感染症対策研修【障害福祉版】20分で終わる講師台本・15分訓練・確認テスト20問|放デイ・GH・生活介護
感染症の研修を任されると、たいてい「手洗いは大事です」「マスクをしましょう」で終わります。コロナを3年経験した職員たちは、もう全部知っている顔をして聞いている。そして冬、夜のグループホームで利用者が嘔吐したとき、誰も手袋とエプロンの場所を即答できない。
この記事は、その研修を20分の研修と15分の訓練に作り直すために書きました。
研修時間に法令上の定めはありません。運営基準が求めているのは、感染症の予防とまん延防止のための研修と訓練を定期的に実施することです。何分やれという条文はありません。そして感染症は、虐待や身体拘束と違って「知っている」と「できる」の差がいちばん大きいテーマです。だからこの記事の主役は講義ではなく、20分で読み切る講師台本と、嘔吐物処理を実際に手を動かしてやる15分の訓練です。
- そのまま読み上げるだけの【20分版・講師台本】(逐語)
- 机上と実地を組み合わせた15分でできる訓練3本と、その記録の残し方
- BCP(感染症)の研修・訓練と一体で実施して、年間の回数を減らす組み方
- 15分×4回の年間シリーズと、動画研修の章立て
- 放デイ・GH・生活介護で実際に起きる場面別の具体例30と、判断が割れる演習12問
- 確認テスト20問、研修・訓練の記録様式、発生時の行政報告の基準
- この記事の使い方|まず「20分+15分」の形を選ぶ
- 感染症の研修が形だけになる、3つの原因
- まず要件を確認する|4つの措置と、BCPとの関係
- 研修時間に法令上の定めはない|20分でいい理由
- 【20分版・講師台本】そのまま読める逐語スクリプト
- 【訓練】15分でできる3本|机上と実地を組み合わせる
- 15分×4回の年間シリーズ|流行期の前に寄せる
- 研修を動画にして回す|ただし訓練の実地は集まる
- 放デイ・GH・生活介護で実際に起きる場面30
- 【演習】この場面、どう動く?|研修で配る12問
- 【確認テスト20問】研修の最後に配る理解度チェック
- 発生時の初動と行政報告|管理者が流行期の前に読む節
- 感染対策委員会と指針を、現実的に回す
- 研修・訓練の記録様式
- 運営指導で見られるポイントと、記録のNG5
- よくある質問
- まとめ
この記事の使い方|まず「20分+15分」の形を選ぶ

先に地図を置きます。この記事は長いので、全部読む必要はありません。感染症がほかの研修と違うのは、「研修」と「訓練」が別々の義務になっていることです。なので、最初に決めるのは研修と訓練をどう組み合わせるかです。
| 形 | こういう事業所 | 読むところ |
|---|---|---|
| 20分+15分 (おすすめ) |
時間が取れない。ほとんどの事業所 | 【20分版・講師台本】を読み上げ、続けて「嘔吐物処理の実地訓練」を15分。計35分で研修と訓練が1回ずつ終わります。感染症は研修・訓練とも年2回以上なので、これを年2日 |
| 15分×4回 | 流行期に合わせて手厚くしたい | 「15分×4回の年間シリーズ」。流行前の10〜11月に訓練を寄せる形 |
| 動画+実地 | シフトがそろわない・多拠点 | 「研修を動画にして回す」。研修は動画でよいが、訓練の実地部分だけは集まってやるという設計です |
| 外部研修+伝達 | 自分で話す自信がない | 後述のFAQ。ただし訓練は外部研修で代わりになりません。自事業所の物品と動線でやる必要があります |
どの形でも、共通で使うもの
| 使うもの | どこにあるか |
|---|---|
| 嘔吐物処理セット | 実物を1セット。研修のために新しく買うのではなく、ふだん置いてあるセットをそのまま持ってくるのがポイントです(中身が欠けていることが分かるので) |
| 演習の設問 | 「【演習】この場面、どう動く?12問」——自事業所に関係する3問だけ抜きます |
| 確認テスト | 「【確認テスト20問】」——20分版なら10問に絞って構いません |
| 研修・訓練の記録様式 | 「研修・訓練の記録様式」——研修と訓練で紙を分けます |
| 場面別の具体例30 | 「放デイ・GH・生活介護で実際に起きる場面30」——レジュメの材料。全部は配らず、近いものを数件選びます |
感染症の研修が形だけになる、3つの原因

台本に入る前に、なぜ感染症の研修は効かないのかを整理しておきます。原因が分かっていれば、20分でも外しません。
原因1:「コロナで全部知っている」から始まる
手洗い、マスク、換気、消毒。職員はもう知っています。知っていることを20分聞かされると、研修は「確認作業」になり、誰も頭を使いません。
でも、知っていることと、夜勤で1人のときに順番どおりにできることは別です。手袋を外すとき、外側を素手で触っていないか。嘔吐物をアルコールで拭いていないか。「知っているのにできていない」ところだけを扱うのが、この記事の研修の考え方です。
原因2:「研修」をやって「訓練」をやった気になる
感染症対策は、研修と訓練が別々の義務です。研修は知識、訓練は発生したときに動けるかどうかの確認。講義を聞いただけでは訓練をしたことになりません。
そして運営指導で見られたとき、いちばん抜けているのが訓練の記録です。「研修の中で説明した」は訓練になりません。机上でも実地でも、役割分担を確認したり、実際に手を動かしたりした記録が要ります。
