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障害福祉
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障害福祉の感染症対策【2026年版】インフル・コロナ・ノロなど28疾患の基礎と障害特性別の具体策|放デイ・GH・生活介護

障害福祉の感染症対策の記事のアイキャッチ。水彩画の洗面所と窓辺の緑に、「感染症対策 障害福祉で、何をどう防ぐか」「障害福祉版 28疾患・特性別の具体策・嘔吐物処理」の文字
ユイン
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感染症対策のマニュアルを探すと、出てくるのは高齢者施設向けの資料ばかりです。特別養護老人ホーム、ユニット、ベッド上でのおむつ交換、入所者の個室隔離。読み進めるほど「うちの事業所では、これはできない」という項目が増えていきます。

障害福祉の現場で感染対策がうまくいかない理由は、知識不足ではありません。前提が違うからです。マスクを着けられない人がいる。手洗いが自立していない人がいる。介助そのものが濃厚接触で、距離を取れば支援が成立しない。熱があっても言葉で訴えない人がいる。個室がなく、ゾーニングという言葉が成り立たない事業所もあります。

この記事は、感染症そのものを1つずつ知ったうえで、障害福祉の現場でどう対策するかをまとめたものです。インフルエンザとは何か、新型コロナウイルス感染症とは何か、ノロウイルスとは何か。潜伏期間はどれくらいで、いつがいちばん人にうつるのか、何で消毒が効くのか。そのうえで、マスクができない人にどうするか、咬みつきがある人の血液をどう扱うか、ゾーニングができない事業所は何で代わりにするのか。

根拠は省令・厚生労働省の資料・こども家庭庁のガイドライン・自治体の集団指導資料に限り、出典を明記しました。委員会や研修の進め方は別の記事で扱っているので、この記事では要点だけ触れます。

この記事でわかること
  • 高齢者施設の資料を流用するとどこで止まるのか(5つのズレ)
  • 感染の3つの経路と、対策の3つの柱。何をすればうつらないのか
  • インフルエンザとは何か|潜伏期間・いちばんうつる時期・障害福祉での注意点
  • 新型コロナウイルス感染症とは何か|5類になってからの実務
  • ノロウイルス・ロタウイルスとは何か|アルコールが効かない理由
  • 冬の呼吸器感染症(RS・マイコプラズマ・百日咳・溶連菌)と夏の感染症
  • ワクチンで防げる感染症(麻しん・風しん・水痘・おたふくかぜ)と職員の抗体
  • 疥癬・アタマジラミ・とびひ|集団発生しやすい皮膚と頭髪の感染症
  • 見落とされやすい結核・B型肝炎・O157
  • 感染症別早見表28疾患(潜伏期間・経路・感染しやすい期間・再開のめやす・有効な消毒)
  • 障害特性別の具体策(マスク・手洗い・異食・咬みつき・医療的ケア・訴えの少なさ)
  • 放デイ/GH/生活介護・就労の類型別の弱点と手当て
  • 平常時のチェックリストと消毒薬の使い分け表(濃度と希釈のしかた)
  • 嘔吐・下痢が出たときの15ステップと処理セットの中身
  • 発生時の最初の24時間と、行政への報告が必要になる3つの基準
  • ゾーニングができない事業所の代替4手、職員の出勤基準、備蓄リスト
Contents
  1. 高齢者施設のマニュアルが障害福祉で止まる、5つのズレ
  2. 基本の基本|感染の3つの経路と、対策の3つの柱
  3. その前に|「利用を断る基準」は誰が決めるのか
  4. インフルエンザとは何か|障害福祉での注意点と対策
  5. 新型コロナウイルス感染症とは何か|5類移行後の実務
  6. ノロウイルスとロタウイルスとは何か|障害福祉で最も怖い感染症
  7. 冬の呼吸器感染症|RSウイルス・マイコプラズマ・百日咳・溶連菌
  8. 夏に多い感染症|手足口病・ヘルパンギーナ・プール熱・はやり目
  9. ワクチンで防ぐ感染症|麻しん・風しん・水痘・おたふくかぜ
  10. 皮膚と頭髪の感染症|疥癬・アタマジラミ・とびひ・水いぼ
  11. 見落とされやすい3つ|結核・B型肝炎・腸管出血性大腸菌
  12. 【早見表】感染症28の潜伏期間・経路・再開のめやす・効く消毒
  13. 障害特性別の具体策|マスク・手洗い・異食・咬みつき・医療的ケア
  14. サービス類型別の弱点|放デイ・児発/GH/生活介護・就労
  15. 平常時にやることの全部|健康観察・換気・消毒
  16. 標準予防策を「支援の手順」に落とす|手洗いと防護具
  17. 嘔吐・下痢が出たときの15ステップ|現場でいちばん使う手順
  18. 発生したときの最初の24時間|時間軸で決めておく
  19. ゾーニングができない事業所の代替4手
  20. 職員の健康管理|「休める」を仕組みにする
  21. 備蓄リスト|品目と数量の目安
  22. 制度の器|委員会・指針・研修・BCPの要点だけ
  23. よくある質問
  24. まとめ|今日決められる3つ
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高齢者施設のマニュアルが障害福祉で止まる、5つのズレ

最初にここを押さえてください。手順を決める前に何が違うのかをはっきりさせておかないと、「守れないルール」が並んだマニュアルができあがります。守れないルールは、誰も読まなくなります。

ズレ①:マスクを「着けさせる」前提が成り立たない

高齢者施設向けの資料は、利用者がマスクを着用できることを前提に書かれています。障害福祉では、感覚過敏で布が顔に触れることに耐えられない人、意味が伝わらない人、着けても数秒で外す人がいます。ここで「全員着用」と書いたマニュアルを作ると、初日から守れません。

厚生労働省の感染対策マニュアルも、この点は現実的です。マスクの装着が困難な利用者には手洗いと消毒の頻度を上げ、距離を取るという代替でリスクを下げる、そして職員がしっかりマスクをすることが重要だと書かれています。着けられない人を責める設計ではなく、周囲で守る設計にする、という考え方です。

マスクの装着が困難な利用者には、消毒や手洗いを頻繁に実施、距離をとるようにするなどの対応をしてもらうことで、感染リスクを低減するように心がけました。職員がしっかりとマスクをし対応することが重要です。

厚生労働省「障害福祉サービス施設・事業所職員のための感染対策マニュアル(通所系)」令和2年12月 p6

ズレ②:手洗いが「本人の習慣」ではなく「支援項目」になる

「こまめに手を洗いましょう」という一文で済むのは、本人が自分で洗える場合だけです。障害福祉では、手洗いが介助を伴う支援項目になります。誰が、どのタイミングで、どこまで介助して、どう確認するのか。これを決めていない事業所では、手洗いの回数と質が職員ごとにばらつき、対策として機能しません。

ズレ③:距離を取れない。介助そのものが濃厚接触である

食事介助、排泄介助、入浴介助、移乗、吸引。これらは「1メートル以内で長時間」を毎日繰り返す行為です。生活介護や施設入所支援では、距離の確保という対策が最初から使えません。だから障害福祉では、距離ではなく標準予防策と個人防護具で守ることが中心になります。ここを取り違えると、換気と距離だけを書いたマニュアルができます。

ズレ④:症状が言葉で出てこない

「のどが痛い」「気持ちが悪い」と言える人ばかりではありません。代わりに出るのは、不機嫌・食事を残す・寝てしまう・自傷が増える・いつもの活動を嫌がるといった行動の変化です。これを「今日は機嫌が悪い」で処理すると、発熱の発見が半日から1日遅れます。障害福祉の健康観察は、体温だけでなくいつもの状態からのずれを拾う設計にする必要があります。

ズレ⑤:外とつながる線が多い

放課後等デイサービスの利用者は、学校で過ごしてから来ます。児童発達支援では保育所や幼稚園と併行通園しています。グループホームの入居者は日中は別の事業所に通い、休日は帰省します。就労系なら企業実習や納品先があります。

つまり持ち込みの経路が、入所型の高齢者施設より多い。学校で流行が始まった数日後に事業所で出る、という順番になります。だから障害福祉では、学校・保育所・日中活動先・家族からの情報が、対策の入口になります。

この5つを、手順にどう落とすか
  • マスクは「着けられる人は着ける・着けられない人は周囲が着ける」と書き分ける
  • 手洗いは「誰がいつ介助するか」までタイミングを列挙する
  • 距離が取れない場面は「この場面ではこの防護具」の対応表にする
  • 健康観察に「いつもと違う行動」の欄を作る
  • 学校・併行通園先・日中活動先の流行情報を受け取る窓口を決める

基本の基本|感染の3つの経路と、対策の3つの柱

感染症の3つの感染経路(空気感染・飛沫感染・接触感染)と、それぞれに効く対策を比較した図。障害福祉では距離が取れないため標準予防策と防護具で守る

個別の感染症に入る前に、ここを押さえると全部がつながります。感染症の対策は、突き詰めると「どうやって人から人に移動するのか」を断つことだけです。移動のしかたは3通りしかありません。

3つの感染経路|経路が分かれば、対策が決まる

経路 どう移動するか 主な病原体 有効な対策
空気感染
(飛沫核感染)
口や鼻から出た病原体が、小さな粒になって空中を漂う。同じ空間にいるだけで吸い込む 結核菌、麻しんウイルス、水痘ウイルス 職員はN95等の高性能マスク。感染者はドアを閉めた個室でサージカルマスク。十分な換気。ワクチンで防ぐのが本筋
飛沫感染 咳・くしゃみ・会話で飛んだしぶきを、近くの人が吸い込む。しぶきは1メートルほどで落ちる インフルエンザ、新型コロナウイルス、風しん、おたふくかぜ、RSウイルス、マイコプラズマ 利用者・職員のマスク着用、換気、共用部分の消毒、密を避ける
接触感染 感染者や汚染された物にふれた手で、自分の目・鼻・口・傷口をさわる ノロウイルス、ロタウイルス、疥癬、耐性菌(MRSA等)、新型コロナウイルス、アデノウイルス 手洗いと手指消毒、ケアごとの手袋交換、器具の個人専用化、共用物の消毒

障害福祉の現場でいちばん多いのは接触感染です。理由は単純で、手をつなぐ、抱える、口元をふく、同じおもちゃや道具を使う、という場面が多いからです。そして接触感染に対していちばん効くのが手洗いです。

対策の3つの柱

  1. 病原体(感染源)の排除。嘔吐物、排泄物、血液などの体液(汗を除く)、使用した器具は感染源になりうるものとして扱い、消毒・廃棄で取り除く
  2. 感染経路の遮断。「持ち込まない」「拡げない」「持ち出さない」の3つ。出入りする全員の手洗い・手指消毒、ケアごとの手袋交換、流行状況に応じた来訪者の制限
  3. 宿主の抵抗力の向上。十分な栄養と睡眠、そして予防接種であらかじめ免疫を持っておくこと

3つ目を軽く見ないでください。麻しんや水痘のように免疫がなければほぼ100%感染する病気は、手洗いや換気では止まりません。職員の予防接種歴の把握が、そのまま対策になります。

障害福祉で、この3本柱がずれる点
  • ①感染源の排除:唾液が感染源になる場面が多い(よだれ、咬みつき、食具の共用、口に入れる行動)。高齢者施設の想定より頻度が高い
  • ②経路の遮断:「持ち込まない」の入口が学校・保育所・日中活動先・家族と多方向。事業所の玄関だけを固めても足りない
  • ③抵抗力:利用者の予防接種歴を事業所が把握しているか。医療的ケア児・重症心身障害の方は重症化リスクが高く、周囲の免疫が本人を守る

ウイルスを持ち込まないこと/ウイルスを拡げないこと/ウイルスを持ち出さないこと。施設に出入りする際の手洗いや手指消毒の徹底(職員に限らず出入りする人の全員)や、手袋や個人防護具をケアごとに取り替えることが大切です。

厚生労働省「障害福祉サービス施設・事業所職員のための感染対策マニュアル(通所系)」令和2年12月 p4

その前に|「利用を断る基準」は誰が決めるのか

個別の感染症の話に入る前に、ここを整理しておきます。毎年もめる論点です。

学校や保育所には出席停止・登園のめやすがあります。学校保健安全法施行規則で「インフルエンザは発症した後5日を経過し、かつ解熱した後2日を経過するまで」などと定められており、保育所はそれに準じたガイドラインを持っています。

