障害児支援の基礎・実践研修、常勤職員全員に受講を求める案(10/5検討チーム)|10月11日の福祉ニュース
今日は日曜日で、厚生労働省・こども家庭庁とも福祉分野の新しい発表はありません。
そこで今日は、10月5日の障害福祉報酬改定検討チームに出た障害児支援の資料から、「基礎・実践研修」と個別支援計画のチーム協働の2つを、資料の図表まで降りて詳しく見ます。10月5日の記事では1行ずつしか触れられなかった部分です。
あわせて、全日本ろうあ連盟など6団体が10月11日に公表した厚生労働大臣あての要望書と、同じ日に行われた介護支援専門員(ケアマネジャー)の試験を取り上げます。行き着く先は、職員の研修の時間をどこで確保し、その記録をどう残すかです。
| ニュース | いちばん大事な一行 | いまの段階 |
|---|---|---|
| ①障害児支援の基礎・実践研修 | 令和9年度に導入予定。導入時は児童福祉法の障害児通所・入所・相談支援の常勤職員全員に受講を求める案。研修(Ⅰ)は約7時間・7科目、(Ⅱ)は約22時間・22科目 | 検討中 (変わり得る) |
| ②個別支援計画のチーム協働 | 他の職員と協働している児童発達支援管理責任者は80.8%。作成責任は児発管に残し、原案づくりの一部を一般職員も担える形にする案 | 検討中 (変わり得る) |
| ③意思疎通の加算の要望 | 居宅介護に「視覚・聴覚・言語障害者支援加算(仮称)」の創設を要望。調査では訪問の390分中152分(39.0%)が意思疎通に使われていた | 団体の要望 (10月7日提出) |
| ④ケアマネ試験 | 第29回試験は10月11日に実施、60問・120分。合格発表は11月24日の予定 | 実施済み (発表は予定) |
決まっているのは④の試験日程だけです。①②は検討チームに示された「検討の方向性」の段階で、要件も単位数もまだ出ていません。③は団体からの要望で、国の案ではありません。
①障害児支援の基礎・実践研修、令和9年度から常勤職員全員に受講を求める案
検討中研修は3階層。いちばん下の「基礎・実践研修」だけが運営基準に入り、職種や経験を問わず受ける形です。

3つの階層と、それぞれの導入年度
厚生労働省 社会・援護局障害保健福祉部とこども家庭庁 支援局障害児支援課は、10月5日の障害福祉報酬改定検討チーム第65回に、障害児支援の研修体系を「論点1」として出しました。もとになっているのは、令和7年8月にまとまった「障害児支援における人材育成に関する検討会」の報告書です。
報告書が示した研修は3階層で、一度に始めず、下から1年ずつ積み上げる予定になっています。
| 研修 | 導入予定 | 受講期間(最長) | 時間・科目(目安) | 対象者像 | 実施主体 |
|---|---|---|---|---|---|
| 基礎・実践研修(Ⅰ) | 令和9年度 | 入職後〜半年程度まで | 約7時間・7科目 | 主に本人支援を中心とした役割を担う者(職種や実務経験を問わず全ての支援者) | 事業者 |
| 基礎・実践研修(Ⅱ) | 令和9年度 | (Ⅰ)修了後〜3年目程度まで | 約22時間・22科目 | ||
| リーダー研修 | 令和10年度 | 特に定めなし | 約37〜43時間・19科目+演習2日間×2 | 事業所において中心的な役割を担う者(任意) | 都道府県・指定都市 |
| コア人材研修 | 令和11年度 | 特に定めなし | 約32〜40時間・12科目+演習2日間×2 | 地域において中心的な役割を担う者(任意) |
時間の目安は、基礎・実践研修が1科目約60分、リーダー・コア人材研修が1科目約60分・演習90〜120分で実施した場合。出典:障害福祉報酬改定検討チーム 第65回資料「障害児支援に係る報酬・基準について≪論点等≫」p.3〜7(令和8年10月5日)
誰に受講を求めるのか(検討の方向性)
資料の「検討の方向性」は、受講を求める範囲を次のように書いています。どれも「〜を検討してはどうか」という形で、まだ決まったものではありません。
- 運営基準で、事業者に本研修を実施するための措置を求める
- 対象は児童福祉法に基づく指定障害児通所支援・指定障害児入所支援・指定障害児相談支援に従事する者
- 導入時は、これらの事業に配置されている全ての常勤職員に受講を求める。その後は、新たに従事する常勤職員に求める
- 非常勤職員は、標準カリキュラムのうち必須受講科目を設けるなど、常勤とは別の枠組みにする
- リーダー研修・コア人材研修は、中核的な役割を担う人が任意で受ける研修とする
- 外部研修の受講で一時的に人員配置に影響が出る場合は、必要な直接支援の体制が確保されていることを前提に、人員基準を柔軟に扱う
研修で何を学ぶのか
報告書の概要は、研修の土台として、支援者に共通する基本姿勢を5つ、専門性の要素を9領域に整理しています。基本姿勢は、利用しているこども・若者や子育て当事者へのヒアリングを反映して作られました。