原因3:「職員が感染源になる」話をしない
障害福祉の事業所に感染症を持ち込むのは、多くの場合、利用者ではなく職員と、外から来る人です。送迎、家族、実習生、業者。そして、無理して出勤した職員。
ところが研修は「利用者をどう守るか」の話ばかりで、「体調が悪いとき、誰にどう言って休むか」の話をしません。休めない職場では、どれだけ研修をしても広がります。ここを研修で1分でも言うかどうかで、冬の結果が変わります。
| 削った | 残した |
|---|---|
| 感染経路の分類の講義 病原体ごとの特徴の網羅 手洗いの手順の説明 |
「全員が感染しているかもしれないものとして扱う」という1本の考え方(標準予防策) 嘔吐物処理を実際にやってみること 体調不良のときに休む・言うルール |
まず要件を確認する|4つの措置と、BCPとの関係

感染症の予防とまん延防止のための措置は、令和3年度の報酬改定で全サービスの運営基準に入り、3年間の経過措置(努力義務の期間)を経て令和6年4月から義務になっています。放課後等デイサービスなどの障害児通所支援も同じです。求められているのは次の4つで、1つでも欠けていれば運営基準違反です。
| 措置 | 頻度 | ポイント |
|---|---|---|
| ①委員会 | おおむね3か月に1回以上 +流行時期などに随時 |
結果を従業者に周知徹底する。オンライン可。専任の感染対策担当者を決める(看護師が望ましいとされる) |
| ②指針 | 整備 | 平常時の対策と発生時の対応を書く。厚労省の感染対策指針作成の手引き・ひな形がそのまま使えます |
| ③研修 | 年2回以上 +新規採用時に必ず |
感染対策の基礎的な知識と、指針に基づく衛生管理・衛生的な支援。研修の実施内容も記録する。調理や清掃を委託している場合は、委託先の人にも指針を周知する |
| ④訓練 | 年2回以上 | 役割分担の確認と、感染対策をしたうえでの支援の演習。机上と実地を組み合わせる |
従業者とは、支援員だけではない
研修の対象は全従業者です。感染症の研修では、ここが虐待や身体拘束以上に重要になります。調理担当は食中毒の、送迎の運転手は車内感染の、清掃担当は嘔吐物処理の当事者だからです。パート・非常勤・宿直専任も含めて、受講率の分母に入れてください。
減算はあるのか|BCP未策定減算とつながっている
誤解が多いので、はっきり書きます。感染症対策は義務です。ただ、虐待防止(未実施で1%減算)や身体拘束のような「感染症対策未実施減算」という独立した減算がないだけです。未実施は運営基準違反として、運営指導で文書指導や改善報告の対象になります。「減算がないから後回し」は通りません。
ただし、隣にある業務継続計画未策定減算(令和6年度改定で新設)とは地続きです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 減算率 | 施設・居住系は所定単位数の3%、その他のサービスは1% |
| 対象になる状態 | 感染症と非常災害の両方の業務継続計画が策定されていない、または計画に従って必要な措置が講じられていない |
| 経過措置 | 令和7年3月31日までは、感染症の予防及びまん延防止のための指針と非常災害に関する具体的計画があれば減算しない扱いでした。この経過措置はすでに終わっています |
BCPの研修・訓練と、一体でやってよい
ここが実務でいちばん効くポイントです。BCPにも研修と訓練(それぞれ年1回以上)の義務がありますが、感染症のBCPの研修・訓練は、感染症対策の研修・訓練と一体的に実施して差し支えないとされています。
| やり方 | 年間の実施 | 中身 |
|---|---|---|
| 別々にやる | 6本 | 感染症研修×2/感染症訓練×2/BCP研修×1/BCP訓練×1(BCPは年1回以上) |
| 一体でやる | 4本 (年2日で済む) |
研修×2:うち1回で「発生時に誰が何をするか(BCPの役割分担)」を扱う 訓練×2:うち1回を発生時シミュレーション(机上)にしてBCP訓練を兼ねる 「20分研修+15分訓練」を同じ日に、年2日 |
研修時間に法令上の定めはない|20分でいい理由

「感染症の研修は1時間くらいやるもの」と思われがちですが、研修時間を定めた条文はありません。運営指導で見られるのは時間ではなく、次の6点です。
- 研修と訓練を、それぞれ年2回以上実施しているか(前回からの間隔)
- 新規採用時に実施しているか(入職日と実施日。新規採用時は「必ず」とされています)
- 全従業者が受けているか(名簿と分母。欠席者のフォロー)
- 内容が指針に沿っているか(レジュメ・内容欄)
- 訓練が机上と実地の組み合わせになっているか(訓練記録)
- 委員会の結果が研修に反映されているか(委員会議事録との接続)
20分で削ってはいけない3つ
| 残すもの | 理由 |
|---|---|
| ①全員を「感染しているかも」として扱う | 標準予防策の考え方です。「この人は大丈夫」と判断して素手で触ったところから広がります。障害福祉では、本人が症状を言葉で伝えられないことが多いので、なおさら大事です |
| ②嘔吐物・便は、アルコールではなく塩素系で | ノロウイルスにはアルコールが効きにくい。ここを間違えると、処理した職員から広がります。知っているつもりの職員が、いちばん間違えるところです |