一方、放課後等デイサービスや児童発達支援は学校でも保育所でもありません。出席停止を命じる法的な仕組みはありません。生活介護やグループホーム、就労系も同じで、成人のサービスに出席停止の制度はありません。

では何を使うのか。答えは「事業所が自分で目安を決めて、指針に書き、家族に事前に伝えておく」です。そのときの物差しとして、学校保健安全法施行規則の基準と保育所のガイドラインを準用するのが実務上もっとも説明しやすい方法です。

利用再開の目安を決めるときの3原則
  • 学校・保育所より厳しくしない。学校に行けるのに放デイは来られない、という基準は説明がつきません(就学児は学校の指示が先に来ます)
  • 医師の診断書・意見書を必須にしない。費用と受診の負担が家族にかかります。保護者記入の「登園届」に相当する様式を自作するのが現実的です
  • あらかじめ紙で渡しておく。発熱した日に電話で初めて伝えると、必ずトラブルになります。契約時と流行期前に配ります
感染の懸念を理由に、適切な感染対策をしているのに必要なサービスを制限することは不適切とされています。断る場合は、理由・期間・代替手段(相談支援事業所への情報提供、居宅介護等の訪問系サービスの検討)を記録に残してください。

インフルエンザとは何か|障害福祉での注意点と対策

毎年冬に流行する、インフルエンザウイルスによる感染症です。ただの風邪と決定的に違うのは「突然」の高熱で始まることと、合併症の重さです。

どんな病気か|数字で押さえる

項目 内容
病原体 インフルエンザウイルス(A型・B型が流行の主体)
潜伏期間 1〜4日
感染経路 主に飛沫感染。接触感染することもある
症状 突然の高熱が3〜4日続く。倦怠感、食欲不振、関節痛、筋肉痛などの全身症状と、咽頭痛・鼻汁・咳などの気道症状
経過 通常1週間程度で回復。気管支炎、肺炎、中耳炎、熱性けいれん、急性脳症などの合併症が起こることもある
いちばんうつる時期 症状がある期間。とくに発症前24時間から発病後3日程度が最も感染力が強い
利用再開の目安 発症した後5日を経過し、かつ解熱した後2日を経過していること(乳幼児は3日)

実務でいちばん重要な数字は「発症前24時間から」です。熱が出る前の日から、もう人にうつしています。つまり「熱が出た人を帰す」対策だけでは、必ず後手になります。前日に一緒に過ごしていた人がすでに感染しているからです。

だから対策は2本立てになります。①熱が出た人への対応と、②その人が前日に接触した範囲の健康観察を強めること。②を飛ばす事業所が多いです。

障害福祉で、インフルエンザがここで広がる

  • 送迎車。密閉空間で20〜30分、定員いっぱい。飛沫感染に最も好都合な場所です。窓を開け、座席を固定し、発症者が出たら同じ便の全員を健康観察の対象にします
  • 発熱に気づかれない。「いつもより静か」「活動に乗ってこない」だけで、高熱が出ていることがあります。行動の変化があったら検温する、を手順にします
  • 解熱剤で熱が下がった状態での来所。家族が朝に解熱剤を使うと、来所時の検温では拾えません。「解熱剤を使ったか」を確認する欄を健康チェック表に作ります
  • 発熱中の異常行動。インフルエンザでは、抗インフルエンザ薬の服用の有無や種類にかかわらず、急に走り出すなどの異常行動が報告されています。厚生労働省は少なくとも発熱から2日間は小児・未成年者から目を離さないよう求めています。家族への伝達事項に入れておきます
  • 職員から利用者へ。職員は「まだ動ける」段階で出勤しがちです。発症前日からうつることを踏まえると、職員の予防接種と、休める体制のほうが効果があります

対策|この5つを決めておく

  1. 職員の予防接種を事業所として推奨し、費用の一部補助を検討する。接種歴を名簿で把握する(強制はできません)
  2. 送迎車の換気を数値で決める(例:走行中は対角の窓を5センチ開ける、10分ごとに全開で1分)。寒さの訴えが出るため、ひざ掛けを常備しておく
  3. 発症者が出たら、同じ送迎便・同じ活動グループを7日間の重点観察にする(潜伏期間1〜4日+余裕)
  4. 共用物の消毒を1日2回、決まった時間に。ドアノブ、手すり、スイッチ、机、共用のおもちゃや道具。消毒用エタノールが有効です
  5. 家族への連絡文を作っておく。「同じ事業所で発症者が出ました」という定型文を用意しておくと、発生時に迷いません(個人が特定できる書き方は避ける)

新型コロナウイルス感染症とは何か|5類移行後の実務

令和5年5月に感染症法上の位置づけが5類感染症になり、一律の行動制限や濃厚接触者の特定はなくなりました。ただし病気自体が消えたわけではなく、いまも季節を問わず流行の波が来ます。障害福祉の事業所としては「特別扱いはやめる、でも対策は残す」という整理になります。

どんな病気か|数字で押さえる

項目 内容
病原体 SARS-CoV-2(新型コロナウイルス)
潜伏期間 かつては約5日・最長14日とされていたが、オミクロン株以降は短縮傾向で中央値は約3日
感染経路 飛沫感染、エアロゾル感染、接触感染
症状 発熱、咳・咽頭痛・鼻汁などの呼吸器症状、頭痛、倦怠感、嗅覚や味覚の異常など。いつもの健康状態とは違う多様な症状が出る
いちばんうつる時期 発症後5日間
利用再開の目安 発症した後5日を経過し、かつ症状が軽快した後1日を経過すること(無症状の場合は検体採取日を0日目として5日を経過するまで)
「症状が軽快」とは 解熱剤を使わずに熱が下がり、かつ咳などの呼吸器症状が改善傾向にあること

インフルエンザとの違いで押さえておきたいのは環境中に残っている時間が長い点です。そのため、手が触れる場所の環境消毒の比重が相対的に大きくなります。

新型コロナウイルス感染症は、環境中における残存時間がインフルエンザウイルスに比べて長いため、しっかりと環境消毒(多くの人の手が触れるところなど)をすることが重要になります。

厚生労働省「障害福祉サービス施設・事業所職員のための感染対策マニュアル(通所系)」令和2年12月 p11

障害福祉で、ここに注意する

  • 重症化リスクが高い利用者がいる。医療的ケアが必要な方、重症心身障害の方、基礎疾患のある方。同じ事業所に「軽く済む人」と「重くなる人」が混在しているのが障害福祉の特徴です
  • 症状が多様なので、行動の変化から入る。嗅覚や味覚の異常は自分で訴えられないと分かりません。「急に食べなくなった」「においの強いものを嫌がるようになった」は手がかりになります
  • 濃厚接触者の特定はもう行われない。だから事業所が自分で「接触の範囲」を把握する必要があります。日々の座席表・活動グループ・送迎便の記録が、そのまま使えます
  • 5類だから何もしない、にしない。逆に、コロナ禍の緊急対応をそのまま続けるのも違います。面会・行事・外出を止め続けることは、心身機能の低下という別の不利益を生みます
  • 「制限」から「工夫してできること」へ。厚生労働省のマニュアルも、あれもダメこれもダメではなく、対策と工夫によって可能なことを一緒に考える姿勢を求めています

対策|5類後にやめたこと・残すこと

項目 判断 理由
毎日の検温と健康観察 残す コロナに限らず、すべての感染症の早期発見の土台になる
来所時・食事前後の手洗い 残す 接触感染への対策として、通年で意味がある
手が触れる場所の消毒 残す 1日1〜2回に頻度を戻してよい。時間を決めて担当を置く
換気 残す 冬も継続。室温18度以上・相対湿度40%以上を保てる範囲で
職員のマスク常時着用 見直す 流行期・ケア場面・有症者対応時に絞る。表情が見えないことの支援上の不利益も考える
利用者全員のマスク着用 見直す 着けられる人が流行期に着ける形へ。着けられない人を責める運用にしない
行事・外出・面会の全面中止 やめる 心身機能の低下と孤立という別の害が生じる。対策つきで再開する
アクリル板の常設 やめる 換気を妨げることがある。相談場面など必要な場面に限る
消毒薬の噴霧 やめる 吸い込むと有害で、効果も不確実。はじめから推奨されていない
最後の行は重要です。次亜塩素酸ナトリウム液や消毒用エタノールを空間に噴霧してはいけません。吸引すると有害で、効果が不確実であることから、厚生労働省のマニュアルでも行わないよう明記されています。消毒は「手袋をして、拭く」が原則です。加湿器に消毒薬を入れる、霧吹きで空間にまく、という使い方は今すぐやめてください。

ノロウイルスとロタウイルスとは何か|障害福祉で最も怖い感染症

消毒用エタノールが効くウイルスと効きにくいウイルスを比較した図。ノロウイルス・ロタウイルス・アデノウイルスには次亜塩素酸ナトリウムを使う

障害福祉の事業所で集団発生を起こしやすく、いちばん被害が大きくなるのが感染性胃腸炎です。理由は3つあります。①ごく少量のウイルスで感染する、②アルコール消毒が効きにくい、③症状が治まった後も長く排出が続く。この3つがそろっているため、普段の対策のままでは止まりません。

ノロウイルス|どんな病気か

項目 内容
潜伏期間 12〜48時間
感染経路 経口感染、飛沫感染、接触感染。乾燥してエアロゾル化した嘔吐物を介して空気感染(飛沫核感染)することもある
症状 吐き気、嘔吐、下痢、腹痛。発熱は軽いことが多い
いちばんうつる時期 症状のある間と、症状消失後1週間(量は減るが数週間排出が続く)
利用再開の目安 嘔吐・下痢などの症状が治まり、普段の食事がとれること
効く消毒 次亜塩素酸ナトリウム(汚染物の処理は0.1%=1,000ppm、環境は0.05%=500ppm)。消毒用エタノールは効きにくい
流行期 秋から冬(11月〜翌3月ごろ)が中心。ただし一年中発生する

注目すべきは「症状消失後1週間」です。元気になって普通に通ってきている人が、まだウイルスを出しています。だから「症状が治まったから対策終了」にすると、第2波が来ます。発生後2週間は、その利用者のトイレ介助とおむつ交換を厳重に扱ってください。

汚物処理が不十分な場合、容易に集団感染を引き起こす。感染者の便には、多くのウイルスが排出されている。また、嘔吐物の中にも多量のウイルスが含まれている。感染力が強く、乾燥してエアロゾル化した嘔吐物を介して、空気感染(飛沫核感染)することもある。

こども家庭庁「保育所における感染症対策ガイドライン(2018年改訂版・2023年5月一部改訂)」

ロタウイルス|どんな病気か

項目 内容
潜伏期間 1〜3日
感染経路 経口感染、接触感染、飛沫感染。10〜100個程度のごく少ないウイルス量でも感染する
症状 激しい嘔吐と、米のとぎ汁のような白色の水様便。脱水になりやすい
いちばんうつる時期 症状のある間と、症状消失後1週間
利用再開の目安 嘔吐・下痢などの症状が治まり、普段の食事がとれること
予防接種 乳児期の定期接種(経口ワクチン)がある。重症化を防ぐ効果が高い

こわいのは、十分に手を洗っても手や爪にウイルスが残っていることがあるとされている点です。手洗いを諦める理由ではなく、「手洗い+手袋+環境の消毒」を重ねる理由です。1つの対策で止まる病気ではありません。

なぜアルコールが効きにくいのか

ノロウイルスやロタウイルスは、外側に脂の膜(エンベロープ)を持たない構造です。アルコールはこの膜を壊して働くため、膜のないウイルスには効きが悪くなります。だから次亜塩素酸ナトリウム(家庭用の塩素系漂白剤)を使います。

もう1つ重要なのは有機物に弱いことです。嘔吐物や下痢便そのものは有機物が豊富なため、薄めた消毒薬では効果が期待できません。先に拭き取り、それから消毒するという順番が決まっているのは、このためです。

