学習障害(LD)とは?子どもの特徴・年齢別のサイン・読む書く計算の困りごとと、家庭と学校でできる支援【2026年版】
「音読がたどたどしくて、1文字ずつ区切って読む」「何度練習しても漢字が覚えられない」「くり上がりの計算になると止まってしまう」。ほかのことはよくできるのに、勉強の一部だけがどうしても進まない。そんなときに学習障害(LD)という言葉を調べた方も多いと思います。
この記事では、学習障害がどんな特性なのかを、文部科学省の定義・診断基準・調査データをもとにやさしく説明します。そのうえで、年齢ごとのサイン、「ただの苦手」との違い、原因についてわかっていること、ADHDや自閉スペクトラム症との関係、相談から診断までの流れ、学校でお願いできる配慮、家庭でできる関わり方までまとめました。
- 学習障害とは何か(教育の定義と医学の定義のちがい)
- 「読む」「書く」「計算する」の3つの困りごと
- どのくらいの子どもにあるのか(文部科学省の調査)
- 年齢別に見られやすいサインと、「ただの苦手」との違い
- 原因についてわかっていること・よくある誤解
- ADHD・自閉スペクトラム症との関係
- 相談から診断までの流れ、学校での配慮、家庭でできる6つのコツ
- ご家族からよく聞かれる悩みと、対応の例
この記事は、相談や受診の準備に役立ててもらうための一般的な情報です。お子さんが学習障害かどうかは、この記事のチェック項目では判断できません。気になることがあれば、学校の担任の先生や特別支援教育コーディネーター、スクールカウンセラー、かかりつけの小児科に相談してください。
- 結論|学習障害で最初に知っておきたい5つのこと
- 学習障害(LD)とは|「努力不足」ではなく、脳の働き方の違い
- 3つの困りごと|読む・書く・計算する
- どのくらいいる?|通常の学級の約6.5%に学習面の困難
- 年齢別のサイン|年長から中学生まで
- 「ただの苦手」との違い|見分ける4つのポイント
- 原因は?|本人の努力や、家での教え方のせいではありません
- ADHD・自閉スペクトラム症との関係
- 相談から診断までの流れ|どこに行けばいい?
- 学校での支援|通級・特別支援教室・合理的配慮
- 家庭でできる関わり方|今日から試せる6つのコツ
- 家庭学習の助けになるもの|療育・学習サービス
- 二次障害を防ぐために|いちばん大切なのは自信
- ご家族からよく聞かれる悩み|対応の例
- よくある質問
- まとめ
結論|学習障害で最初に知っておきたい5つのこと
先に要点を並べます。
| どんな特性か | 知的な発達に遅れはないのに、「読む」「書く」「計算する」など特定のことだけが、練習しても年齢に比べて極端に身につきにくい、生まれつきの脳の働き方の違い |
|---|---|
| どのくらいいるか | 日本の小中学校の通常の学級で、先生から見て学習面に著しい困難がある子は約6.5%(診断の数ではない)。世界では学齢期の子どもの5〜15%とされる |
| 原因 | 遺伝的な要因が関わる脳の発達の違い。本人の努力不足や、家での教え方が原因ではない |
| 気づく時期 | 文字や計算の勉強が始まる小学校1〜3年生ごろに気づかれることが多い。ひらがなは読めても、漢字や文章題で目立ってくる子もいる |
| 支援の考え方 | 苦手な方法で練習量を増やすより、やり方を変える・道具を使う・学校で配慮を受ける。診断の前から相談できる |
学習障害の子どもは、怠けているわけでも、頭が悪いわけでもありません。ほかの子と同じ方法では、文字や数を処理する脳の働きがうまく回りにくいのです。同じ練習をくり返させるより、その子に合ったやり方を見つけるほうが、ずっと力が伸びます。
出典:文部科学省「学習障害児に対する指導について(報告)」(1999年)、American Psychiatric Association『DSM-5-TR 精神疾患の診断・統計マニュアル』、文部科学省「通常の学級に在籍する特別な教育的支援を必要とする児童生徒に関する調査」(2022年)
学習障害(LD)とは|「努力不足」ではなく、脳の働き方の違い
学習障害は、英語のLearning Disabilities(またはLearning Disorders)の頭文字をとってLDとも呼ばれます。発達障害のひとつで、日本の発達障害者支援法の対象にもなっています。
文部科学省は、学習障害を次のように定義しています。
学習障害とは、基本的には全般的な知的発達に遅れはないが、聞く、話す、読む、書く、計算する又は推論する能力のうち特定のものの習得と使用に著しい困難を示す様々な状態を指すもの。原因として中枢神経系に何らかの機能障害があると推定されるが、視覚障害、聴覚障害、知的障害、情緒障害などの障害や、環境的な要因が直接の原因となるものではない。
ポイントは、「全体的な遅れ」ではなく「一部だけの、とても大きな苦手」だということです。たとえば、話す力や考える力は年齢相応、またはそれ以上なのに、文字を読むことだけが極端に遅い、という形で現れます。