| ③体調が悪いときは、休む・言う | 誰に、何時までに、どう連絡するか。休んだ人を責めないと、管理者が研修で言うこと。これがないと、残りの知識が全部無駄になります |
削ってよいもの
感染経路(接触・飛沫・空気)の分類の講義、病原体ごとの潜伏期間の一覧、法律の成り立ち。必要な人がマニュアルで引けばよい内容です。厚生労働省の「障害福祉サービス施設・事業所職員のための感染対策マニュアル」をレジュメの参考資料として示しておけば足ります。
【20分版・講師台本】そのまま読める逐語スクリプト

ここが本命です。そのまま読み上げて20分になるように書いてあります。〔 〕は自分の事業所の言葉に置き換える場所です。準備するのは、レジュメ1枚(標準予防策の要点と連絡先)、後述の演習から3問だけ抜いた紙、そしてふだん置いてある嘔吐物処理セットの実物です。
| 時間 | 内容 | ねらい |
|---|---|---|
| 0〜2分 | 導入 | 「知っていることはやらない」と宣言する。手洗いの説明はしない |
| 2〜6分 | 1本の考え方 | 標準予防策を「全員を、感染しているかもしれない人として扱う」の一言で渡す |
| 6〜12分 | その場で3問 | 演習の設問を3問だけ。挙手で答え、割れたところだけ話す |
| 12〜16分 | 嘔吐・下痢が出たら | 処理セットの実物を見せながら、最初の5分の動き。発生時の役割分担(BCP)もここで |
| 16〜18分 | 休む・言う | 体調不良時の連絡先を実名と時刻で言い切る |
| 18〜20分 | 1つ決める | 「この冬、うちで変えること」を1つだけ決める |
0〜2分:導入
今日は感染症対策の研修です。20分で終わります。このあと15分、実際に手を動かす訓練をします。
最初に言っておきます。今日は、手洗いの手順の説明はしません。マスクの話もしません。皆さん、コロナで3年やってきて、もう知っていますよね。
今日やるのは、知っているのに、いざというときにできていないことだけです。
1つ質問します。答えは心の中でいいです。今、夜勤中に利用者さんが廊下で吐いたとします。嘔吐物を処理するセットは、どこにありますか。中に何が入っていますか。
〔※5秒待つ〕
——即答できた人は、たぶん半分くらいだと思います。今日の研修は、そこの話です。
2〜6分:1本の考え方
感染症対策の考え方は、たくさんあるように見えて、実は1本です。
「全員を、感染しているかもしれない人として扱う。」
これを標準予防策といいます。熱がある人だけ、咳をしている人だけに気をつけるのではありません。血液、便、尿、吐いたもの、痰や唾液、傷のある皮膚。これに触れるときは、相手が誰であっても、手袋をする。それだけです。
なぜ全員なのか。理由は2つあります。
1つは、症状が出る前から、うつすことがあるからです。元気そうに見えても、感染していることがあります。
もう1つは、ここが障害福祉ならではのところですが、利用者さんは、具合が悪いことを言葉で伝えられないことが多いからです。「お腹が痛い」と言えない方もいます。いつもより静か、いつもより落ち着かない、それがサインのこともあります。「あの人は大丈夫」という判断が、いちばん危ない。
それから、手袋について1つだけ。手袋を外したあとも、手を洗ってください。手袋は、外すときに手が汚れます。手袋をしたから大丈夫、ではありません。
6〜12分:その場で3問
後述の【演習】から、自分の事業所に関係する3問だけを選んで印刷してください。放課後等デイサービスならQ1・Q4・Q9、グループホームならQ2・Q6・Q11、生活介護ならQ3・Q7・Q10が議論になりやすい組み合わせです。
では、紙を見てください。3つの場面があります。それぞれ「このままでいい」「まずい」、どちらか手を挙げてください。
先に言っておきます。割れたら成功です。割れるということは、うちの中でやり方がそろっていないということです。それが分かるのが、今日の収穫です。
〔※1問ずつ読み上げ、挙手を取る。全員が同じ答えなら「そろっていますね」で次へ。割れた問題だけ、それぞれに理由を1人ずつ聞く〕
〔※最後に〕今、割れた場面は、次の委員会で、うちとしてのやり方を決めます。決まったら、また皆さんに伝えます。
12〜16分:嘔吐・下痢が出たら
これが、うちの嘔吐物処理セットです。ふだんは〔◯◯〕に置いてあります。中身を出します。
〔※手袋、マスク、エプロン、ペーパータオル、ビニール袋、塩素系の消毒液を1つずつ出す。足りないものがあれば、その場で「足りませんね」と言う〕
利用者さんが吐いたとき、最初の5分でやることは4つです。
1つ目、周りの人を離す。吐いたものは、思っているより遠くまで飛んでいます。
2つ目、窓を開ける。
3つ目、手袋・マスク・エプロンを着けてから、近づく。素手で先に拭かない。
4つ目、外側から内側に向かって、静かに拭き取る。拭いたあとは、アルコールではなく、塩素系の消毒液です。ノロウイルスには、アルコールが効きにくいからです。
そして処理が終わったら、〔責任者の役職・氏名〕に報告してください。2人目、3人目が出たときに、誰が何をするかは、うちの計画で決めてあります。〔※BCPの役割分担表を見せる。「連絡係は◯◯、利用者の対応は◯◯、物品の確認は◯◯」〕
このあとの訓練で、これを実際にやってもらいます。
16〜18分:休む・言う
最後に、いちばん大事なことを言います。