障害福祉で、胃腸炎がここで広がる

  • トイレ介助とおむつ交換。障害福祉では回数が多く、介助者の手が便に近づきます。手袋に加えてマスク・使い捨てエプロンを着け、ケアごとに交換します
  • 「吐いた」ことを言えない。トイレや洗面所で吐いて、そのまま流して戻ってくる利用者がいます。トイレの床や壁に少量の付着が残り、乾いてエアロゾル化します。床が濡れている・においがする、を見つけたら報告するを手順にします
  • 異食・床をなめる行動。感染源と接触する確率が跳ね上がります。この行動がある利用者がいる事業所では、床の消毒の優先度を上げてください
  • 食事介助と食具の共用。スプーンの持ち替え、味見、口元を拭いた手でそのまま次の人。ここで経口感染が起きます。1人の介助が終わったら手袋を替えるが原則です
  • 就労継続支援の調理・食品加工。パン・弁当・菓子などを扱う事業所では、利用者も職員も食品を取り扱う立場になります。嘔吐や下痢がある間は調理作業から外す運用を、あらかじめ文書で決めておきます
  • グループホームの共用部。トイレ・浴室・洗面台・洗濯機を共用しているため、1人の発症が全員に届きます。夜勤1人の時間帯に吐かれたときの手順を決めておくかどうかで、結果が変わります
  • 脱水に気づきにくい。水分摂取の訴えが出ない人、飲み込みに課題がある人は脱水に進みやすいです。唇や舌の乾き、尿が半日以上出ない、尿の色が濃い、を観察項目に入れます

対策|この6つを決めておく

  1. 嘔吐物処理セットを、使う場所の近くに複数置く。事務所に1つだけでは間に合いません。トイレ、プレイルーム、送迎車に置きます(中身は後述)
  2. 次亜塩素酸ナトリウムの希釈を、計量しないでできる形にする(ペットボトルのキャップで何杯、と貼り紙にする)
  3. 「吐いた」の第一報を誰に入れるかを決める。処理する人と、他の利用者を別室に誘導する人の2役に分ける
  4. 症状が治まってから2週間は、その人の排泄介助を厳重にする。記録に「重点期間」と書いて期限を明示する
  5. 調理・食品加工作業からの一時的な除外基準を文書化する(本人・家族への説明文もセットで)
  6. 手洗いは流水と石けんを基本にする。胃腸炎の流行期は、アルコールだけで済ませない

冬の呼吸器感染症|RSウイルス・マイコプラズマ・百日咳・溶連菌

インフルエンザとコロナの陰に隠れますが、障害福祉では見逃せない4つです。とくにRSウイルスは、重症心身障害の方や医療的ケアが必要な方にとって重い病気になります。

RSウイルス感染症

項目 内容
潜伏期間 4〜6日
感染経路 飛沫感染、接触感染
症状 発熱、鼻汁、咳。乳児や基礎疾患のある人では気管支炎・肺炎に進み、呼吸が苦しくなる
いちばんうつる時期 呼吸器症状のある間
利用再開の目安 呼吸器症状が消失し、全身状態が良いこと

この病気でとくに注意したいのは、大人と年長児は「ただの鼻風邪」で済んでしまうことです。2歳以上で再感染した場合、軽い咳や鼻汁程度で普通に通ってきます。保護者や職員が感染することもあります。そしてその人が感染源になって、重症化しやすい人にうつります。

障害福祉での注意点

  • 重症心身障害・医療的ケアのある方がいる事業所では、職員の軽い鼻風邪を軽く扱わない。ここが最大の注意点です
  • 吸引・吸入・経管栄養の場面は飛沫が飛ぶ処置として扱い、マスクに加えて必要に応じてゴーグルやフェイスシールドを使います
  • 鼻汁を拭いたティッシュの扱いを決める(すぐ密閉して捨てる、拭いた手はその場で消毒する)
  • おもちゃ・スイッチ・コミュニケーション機器など、口や手が直接触れる物の消毒を活動の終わりに組み込む

マイコプラズマ肺炎

項目 内容
潜伏期間 2〜3週間(長い)
感染経路 主に飛沫感染。家族内感染や再感染も多い
症状 発熱と、長く続く咳。熱が下がってからも咳が数週間続くことがある
いちばんうつる時期 適切な抗菌薬治療を開始する前と、開始後数日間
利用再開の目安 発熱や激しい咳が治まっていること

潜伏期間が2〜3週間と長いため、発生源の特定がほぼできません。「あの日の活動で広がった」という追跡は成り立たないので、咳が長引く人がいたら受診を勧める、という平常運転のほうが効きます。咳が残っている段階での利用は、咳エチケットを確認したうえで受け入れて構いません。

百日咳

項目 内容
潜伏期間 7〜10日
感染経路 飛沫感染、接触感染
症状 特有の激しい咳の連続。息を吸うときに笛のような音が出ることがある。乳児では重症化し、無呼吸を起こすことがある
いちばんうつる時期 抗菌薬を服用しない場合、咳が出てから3週間
利用再開の目安 特有の咳が消失していること、または適正な抗菌薬による5日間の治療が終了していること

ポイントは「抗菌薬を飲まないと3週間うつす」ことです。咳が長引いている利用者や職員には、受診を強く勧めるのが唯一の近道になります。定期接種(五種混合ワクチン等)の対象疾患なので、乳幼児の接種歴の確認も予防になります。

溶連菌感染症(A群溶血性レンサ菌)

項目 内容
潜伏期間 2〜5日(とびひの形をとる場合は7〜10日)
感染経路 飛沫感染、接触感染。食品を介して経口感染する場合もある
症状 発熱、強い咽頭痛、いちご舌、体の発しん。合併症として腎炎やリウマチ熱がある
いちばんうつる時期 適切な抗菌薬治療を開始する前と、開始後1日間
利用再開の目安 抗菌薬の内服後24〜48時間が経過していること

障害福祉での注意点

  • のどの痛みを訴えられない人では、食事量の急な低下・よだれが増える・飲み込みを嫌がる、が手がかりになります
  • 抗菌薬は症状が消えても処方された日数を飲み切る必要があります。服薬支援をしている事業所では、途中でやめないことを家族と共有してください(合併症の予防のためです)
  • 食品を介した感染がありうるので、就労系の調理作業では手指の傷と皮膚の状態も確認します

夏に多い感染症|手足口病・ヘルパンギーナ・プール熱・はやり目

夏の感染症は「重くはないが、止められない」のが特徴です。とくに手足口病とヘルパンギーナは、休ませても広がりを止められないタイプなので、対応の考え方が冬の感染症と違います。

手足口病とヘルパンギーナ

項目 手足口病 ヘルパンギーナ
潜伏期間 3〜6日 3〜6日
感染経路 飛沫感染、接触感染、経口感染 飛沫感染、接触感染、経口感染
症状 手のひら・足の裏・口の中に水疱。発熱は軽いことが多い 突然の高熱と、口の奥の水疱・潰瘍。のどが痛くて食べられなくなる
うつる期間 最初の週の感染力が最も強い。回復後も飛沫や鼻汁から1〜2週間、便から数週〜数か月排出 急性期の数日間。便の中に1か月程度排出
利用再開の目安 発熱や口の中の水疱・潰瘍の影響がなく、普段の食事がとれること 同左

ガイドラインは、この2つについて感染拡大を防止するために登園を控えることは有効性が低く、ウイルスの排出期間が長いことからも現実的ではないとはっきり書いています。つまり、休ませることで止める病気ではありません。

障害福祉での注意点|「休ませる」より「食べられるか」

  • 判断の軸は感染力ではなく本人が食べられるかです。口の中が痛くて食べられない状態で受け入れると、脱水と体力低下のほうが問題になります
  • 痛みを言えない人ほど危ない。急に食事を拒む、飲み物だけ飲む、よだれが増える、機嫌が悪い。口の中を見る勇気が必要です
  • 便から長く排出されるため、おむつ交換とトイレ介助の手洗いが対策の中心になります。マスクや距離ではありません
  • 冷たくて刺激の少ない食事(ゼリー、冷ましたおかゆ、プリン)を用意できるよう、給食や調理の担当と共有しておきます

咽頭結膜熱(プール熱)と流行性角結膜炎(はやり目)

項目 咽頭結膜熱(プール熱) 流行性角結膜炎(はやり目)
潜伏期間 2〜14日 2〜14日
感染経路 飛沫感染、接触感染。プールの水を介することもあるが、接触感染のほうが多い 飛沫感染、接触感染。塩素消毒の不十分なプールの水、タオル等を介することもある
症状 発熱、咽頭痛、目の充血 強い目の充血、大量の目やに、まぶたの腫れ
利用再開の目安 発熱・充血などの主な症状が消失した後2日を経過していること 結膜炎の症状が消失していること
共通の注意 感染力が強いため、タオル等の共有は厳禁。アルコールが効きにくいアデノウイルスが原因なので、環境は次亜塩素酸ナトリウムで拭く

障害福祉での注意点|タオルと水遊び

  • 共用タオルを今すぐやめる。手拭きはペーパータオル、顔や体は個人のタオルに。これだけで夏の感染症の大半に効きます
  • 目をこする手が最大の経路です。目やにを拭いたら、拭いた人も本人も手を洗う。拭き取りはティッシュで1回ごとに捨てる
  • プール・水遊びをする事業所は、遊ぶ前の健康確認(発熱・目の充血・目やに・皮膚の状態)と、水の管理を決めておきます。おむつを使用している方のプール利用のルールも文書にします
  • 目の症状は本人が訴えないことが多いので、来所時に顔を見る習慣を作ります。片目から始まることが多く、朝の1回の観察で拾えます

ワクチンで防ぐ感染症|麻しん・風しん・水痘・おたふくかぜ

この4つは、手洗いや換気では止まりません。免疫がなければほぼ確実に感染する強さだからです。逆に言えば、予防接種歴の把握だけで対策のほとんどが終わります。障害福祉の事業所で優先度が高いのに、いちばん手つかずの領域です。

麻しん(はしか)|1人出たら事業所の問題になる

項目 内容
潜伏期間 8〜12日
感染経路 飛沫感染、接触感染、空気感染。感染力は非常に強く、免疫がない場合はほぼ100%の人が感染する
症状 高熱、咳、鼻水、結膜充血、目やに。いったん熱が下がりかけて再び上がり、口の中に白いぶつぶつ(コプリック斑)。その後、顔や首に赤い発しん。肺炎・中耳炎・熱性けいれん・脳炎を合併することがある
いちばんうつる時期 発症1日前から、発しんが出た後4日後まで
利用再開の目安 解熱後3日を経過していること
予防 麻しん含有ワクチン(MRワクチン)2回接種。接触後72時間以内の緊急接種で発症を防げる可能性がある

この病気だけは扱いが違います。空気感染するため、発症者を別室に移しただけでは広がりを止められません。だから「1人でも出たら、保健所と嘱託医に連絡して、全員の接種歴と罹患歴を確認する」という手順になります。

麻しんは空気感染するが、感染力が非常に強いため、発症者の隔離等のみにより感染拡大を防止することは困難である。このため、麻しん含有ワクチンの接種が極めて有効な予防手段となる。

こども家庭庁「保育所における感染症対策ガイドライン(2018年改訂版・2023年5月一部改訂)」

麻しんは近年、海外からの輸入例による小規模な集団発生が中心で、年間の発生数は100〜200例程度です。数が少ないからこそ、発生したときに現場が動けません。「麻しんの疑いと言われたら、まず保健所に電話する」だけ決めておいてください。

風しん・水痘・おたふくかぜ

項目 風しん 水痘(水ぼうそう) 流行性耳下腺炎(おたふくかぜ)
潜伏期間 16〜18日 14〜16日 16〜18日
感染経路 主に飛沫感染。接触感染も 飛沫感染または空気感染。免疫のない人はほぼ100%が感染 唾液を介した飛沫感染または接触感染
うつる期間 発しん出現の7日前から7日後くらい 発しん出現1〜2日前から、かさぶたになるまで 発症3日前から、耳下腺の腫れが出た後4日
再開の目安 発しんが消失していること すべての発しんがかさぶたになっていること 耳下腺・顎下腺・舌下腺の腫れが出てから5日を経過し、かつ全身状態が良好になっていること
要注意 妊娠初期の感染で胎児に重い影響。妊娠中の職員・家族への配慮が必要 成人がかかると重くなりやすい。一度かかると帯状疱しんとして後に出ることがある 症状のない感染でも唾液からウイルスを出す。難聴などの後遺症が残ることがある