教育の「学習障害」と、医学の「限局性学習症」
実は、学校で使う言葉と、病院で使う言葉は、少し範囲がちがいます。
| 教育(学校) | 医学(病院) | |
|---|---|---|
| 呼び方 | 学習障害(LD) | 限局性学習症(SLD)。読みの障害は「発達性読み書き障害」「ディスレクシア」とも |
| 対象になる力 | 聞く・話す・読む・書く・計算する・推論する の6つ | 読む・書く・計算する(算数)の3つが中心 |
| 使われる場面 | 通級による指導や、学校での配慮を考えるとき | 医師が診断するとき |
出典:文部科学省(1999年)、American Psychiatric Association『DSM-5-TR』(日本語版 2023年)
「聞く・話す」の困りごとは、医学では言語の発達や自閉スペクトラム症など、別の診断名で扱われることがあります。この記事では、多くのご家庭が気になる「読む」「書く」「計算する」を中心に説明します。
3つの困りごと|読む・書く・計算する
学習障害の困りごとは、大きく3つに分けられます。1つだけの子もいれば、2つ3つが重なる子もいます。なかでも多いのは、読むことと書くことが一緒に苦手なタイプです。

図:学習障害の3つの困りごと。1つだけの子も、重なる子もいます
読みの困難(発達性ディスレクシア)
- 1文字ずつ区切って読む(「き・の・う・は」)。単語のまとまりで読めない
- 行を飛ばす、同じ行を2回読む、文の終わりを勝手に変えて読む
- 「わ」と「ね」、「る」と「ろ」など、形の似た文字を読み間違える
- 読むことに力を使いきって、内容が頭に入らない。人に読んでもらうと理解できる
書きの困難
- ひらがな・カタカナ・漢字がなかなか覚えられない。覚えてもすぐ忘れる
- 小さい「っ」「ゃ」「ゅ」「ょ」や、のばす音(「おかあさん」)を書き間違える
- 文字の形が整わない、マス目からはみ出す、左右が逆の文字(鏡文字)が続く
- 黒板を書き写すのにとても時間がかかる。作文で何を書けばいいかまとまらない
算数の困難
- 「7は5より大きい」など、数の大きさの感覚がつかみにくい
- 指を使わないと簡単なたし算ができない。九九が覚えられない
- くり上がり・くり下がり、筆算のけたをそろえることが苦手
- 文章題で、何を求めればいいのかがわからない
ひらがなは「1つの文字=1つの音」がほぼ決まっているため、英語に比べると、最初のうちは読みの困難が目立ちにくいといわれます。そのため、ひらがなはなんとか読めても、音読がとても遅い、漢字が増える2〜3年生で急につまずく、という形で気づかれることがよくあります。「ひらがなが読めるから大丈夫」とは限りません。
どのくらいいる?|通常の学級の約6.5%に学習面の困難
文部科学省は2022年、全国の公立小中学校の通常の学級で、担任の先生などに子どもの様子を答えてもらう調査を行いました。医師の診断ではありませんが、学校の中でどのくらいの子が学習で困っているかの目安になります。
| 小学校・中学校の通常の学級(2022年) | 割合 |
|---|---|
| 学習面で著しい困難を示す | 約6.5% |
| 「読む」または「書く」に著しい困難を示す | 約3.5% |
| 「計算する」または「推論する」に著しい困難を示す | 約3.4% |
| 「聞く」または「話す」に著しい困難を示す | 約2.5% |
| (参考)学習面と行動面の両方に著しい困難を示す | 約2.3% |
出典:文部科学省「通常の学級に在籍する特別な教育的支援を必要とする児童生徒に関する調査結果について」(2022年)。先生の回答をもとにした推定値で、学習障害と診断された子の割合ではありません。1人の子が複数に当てはまることがあります
6.5%は、35人のクラスなら2人ほどにあたります。決してめずらしい困りごとではありません。海外の診断基準(DSM-5-TR)でも、学齢期の子どもの5〜15%に見られるとされ、男の子のほうが2〜3倍ほど多いと書かれています。
年齢別のサイン|年長から中学生まで
学習障害は、文字や数の勉強が本格的に始まってから気づかれることがほとんどです。ただし、その前から小さなサインが出ていることもあります。

図:気づきやすい時期とサインの例。当てはまるだけで学習障害とは決まりません
| 時期 | 見られやすいサイン |
|---|---|
| 年長(5〜6歳) | しりとりや、言葉を音に分ける遊び(「たぬき」は3つの音)が苦手。自分の名前の文字に興味を示さない。数を数えるときに飛ばしたり、同じものを2回数えたりする |
| 小学1年生 | ひらがなを覚えるのに時間がかかる。音読が1文字ずつでたどたどしい。小さい「っ」「ゃ」を書き間違える。音読の宿題をとてもいやがる |