事業所に感染症を持ち込むのは、多くの場合、私たち職員です。
だから、お願いします。熱がある、吐いた、下痢をしている。家族がそうなっている。そういうときは、出勤する前に連絡してください。
連絡先は、〔役職・氏名〕、電話番号は〔◯◯〕です。〔◯時〕までに連絡をください。レジュメの下に書いてあります。
そして、休んだ人を責めることは、絶対にしません。人が足りなくなる日は、こちらで何とかします。無理して来てもらって広がるほうが、何倍も大変です。
18〜20分:1つ決める
今日の話を聞いて、この冬、うちで変えることを1つだけ書いてください。大きなことでなくていいです。
たとえば、「処理セットを2階にも置く」「手袋のサイズをそろえる」「送迎車にも処理セットを積む」。そういうことで十分です。
〔※紙を回収する〕
書いてもらったものは、次の委員会でまとめて、どれをやるか決めて、結果をお知らせします。それでは、このあと訓練に移ります。
この台本で、よくある失敗3つ
| 失敗 | 直し方 |
|---|---|
| 結局、手洗いの説明から始める | 「知っているでしょう」で飛ばしてください。手洗いの説明をすると、職員はそこで聞くのをやめます。貼り紙で足ります |
| 処理セットを見せずに言葉で説明する | 実物を持ってきてください。「どこにあるか」「何が足りないか」が分かることが、この研修のいちばん実務的な成果です |
| 「休む」の話を省略する | 時間が押したら、削るのは演習の問題数のほうです。休む・言うの2分は削らないでください |
【訓練】15分でできる3本|机上と実地を組み合わせる

訓練は、机上と実地を適切に組み合わせることが求められています。「実地」と聞くと大がかりに聞こえますが、15分で終わるもので十分です。訓練は年2回以上なので、下の3本から1回は実地、1回は机上を選ぶと、組み合わせの要件も自然に満たせます。20分版研修の直後にやるなら、訓練Aがいちばん合います。
訓練A(実地・15分):嘔吐物処理
| 時間 | やること |
|---|---|
| 準備 | 床に新聞紙を敷き、模擬の嘔吐物を置く(水で溶いた片栗粉やおかゆに、食紅を少し)。ふだんの処理セットを、ふだんの置き場所に置いたままにしておく |
| 0〜2分 | 「今、ここで利用者さんが吐きました」とだけ言い、1人を指名して、処理セットを取りに行くところから始めてもらう。説明はしない |
| 2〜8分 | 指名された人が処理する。他の職員は見ながら、「ここはうちのやり方と違う」と思ったところをメモする |
| 8〜12分 | メモを出し合う。とくに見るのは①周りの人を離したか ②手袋より先に何かを触っていないか ③外側から内側か ④手袋を外すときに外側を素手で触っていないか ⑤最後に手を洗ったか |
| 12〜15分 | 足りない物品、置き場所、手順のずれをその場で書き出す。これが訓練記録の「課題」欄になります |
訓練B(机上・15分):発生時シミュレーション
感染症BCPの訓練と一体で実施できるのがこの形です。紙1枚とホワイトボードで足ります。
- 【月曜 朝】利用者のAさんが、登所して30分後に嘔吐した。熱は37.8度。
→ 誰が何をするか。Aさんをどこで待たせるか。家族にはいつ誰が連絡するか。 - 【月曜 夕方】Aさんと同じグループの利用者Bさんも、下痢の症状が出た。職員のCさんが「自分もお腹の調子が悪い」と言っている。
→ Cさんを帰すか。明日の人員は足りるか。他の利用者と家族への連絡は。 - 【火曜 朝】職員2名が欠勤の連絡。利用者の症状は計5名に増えた。
→ サービスを縮小するか。どの業務をやめ、どの業務は続けるか。行政への報告は必要か。
3枚目の「どの業務をやめるか」で、議論がいちばん止まります。それでいいのです。BCPに書いてある優先業務と、現場が思っている優先業務がずれていることが分かるのが、この訓練の収穫です。
訓練C(実地・10分):防護具の着脱
新規採用者向けや、訓練Aの前段として使えます。2人1組で、1人が着けて外し、もう1人がチェック表を見るだけです。
| 順番 | 見るところ | できた |
|---|---|---|
| 着ける前 | 手を洗ったか(または手指消毒) | □ |
| 着ける | エプロン → マスク → 手袋の順か。手袋が最後 | □ |
| 外す① | 手袋から外したか。片方の手袋の外側をつまみ、裏返して外したか | □ |
| 外す② | もう片方は、素手の指を手袋の内側に入れて外したか | □ |
| 外す③ | エプロンの前面(汚れた面)に触れずに外したか | □ |
| 外したあと | 手を洗ったか | □ |
15分×4回の年間シリーズ|流行期の前に寄せる

感染症は、虐待や身体拘束と違って季節がはっきりしています。ノロウイルスとインフルエンザは冬、食中毒は夏。だから年間シリーズは均等に割らず、流行の前に寄せるのがコツです。感染症は研修2回・訓練2回(年2回以上ずつ)が必要です。これを、委員会に合わせた年4回の枠に割り振ります。委員会(おおむね3か月に1回)の直後に15分残す形にすると、委員会の周知も同時に済みます。
| 時期 | テーマ | 中身 |
|---|---|---|
| 5月 | 研修① 食中毒と夏の体調管理 |
調理・おやつ・弁当の管理、休む・言うルール。調理担当と送迎担当も必ず入れる。委員会の直後 |