| 区分 | 中身 |
|---|---|
| 基本姿勢(5つ) | 尊重し合いながら、ともに生きる/想いに寄り添い、ともに支え合う/支援をともにつくる/安心できる場をともに育てる/ともに学び合い、ともに育ち合う |
| 専門性の9領域 | 対人支援における倫理的姿勢/自己理解と省察/こどもの理解に基づく支援/計画と評価に基づく支援の実践/家族支援/地域支援・地域連携/チームアプローチ/虐待予防・対応/相互理解・相互支援 |
| カリキュラムの6カテゴリー | 障害児支援に従事する支援者として/本人支援/家族支援/地域支援・地域連携/制度理解/組織マネジメント |
出典:同資料p.5「障害児支援における人材育成に関する検討会報告書〜概要①〜」
やり方も決まった形があります。基礎・実践研修は全科目を動画で受講できるようにし、講義の前後に「受講者自身の振り返り」と「上司や先輩職員との対話」を置くのが基本です。1科目は講義前・講義・講義後を合わせて約60〜90分を想定しています。
事業所の負担はどこに来るか
基礎・実践研修の実施主体は「事業者」です。報告書は、事業所の中だけで行うことに限らず、国の標準カリキュラムに沿って事業者団体や児童発達支援センターが行うなど、柔軟な運用を認めるとしています。
個人的に気になったのは、講義そのものより前後の時間です。動画を見るだけなら各自で進められますが、「上司や先輩との対話」は相手の時間も取ります。(Ⅰ)を入職後半年までに7科目終えるなら、受け入れる側の職員のシフトにも予定を入れておく必要がありそうです。
運営基準に入れば、受講したかどうかを記録で示す場面も出てきそうです。虐待防止や身体拘束適正化のように、すでに義務になっている研修と同じく、誰がいつ何を受けたかを一覧で残しておくと後で困りません。法定研修の記録の残し方は虐待防止研修の進め方をまとめた記事にも書いています。同じ資料の加算の統合案と休暇時の人員配置の論点は、10月5日の記事で表にしています。
②個別支援計画はチームで作る案、他の職員と協働している児発管は80.8%
検討中計画の作成責任は児童発達支援管理責任者に残したまま、原案づくりの一部を一般職員も担えることをはっきりさせる案です。
調査の数字と、示された方向性
同じ資料の「論点2」は、個別支援計画の作り方です。根拠に使われたのは、令和7年度子ども・子育て支援等推進調査研究事業「児童発達支援管理責任者等の実態把握及び質に関する調査研究」(令和8年3月)で、計画づくりで他の職員と協働しているかを児発管に聞いています。
| 回答 | 人数 | 割合 |
|---|---|---|
| 協働している | 4,984 | 80.8% |
| 協働していない(全てのプロセスを児発管のみが担っている) | 1,162 | 18.8% |
| 無回答 | 24 | 0.4% |
人材育成のために行っている場合も含む。計画作成の会議で職員に意見を求めることは除いている。出典:同資料p.10
資料は、協働している場合のほうが、丁寧な計画作成プロセス、業務時間の確保、支援の実現度、人材育成などで良好な傾向があったとしています。そのうえで「検討の方向性」として、次の2点の明確化を挙げました。
- 作成責任は引き続き児発管が担い、児発管は作成プロセス全体を管理し、計画内容を確認する責任を持つ
- アセスメントに役立つ情報の整理や、支援目標・具体的な支援内容の提案など、原案作成プロセスの一部は一般職員も担える
日々の観察が計画に入る道ができる
今の仕組みでも、児発管の基礎研修修了者は、実践研修を受けるまでの間、指導の下で計画原案の作成などに従事することになっています。今回の案は、それを児発管の研修中の人に限らず、一般の職員にも広げる形です。
個人的には、①の研修と同じ資料の中で並んでいる点が大事だと感じています。9領域には「計画と評価に基づく支援の実践」と「チームアプローチ」が入っていて、研修で学ぶ中身と、計画づくりへの関わり方がつながるように組まれています。日々の記録に「何を見て、次に何を試したいか」まで書いておくと、原案づくりに参加するときの材料になります。
③居宅介護に意思疎通の加算を、全日本ろうあ連盟など6団体が10月7日に要望
要望手話などでのやり取りに時間がかかる訪問を、居宅介護の報酬で評価してほしいという要望です。国の案ではありません。
要望書に書かれていること
全日本ろうあ連盟は10月11日、厚生労働大臣あての要望書「きこえない・きこえにくい者の権利保障への要望について」(連本第260282号)を10月7日に提出したと公表しました。提出したのは同連盟、全国手話通訳問題研究会、全国聴覚障害者情報提供施設協議会、全国高齢聴覚障害者福祉施設協議会、全国ろう重複障害者施設連絡協議会、全国ろうあヘルパー連絡協議会の6団体です。
報酬にかかわる項目を抜き出すと、次のとおりです。
| 対象 | 要望の中身 |
|---|---|