障害福祉でやっておくこと|職員と利用者の「免疫の地図」

  • 職員の予防接種歴・罹患歴を採用時に確認する。麻しん・風しん・水痘・おたふくかぜの4つ。母子健康手帳か抗体検査の結果で確認します(本人の同意を得たうえで、健康情報として厳重に管理します)
  • とくに風しんは、昭和37年度から昭和53年度生まれの男性に抗体を持たない人が多い世代があります。該当する職員には、自治体の風しん抗体検査の案内を情報提供する形が無理のない進め方です
  • 妊娠中・妊娠の可能性がある職員には、風しんの発生時の勤務配慮をあらかじめ決めておきます。発生してから考えると間に合いません
  • 利用者の接種歴は、児童ならアセスメント時に母子健康手帳で確認できます。成人の場合は難しいことが多いので、「不明」を前提に、発生時は嘱託医に相談する流れにします
  • 強度行動障害のある方や重症心身障害の方は、発しんのかゆみを我慢できず掻き壊すことがあります。水痘では二次感染を招くため、爪を短くし、必要に応じて受診のうえ処置します

皮膚と頭髪の感染症|疥癬・アタマジラミ・とびひ・水いぼ

障害福祉で見落とされやすく、発見が遅れると集団発生になるのがこの4つです。とくに疥癬は、グループホームや入所施設で入居者の年齢が上がってくると現実的なリスクになります。

疥癬(かいせん)|2つの型で対応がまったく違う

項目 通常の疥癬 角化型疥癬(重症型)
原因 ヒゼンダニが皮膚の角層に寄生する
ダニの数 数十匹以下 100万〜200万匹
潜伏期間 約1か月(かゆみや皮しんが出るまで) 4日〜1週間程度
感染経路 長時間の直接接触(一緒に寝る、抱っこ、手をつなぐ)。寝具やリネンの共用でも 短時間の接触でも感染。衣類・寝具を介した間接接触、はがれ落ちた角質からも
症状 強いかゆみ(とくに夜間)。指の間、手首、わきの下、下腹部、そけい部に赤いぶつぶつ 手足や体に厚い灰色〜黄白色のかさぶた状の皮膚。かゆみは弱いこともある
対応 個室隔離は不要。治療と同時に、接触者の観察を1〜2か月続ける 原則1〜2週間の個室管理。リネン・タオル・ガウンを専用にする
リネン 通常の洗濯でよい 50度以上の湯に10分以上つける、または乾燥機で20〜30分処理

実務のポイントは2つです。1つは潜伏期間が約1か月と長いこと。発症者が出た時点で、すでに1か月前の接触が原因です。だから「今日から対策」では遅く、接触者の観察を1〜2か月続ける必要があります。

もう1つは過剰な対策で職員が疲弊しないこと。通常の疥癬に角化型疥癬の対策(全員個室、リネン全交換、消毒漬け)を持ち込むと、現場が持ちません。診断を確定させ、治療につなげ、角化型に進ませないことが集団感染対策の要点です。皮膚科の受診につなげてください。

障害福祉での注意点|かゆみを訴えられない人がいる

  • 「かゆい」と言えない人では、行動で出ます。夜眠れない、体を壁や床にこすりつける、同じ場所を掻き続ける、入浴を嫌がる。これを「こだわり」「自傷」として処理すると、疥癬を数か月見逃します
  • 入浴介助と更衣介助が発見の場です。指の間、手首の内側、わきの下、おなか、そけい部。ここを見る習慣を手順に入れます
  • グループホームで1人に強いかゆみが出たら、他の入居者と職員の皮膚も確認します。職員の手首や腹部に出ることもあります
  • 入所施設・GHでは入居時の皮膚の状態を記録に残す。後から「いつからか分からない」を避けられます

アタマジラミ症

項目 内容
潜伏期間 10〜30日(卵は約7日でかえる)
感染経路 頭髪の直接接触、頭を寄せ合うこと。寝具・タオル・帽子・水泳帽・クシ・ブラシ・ヘアゴム・体育マット・ロッカーの共用でも感染する
症状 頭のかゆみ。髪の毛の根元に灰白色の卵が付く(フケと違い、指でつまんでも取れにくい)
対応 専用のシャンプー等での駆除と、目の細かいクシでの卵の除去。寝具・衣類の洗濯と乾燥。利用を止める必要はない

障害福祉での注意点|「不衛生だから」ではない

  • 清潔と関係なく感染します。ここを職員が誤解していると、家族に責めるような伝え方をしてしまいます。伝え方のひな形を作っておくと事故を防げます
  • 放デイ・児発でリスクが高いのは、午睡・マット運動・帽子の共用・ロッカーの共用です。マットは個人用のタオルを敷く、帽子は共用しない、と決めます
  • 頭を寄せる遊びや、髪を触る関わりが好きな利用者がいる場合、集団の中で広がりやすくなります。発見したら、同じ活動グループの頭髪を確認します
  • 床に敷いた布団を隙間なく並べている環境はリスクが上がります(疥癬も同じ)。間隔を空けるだけで効果があります

伝染性膿痂しん(とびひ)と伝染性軟属腫(水いぼ)

項目 とびひ 水いぼ
潜伏期間 2〜10日(長い場合もある) 2〜7週
感染経路 接触感染。水ぶくれやかさぶたの浸出液に原因菌があり、掻きむしって傷を介して広がる。集団感染を起こすことがある 皮膚と皮膚の直接接触。中身の白い物質にウイルスがある。プールの水では感染しないが、タオル・浮き輪・ビート板を介することがある
対応 受診して治療。患部をガーゼ等で覆えば利用できる。プールは避ける 受診して相談。プールに入って構わない。タオル等の共用は避ける

障害福祉で重要なのは掻く行動が止まらない人への手当てです。虫刺されや湿しんを掻き壊してとびひになり、そこからさらに広がるという流れが典型です。爪を短く保つ支援、患部を覆う、かゆみ自体を受診で抑える。この3点セットで考えます。

見落とされやすい3つ|結核・B型肝炎・腸管出血性大腸菌

結核|グループホームの高齢化とともに現実味が増す

項目 内容
潜伏期間 3か月〜数十年。感染後2年以内、とくに6か月以内に発病することが多い
感染経路 主に空気感染
症状 2週間以上続く咳、痰、発熱、体重減少、食欲低下、寝汗。だるさだけのこともある
再開の目安 医師により感染のおそれがないと認められていること
対応 疑った時点で受診。診断されれば保健所が接触者健診を行う

障害福祉での注意点

  • 「2週間以上続く咳」を風邪で片づけない。これだけ覚えておけば十分です。利用者でも職員でも同じです
  • グループホームや生活介護では入居者・利用者の高齢化が進んでいます。若い頃に感染し、免疫が落ちて発病する例があります
  • 体重減少・食欲低下は、障害福祉では「偏食」「こだわり」で説明されがちです。体重を定期的に測り、記録に残しておくと変化が見えます
  • 発生したら保健所が主体で接触者健診を行います。事業所がやることは、名簿・勤務記録・活動記録をすぐ出せるようにしておくことです

B型肝炎|咬みつき・引っかきがある現場の必須知識

項目 内容
潜伏期間 急性感染では45〜160日(平均90日)
感染経路 血液の中にウイルスがある。血液が付着しただけではまず感染しないが、感染者の血液が他人の皮膚や粘膜の傷から体内に入ることで感染しうる。唾液・涙・汗・尿にもウイルスが存在し、感染源となりうる
予防 B型肝炎ワクチン(乳児期の定期接種。職業上の曝露リスクがある成人も接種可)

障害福祉での注意点|他害がある現場で決めておく手順

  • 咬みつき・引っかき・頭突きがある利用者への対応時は、エプロン・ガウン、ゴーグルやフェイスシールドの着用も検討すると、厚生労働省のマニュアルに明記されています。「気をつける」ではなく防護具の話です
  • 血液曝露が起きたときの手順を紙にしておく。①流水で洗い流す ②傷の程度を確認 ③管理者に報告 ④必要に応じて受診(曝露後の対応には時間的な猶予が限られます) ⑤記録。この5段階を貼り出します
  • 皮膚炎やアトピー、水痘、とびひなどの皮膚の病気がある場合、症状のある皮膚から出る血液や体液にもウイルスが含まれうるとされています。手や腕に傷のある職員は、絆創膏ではなく防水性のドレッシング材で覆います
  • 職員のB型肝炎ワクチンを、他害のリスクが高い事業所では検討する価値があります。強度行動障害のある方を支援する事業所では特にです
  • 利用者の感染症の有無を調べて対応を変える、という発想はとりません。全員に同じ標準予防策を当てるのが原則で、これは差別を防ぐ仕組みでもあります

腸管出血性大腸菌感染症(O157、O26、O111等)

項目 内容
感染経路 汚染された食品や水による経口感染、接触感染(ごく少量の菌で感染する)
症状 激しい腹痛、水のような下痢、血が混じった下痢。重症化すると溶血性尿毒症症候群(HUS)を起こし、命に関わる
再開の目安 医師により感染のおそれがないと認められていること(無症状の保菌者の場合、トイレでの排泄習慣が確立している5歳以上は登園の制限は不要。5歳未満は2回以上連続で便から菌が検出されなければ可)
対応 血が混じった下痢は即受診。自己判断で下痢止めを使わない

障害福祉での注意点|食中毒対策とひとつながり

  • 感染対策の義務は「感染症および食中毒の予防およびまん延の防止」です。委員会も指針も、食中毒を含めて作ります
  • おやつ・給食・調理活動・弁当の持参が発生源になりえます。加熱の確認(中心部75度で1分以上)、作ってから食べるまでの時間、夏場の持参弁当の保管。ここを決めます
  • 就労継続支援で食品を製造・販売している事業所は、食品衛生の管理が別枠で必要です。HACCPの考え方を取り入れた衛生管理と、従事者の健康チェックを回してください
  • 便に血が混じるという情報は、本人から出てきません。排泄介助をしている職員が気づく唯一の目です。「血が混じっていたら必ず報告」を明文化します
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【早見表】感染症28の潜伏期間・経路・再開のめやす・効く消毒