| 8月 | 訓練①(机上) 発生時シミュレーション |
訓練B。感染症BCP訓練を兼ねると記録に書く。委員会の直後 |
| 11月 | 研修②+訓練②(実地) 20分版+嘔吐物処理 |
20分版台本(BCP研修を兼ねる)と訓練A。ノロの流行前に必ず実地で。この日だけ35分 |
| 2月 | 振り返り (上乗せ) |
この冬に起きたことを場面で振り返る。要件の回数には数えなくてよい上乗せ回。実際に起きたことを訓練Bの状況カードに差し替えると、いちばん効きます |
記録のルール
- 1回1枚。4回分を1枚にまとめない
- 研修と訓練は紙を分ける。同じ日にやっても2枚
- 分母は全従業者。調理・送迎・清掃・事務を含む
- BCPと一体でやった回は、研修名にそう書く(例:「感染症対策訓練(感染症BCP訓練を兼ねる)」)
- 委員会と同じ日でも、議事録と研修記録は分ける
研修を動画にして回す|ただし訓練の実地は集まる
シフトがそろわない、拠点が多い。そういう事業所では、研修を動画にするのが現実的です。研修は事業所内で行うものでも差し支えないとされ、方法は限定されていません。動画視聴でも、個人ごとの視聴記録があれば実施として説明できます。
ただし感染症には、ほかの研修にない注意点が1つあります。動画で済むのは「研修」だけで、「訓練」の実地部分は動画では代わりになりません。手袋を外す手順は、見るのとやるのとで全く違うからです。
章立て|5分以内×4本
| 本 | 長さ | 中身 |
|---|---|---|
| ①全員を、かもしれない人として | 4分 | 標準予防策の1本の考え方。台本の「2〜6分」 |
| ②この場面、どう動く? | 5分 | 演習の3問。動画を止めて考えてもらう。答えは視聴後の話し合いで |
| ③嘔吐・下痢が出たら | 5分 | 自事業所の処理セットと置き場所を撮る。中身を1つずつ出して見せる |
| ④休む・言う | 3分 | 管理者が自分で話す。連絡先・連絡の時刻・「休んだ人を責めない」 |
厚生労働省の研修動画を使う場合
厚生労働省は、「障害者支援施設及び障害福祉サービス事業所等職員のための感染症対策の研修会動画」を公開しています。①の代わりに使えます。使う場合も、③④の自事業所パートを足すことと、視聴記録を個人単位で残すことは同じです。動画の利用条件は掲載ページで確認してください。
視聴後の5分と、視聴管理表
- 処理セットは、どこにありますか。(口頭で答えてもらう)
- 体調が悪いとき、誰に、何時までに連絡しますか。
- ②の3問で、自分の答えと違ったものはありましたか。
| 氏名 | 職種 | 視聴日 | 確認者 | 確認(3問) | 訓練参加日 |
|---|---|---|---|---|---|
| 〔氏名〕 | 支援員 | 10/3 | 〔責任者〕 | 3問とも回答。処理セットの位置を2階と誤答→訂正 | 11/12 |
| 〔氏名〕 | 送迎 | 10/5 | 〔責任者〕 | 車内の処理セットがないことが判明→委員会へ | 11/12 |
| 〔氏名〕 | 調理 | 10/8 | 〔責任者〕 | 3問とも回答 | 欠席→11/20個別 |
動画化で、よくある失敗
| 失敗 | 直し方 |
|---|---|
| 動画だけで訓練も済ませたことにする | 訓練の実地は、動画では代わりになりません。訓練A(15分)だけは集まってやる |
| 「全員に共有した」で終わる | 個人ごとの視聴日と確認の記録がないと、実施の証明になりません |
| 外部の動画だけを流す | 処理セットの置き場所と連絡先が抜けます。③④の自事業所パートを足してください |
放デイ・GH・生活介護で実際に起きる場面30
レジュメの材料です。全部は配らず、自事業所に近いものを3〜5件選んでください。一般的な「感染経路の説明」より、自分の職場の場面のほうが確実に記憶に残ります。
放課後等デイサービス・児童発達支援(10)
| 場面 | なぜ危ないか・どうするか |
|---|---|
| 1 送迎車の中で嘔吐 | 車内に処理セットがない事業所が多い。座席の布に染みたものは拭き取りだけでは残る。車ごとにセットを積む |
| 2 おやつの手づかみ・取り分け | 大皿から手で取る形は、1人の手から全員に広がる。個包装か、職員が取り分ける |
| 3 おもちゃを口に入れる | 口に入れたおもちゃは、その日のうちに分けて洗う。「口に入れたもの」を入れるかごを決めておく |
| 4 トイレ介助のあとの手洗い | 子どもの手洗いを見届けて、職員自身が洗うのを忘れる。介助が続く時間帯ほど抜ける |
| 5 学校で流行している | 学校や学級の閉鎖情報は、保護者より先に入ることは少ない。学校との連絡や連絡帳で拾う仕組みを作る |
| 6 「朝は元気だった」 | 登所後に熱が上がる。保護者への連絡とお迎えまでの待機場所を先に決めておく |
| 7 マスクをつけられない | 感覚過敏などでマスクができない子に、無理にさせない。そのぶん距離と換気と職員側の対策で補う |
| 8 きょうだいが感染症 | 本人に症状がなくても、家庭内で広がっていることがある。利用の目安を保護者と事前に共有しておく |
| 9 手洗いを嫌がる | 水や石けんの感覚が苦手な子もいる。手順を絵カードにする、ウェットシートで代えるなど個別に |
| 10 プール・水遊び | 下痢の症状がある日は入らない。その判断を誰がするかを決めておく |
