 特徴 | 向いていることが多い子 |
|---|---|---|
| 通常の学級 | 30人前後のクラス。必要に応じて支援員がつく学校もある | 学習の遅れが小さく、配慮があれば授業についていける |
| 特別支援学級(知的障害) | 地域の小・中学校の中の少人数学級(1学級8人まで)。その子のペースで学び、通常の学級と一緒に過ごす時間もある | 軽度〜中度で、少人数でゆっくり学ぶほうが力を出しやすい |
| 特別支援学校(知的障害) | 少人数で、生活の力や働く力も含めて学ぶ。小学部から高等部まであり、スクールバスがある学校も多い | 日常生活で手助けが多く必要、または集団の中で生活することがとても難しい |
- 「通級による指導」(通常の学級に在籍して、一部の時間だけ別の教室で学ぶ)は、知的障害は対象になっていません。ただし、自閉スペクトラム症やADHDなどを合わせ持つ場合は、そちらの特性で対象になることがあります
- 就学先は、市区町村の教育委員会が、本人と保護者の意見をできるだけ尊重して決める。年長の春〜秋ごろに「就学相談」がある地域が多い
- 入学後も、様子に合わせて学びの場を変えることができる
就学相談の進め方と判断のしかたは、支援級と通常級どっちがいい?就学相談の進め方の記事でくわしく解説しています。
家庭でできる6つの関わり
知的障害のある子は、一度にたくさんのことを覚えるのが苦手でも、伝え方を工夫し、くり返し経験することで、できることが増えていきます。毎日の生活の中でできる関わりを6つ紹介します。

図:家庭でできる6つの関わり
短く、具体的に伝える
「ちゃんとして」「早くして」より、「くつをはこう」「手を洗おう」のように、することを短く具体的に伝えます。指示は一度に一つずつにします。「走っちゃだめ」のような否定の言い方より、「歩こうね」とするべきことを伝えるほうがわかりやすくなります。話しかける前に名前を呼んで、こちらに注意を向けてもらうのもコツです。
見せて伝える
言葉だけでなく、やって見せる、写真や絵カードで示すと、ぐっとわかりやすくなります。1日の予定を絵で並べておくと、次に何をするかがわかって安心できます。
手順を小さく分ける
着替えなら「シャツを持つ → 頭を入れる → 手を通す」のように、小さなステップに分けて一つずつ練習します。最後の一つだけを子どもにやってもらい、少しずつ任せる部分を増やす方法もあります。
できたら、すぐにほめる
時間がたってからでは、何をほめられたのかが伝わりにくくなります。できたその場で「くつ、はけたね」と、具体的にほめます。
生活の中で練習する
お手伝い(お皿を運ぶ、洗濯物をたたむ)や買い物は、数・順番・お金を学ぶいちばん身近な練習の場です。机の上の勉強より身につきやすい子も多くいます。
自分で選ぶ機会をつくる
「赤と青、どっちの服にする?」のように、2つから選ぶことから始めます。自分で決める経験は、大人になってからの暮らしを支える力になります。
知的障害のある子は、わからなくても「はい」と返事をすることがあります。大事なことは、「何をするんだっけ?」と聞き返したり、やって見せてもらったりして、伝わったかを確かめるようにしましょう。
人を信じやすく、相手の本当の意図を読みとりにくいため、だまされる、お金をとられる、ネットで知り合った人に会いに行くといったトラブルにまきこまれることがあります。スマホを持つ前に、「知らない人に名前や写真を送らない」「お金の話が出たら家族に相談する」などのルールを、具体的な場面で一緒に練習しておくと安心です。
毎日の関わりは、長く続くものです。短期入所や日中一時支援、ヘルパーなどを使ってご家族が休む時間をつくることは、子どものためにも大切です。しんどさを感じたときは、障害児の親が辛いのは努力不足ではないの記事も読んでみてください。
ご家族からよく聞かれる悩み|対応の例
Yahoo!知恵袋やSNSでは、知的障害について次のような悩みがよく見られます。個々の投稿をそのまま載せるのではなく、よくある悩みをまとめて書き直しています。考え方と、対応の例をあわせて紹介します。
「療育手帳を取ると、将来不利になりませんか?」
手帳を持っていることが、本人や家族の同意なく学校や会社に伝わることはありません。使うかどうかは、場面ごとに自分で選べます。
対応の例
- 今の生活で使えるサービス(割引・手当・控除など)を窓口で聞いて、メリットを比べる
- 必要がなくなったら返せることも確認しておく
- 将来、障害者雇用の枠で働く選択肢を残しておけることも考えに入れる
「軽度と言われたのに、学校の勉強にどんどんついていけなくなっています」