障害福祉事業所向けの感染症の季節カレンダー。夏は手足口病やプール熱、秋冬はインフルエンザとノロウイルス。流行期の前にやる準備を時期別に示した図

印刷して事務所に貼ることを想定した一覧です。「効く消毒」の列だけでも覚えてください。ここを間違えると、消毒した気になって広がります。

感染症 潜伏期間 主な経路 感染しやすい期間 利用再開のめやす 効く消毒
インフルエンザ 1〜4日 飛沫・接触 発症前24時間〜発病後3日が最強 発症後5日かつ解熱後2日(乳幼児3日) エタノール
次亜塩素酸
新型コロナウイルス感染症 約3日
(中央値)
飛沫・エアロゾル・接触 発症後5日間 発症後5日かつ症状軽快後1日 エタノール
次亜塩素酸
ノロウイルス感染症 12〜48時間 経口・接触・飛沫 症状のある間と消失後1週間 症状が治まり普段の食事がとれる 次亜塩素酸
(エタノール不可)
ロタウイルス感染症 1〜3日 経口・接触・飛沫 症状のある間と消失後1週間 症状が治まり普段の食事がとれる 次亜塩素酸
(エタノール不可)
RSウイルス感染症 4〜6日 飛沫・接触 呼吸器症状のある間 呼吸器症状が消失し全身状態が良い エタノール
次亜塩素酸
マイコプラズマ肺炎 2〜3週 飛沫 抗菌薬治療の開始前と開始後数日 発熱や激しい咳が治まっている エタノール
百日咳 7〜10日 飛沫・接触 抗菌薬なしでは咳出現後3週間 特有の咳の消失、または抗菌薬5日間の治療終了 エタノール
溶連菌感染症 2〜5日 飛沫・接触・経口 抗菌薬治療の開始前と開始後1日 抗菌薬内服後24〜48時間経過 エタノール
咽頭結膜熱(プール熱) 2〜14日 飛沫・接触 発熱・充血等の症状が出た数日間 主な症状が消失した後2日経過 次亜塩素酸
流行性角結膜炎(はやり目) 2〜14日 飛沫・接触 充血・目やに等が出た数日間 結膜炎の症状が消失 次亜塩素酸
急性出血性結膜炎 平均24時間
または2〜3日
飛沫・接触 - 医師により感染のおそれがないと認められる 次亜塩素酸
手足口病 3〜6日 飛沫・接触・経口 最初の週が最強。便から数週〜数か月排出 発熱や口内の水疱の影響がなく普段の食事がとれる 次亜塩素酸
ヘルパンギーナ 3〜6日 飛沫・接触・経口 急性期の数日間。便から1か月程度排出 発熱や口内の水疱の影響がなく普段の食事がとれる 次亜塩素酸
伝染性紅斑(りんご病) 4〜14日 飛沫 発しん出現前の1週間 全身状態が良い エタノール
麻しん(はしか) 8〜12日 空気・飛沫・接触 発症1日前〜発しん出現後4日 解熱後3日を経過 エタノール
(ワクチンが本筋)
風しん 16〜18日 飛沫・接触 発しん出現の7日前〜7日後 発しんが消失 エタノール
(ワクチンが本筋)
水痘(水ぼうそう) 14〜16日 空気・飛沫 発しん出現1〜2日前〜かさぶた形成まで すべての発しんがかさぶた化 エタノール
(ワクチンが本筋)
流行性耳下腺炎(おたふくかぜ) 16〜18日 飛沫・接触(唾液) 発症3日前〜腫脹後4日 腫れの発現から5日経過かつ全身状態良好 エタノール
(ワクチンが本筋)
帯状疱しん 不定 接触(水疱の内容) 水疱を形成している間 すべての発しんがかさぶた化 エタノール
突発性発しん 9〜10日 接触(唾液) - 解熱し機嫌が良く全身状態が良い エタノール
結核 3か月〜数十年 空気 - 医師により感染のおそれがないと認められる 換気が中心
腸管出血性大腸菌感染症 主に3〜5日 経口・接触 - 医師により感染のおそれがないと認められる 次亜塩素酸
エタノール
侵襲性髄膜炎菌感染症 4日以内 飛沫・接触 治療開始後24時間まで 医師により感染のおそれがないと認められる エタノール
アタマジラミ症 10〜30日 頭髪の接触・物の共用 虫や卵がある間 利用の制限は不要(駆除と洗濯を進める) 洗濯・乾燥
掃除機
疥癬(通常) 約1か月 長時間の直接接触 治療開始まで 利用の制限は不要(治療を継続) 洗濯・乾燥
掃除機
疥癬(角化型) 4日〜1週間 短時間の接触・物を介して 治療開始後1〜2週間 医師の指示による 50度以上10分
乾燥機20〜30分
伝染性膿痂しん(とびひ) 2〜10日 接触 浸出液がある間 患部を覆えば利用可。プールは避ける エタノール
伝染性軟属腫(水いぼ) 2〜7週 皮膚の直接接触 いぼがある間 利用の制限は不要。プールも可 タオルを共用しない
B型肝炎 45〜160日
(平均90日)
血液・体液 - -(日常の接触で感染するものではない) 次亜塩素酸
(血液は先に拭き取る)
「利用再開のめやす」は、学校保健安全法施行規則の出席停止の基準と、こども家庭庁「保育所における感染症対策ガイドライン」の登園のめやすを整理したものです。障害福祉のサービスに法的な出席停止の制度はないため、これを参考に自事業所の目安として決め、指針に書いて家族に事前に伝えてください。就学児は学校の指示が優先します。

障害特性別の具体策|マスク・手洗い・異食・咬みつき・医療的ケア

障害特性により成り立たない感染対策を、できる対策に置き換える一覧図。マスク・手洗い・異食・距離・症状の訴え・部屋分けの6項目

ここが障害福祉の感染対策の中心です。一般向けの対策が成り立たない場面で、何に置き換えるか。特性ごとに整理します。

① マスクが着けられない人

状況 やること
感覚過敏で布が触れるのが苦痛 素材を変える(不織布・ガーゼ・立体型)、本人の好みの柄や素材を選ぶ、耳にかけない形を試す。それでも無理なら着用を目標にしない
意味が伝わらない 絵やカードで重要性を伝える。毎朝決まった時間に短く練習する(厚生労働省のマニュアルにも、この方法で着用できる人が徐々に増えた例が紹介されています)
着けても外してしまう 「食事の前まで」「送迎車の中だけ」と時間と場面を限定する。全時間を目指さない
どうしても着けられない 手洗いと手指消毒の回数を増やす/距離を取る/周囲の職員と利用者がマスクをする。本人を責める言い方をしない
化学物質に敏感 消毒薬のにおいで体調を崩す人がいます。使用する消毒薬を変える、使用時に別室に移動する、換気してから戻る
マスクが着けられないことを理由に、利用を断ったり、参加を制限したりしないでください。厚生労働省はマスク等の着用が困難な状態にある発達障害のある方等への理解について、社会に向けた周知を行っています。事業所内でこの理解が共有されていないと、職員の言動が本人と家族を傷つけます。

② 手洗いが自立していない人

手洗いは、障害福祉でいちばん費用対効果の高い対策です。だからこそ「声をかける」で終わらせず、支援の形を決める価値があります。

  • タイミングを固定する。来所時/トイレの後/食事とおやつの前後/活動の前後/退所時/送迎車に乗る前。紙に書いて洗面所に貼る
  • 介助の段階を決める。全介助/手を添える/声かけのみ/自立。利用者ごとに個別支援計画と同じ粒度で決めておくと、職員が替わってもぶれません
  • 手順を短く視覚化する。洗面所に絵を貼る。指の間・親指・手首が抜けやすい場所です
  • 時間の目安を音で示す。歌やタイマーを使う。目安は、液体石けんを2〜3mL取り、爪・指の間・親指・手首を意識して60秒もみ洗い、15秒流水です
  • 水を止めるときは手首か肘で。蛇口の形によってはペーパータオルをかぶせて締める。洗った手で蛇口を触ると元に戻ります
  • 手指消毒は約3mL(ワンプッシュが約2〜3mL)。手が汚れて見えるとき、胃腸炎の流行期は、消毒ではなく流水と石けんで洗う
  • 職員は「1ケア1手洗い」。ケアの前後に洗う。利用者ごとに手袋を替える

③ 口に入れる・なめる・異食がある人

  • 床の清掃と消毒の優先度を上げる。手すりやドアノブより、この事業所では床が先です
  • 口に入りやすいおもちゃ・教材は洗える素材に統一し、使用後にその都度洗浄・消毒する(ノロ・アデノ・エンテロウイルス対策では次亜塩素酸ナトリウム)
  • 共用をやめる。噛む・なめる対象になるものは個人専用にして名前を書く
  • 他の利用者が使ったコップ・スプーン・タオルに手が伸びる場面を洗い出し、置き場所を物理的に分ける
  • ゴミ箱の管理。使用済みのティッシュやおむつに手が届かない構造にする(ふた付き・高い位置)

④ 咬みつき・引っかき・頭突きがある人

ここは感染対策としてきちんと扱う必要があります。厚生労働省のマニュアルには、直接的な他害(噛みつき、叩く、頭突き等)の可能性がある場合は、エプロン・ガウン、ゴーグル・フェイスシールド、キャップ等も着用すると書かれています。

  1. 血液・体液の曝露が起きたら、すぐ流水で洗い流す。目や口に入った場合は流水で十分に洗う
  2. 管理者に報告。曝露の状況(部位・量・皮膚に傷があったか)を記録する
  3. 受診の判断を先延ばしにしない。曝露後の対応には時間の制約があるため、迷ったらその日に相談する
  4. あらかじめ相談先を決めておく。嘱託医、協力医療機関、産業医。夜間・休日の連絡先も書いておく
  5. 手や腕に傷がある職員は防水性の被覆材で覆う。絆創膏1枚では、介助中にはがれます

合わせて、そもそも咬みつきが起きる場面を減らす支援(環境調整・コミュニケーション手段の確保)が本筋です。行動の記録と支援計画の書き方は強度行動障害の支援計画シート・支援手順書の記事を参考にしてください。

⑤ 医療的ケアが必要な方・重症心身障害の方

重症化リスクが高い前提で組む

  • 厚生労働省のマニュアルも医療的ケアが必要な方や重症心身障害者は感染による重症化リスクが高いと明記しています。同じ対策を全員に一律にするのではなく、ここに手厚く配分します
  • 喀痰吸引・吸入・経管栄養は飛沫が飛ぶ処置として扱います。マスクに加え、必要に応じてゴーグル・フェイスシールド、エプロン・ガウンを着用します
  • 器具は可能な限り個人専用に。体温計も個人専用が原則で、共用する場合は消毒用エタノールで消毒します
  • 医療処置の前には必ず手指衛生を行い、ケアを終えるごとに防護具を交換します
  • この方たちのそばに、軽い風邪の職員を立たせない。勤務の配置で守るという発想を持ちます
  • 発熱時の連絡先と受診先を、主治医・かかりつけ医まで含めて1枚にまとめておきます。かかりつけが遠方のことが多く、発生時に迷います

⑥ 症状を言葉で訴えない人|観察のベースラインを作る

障害福祉の健康観察で決定的に重要なのは、「いつもの状態」を書き残しておくことです。いつもが分からなければ、ずれも分かりません。

観察項目 記録しておく「いつも」 ずれのサイン
体温 平熱(朝・午後それぞれ)。人によって36度前半から37度台まで幅があります 平熱+0.5度以上。「37.5度」という一律の線で判断しない
食事 普段の量、好きなもの、食べる速さ 好物を残す、食べる速さが落ちる、飲み物だけ飲む
排泄 回数、時間帯、便の状態 回数の急な増減、水様便、血が混じる、尿が半日以上出ない
睡眠・活動 午睡の有無、活動への乗り方 横になる時間が増える、好きな活動を嫌がる
行動 自傷・他害の頻度、常同行動の様子 自傷が増える、体の同じ場所を掻く・こすりつける、不機嫌が続く
皮膚 湿しんやアトピーの普段の範囲 新しい発しん、水ぶくれ、かさぶた、強いかゆみ
呼吸・声 普段の呼吸音、声の出し方 咳、ゼイゼイ音、呼吸が速い、声が出にくい
体重 月1回の測定値 数か月で減っている(結核などの手がかり)
「37.5度で利用中止」という一律のルールは、障害福祉では合いません。平熱が37度台の人は毎日中止になり、平熱が35度台の人は37.2度でぐったりしていても通ってきます。基準は「平熱+何度」と「全身状態」の組み合わせで決めてください。

サービス類型別の弱点|放デイ・児発/GH/生活介護・就労

放課後等デイサービス・児童発達支援

弱点 手当て
学校・保育所から持ち込まれる 学級閉鎖や流行の情報を、連絡帳・送迎時・学校との連携で受け取る。「学校で何が流行っているか」を朝の申し送りの項目にする
送迎車が密になる 換気のルールを数値で決める。座席を固定して接触範囲を追えるようにする。乗車前の検温と手指消毒
きょうだいの同時利用 1人の発症が家庭経由で確実に広がる。きょうだい利用の把握と、家庭内発生時の連絡ルールを決める
おやつ・調理活動 配膳を職員が行う。大皿から取り分けない。調理活動の前の手洗いと、体調確認を必須にする
プレイルームの共用玩具 口に入るものは洗える素材に。1日の終わりに洗浄・消毒する担当を決める
午睡・マット運動 個人のタオルを敷く。布団やマットを隙間なく並べない(アタマジラミ・疥癬の対策としても)
トイレ介助の回数が多い 1人ごとに手袋を交換。使い捨てエプロンを常備する

共同生活援助(グループホーム)

弱点 手当て
台所・浴室・トイレ・洗濯機が共用 発症時の使用順序を決める(有症者は最後)。使用後の消毒の担当と方法を決める。タオルは完全に個人のものにする
個室隔離が難しい 個室があっても、本人が居室にとどまれないことがある。共用部に出てくる前提で、動線と手が触れる場所の消毒を組む
夜勤が1人 夜間に嘔吐が起きたときの手順を紙にする。1人で処理する順番、他の入居者を出さない方法、呼ぶ相手。ここを決めていないGHが多いです
日中は別事業所に通う 日中活動先との連絡ルートを1本決める。どちらで発生しても双方に伝わる形にする
帰省・外泊がある 帰省先での発熱や家族の発症をどう把握するか。帰所時の体調確認を手順にする
入居者の高齢化 結核・疥癬・帯状疱しん・肺炎のリスクが上がる。年1回の健康診断の結果を活かし、体重と皮膚の変化を追う
食事は同じ献立 食中毒が全員に届く。加熱と保管の記録、検食の考え方を持つ