グループホーム(10)
| 場面 | なぜ危ないか・どうするか |
|---|---|
| 11 夜中に居室で嘔吐 | 夜勤は1人。処理セットの置き場所を夜勤者が知っているか。応援を呼ぶ基準と連絡先 |
| 12 共用トイレが1つ | 下痢の症状がある人が出たら、トイレを分けられるか。分けられないなら、使用後の消毒の手順 |
| 13 タオルの共用 | 洗面所のタオルを共用している。ペーパータオルか個人用に |
| 14 汚れたシーツ・衣類の洗濯 | 嘔吐物や便がついたものを、そのまま洗濯機に入れる。先に下洗いと消毒。下洗いは手袋・エプロンで |
| 15 食事を一緒に作る | 利用者と職員が一緒に調理する場面。体調が悪い人は調理に入らないルールを、利用者にも分かる形で |
| 16 日中活動先で流行 | 通所先で出た情報が、夜のホームに届いていない。日中の事業所との連絡経路を決めておく |
| 17 家族の面会・帰省から戻る | 帰省先で感染して戻ることがある。戻った日の体調確認を記録に残す |
| 18 症状を言わない・言えない | 「お腹痛い」と言えない。食事量・トイレの回数・表情の変化を申し送りで拾う |
| 19 居室に閉じこもってもらえない | 症状がある人に居室で過ごしてもらうのが難しい場合がある。無理に閉じ込めない(身体拘束・虐待の問題になります)。共用スペースの使い方と消毒で補う |
| 20 服薬介助 | 薬を手のひらに出して渡す。介助の前後の手洗い。症状がある人の介助は最後に回す |
生活介護・就労系(10)
| 場面 | なぜ危ないか・どうするか |
|---|---|
| 21 食事介助で複数人を順番に | 1人終わるごとに手指衛生。エプロンを替えずに次の人へ行っていないか |
| 22 おむつ交換の連続 | 手袋を替えずに2人目へ。1人1組、外したら手を洗う |
| 23 入浴の順番 | 皮膚に症状がある人、下痢の症状がある人は最後に。浴槽の清掃も |
| 24 作業で使う道具の共用 | 軍手、はさみ、エプロン。共用のものは誰がいつ洗うかを決める |
| 25 食品を扱う作業 | パンや弁当の製造・販売。下痢・嘔吐の症状がある人は作業に入らない。利用者本人が言えない場合の確認方法も |
| 26 送迎の乗り合わせ | 車内で咳をしている人がいる。換気と座席の配置。症状がある人の送迎は別便にできるか |
| 27 痰の吸引・経管栄養 | 医療的ケアがある人は、本人が重症化しやすい。担当職員の体調管理を特に厳しく |
| 28 てんかん発作時の対応 | とっさに素手で口元に触れる。発作時もまず手袋が取れる位置に置いておく |
| 29 ボランティア・実習生 | 外から来る人の体調確認を職員と同じ基準でしているか |
| 30 昼休みの職員の休憩室 | 職員どうしでマスクを外して食事をする場面で広がる。職員間の感染が、そのまま人員不足になる |
【演習】この場面、どう動く?|研修で配る12問
そのまま印刷して配れる設問です。20分版なら3問だけ抜いて使ってください。放課後等デイサービスならQ1・Q4・Q9、グループホームならQ2・Q6・Q11、生活介護ならQ3・Q7・Q10を軸にすると議論になります。
どうすればよかったか:車ごとに処理セットを積む。嘔吐があったら、その便の送迎を終えたあとで塩素系で消毒してから次の送迎に使う。拭き取った運転手自身の手洗いも。
どうすればよかったか:「2人目が出たら、夜中でも〔責任者〕に電話する」と決めておく。応援を呼ぶ基準が決まっていないことが問題です。
どうすればよかったか:1人ごとに手指衛生。手袋を使うなら1人ごとに交換し、外したら手指衛生。
どうすればよかったか:他の子と離れて過ごせる場所と、付き添う職員を事前に決めておく。お迎えの目安(何度以上で連絡するか)を、利用開始時に保護者と共有しておく。
どうすればよかったか:出勤する場合は、マスクの着用、毎日の体調確認、症状が出たらすぐ帰る、を約束する。家族が感染したときの出勤の目安を、指針か就業ルールに書いておくと、毎回迷いません。
どうすればよかったか:トイレを分けられるなら分ける。分けられないなら、使用のたびに便座・レバー・ドアノブ・手すりを塩素系で消毒する。タオルは共用をやめてペーパータオルに。
どうすればよかったか:処理セットに塩素系の消毒液と、その作り方を入れておく。「手指はアルコール、嘔吐物は塩素系」を分けて覚える。
どうすればよかったか:復帰後しばらくは調理を外れる、入る場合は手洗いを特に徹底する、など調理担当の復帰の目安を決めておく。
どうすればよかったか:本人にさせない代わりに、換気・距離・職員側の対策で補っていることを具体的に説明する。個別の事情は伏せたうえで、「一人ひとりに合わせた対策をしている」と伝える。
どうすればよかったか:発作がある方の近くには、手袋を常に置いておく(ポケットに1組入れておく事業所もあります)。素手で触れたら、終わったあとすぐ手を洗う。
どうすればよかったか:本人に分かる形で説明し、居室で過ごしやすくする工夫をする。出てきた場合は、リビングの時間帯を分ける、換気と消毒で補う。感染対策の指針に、こうした場合の考え方を書いておく。
どうすればよかったか:報告の基準を、管理者が流行期の前に確認しておく。詳しくは後述の「発生時の初動と行政報告」。
【確認テスト20問】研修の最後に配る理解度チェック