| 小学2〜3年生 | 漢字が覚えられず、テストで書けない。教科書を読むのに時間がかかり、内容が理解できない。くり上がり・くり下がり、九九でつまずく |
| 小学4年生〜中学生 | 文章題・分数・小数で止まる。板書が写しきれない。社会や理科も、教科書が読めないために点がとれない。「わかっているのにテストで実力が出ない」 |
ひらがなを覚える時期には、大きな個人差があります。小学校入学前に読めないことだけで、学習障害とはいえません。気をつけたいのは、入学してしばらくたっても、練習しているのに音読がとても遅い、文字が覚えられない状態が続く場合です。
「ただの苦手」との違い|見分ける4つのポイント
勉強に得意・不得意があるのは当たり前です。では、学習障害はどこが違うのでしょうか。医師の診断基準や文部科学省の基準では、次のような点を確かめます。
練習や手助けをしても、6か月以上続いている
一時的なつまずきではなく、ていねいに教えてもらっても改善しにくい状態が続いていること。診断基準では、支援をしても少なくとも6か月続いていることが目安になります。
学年に比べて、はっきり遅れている
文部科学省の判断の目安では、小学2・3年生で1学年以上、小学4年生以上または中学生で2学年以上の遅れがあることが挙げられています。少しの遅れではなく、生活や学習に支障が出るほどの差です。
ほかの力とのアンバランスが大きい
話す・考える・覚えるなどほかの力は年齢相応なのに、特定のことだけが極端に苦手。全体的にゆっくりな場合は、別の理由を考えます。
ほかの理由では説明できない
見えにくさ・聞こえにくさ、知的な発達の遅れ、日本語に慣れていない、学校に通えていない、などが主な原因ではないこと。そのため、視力や聴力の検査も一緒に確かめるのが一般的です。
出典:American Psychiatric Association『DSM-5-TR』、文部科学省「学習障害児に対する指導について(報告)」(1999年)の判断・実態把握基準
原因は?|本人の努力や、家での教え方のせいではありません
学習障害は、生まれつきの脳の働き方の違いによるものと考えられています。家族に読み書きが苦手な人がいると起こりやすいことがわかっており、遺伝的な要因が関わっています。
読み書きの困難では、言葉を音に分けて扱う力(音韻処理)や、文字と音を素早く結びつける力が弱いことが、中心にあると考えられています。文字を見ることはできても、それを音に変える作業に人一倍エネルギーを使うため、読むのが遅くなり、内容まで頭が回らなくなるのです。

図:よくある誤解と、本当のこと
読み書きの困難は、目の動きや見え方の問題で起きているわけではありません。アメリカの小児科学会や眼科学会などは共同で、目の訓練(ビジョントレーニング)で学習障害そのものが治るという科学的な裏づけはないという声明を出しています。もちろん、視力の低下などがあれば治療が必要なので、目の検査自体は受けておきましょう。
出典:American Academy of Pediatrics ほか. Joint Statement—Learning Disabilities, Dyslexia, and Vision. Pediatrics. 2009(2011年改訂)
ADHD・自閉スペクトラム症との関係
学習障害は、ほかの発達障害と重なって見られることが多い特性です。とくにADHD(注意欠如・多動症)とは重なりやすく、研究によって幅はありますが、ADHDのある子の3〜4割以上に学習障害も見られるという報告があります。
| 重なりやすい特性 | 勉強での見え方のちがい |
|---|---|
| ADHD | 集中が続かない・うっかりミスが多いために、点がとれない。落ち着いた環境なら読めるかどうかが、学習障害との見分けの手がかりになる |
| 自閉スペクトラム症 | 文字は読めても、登場人物の気持ちや、あいまいな問題文の意図がつかみにくい。学習障害とは苦手の理由がちがう |
| 発達性協調運動症 | 手先が不器用で、文字の形が整わない・書くのに時間がかかる。文字そのものは覚えている |
出典:DuPaul GJ, et al. Comorbidity of LD and ADHD: Implications for DSM-5 and Assessment and Treatment. Journal of Learning Disabilities. 2013、American Psychiatric Association『DSM-5-TR』
同じ「勉強が苦手」でも、理由がちがえば支援の方法もちがいます。だからこそ、専門家に「なぜ苦手なのか」を見てもらう意味があります。ADHDについてはADHD(注意欠如・多動症)とは?子どもの特徴・年齢別のサイン、自閉スペクトラム症については自閉スペクトラム症(ASD)とは?特徴・年齢別のサインでくわしくまとめています。
相談から診断までの流れ|どこに行けばいい?