生活介護・就労継続支援・就労移行支援

弱点 手当て
食事・排泄・入浴の介助が濃厚接触 場面ごとの防護具の対応表を作る(後述)。1人ごとの手袋交換を徹底する
利用者数が多く、活動が集団 活動グループを固定して、接触の範囲を追えるようにする。食事は時間帯と場所を分散させる
作業の道具・機械を共用 作業ごとの手洗いと、道具の消毒のタイミングを工程に組み込む
食品を扱う作業がある 従事者の健康チェックを毎日記録する。嘔吐・下痢がある間は作業から外す基準を文書化する。傷のある手で食品を扱わない
企業実習・納品・販売がある 外部と接触する職員・利用者の体調確認。実習先での流行情報を受け取るルートを決める
送迎範囲が広い 乗車時間が長い便から優先して換気と座席固定を徹底する
常用薬の影響 抗精神病薬などにより体温調節や口渇に影響が出ることがあります。発熱時の判断と水分摂取の支援を、主治医に確認しておく

平常時にやることの全部|健康観察・換気・消毒

次亜塩素酸ナトリウムの希釈のしかたと、やってはいけない5つを示した図。0.1%は500mLにキャップ2杯、0.05%はキャップ1杯。噴霧は禁止

感染症対策の勝負は、発生してからではなく平常時につきます。ここでやることは3つだけです。早く気づく・持ち込まない・環境を整える。

毎日の健康観察|来所時と退所時が要

厚生労働省のマニュアルは、通所系について来所時と退所時の観察がとくに重要としています。来所時は持ち込みを見つけるため、退所時は「事業所で発症したのか、家庭に持ち帰ったのか」を後から判断できるようにするためです。

  • 送迎車に乗る前、来所時、退所時の検温(在所中も定期的に)と記録
  • 健康チェック表の記入(体温・食欲・咳・息苦しさ・だるさ・のどの痛み・においや味の異常)
  • 「いつもと違う行動」の欄を設け、気づいたことを一言書く
  • 解熱剤・鎮痛剤を使ったかどうかの確認
  • 家族に発熱・嘔吐・下痢の症状がある人がいないかの確認
  • 学校・保育所・日中活動先の流行情報(学級閉鎖、同じクラスでの発生)
  • 皮膚の状態(新しい発しん、強いかゆみ、掻き壊し)
  • 職員自身の出勤前の検温と症状の確認、記録

重要なのは普段の有症者数を把握しておくことです。普段は発熱が0〜1人の事業所で、ある日3人になったら異常です。この比較ができるように、毎日の人数を集計しておきます。異常が見られたら保健所や嘱託医に相談します。

普段の有症者(発熱、下痢・嘔吐等の胃腸炎症状等)数と比較し、異常が見られた場合には保健所や嘱託医に相談しましょう。地域によって保健所の体制が異なるので、管轄保健所がどこか、感染症の担当部署名、相談先にすぐつながる電話番号などをあらかじめ調べておきましょう。

厚生労働省「障害福祉サービス施設・事業所職員のための感染対策マニュアル(通所系)」令和2年12月 p10

換気|冬でも止めない。数値で決める

  • 機械換気設備がある場合:常時換気で、必要換気量(1人あたり毎時30立方メートル)を確保する
  • 機械換気がない場合:室温が下がりすぎない範囲で常時窓を開ける。窓を少し開け、室温18度以上・相対湿度40%以上を維持する
  • 送迎車:走行中も窓を開ける。寒さへの配慮としてひざ掛けを常備する
  • トイレ:定期清掃と換気を心がける。ふたを閉めて流す(汚物の飛散を減らす)

「寒いから閉めた」で終わらせないために、温湿度計を各部屋に置いてください。数値が見えると判断できます。感覚過敏で寒さの訴えが強い利用者がいる場合は、席の配置を窓から離す、衣類で調整する、という方法で両立させます。

消毒薬の使い分け|ここを間違えると全部無駄になる

消毒薬 得意な相手 苦手な相手 主な使い方
消毒用エタノール インフルエンザ、新型コロナウイルス、RSウイルス、麻しん、風しん、水痘、おたふくかぜ、多くの細菌 ノロウイルス、ロタウイルス、アデノウイルス(膜を持たないウイルス) 手指消毒(約3mL)、手すり・ドアノブ・スイッチ・机の清拭、体温計などの器具
次亜塩素酸ナトリウム
0.1%(1,000ppm)
ノロウイルス、ロタウイルスを含むほぼすべて 金属を腐食させる。色落ちする。皮膚に使えない 嘔吐物や排泄物が付着した床の消毒、汚染された衣類の漬け置き
次亜塩素酸ナトリウム
0.05%(500ppm)
同上 同上 トイレの便座・ドアノブ・手すり・床、食器等の漬け置き

希釈のしかた|計量カップを出さずにできる形にする

市販の塩素系漂白剤(塩素濃度約5%のもの)を使う場合の目安です。ペットボトルのキャップ1杯が約5mLです。

作りたい濃度 作り方 用途
0.1%(1,000ppm) 500mLのペットボトル1本の水に、原液10mL(キャップ2杯) 嘔吐物・排泄物が付着した床、衣類の漬け置き
0.05%(500ppm) 500mLのペットボトル1本の水に、原液5mL(キャップ1杯) トイレの便座・ドアノブ・手すり・床、食器の漬け置き
次亜塩素酸ナトリウムを使うときの注意点です。①作ったらその日に使い切る(時間がたつと効果が落ちます)。②必ず換気して手袋をする。③酸性の洗剤と混ぜない(有毒な塩素ガスが発生します)。④ペットボトルで作ったら必ず大きく表示し、飲み物と並べて置かない。異食のリスクがある利用者がいる事業所では、施錠できる場所に保管してください。⑤噴霧しない。

環境消毒の手順|「拭く」が基本

  1. 手袋を着用する
  2. 消毒用エタノールで清拭する。または次亜塩素酸ナトリウム液で清拭した後、水拭きして乾燥させる
  3. トイレのドアノブや取っ手は、消毒用エタノールで清拭。または次亜塩素酸ナトリウム液(0.05%)で清拭後、水拭きして乾燥
  4. 終わったら手袋を外し、手洗いまたは手指消毒をする
1日2回、時間を決めて拭く場所(担当を貼り出す)
  • ドアノブ、手すり、電気のスイッチ、エレベーターのボタン
  • 机、いす(背もたれと座面)、テーブルの縁
  • トイレの便座、レバー、水栓、紙巻器
  • 洗面台、蛇口
  • 送迎車の手すり、ドアの取っ手、シートベルト、チャイルドシート
  • 共用のおもちゃ、教材、作業道具、コミュニケーション機器、タブレット
  • 職員が共用するもの(電話、キーボード、記録用のペン、ハンコ)

標準予防策を「支援の手順」に落とす|手洗いと防護具

個人防護具の着ける順番と脱ぐ順番を並べた図。脱ぐときは手袋を先に外して手指消毒し、エプロン、キャップ、ゴーグルの順に外す

感染対策の土台にあるのが標準予防策(スタンダード・プリコーション)です。考え方は1行で言えます。

ケアなどで接する利用者の感染症の有無にかかわらず、血液、体液、分泌物、嘔吐物、排泄物、傷のある皮膚、粘膜はすべて感染源とみなして予防策をとることを標準予防策といいます。

厚生労働省「障害福祉サービス施設・事業所職員のための感染対策マニュアル(通所系)」令和2年12月 p8

この考え方は差別を防ぐ仕組みでもあります。誰が感染しているかを調べて対応を変えるのではなく、全員に同じ予防策を当てる。だから「あの人だけ手袋をする」という運用にならずに済みます。

場面ごとの防護具の対応表|これを貼り出す

場面 手袋 マスク エプロン・ガウン ゴーグル・フェイスシールド
通常の見守り・活動支援 - 流行期は着用 - -
食事介助 -(手洗い) ○ △ -
おむつ交換・トイレ介助 ○ ○ ○(使い捨て) -
入浴・清拭の介助 ○ ○ ○ -
喀痰吸引・吸入 ○ ○ ○ ○
経管栄養 ○ ○ ○ △
咬みつき・頭突きの可能性がある対応 ○ ○ ○ ○
嘔吐物・排泄物の処理 ○ ○ ○(使い捨て) ○
有症者の対応全般 ○ ○ ○ △
環境の消毒 ○ ○ △ -

○は着用、△は状況により着用、-は不要(通常時)。この表を洗面所と事務所に貼るだけで、職員間のばらつきが減ります。

防護具の着脱の順番|ここを間違えると意味がなくなる

着るときと脱ぐときで順番が違います。脱ぐときこそが感染の瞬間だからです。

着る(居室・現場の外で) 脱ぐ(居室・現場の中で)
① マスク
② エプロン・ガウン
③ ゴーグル・フェイスシールド
④ キャップ
⑤ 手袋

すべて着けたら、鏡で見るか他の職員に点検してもらい、露出がないか確認する

① 手袋を外す
② 手指消毒
③ エプロン・ガウン
④ キャップ
⑤ ゴーグル・フェイスシールド

すべて外し終わった後にも手指消毒。外した防護具はふた付きのゴミ箱に廃棄する。表面に触れないように注意する

  • マスクや手袋を箱から取る前に、必ず手指消毒。汚染された手を1度箱に入れると、箱全体が汚染されます
  • 原則、防護具は利用者ごとに交換し、使ったものは破棄する
  • 着用した状態で出歩かない。ケアが終わったらすぐ外す
  • 布製のエプロン・ガウンは使わない。使い捨てを使う
  • 器具は利用者ごとに交換し、使用後は洗浄・消毒する。体温計は可能な限り個人専用に

嘔吐・下痢が出たときの15ステップ|現場でいちばん使う手順

嘔吐があったときの2人分担の手順図。処理する人は換気と半径2メートルの拭き取りと0.1%次亜塩素酸、もう1人は他の利用者を離して記録する

感染症対策で、実際にいちばん使う手順がこれです。ここが身についていれば、胃腸炎の集団発生の大半は防げます。この15項目を1枚にして、処理セットに入れてください。

  1. 大きな声で人を呼ばない。落ち着いて、近くの職員に「嘔吐です」と伝える。慌ただしい様子が利用者の不安を強めます
  2. 他の利用者を、汚染場所から離れた部屋へ誘導する。処理する人と誘導する人を分ける(1人で両方やろうとしない)
  3. 窓を大きく開けて換気する。乾燥してエアロゾル化する前に処理するのが勝負
  4. 汚染範囲は半径2メートルと考える。見えている範囲だけを拭くと必ず残ります
  5. 使い捨て手袋・マスク・使い捨てエプロンを着ける。目に飛ぶ可能性があればゴーグルも
  6. 嘔吐物をペーパータオル等で、外側から内側に向けて静かに拭き取る。内側から外側に拭くと、汚染を広げます
  7. 使ったペーパータオルは、すぐにビニール袋に入れる。床に置かない
  8. 拭き取った床とその周囲を、0.1%(1,000ppm)次亜塩素酸ナトリウムを染み込ませたペーパータオルで覆う、または浸すように拭く
  9. 10分程度置いてから、水拭きして乾燥させる
  10. ビニール袋の中にも0.1%次亜塩素酸ナトリウムを、染み込む程度に入れて消毒する。口をしっかり縛り、二重にして密閉する
  11. 汚れた衣類は、その場でビニール袋に密閉。事業所で洗わず、家族に渡す場合は処理方法を書いた紙を添える(0.1%次亜塩素酸ナトリウムに漬け置き、他の洗濯物と分けて洗う)
  12. カーペットや布製のものは、拭き取った後にスチームアイロンや布団乾燥機で熱処理する(次亜塩素酸で色が抜けるため)
  13. 処理後は、防護具を外して、流水と石けんで手を洗う。アルコールだけで済ませない
  14. 換気を続けたまま、周辺の手が触れる場所(ドアノブ・手すり・便座)も0.05%で拭く
  15. 記録する。時刻、場所、誰が、症状、処理した人、その場にいた利用者。この記録が、後の集団発生の判断材料になります
障害福祉で特に重要なのはステップ2です。異食のある利用者や、床をなめる行動がある利用者が汚染場所に近づくと、確実に感染します。1人で処理しようとすると、この誘導が抜けます。「嘔吐です」と言われたら、処理をしない職員は他の利用者を連れて離れると、あらかじめ全員で決めておいてください。