そのまま印刷して使える◯×問題です。研修記録の「理解度の確認」欄は、これを添付するだけで埋まります。20分版なら前半10問で十分です。新規採用時の研修にも使えます。
基本編(1〜10問)
実務編(11〜20問)
- 点数は記録しなくて構いません。記録するのは「提出人数」と「誤答が多かった問題」だけ
- 誤答が集まりやすいのはQ3(アルコール)・Q4(拭く向き)・Q8(回数)・Q12(外す順番)・Q15(鍵)です
- Q15を間違えた職員が多い場合は、身体拘束適正化研修で扱い直してください
発生時の初動と行政報告|管理者が流行期の前に読む節

ここは研修で職員に話す内容ではなく、管理者と感染対策担当者が知っておく内容です。発生してから調べると、確実に遅れます。
最初の24時間でやること
- 症状のある人を分ける。利用者なら別室や居室、職員なら帰宅
- 記録を始める。いつ、誰に、どんな症状が出たか。利用者と職員を1枚の表に、日付順に。これが後で保健所に聞かれる情報のすべてになります
- 家族・主治医に連絡する。利用者の受診の要否を相談
- 消毒の範囲を広げる。トイレ、ドアノブ、手すり、共用のテーブル
- 2人目が出たら、BCPを開く。人員・優先業務・連絡体制を、計画に書いたとおりに動かす
行政への報告が求められる基準
社会福祉施設等では、感染症や食中毒が発生した場合に、次のいずれかに当てはまると、市町村等の社会福祉施設等主管部局への報告と、保健所への連絡が求められています(厚生労働省「社会福祉施設等における感染症等発生時に係る報告について」)。
| 基準 | 内容 |
|---|---|
| ア | 同一の感染症や食中毒による、またはそれが疑われる死亡者・重篤患者が1週間以内に2名以上 |
| イ | 同一の感染症や食中毒の患者、またはそれが疑われる者が10名以上、または全利用者の半数以上 |
| ウ | ア・イに当たらなくても、通常の発生動向を上回る感染症等の発生が疑われ、特に施設長が報告を必要と認めた場合 |
利用や出勤の再開の目安
職員の出勤停止については、法律で一律に決まった日数はありません(食品を扱う業務などは別の規制があります)。事業所で目安を決めて、指針か就業のルールに書いておく必要があります。参考になるのが、学校保健安全法の出席停止の基準です。放課後等デイサービスの子どもは学校でこの基準が適用されているので、学校と事業所で扱いがずれないようにする意味もあります。
| 感染症 | 出席停止の期間の基準 |
|---|---|
| インフルエンザ | 発症した後5日を経過し、かつ、解熱した後2日(幼児は3日)を経過するまで |
| 新型コロナウイルス感染症 | 発症した後5日を経過し、かつ、症状が軽快した後1日を経過するまで |
| 感染性胃腸炎(ノロなど) | 一律の日数の定めはなく、症状により医師が判断。ただし症状がおさまった後も便からウイルスが出ることがあるとされるので、調理や食事介助への復帰は慎重に |
感染対策委員会と指針を、現実的に回す
研修・訓練とセットで義務になっているのが、委員会と指針です。ここも、条件は思っているより緩いことを知るだけで動き出します。
委員会:思っているより、条件は緩い
| よくある思い込み | 実際 |
|---|---|
| 単独の会議を新たに立てないといけない | 原則は他の委員会と独立して設置します。ただし、関係する職種や扱う事項が相互に関係の深い会議体があれば、一体的に設置・運営して差し支えないとされています。事業所会議の時間を使う場合も、議事録は「感染対策委員会」として独立させるのが安全です |
| 集まって対面でやらないといけない | テレビ電話装置等(オンライン)でも可です |
| 医師や看護師がいないと成立しない | 必須ではありません。構成は幅広い職種が望ましく、感染対策担当者は看護師が望ましい、外部の感染管理の専門家を積極的に活用することが望ましいとされています。看護師がいない事業所は、協力医療機関や保健所の助言を議事録に残す形でも意味があります |
| 毎月やらないといけない | 通所・居住・入所系はおおむね3か月に1回以上(訪問系は6か月に1回以上)。加えて、流行の時期などに必要に応じて随時開きます |
委員会で話すこと|そのまま議事次第に使える4項目
| 議題 | 話すこと |
|---|---|
| ①発生状況 | 前回からの感染症の発生(利用者・職員)、欠勤の状況、地域の流行状況 |
| ②研修・訓練の結果 | 演習で割れた場面、確認テストで誤答が多かった問題、訓練で見つかった物品の不足。ここで事業所としてのやり方を決める |
| ③物品と環境 | 処理セットの中身と置き場所、防護具の在庫、消毒液の期限 |
| ④指針・BCPの見直し | ①〜③を受けて、指針とBCPに書き足すこと・直すこと |
指針:ひな形を使って、自事業所の言葉にする
厚生労働省が「障害福祉サービス事業所等における感染対策指針作成の手引き」と指針のひな形を公開しています。ゼロから作る必要はありません。ただし、ひな形をそのまま綴じただけの指針は、研修で使えません。
- 感染対策担当者の役職と氏名
- 処理セットの置き場所(フロアごと、送迎車ごと)
- 職員が体調不良のときの連絡先と連絡の時刻
- 行政報告と保健所の連絡先
- 居室で過ごしてもらうのが難しい利用者への対応の考え方(身体拘束にならない範囲で)
研修・訓練の記録様式