学習障害は、勉強の場面で困りごとが出るため、最初の相談先は学校になることが多いです。一般的な流れを順番に紹介します。

図:相談から診断までの流れ。くわしくは下のステップごとの説明をご覧ください
困りごとを集めておく
書いたノート、漢字や計算のテスト、音読カード、作文などを捨てずにとっておきます。音読の様子をスマホで1分ほど録音しておくのも役に立ちます。「どの文字を間違えるか」「どこで止まるか」が、専門家にとって大事な情報になります。
学校に相談する
担任の先生に加えて、どの学校にもいる特別支援教育コーディネーターや、スクールカウンセラーに相談できます。学校によっては、簡単な読み書きのチェックをしてくれることもあります。市区町村の教育相談センターや、発達障害者支援センターも相談先です。
専門の病院を予約する
診断は、児童精神科・小児神経科・発達外来などの医師が行います。学習障害をくわしく診られる病院は多くないため、かかりつけの小児科や学校、支援センターに紹介先を聞くのが近道です。予約が数か月先になることもあるので、迷ったら予約だけ先に入れておきましょう。
知能検査・読み書きの検査
知的な発達の様子と得意・苦手のバランスを見る知能検査(WISC-Vなど)と、音読の速さや書き取りの正確さを見る読み書きの検査を組み合わせます。視力・聴力の確認、ほかの発達障害がないかの確認も行います。
結果の説明と、支援の相談
診断名がつくかどうかだけでなく、「なぜ苦手なのか」「どんなやり方なら学びやすいか」がわかることが大きな収穫です。検査結果は、学校に配慮をお願いするときの根拠にもなります。
学校での配慮や通級による指導は、医師の診断がなくても、困りごとの様子から検討してもらえることがあります。病院の予約を待つあいだも、学校との相談は進めておきましょう。
学校での支援|通級・特別支援教室・合理的配慮
学習障害の子の多くは、通常の学級で学びながら、必要な支援を受けています。主な選択肢は次の3つです。
| 支援 | 内容 |
|---|---|
| 合理的配慮 | 通常の学級の中で、その子に合わせたやり方を認めてもらうこと。2024年4月からは、私立学校を含めて、合理的配慮の提供が法律上の義務になっている |
| 通級による指導 | 通常の学級に在籍しながら、週に数時間、別の教室で読み書きや学び方の練習をする。学習障害も対象(地域によっては「特別支援教室」などの名前で、先生が学校に来る形もある) |
| 特別支援学級 | 少人数の学級で学ぶ。学習障害だけの場合は通常の学級+通級が多いが、困りごとの大きさや本人の希望で検討する |
出典:障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(2024年4月 改正法施行)、文部科学省 特別支援教育に関する資料

図:学校でお願いできる配慮の例。内容は学校と相談して決めます
「音声教材」は無償で使える
文部科学省は、読むことが難しい子どものために、教科書の文章を音声で聞いたり、読んでいる場所に色がついたりする「音声教材」の普及を進めています。マルチメディアデイジー教科書などがあり、対象の子どもは無償で利用できます。申し込みの方法は教材によってちがうので、学校の先生に相談してみてください。
高校・大学の入試でも配慮が受けられる
高校入試では、都道府県ごとに、試験時間の延長や別室での受験などの配慮が設けられています。大学入学共通テストでも、発達障害のある受験生は、試験時間の延長(1.3倍など)、問題冊子の文字の拡大、マークシートの代わりのチェック解答、別室での受験などを申請できます。
大学入学共通テストの申請では、医師の診断書に加えて、高校でどんな配慮を受けてきたかを書いた書類が求められます。入試の配慮は、ふだんの学校生活で実際に受けてきた配慮が大切な判断材料になります。小中学校のうちから、配慮の内容を学校と話し合い、記録に残しておくと安心です。
出典:大学入試センター「受験上の配慮案内」
就学先の考え方については、支援級と通常級どっちがいい?就学相談の進め方と判断の3軸もあわせてご覧ください。