嘔吐物処理セットの中身|置き場所は複数に

品目 数量の目安(1セット) 備考
使い捨て手袋 10双 処理中に何度も替えます。少なすぎると節約してしまう
サージカルマスク 5枚
使い捨てエプロン・ガウン 3枚 布製は使わない
ゴーグルまたはフェイスシールド 1個 使い捨てでなければ、使用後に消毒
ペーパータオル・使い捨ての布 1ロール以上 惜しまず使う量を入れる
ビニール袋 10枚 二重にするので多めに
次亜塩素酸ナトリウム原液 1本 使用期限を確認。開封後は効果が落ちます
500mLの空ペットボトル 2本 希釈用。表示を大きく貼る
希釈の早見表 1枚 ラミネートしてセットに入れる
15ステップの手順書 1枚 同上
シューズカバーまたは新聞紙 適量 靴底で広げないため
ペン 1本 その場で記録するため

置き場所は事務所に1つでは足りません。トイレ、活動室、送迎車の3か所を最低ラインにしてください。取りに行く時間の間に、他の利用者が汚染場所に近づきます。

発生したときの最初の24時間|時間軸で決めておく

感染症が発生したときの最初の24時間の行動表と、行政への報告が必要になる3つの基準を示した図。定員10名のグループホームなら5名で該当する

発生時にうまくいかない事業所の共通点は、「誰が何をするか」が決まっていないことです。逆に、この表を1枚作って貼っておくだけで動きが変わります。

時点 やること 担当
0分 症状を確認する(体温、症状、いつから)。他の利用者から離す。処理が必要なら15ステップへ 気づいた職員
5分 管理者・感染対策担当者に第一報。不在なら電話で。判断を待たずに状況だけ伝える 気づいた職員
15分 家族へ連絡。受診の必要性を伝え、迎えまたは送りを調整する 管理者またはサビ管・児発管
30分 同じ空間・同じ送迎便・同じ活動グループにいた人を洗い出す。座席表と活動記録から名簿を作る 感染対策担当者
1時間 汚染箇所と共用部の消毒。換気の継続。使用した物品の処理 担当を決めておく
2時間 その日の有症者数を集計する。普段の数と比べて異常かどうかを判断する 感染対策担当者
半日 異常があれば保健所・嘱託医に相談。報告基準に該当すれば市町村・都道府県へ報告 管理者
当日中 他の利用者の家族へ連絡(個人が特定できない書き方で)。職員への周知。翌日以降の体制を決める 管理者
翌朝 重点観察の開始。名簿に載った人の検温と観察を強める。期間は病気の潜伏期間に合わせる 全員
24時間以内 記録を整える。時系列、人数、対応、判断の理由。これが後の報告と振り返りの材料になる 管理者

行政への報告が必要になる3つの基準

社会福祉施設等における感染症等の発生時の報告について、国の通知で基準が示されています。この3つのどれかに当てはまったら、市町村と保健所に報告します。

  1. 同一の感染症もしくは食中毒による、またはそれらによると疑われる死亡者または重篤患者が、1週間内に2名以上発生した場合
  2. 同一の感染症もしくは食中毒の患者、またはそれらが疑われる者が10名以上、または全利用者の半数以上発生した場合
  3. ①②に該当しない場合であっても、通常の発生動向を上回る感染症等の発生が疑われ、特に施設長(管理者)が報告を必要と認めた場合
②の「全利用者の半数以上」を見落とさないでください。定員10名のグループホームなら5名で該当します。「10名以上」だけを覚えていると、小規模事業所は永遠に該当しないと勘違いします。定員が小さいほど、半数の基準のほうが先に来ます。

報告先と様式は自治体ごとに指定されています。指針に「報告先」「電話番号」「様式の保管場所」を書いておいてください。判断に迷ったら、③を使って早めに相談するほうが安全です。相談したことで不利になることはありません。

保健所が来る前に、そろえておく5点

集団発生すると、保健所が疫学調査を行います。そのときに提供を求められるものは決まっています。平常時に用意しておくと、発生時の混乱が半分になります。

  • 事業所の見取り図(全体図と、部屋や区分が分かるフロア別の図)
  • 利用者数・職員数の一覧表(部門や部屋ごとの人数が分かるもの)
  • 日々の利用者名簿と出勤名簿
  • 利用者・職員の日々の健康観察の記録
  • 大規模な検査が必要になった場合に使える場所(他者との接触を避けられ、十分な換気と清掃・消毒ができる場所)をあらかじめ決めておく

調査で見られるのは、①患者本人の症状、②事業所全体の状況(日時別・部屋別の発生状況、受診状況と診断名、普段の健康観察結果との比較)です。ここでも「普段」の記録があるかどうかが分かれ目になります。

ゾーニングができない事業所の代替4手

「感染者と非感染者の動線を分ける」と書かれた資料を読んで、途方に暮れる事業所は多いはずです。ワンフロア、個室なし、トイレ1か所。障害福祉ではよくある条件です。

しかも障害福祉では、もう1つの壁があります。利用者が部屋の中を動き回るため、区域を決めても守られないのです。厚生労働省のマニュアルもこの状況を想定して、次のような書き方をしています。

感染(疑い)例発生時、利用者が部屋の中を動き回って、ゾーニングが難しい場合は、フロアや職員と利用者の動線を完全に分けるなどの工夫をして対応する必要があります。

厚生労働省「障害福祉サービス施設・事業所職員のための感染対策マニュアル(通所系)」令和2年12月 p6

手1:場所で分けられないなら、時間で分ける

同じトイレ・洗面所・浴室を、使う順番で分けます。有症者は最後に使い、使用後に消毒する。これだけで接触の機会が大きく減ります。食事も、時間帯をずらす。活動も、同じ部屋を時間差で使う。空間が足りないときは、時間という資源を使ってください。

手2:人で分ける(職員の担当を固定する)

有症者に対応する職員を固定し、その職員は他の利用者のケアに入らない。これはコホーティングと呼ばれる考え方で、場所が分けられなくても成立します。小規模で人数が足りない場合は、「午前は有症者対応のみ、午後は交代」という形でも効果があります。

手3:物で分ける

体温計、食器、タオル、コップ、おもちゃ、車いす、クッション。使うものを個人専用にする。名前を書いて置き場所を離す。空間が1つでも、物の動線は分けられます。

手4:滞在そのものを短くする

通所系であれば、有症者は事業所にいる時間を最小にするのが最も確実です。玄関または入口近くの相談室で待ち、送迎車で直接帰宅する。事業所の奥まで入らない導線を1本作っておいてください。

「隔離できる部屋がない」ときに、指針に書く文の例
  • 当事業所には個室がないため、発熱・嘔吐等の症状が出た場合は相談室(窓あり・換気可)を一時的な待機場所とし、家族への連絡と送迎により速やかに帰宅の支援を行う
  • 待機中は職員1名が固定で対応し、当該職員は他の利用者のケアに入らない
  • 他の利用者は活動室に留まり、トイレは有症者の使用後に消毒してから使用する
  • 使用した相談室は、退出後に0.05%次亜塩素酸ナトリウムで清拭し、30分以上換気する

職員の健康管理|「休める」を仕組みにする

感染症の持ち込み経路として、職員は無視できません。そして職員は「まだ動ける」段階で出勤します。人が足りないからです。これは個人の意識の問題ではなく、体制の問題です。

出勤前にやること(全職員)

  • 出勤前に体温を計測する。発熱・咳・咽頭痛などの呼吸器症状があれば出勤しない
  • 健康管理の結果を記録する(個人の手帳ではなく、事業所で残す)
  • マスクの着用を含めた咳エチケットを行う
  • 手洗い・手指消毒。1ケア1手洗い、ケア前後の手洗い
  • 睡眠と栄養を十分にとる
  • 家族に感染症状がある場合、または疑われる場合は管理者に報告し、対応を相談する
  • 食堂やスタッフルームでマスクを外して飲食するときは、向かい合って座らず、食事中の会話を控える
  • 職場外でも、換気が悪く人が密に集まる空間を避ける(流行期)
厚生労働省のマニュアルは、職員が休暇を取得しやすい環境や、躊躇なく相談できる体制にしておくことも重要だと明記しています。「体調が悪ければ休んで」と言いながら代替要員がいなければ、職員は出勤します。誰が代わりに入るのかを先に決めるのが、感染対策です。

勤務上の配慮が必要な職員

  • 基礎疾患がある職員、妊娠している職員は、感染した際に重症化するおそれが高いため、勤務上の配慮を行います(有症者の対応から外す、医療的ケアの場面の担当を替える等)
  • 風しんの抗体を持たない職員は、妊娠中の同僚や利用者の家族への影響も考え、発生時の配置を決めておきます
  • 職員のメンタルヘルスにも注意が必要です。感染対策下の業務は、慣れない作業でいつも以上の注意力を要するため、大きなストレスを抱えている可能性があります。管理職と定期的に話す機会を作ってください

職員が欠けたときの段階表

欠員の割合 止めるもの やること
2割まで 記録の様式のうち後回しにできるもの、会議 通常どおりのサービス提供。応援の可能性を法人内に打診しておく
3割 外出活動、行事、送迎の一部(近隣は家族に協力を依頼) 支援の中心を「安全と健康」に絞る。法人内の他事業所へ応援を要請
5割 利用定員の縮小、作業種目の一部、入浴の回数の見直し 絶対に止められない業務のみ残す(服薬・経管栄養・吸引・発作時対応・見守りが切れると危険な利用者)。相談支援事業所に連絡し、訪問系サービスへの振り替えを検討
それ以上 - 市町村の担当課に相談。休業もありうる判断として、家族への連絡と代替手段の調整を同時に進める

この表の数字は例です。自事業所の人数で計算して、実名の応援先を書き込んでください。「法人内の他事業所」ではなく「○○事業所の△△さん」まで書いてあるBCPだけが、当日に機能します。

備蓄リスト|品目と数量の目安

「備蓄しましょう」で止まっている事業所が多いので、数量の考え方を書きます。利用者30名・職員10名の通所事業所で、流行期に2週間しのぐという想定です。

品目 数量の目安 計算の考え方
サージカルマスク 300〜400枚 職員10名×1日2枚×14日=280枚。来訪者・予備を加える
使い捨て手袋 1,000〜1,500枚 排泄介助・食事介助の回数×利用者数。介助が多い事業所は倍で見る
使い捨てエプロン・ガウン 200〜300枚 おむつ交換・入浴介助の回数分。ケアごとに交換する前提で計算
フェイスシールド・ゴーグル 職員数+5個 吸引・咬みつき対応がある事業所は多めに
手指消毒薬 4〜6L 1人1日10回×3mL×40人×14日=約17L…実際は手洗い併用で減る。まず5L
液体石けん 3〜5L 詰め替え用。固形石けんは使わない
ペーパータオル 20〜30ロール 共用タオルをやめると一気に消費が増える。切らさない
次亜塩素酸ナトリウム原液 2〜3本 使用期限を確認し、期限管理表に載せる
嘔吐物処理セット 3セット以上 トイレ・活動室・送迎車。使ったらすぐ補充する担当を決める
ビニール袋(大・中・小) 各100枚 二重にするので多めに
体温計 利用者数の1〜2割+予備 重症化リスクが高い方は個人専用に
経口補水液 20〜30本 脱水対策。賞味期限を管理する
ゴミ袋・ふた付きゴミ箱 各部屋に1つ 防護具の廃棄用。足踏み式が望ましい
温湿度計 各部屋に1つ 換気の判断のため
備蓄で失敗する3パターン
  • 使わないので期限が切れる。備蓄と日常使用を分けず、古いものから使って補充する(先入れ先出し)
  • 置き場所が1か所で、取りに行けない。各部屋と送迎車に分散して置く
  • 残量を誰も見ていない。3か月に1回の委員会で、残量と期限を必ず確認する議題にする

制度の器|委員会・指針・研修・BCPの要点だけ

ここまでが現場の中身です。最後に、それを載せる制度の器を簡単に確認します。障害福祉サービス・障害児通所支援では、令和3年度の基準省令改正で感染症対策の強化が定められ、令和6年4月1日から完全に義務化されました。やることは4つです。

  1. 感染対策委員会を設置し、定期的に開催する(結果を従業者に周知徹底する)
  2. 感染症および食中毒の予防・まん延防止のための指針を整備する
  3. 研修を定期的に実施する
  4. 訓練(シミュレーション)を定期的に実施する

回数はサービス種別で2通り。訪問系・相談系だけが緩い

サービス区分 感染対策委員会 研修 訓練
訪問系(居宅介護・重度訪問介護・同行援護・行動援護・重度障害者等包括支援・保育所等訪問支援など)/相談系 おおむね6か月に1回以上 年1回以上 年1回以上
上記以外のすべて(放課後等デイサービス・児童発達支援・生活介護・就労継続支援・就労移行支援・自立訓練・共同生活援助・障害者支援施設・障害児入所施設など) おおむね3か月に1回以上 年2回以上 年2回以上

虐待防止(委員会・研修とも年1回以上)や身体拘束適正化(同)と同じ回数だと思って年間計画を組むと、感染症だけ足りなくなります。通所だから緩い、小規模だから緩い、ということはありません。

研修・訓練ともに定期的に年2回以上(年1回ではありません!)記録(研修の内容も)を忘れずに!