軽度の知的障害では、学年が上がって学習の内容が抽象的になるほど、遅れが目立ちやすくなります。本人の努力不足ではありません。
対応の例
- 担任の先生や特別支援教育コーディネーターに、今の様子を伝えて相談する
- 学びの場(通常の学級・支援学級)を見直す相談は、学年の途中でもできる
- テストの点より、時計・お金・買い物など生活に使う力を家庭で優先する
「IQが前回の検査より下がりました。悪くなっているのでしょうか?」
IQは、同じ年齢の子と比べた位置を示す数字です。子どもができることが増えていても、周りの子の伸びのほうが大きいと、数字は下がることがあります。検査の日の体調や慣れでも変わります。
対応の例
- 数字だけでなく、前回より何ができるようになったかを検査の担当者に聞く
- 得意な分野と苦手な分野の説明を、家庭や学校での関わりに生かす
「きょうだいにどう説明したらいいかわかりません」
きょうだいも、「どうしてお兄ちゃんだけ」「自分のせい?」と感じていることがあります。年齢に合わせて、わかる言葉で正直に伝えることが大切です。
対応の例
- 「覚えるのがゆっくりで、手伝いが必要なことがあるんだよ」のように、特徴と必要な手助けを伝える
- 「病気がうつるわけではない」「あなたのせいではない」ことをはっきり伝える
- きょうだいと一対一で過ごす時間をつくる。地域の「きょうだい会」もある
「親がいなくなったあと、この子はどうやって暮らしていくのか不安です」
多くのご家族が抱える不安です。今は、働く場(障害者雇用・就労継続支援)や暮らす場(グループホーム)、お金の管理を手伝う仕組み(成年後見など)が用意されています。
対応の例
- 今のうちから、相談支援専門員など家族以外に頼れる人を少しずつ増やす
- 20歳からの障害年金など、将来使える制度を早めに調べておく
- 短期入所などで、家族と離れて過ごす経験を少しずつ積む
よくある質問
Q. 知的障害は治りますか?
知的障害そのものを治す薬や治療はありません。ただし、子どもは確実に成長し、合った支援でできることは増えていきます。また、原因によっては早く治療することで防げるものもあります。
Q. 幼いうちに「知的障害」と言われても、あとで変わることはありますか?
幼い子の検査の結果は、成長とともに変わることがあります。そのため、小さいころは「発達の遅れ」として経過を見ることも多く、療育手帳も数年ごとに再判定があります。
Q. 軽度の知的障害でも、療育手帳は取れますか?
多くの地域で、軽度でも判定の基準に当てはまれば取れます(B判定など)。基準は地域によって違うので、お住まいの市区町村の窓口で確認してください。
Q. 知的障害があると、てんかんになりやすいですか?
知的障害のある子の10〜30%ほどがてんかんを合わせ持つとされ、程度が重いほど多くなります。ぼーっとして反応がない、体がぴくっとする、といった様子が続くときは、主治医に相談してください。
Q. 特別支援学校に行くと、将来の選択肢が狭くなりますか?
特別支援学校の高等部では、働く力や生活の力を学ぶ授業や実習が多く、そこから企業の障害者雇用に就職する人もいます。お子さんが安心して力を出せる場所かどうかで考えるのがおすすめです。
- 自閉スペクトラム症(ASD)とは|特徴・年齢別のサイン・相談先
- ADHD(注意欠如・多動症)とは|子どもの特徴と、家庭でできる工夫
- 学習障害(LD)とは|読む・書く・計算のつまずきと学校での配慮
- 折れ線型自閉症とは|できていたことができなくなったとき
- 発達グレーゾーンとは|診断がつかないときの相談先と支援
- 療育とは|児童発達支援でやること・費用・始め方
- 発達検査とは|検査の種類・受け方と結果の見方
- 言葉の遅れが気になるとき|年齢別の目安・原因・家庭でできること
まとめ
- 知的障害(知的発達症)は、知的な働きの発達がゆっくりで、生活に支援が必要な状態。発達期にあらわれる
- 判断はIQだけでなく生活の様子を合わせて行う。程度は軽度がいちばん多い
- 重度ほど早く、軽度は言葉の遅れや小学校の学習で気づかれることが多い
- 原因はさまざまで、わからないことも多い。育て方やしつけは原因ではない
- 療育は手帳がなくても使える。療育手帳・手当・学びの場は、今の困りごとに合わせて選べる
- 家庭では、短く具体的に・見せて・小さく分けて・すぐほめる、からできることを1つ
知的障害と聞くと、将来のことまで一度に考えて不安になるかもしれません。でも、相談先や使える支援はたくさんあり、子どもはその子のペースで確実に育っていきます。一人で抱えこまず、身近な窓口を頼りながら、できたことを一緒に喜んでいってください。