| 居宅介護(障害福祉) | 「視覚・聴覚・言語障害者支援加算(仮称)」の創設。案Aは訪問1回ごとの定額、案Bは時間で段階を分ける(15分以上30分未満/30分以上45分未満/45分以上を例示) |
| 相談支援事業 | 「視覚・聴覚言語障害者支援体制加算」の創設 |
| 障害福祉サービス全般 | ピアサポート実施加算を全サービスに広げ、報酬単価を改善 |
| 介護保険(特養など) | 「障害者生活支援加算」を51単位/日に引き上げ。短期入所事業にも適用 |
| 聴覚障害者情報提供施設 | 委託費に人事院勧告を反映し、職員の処遇を改善 |
出典:全日本ろうあ連盟「厚生労働省にきこえない・きこえにくい者の権利保障に関する要望書を提出」(2026年10月11日掲載)
根拠として、要望書は次の数字を挙げています。
| 項目 | 数字 |
|---|---|
| 5事業所の訪問のうち、意思疎通のために手が止まった時間 | 390分中152分(39.0%) |
| 愛知県の1件の訪問での意思疎通の時間 | 105分中59分(56.2%) |
| 雇用されている手話通訳者の平均年齢 | 57.2歳 |
| 手話通訳者の非正規雇用の割合 | 81% |
| 人事院勧告が委託費に反映されないと答えた情報提供施設 | 72.3% |
訪問の時間の4割が「伝えること」に使われている
390分中152分という数字は、家事や身体介護の手を止めて、手話や筆談で確認している時間です。今の居宅介護の報酬は、その時間を「サービスの時間」としてどう数えるかがはっきりしていない、というのが要望の出発点です。
障害福祉の報酬改定は、検討チームで訪問系の論点が9月24日に出ています(訪問系の8つの論点はこちら)。今回の要望がこれからの議論に入るかどうかは、まだ分かりません。きこえない利用者を受けている事業所なら、訪問記録に意思疎通にかかった時間を分けて書いておくと、自分の事業所の実態を説明する材料になります。
④ケアマネ試験、第29回は10月11日に実施。合格発表は11月24日の予定
実施済み令和8年度の介護支援専門員実務研修受講試験が行われました。結果が出るのは11月24日(火)の予定です。
試験の概要
東京都の試験実施機関(東京都福祉保健財団)の案内では、試験の中身は次のとおりです。
| 試験日 | 令和8年10月11日(日)午前10時開始 |
| 試験時間 | 120分(点字受験者は180分、弱視等受験者は156分) |
| 問題数 | 60問(介護支援分野25問、保健医療福祉サービス分野35問) |
| 合格発表 | 令和8年11月24日(火)予定 |
出典:東京都福祉保健財団「介護支援専門員実務研修受講試験」案内ページ。合格基準はこのページに記載がないため載せていません。
発表までの6週間
合格しても、すぐにケアマネジャーとして働けるわけではありません。名前のとおりこの試験は「実務研修」を受けるための試験で、合格後に実務研修を修了して登録する流れです。
職場から受験した人がいる事業所は、11月24日の結果を待って、実務研修の日程と勤務の組み方を相談する時期になります。実務研修の日程は都道府県ごとに違うので、合格発表と一緒に出る案内を確かめてください。
今日のまとめ
4件を並べると、どれも「人の時間をどこに数えるか」という話でした。①は研修の時間、②は計画づくりに一般職員がかける時間、③は訪問のうち伝えることに使う時間です。④も、合格したあとの実務研修の時間を職場がどう確保するか、という話につながります。
①②は令和9年度の報酬改定に向けた案なので、ここから要件や単位数の形に進みます。研修の受講記録と、計画づくりに誰が関わったかの記録は、今のうちから残しておくと動きやすいはずです。
次に見ておきたい日程です。
- 2026年11月24日(火)……第29回ケアマネ試験の合格発表(予定)
- 2027年4月(令和9年度)……障害児支援の「基礎・実践研修」導入予定(資料上の予定)
- 令和10年度……「リーダー研修」導入予定
- 令和11年度……「コア人材研修」導入予定
今週の報酬改定の動きをまとめて見たいときは、10月10日の今週のまとめからどうぞ。
参考にした一次情報
- 第65回「障害福祉報酬改定検討チーム」資料|厚生労働省(令和8年10月5日)
- 資料「障害児支援に係る報酬・基準について≪論点等≫」(PDF)|厚生労働省・こども家庭庁(令和8年10月5日)
- 厚生労働省にきこえない・きこえにくい者の権利保障に関する要望書を提出|全日本ろうあ連盟(令和8年10月11日掲載)
- 介護支援専門員実務研修受講試験|東京都福祉保健財団
①の基礎・実践研修と②の個別支援計画のチーム協働は、検討チームに示された「検討の方向性」の段階です。資料の書き方も「〜を検討してはどうか」で、今後の議論で変わり得ます。③は団体の要望で、国が示した案ではありません。最終的な取り扱いは公表資料でご確認ください。