神戸市「第7回 衛生管理・感染症対応と業務継続計画」

回数は最終的に指定権者(都道府県・市)の解釈で運用されます。自治体の集団指導資料に別紙の一覧が載っていることが多いので、年間計画を組む前にご自身の指定権者の資料を一度確認してください。とくに多機能型や共同生活援助の外部サービス利用型は、区分の読み方が分かれます。

委員会は思っているより条件が緩い

  • 人数の定めはなく、専任職員も不要。管理者とサービス管理責任者(児童発達支援管理責任者)と現場の職員で成立します
  • オンラインで開催してよい(テレビ電話装置等の活用が認められています)
  • 幅広い職種で構成するのが望ましく、専任の「感染対策担当者」を決めておく(兼務で構いません)
  • 原則は独立して設置・運営しますが、関係が深い他の委員会と一体的に設置・運営しても構いません
  • 一体で開く場合も、議事録は感染対策の議題として独立して読める形で残してください

指針に書く4ブロック

ブロック 書く内容
① 平常時の対策 事業所内の衛生管理(環境の整備、排せつ物の処理、血液・体液の処理)、支援にかかる感染対策(手洗い、標準予防策)、日常の観察項目
② 発生時の対応 発生状況の把握、感染拡大の防止、医療機関・保健所・市町村の関係課との連携、医療処置、行政への報告
③ 体制の整備 事業所内の連絡体制、関係機関への連絡体制(夜間・休日を含む)
④ 教育と見直し 研修・訓練の実施、新規採用時の教育、指針を見直す時期と担当

ひな形を使うのは構いません。ただしこの記事で扱った「自事業所固有の3行」は必ず足してください。①距離が取れない場面はどこか、②マスク・手洗いに支援が必要な人が何名いるか、③隔離できる場所があるか・ないならどうするか。この3行が入っているかどうかで、指針の値打ちが変わります。

BCPと減算|経過措置はもう終わっている

業務継続計画は感染症に係るものと災害に係るものの両方が必要です。1つの計画に両方を組み込んでも構わず、研修と訓練も一体的に実施してよいとされています。

感染症対策の4つの措置をやっていないこと自体に、専用の減算はありません。だから後回しになります。そして引っかかるのが業務継続計画未策定減算です。

対象サービス 減算率
療養介護、施設入所支援(障害者支援施設が行う各サービスを含む)、共同生活援助、宿泊型自立訓練、障害児入所施設 所定単位数の3%
上記以外(放課後等デイサービス、児童発達支援、生活介護、就労継続支援、就労移行支援、自立訓練など) 所定単位数の1%

この減算には令和7年3月31日までの経過措置(感染症の指針の整備と非常災害の具体的計画があれば適用しない)がありましたが、すでに終了しています(就労選択支援のみ令和9年3月31日まで適用なし)。適用は基準を満たさない事実が生じた月から、解消された月までで、さかのぼります。

研修の進め方(講師台本・訓練のやり方・確認テスト)や、法定研修全体の年間計画については、義務化された研修の記事と身体拘束適正化研修の記事を参考にしてください。感染症で休んだ日の加算の扱いは欠席時対応加算の記事、グループホームの医療連携は医療連携体制加算の記事にまとめています。

よくある質問

Q. 利用者が発熱しましたが、家族が仕事で迎えに来られません。どうすればいいですか。
Aまず、迎えが来るまでの待機場所と担当職員を決めて、他の利用者と離します。そのうえで、家族に「いつなら来られるか」を確認し、送迎で送れるかを検討します。ここで大事なのは事前に決めておくことです。発熱時の対応(誰が迎えに来るか、来られない場合の連絡先、送りが可能か、緊急時の受診先)を契約時に確認し、書面にしておいてください。当日に電話で交渉すると、必ずもめます。
Q. 平熱が37.2度の利用者がいます。37.5度で一律に断るルールはおかしいですか。
Aおかしいです。障害福祉では「平熱+何度」と「全身状態」の組み合わせで判断してください。個別支援計画やアセスメントに平熱を記録し、「平熱+0.5度以上かつ全身状態が良くない場合は利用を控える」という書き方にします。逆に、平熱が35度台の人が37.2度でぐったりしているのに、一律基準では受け入れることになってしまいます。
Q. マスクを着けられない利用者の家族から「他の家族に責められた」と相談がありました。
A事業所として立場を明確にしてください。マスクの着用が困難な状態にある方がいることは、厚生労働省も理解を求めています。そのうえで、事業所として代替の対策をとっていることを、全家族に説明します。「着けられない人がいます」だけでは不安が残ります。「着けられない方には手洗いと手指消毒の回数を増やし、職員がマスクをして対応しています」と対策をセットで説明するのが、双方を守る伝え方です。
Q. アルコールがあるのに、なぜ胃腸炎の流行期は手洗いなのですか。
Aノロウイルスやロタウイルスは、外側に脂の膜を持たない構造なので、膜を壊して働くアルコールが効きにくいのです。この時期は流水と液体石けんで物理的に洗い流すことが対策になります。アルコールをやめる必要はありませんが、「アルコールだけで済ませない」が正解です。環境の消毒も、この時期は次亜塩素酸ナトリウムに切り替えます。
Q. 次亜塩素酸ナトリウムを薄めて、スプレーで空間に噴霧しています。
Aすぐにやめてください。消毒薬の噴霧は吸引すると有害であり、効果も不確実であることから、厚生労働省のマニュアルで行わないよう明記されています。加湿器に消毒薬を入れる使い方も同じです。消毒は「手袋をして、拭く」が原則です。とくに呼吸器に基礎疾患のある利用者や、においに敏感な利用者がいる事業所では、害のほうが大きくなります。
Q. 個室がなく、ゾーニングができません。指針にどう書けばいいですか。
A「できません」ではなく「代わりにこうする」を書いてください。場所で分けられないなら、時間で分ける(使用順序を決める)、人で分ける(担当職員を固定する)、物で分ける(個人専用にする)、滞在時間を短くする(速やかな帰宅支援)の4つです。運営指導で問題になるのは「個室がないこと」ではなく、代替策が決まっていないことです。
Q. 定員10名のグループホームで、5名に発熱が出ました。報告が必要ですか。
A同一の感染症またはそれが疑われる場合、「10名以上または全利用者の半数以上」が報告の基準です。定員10名で5名なら半数以上に該当しますので、市町村と保健所に報告してください。「10名以上」だけを覚えていると小規模事業所は該当しないと勘違いしますが、実際は半数の基準が先に来ます。迷う場合も、管理者が必要と認めれば報告できる基準があるので、早めに相談するほうが安全です。
Q. 職員が「熱はないが喉が痛い」と言っています。出勤させていいですか。
A厚生労働省のマニュアルは、発熱だけでなく咳や咽頭痛などの呼吸器症状が認められる場合には出勤しないことを徹底するとしています。熱がないから大丈夫、にはしないでください。とくに医療的ケアが必要な方や重症心身障害の方がいる事業所では、軽い症状でも配置を替える判断が必要です。そのために必要なのは意識ではなく、代替要員をあらかじめ決めておくことです。
Q. 感染症で休んだ利用者について、加算はどう扱えばいいですか。
A放課後等デイサービス・児童発達支援では、急な欠席の場合に相談援助を行って記録すれば欠席時対応加算の対象になりえます。要件と記録の書き方は欠席時対応加算の記事にまとめています。感染症の流行期はこの加算の記録が増えるので、様式を先に整えておくと楽になります。
Q. 訓練は「机上」と「実地」のどちらをやればいいですか。
Aどちらでも構いませんが、なるべく両方を組み合わせることが望ましいとされています。おすすめは、年2回のうち1回を実地(嘔吐物処理の実演、防護具の着脱)、もう1回を机上(発生時のシミュレーション、連絡順序の確認)にする組み合わせです。嘔吐物処理は必ず1度は体を動かしてやってください。読んだだけでは、当日に手が動きません。
Q. 手足口病の利用者を休ませるべきですか。
A感染を止めるために休ませる意味は小さいとされています。ガイドラインも、手足口病とヘルパンギーナについては登園を控えることは有効性が低く、ウイルスの排出期間が長いことからも現実的ではないとしています。判断の軸は感染力ではなく本人が食べられるか、全身状態が良いかです。ただし、便から数週間から数か月ウイルスが出るので、おむつ交換とトイレ介助の手洗いを徹底してください。
Q. 結核が心配です。何から始めればいいですか。
A1つだけ覚えてください。「2週間以上続く咳は受診」です。利用者でも職員でも同じです。あわせて、体重を月1回測って記録しておくと、体重減少という手がかりを拾えます。グループホームや生活介護では利用者の高齢化が進んでいるため、若い頃に感染して免疫が落ちてから発病する例が現実にあります。年1回の健康診断の結果を、事業所として確認する運用にしてください。

まとめ|今日決められる3つ

この記事の分量を全部やろうとすると止まります。今日決められることを3つだけ選んでください。

  1. 共用タオルをやめて、ペーパータオルに替える。夏の感染症(プール熱・はやり目)とアタマジラミに、いちばん費用対効果の高い1手です
  2. 嘔吐物処理セットを3か所に置き、15ステップの手順書を中に入れる。事務所に1つでは間に合いません
  3. 健康チェック表に「いつもと違う行動」の欄と「平熱」の記録を作る。障害福祉の感染対策は、ここから始まります

そのうえで、次の委員会(3か月に1回)で1つずつ足していってください。消毒薬の使い分け表を貼る、場面ごとの防護具の対応表を貼る、備蓄の残量を数える、ゾーニングの代替を指針に書き足す。1回で完成させる必要はありません。

障害福祉の感染症対策は、知識の量で決まりません。マスクが着けられない人がいる前提で、手が届く対策に置き換えられるかで決まります。着けられない人を責める対策は、続かないし、その人を傷つけます。周囲で守る設計にしてください。

出典

・厚生労働省「障害福祉サービス施設・事業所職員のための感染対策マニュアル(通所系)」障害保健福祉部、令和2年12月

・厚生労働省「障害福祉サービス事業所等における新型コロナウイルス感染症発生時の業務継続ガイドライン」

・こども家庭庁「保育所における感染症対策ガイドライン(2018年改訂版)」2023年5月一部改訂

・学校保健安全法施行規則 第18条・第19条(出席停止の期間の基準/令和5年5月8日改訂)

・厚生労働省ほか「社会福祉施設等における感染症等発生時に係る報告について」平成17年2月22日(令和5年4月28日一部改正)

・鳥取県「令和6年度指定障害福祉サービス事業所等に係る集団指導 資料1(全サービス共通)運営指導における指摘事項及び留意事項」

・神戸市「第7回 衛生管理・感染症対応と業務継続計画」

・島根県「業務継続計画未実施減算について」

・厚生労働省「令和6年度障害福祉サービス等報酬改定の概要」

・厚生労働省「マスク等の着用が困難な状態にある発達障害のある方等への理解について」

最終確認日:2026年9月29日

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室長:ユイン
室長:ユイン
介護福祉士・保育士・サビ菅

福祉の専門知識 × 現場10年 × 4児パパ。
机上の空論ではない情報を発信しています。

グループホーム・放課後等デイサービスの施設長・管理者を20代から経験。現在も現場の最前線に立ちながら、4人の子どもを育てる6人家族の父として、福祉と子育ての両方をリアルな目線で書いています。

  • 支援歴10年以上、管理職は20代後半から GH施設長 / 放課後等デイ管理者
  • 実務者研修・強度行動障害研修の講師資格あり 研修講師として登壇経験多数
  • 4人の子どもを育てる現役の福祉職パパ 6人家族 / 子育て × 仕事の両立を実践中
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  • 介護福祉士
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  • 実務者研修教員講習会修了
  • 強度行動障害支援者養成研修(基礎・実践)
  • 防火管理者(甲種)
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