家庭でできる関わり方|今日から試せる6つのコツ
家庭では、「たくさん練習させる」より「苦手を責めずに、やり方を変える」ことが大切です。できそうなものから試してみてください。

図:家庭でできる6つのコツ。それぞれの説明は下にあります
量より、短い時間で
読み書きが苦手な子にとって、1ページの音読は、ほかの子の何倍も疲れる作業です。「1日10分だけ」「この3行だけ」と短く区切り、毎日少しずつ続けるほうが身につきます。
目と耳を両方使う
大人が先に読んで聞かせてから一緒に読む、漢字の形を言葉にして覚える(「相」なら「木の横に目」など、その子が覚えやすい言い方)など、見るだけでなく聞く・言うを組み合わせると覚えやすくなる子がいます。
道具を使ってよいことにする
タブレットの読み上げ機能、音声入力、計算機、九九表、マス目の大きいノート、読む行だけが見える定規など。道具を使うのはずるではなく、メガネと同じです。道具で負担を減らすことで、考える力や理解する力を使えるようになります。
できたことを目に見える形で残す
読めた行に色をぬる、覚えた漢字にシールを貼るなど、少しずつ前に進んでいることが本人にわかる工夫をします。苦手なことほど、「できた」の手ごたえが続ける力になります。
宿題の量や方法は、先生と相談する
夜遅くまで泣きながら宿題をする毎日は、親子ともに消耗します。「漢字の書き取りは半分にする」「音読は親が読んで本人が聞く日もつくる」など、量や方法を先生と相談して決めてかまいません。
得意なことを伸ばす
学習障害の子は、話す・作る・考える・体を動かすなど、ほかの分野で力を発揮することがよくあります。苦手の克服だけに時間を使わず、得意なことで自信を育てることが、苦手に向き合う力にもなります。
- 「何回言ったらわかるの」「ちゃんと見て」と、努力不足として叱る
- 間違えた字を、何十回も書き直させる
- きょうだいや友だちと比べる
- 人前で音読させて、つっかえるのを笑う(学校でも配慮をお願いしたい点です)
家庭学習の助けになるもの|療育・学習サービス
家庭だけでがんばる必要はありません。外の力を借りる方法もあります。
| 方法 | 特徴 |
|---|---|
| 放課後等デイサービス | 小学生〜高校生が放課後や休日に通う福祉サービス。学習支援に力を入れている事業所もある。受給者証が必要で、利用料は世帯の所得に応じた上限がある |
| 発達障害に理解のある家庭教師・塾 | 1対1で、その子のペースと方法に合わせて教えてもらえる。読み書きの困難に合わせた教え方ができるかを、体験授業で確かめる |
| オンライン教材 | 音声や動きのある教材で、文字を読む負担を減らしながら学べる。学年をさかのぼって復習しやすい |
小学校に入る前のお子さんは、児童発達支援などの療育で、文字や数に親しむ遊びや、手先・目の使い方の練習をすることもあります。療育の内容や始め方は療育とは?の記事でまとめています。
放課後等デイサービスの費用は放課後等デイサービスの料金はいくら?年収別の上限額早見表、受給者証の申請は障害福祉サービス受給者証の申請方法と流れでまとめています。家庭教師やオンライン教材を検討している方は、発達障害の子におすすめの家庭教師5社を比較やすららは発達障害の子に向いている?も参考にしてください。
二次障害を防ぐために|いちばん大切なのは自信
学習障害でいちばん心配なのは、勉強の遅れそのものより、「どうせ自分はできない」と自信をなくしてしまうことです。毎日のように「読めない」「書けない」経験を重ね、周りから「なまけている」と思われ続けると、勉強ぎらい、学校に行きたくない、気持ちの落ちこみ、といった二次的な困りごとにつながることがあります。
- 「あなたのせいではない。脳のやり方がちがうだけ」と、本人にわかる言葉で伝える
- 点数より、取り組んだこと・工夫したことをほめる
- 学校でつらそうなときは、早めに先生と話す
- 家を「できないことを責められない場所」にする
苦手の理由がわかり、合ったやり方や道具を使えるようになると、表情が明るくなる子は少なくありません。学習障害は、早く気づいて、やり方を変えるほど、本人の力が出しやすくなる特性です。
ご家族からよく聞かれる悩み|対応の例
Yahoo!知恵袋やX(旧Twitter)などには、学習障害について、ご家族からの相談がたくさん寄せられています。その中から特によく見られる悩みを選び、考え方と、すぐに試せる対応の例をまとめました。
個々の投稿をそのまま載せるのではなく、似た相談をまとめて、内容を書き直しています。対応の例は一般的なものです。お子さんに合うかどうかは、主治医や学校、相談先と一緒に考えてください。
「ひらがながほとんど読めないのに、病院の初診は1年後。その間に授業はどんどん進みます」
専門の病院は、予約が先になることがよくあります。でも、学校での工夫は、診断を待たずに始められます。
対応の例
- 担任の先生に、「読むのにとても時間がかかる」などの様子を具体的に伝え、配慮を相談する
- 文部科学省の事業でつくられた「音声教材」(教科書を音声で聞ける教材)を、学校を通して申しこめないか聞く
- タブレットの読み上げ機能で、本や文章を耳から聞けるようにする
- 見え方の問題がないか、眼科でも確かめておく
「通信教材やドリルを毎日やらせていますが、親子でけんかになります」
同じやり方の練習を増やしても、学習障害の子は伸びにくく、「勉強=つらいもの」と感じてしまうことがあります。少しの遅れは、合うやり方が見つかれば取り戻せます。
対応の例
- 量を減らし、1日10分など短い時間にする
- 読む部分は親が読み上げる、答えは口で言ってもよいなど、苦手な部分を手伝う
- 合うやり方がわからないときは、学校や専門家に相談してから教材を選ぶ
「定期テストの点が伸びず、本人が『学校に行きたくない』と言い始めました」
点数より先に、本人の心が限界に近づいていないかを見ることが大切です。がんばっても結果が出ない経験が続くと、学校に行けなくなることもあります。
対応の例
- 学校に、テストの読み上げ・時間の延長・拡大した問題用紙などの配慮を相談する
- 提出物や授業での取り組みも評価してもらえないか相談する
- 眠れない、朝おなかが痛くなるなどが続くときは、早めに病院やスクールカウンセラーに相談する
「高校はどこを選べばいい? 学習障害のことを高校に伝えるべき?」
入れるかどうかだけでなく、入学したあとに通い続け、卒業できるかまで考えて選ぶことが大切です。高校でも配慮は受けられますし、入試での配慮を申請することもできます。
対応の例
- 公立高校、通信制高校、高等専修学校など、複数の学校を見学し、配慮の実績を直接聞く
- 中学校で受けている配慮を記録に残しておく(入試での配慮を申請するときに役立ちます)
- 地域の教育委員会や、中学校の進路の先生に、配慮のある学校の情報を聞く
「タブレットで黒板を撮ることが、ほかの子や保護者に『ずるい』と言われました」
合理的配慮は、視力が弱い子が眼鏡をかけるのと同じで、特別扱いではありません。ただ、まわりに理由が伝わっていないと、誤解されることがあります。
対応の例
- どう説明するかを、担任の先生と相談する
- 本人の同意をとったうえで、先生からクラスに「人によって学びやすい方法は違う」と話してもらう
- 本人には「必要な道具を使うのは、正しいこと」と伝え続ける
「勉強ができないわが子を、受け入れられない自分がつらいです」
親だからこそ、心配や焦りが強くなるのは自然なことです。そう感じる自分を責めないでください。親が少しでも楽になると、子どもも安心しやすくなります。
対応の例
- 学習障害の子の親の会など、同じ立場の人と話せる場所を探す
- 勉強以外で、子どもが得意なこと・好きなことを一緒に見つける
- つらさが強いときは、スクールカウンセラーや保健センターに、親自身のことを相談する
ネットの体験談は、一人ひとりの事情が違うため、そのまま当てはまるとは限りません。「うちの子の場合はどうか」は、記録を持って専門家に相談するのがいちばん確実です。そして、悩んでいるご家族自身が休めることも、子どもの支援と同じくらい大切です。
よくある質問
Q. 学習障害は治りますか?
脳の働き方の特性なので、苦手さが完全になくなるわけではありません。ただ、その子に合った方法での練習や、道具・配慮を使うことで、読み書きや計算の力は伸びていきます。大人になって、読み上げソフトや音声入力を使いながら仕事で力を発揮している人もたくさんいます。
Q. 何歳から診断できますか?
文字や計算の学習が始まってからでないと判断が難しいため、多くは小学校に入ってから、とくに1年生の後半〜3年生ごろに評価されます。年長さんで気になる様子があれば、診断を待たずに、園や保健センター、就学相談で伝えておくと、入学後の支援につながりやすくなります。
Q. 学校に伝えるべきですか?
学習障害の困りごとは主に学校の勉強で起きるので、学校の理解と配慮が欠かせません。診断名を伝えるかどうかはご家族が決めてよいことですが、「どんなことに困っていて、どうすると学びやすいか」は具体的に伝えることをおすすめします。
Q. 本人に学習障害のことを話したほうがいいですか?
年齢や本人の様子に合わせて、医師や先生と相談しながら伝えることが多いです。「頭が悪いのではなく、読むときの脳のやり方がほかの人とちがう。だから道具を使えば大丈夫」と伝えることで、自分を責めていた気持ちが軽くなる子もいます。
Q. 知能検査の結果が高いのに、読み書きができません。
それは学習障害でよく見られる形です。考える力が高いのに読み書きだけが極端に苦手なため、「やればできるはず」と誤解されやすく、本人もつらい思いをしがちです。検査結果をもとに、学校に配慮を相談してみてください。
Q. 英語の勉強が始まって、急に苦手が目立ってきました。
英語は、つづりと発音の関係が日本語のひらがなより複雑なため、日本語では目立たなかった読み書きの困難が、英語で表面化することがあります。英語のつまずきをきっかけに相談する方もいます。気になるときは学校に相談してみましょう。
まとめ
| どんな特性か | 知的な遅れはないのに、読む・書く・計算するなど特定のことだけが、練習しても極端に身につきにくい |
|---|---|
| どのくらいいるか | 通常の学級で学習面に著しい困難がある子は約6.5%(先生の回答による推定) |
| 原因 | 遺伝的な要因が関わる脳の働き方の違い。本人の努力不足や家での教え方は原因ではない |
| 相談先 | 学校(担任・特別支援教育コーディネーター)、教育相談センター、発達障害者支援センター、児童精神科・小児神経科 |
| 支援 | 合理的配慮・通級・音声教材などを学校と相談。家庭では「短く・目と耳で・道具を使って・得意を大切に」 |
学習障害の子は、見えないところで人一倍がんばっています。それでも結果が出にくいのは、本人のせいではありません。「もしかして」と思ったら、まず学校に、お子さんの困りごとを具体的に伝えるところから始めてみてください。
- 文部科学省「学習障害児に対する指導について(報告)」1999年
- 文部科学省「通常の学級に在籍する特別な教育的支援を必要とする児童生徒に関する調査結果について」2022年
- American Psychiatric Association『DSM-5-TR 精神疾患の診断・統計マニュアル』(日本語版 2023年、医学書院)
- 特異的発達障害の臨床診断と治療指針作成に関する研究チーム 編『特異的発達障害 診断・治療のための実践ガイドライン』診断と治療社、2010年
- DuPaul GJ, Gormley MJ, Laracy SD. Comorbidity of LD and ADHD: Implications for DSM-5 and Assessment and Treatment. Journal of Learning Disabilities. 2013
- American Academy of Pediatrics, et al. Joint Statement—Learning Disabilities, Dyslexia, and Vision. Pediatrics. 2009(2011年改訂)
- 障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(2024年4月 改正法施行)
- 文部科学省「音声教材」に関する資料、大学入試センター「受験上の配慮案内」
- 政府広報オンライン「発達障害って、なんだろう?」