そのままコピーして使える様式です。研修と訓練で紙を分けるのが、感染症の記録でいちばん大事な点です。
様式1:感染症対策研修 実施記録
| 欄 | 記入例 | 注意点 |
|---|---|---|
| 研修名 | 感染症対策研修(第2回) (感染症BCP研修を兼ねる) |
年2回のうち何回目か、または「新規採用時」かを書く。BCPと一体で実施したなら、そのことも |
| 実施日時 | 〔◯年◯月◯日〕 17:30〜17:50(20分) |
前回から間があきすぎていないか。時間が20分でも問題ありません |
| 実施方法 | 集合研修/動画視聴 | 実態どおりに書く |
| 講師 | 〔役職・氏名〕 | 外部研修なら主催者名と研修名 |
| 対象/受講者 | 全従業者〔◯〕名中 〔◯〕名受講 |
分母は調理・送迎・清掃・事務を含む全従業者。名簿を添付 |
| 欠席者対応 | 〔◯〕名欠席。 〔◯月◯日〕に動画視聴予定 |
空欄にしない |
| 内容 | ①標準予防策(全員を対象とする考え方、手袋の外し方) ②場面演習3問(送迎車内の嘔吐・食事介助・共用トイレ) ③嘔吐物処理の手順と発生時の役割分担(BCP) ④体調不良時の連絡ルール |
3行以上。「感染症について」の1行では中身を疑われます |
| 使用資料 | レジュメ1枚 演習用紙 確認テスト |
現物を添付 |
| 理解度の確認 | 確認テスト実施(提出〔◯〕名)。Q3の誤答が多く、塩素系とアルコールの使い分けを補足 | 結果の要約を1行 |
| 次回への申し送り | 処理セットの手袋のサイズが1種類のみ→委員会で追加を検討 | この欄があると、研修が単発でないことが伝わります |
様式2:感染症対策訓練 実施記録
| 欄 | 書くこと |
|---|---|
| 訓練名 | 感染症対策訓練(第2回・実地) ※BCPと一体なら「感染症BCP訓練を兼ねる」と併記 |
| 実施日時・場所 | 〔◯月◯日〕17:50〜18:05(15分)/〔1階廊下〕 |
| 形式 | 実地/机上のどちらか(または両方)を明記。年2回の中で両方がそろっていることが見えるように |
| 想定 | 例:夜勤中に利用者が廊下で嘔吐。夜勤者1名で対応 |
| 参加者 | 氏名と役割(処理役・観察役など) |
| 確認した手順 | 周囲の人を離す/換気/防護具の着用/外側から内側へ拭き取り/塩素系で消毒/手袋から外す/手指衛生/報告 |
| 見つかった課題 | ここがいちばん大事な欄です。例:処理セットのエプロンが切れていた。消毒液の作り方が貼っていない。手袋を外すときに外側に触れていた |
| 改善策と期限 | 例:エプロンを補充(〔◯月◯日〕まで、担当〔◯◯〕)。作り方を処理セットに貼る |
様式3:新規採用時研修の記録
| 欄 | 書くこと |
|---|---|
| 対象者 | 氏名・職種・入職日 |
| 実施日 | 配属前か、入職後すぐ。新規採用時の感染対策研修は「必ず」とされています。流行期に入職した人ほど急ぐ |
| 内容 | 標準予防策/処理セットの場所と中身/体調不良時の連絡ルール/防護具の着脱(訓練C) |
| 確認 | 確認テスト10問、着脱チェック表 |
| 実施者 | 感染対策担当者または管理者の氏名 |
運営指導で見られるポイントと、記録のNG5
指摘されるのは、ほぼ記録です。感染症で特に多いNGを5つ挙げます。
| NG | 何が問題か | 直し方 |
|---|---|---|
| 研修・訓練が年1回しかない | 虐待防止などと同じ年1回で済ませている | 通所・居住・入所系は研修・訓練とも年2回以上。訓練は研修とは別の紙に記録する |
| 訓練が机上だけ | 「机上と実地の組み合わせ」になっていない | 年に1回は実地(嘔吐物処理など)を入れる |
| BCPと一体でやったのに書いていない | BCPの研修・訓練をやった証拠にならない | 研修名・訓練名に「感染症BCP研修(訓練)を兼ねる」と書く |
| 分母に調理・送迎が入っていない | 全従業者への実施にならない | 全従業者の名簿で分母を作る |
| 委員会議事録に周知の記載がない | 「従業者への周知徹底」が欠ける | 議事録末尾に周知の方法と日付を1行 |
よくある質問
まとめ
最後に、この記事でいちばん伝えたいことを5つだけ。
- 研修は20分、訓練は15分でいい。ただし年2回ずつ。時間に法令上の定めはありませんが、回数は虐待防止・身体拘束より多い。研修と訓練は別々に記録します
- 手洗いの説明はしない。「処理セットはどこにありますか」から始めて、知っているのにできていないことだけを扱います
- 嘔吐物は塩素系で、外側から内側へ。これだけは実際に手を動かして覚えてもらいます
- 休む・言う。連絡先を実名で言い、「休んだ人を責めない」を管理者が自分の口で言います
- BCPと一体で回す。感染症BCPの研修・訓練は一体で実施でき、年間の回数を減らせます。記録にそう書くこと
この記事の台本・設問・テスト・様式は、すべてコピーして自事業所用に書き換えて使ってください。〔 〕の中を自分の事業所の言葉に置き換えたら、それはもう自事業所の研修資料です。
参考にした一次情報
・厚生労働省「障害福祉サービス施設・事業所職員のための感染対策マニュアル」(入所系・通所系・訪問系)
・厚生労働省「障害福祉サービス事業所等における感染対策指針作成の手引き」
・厚生労働省「障害福祉サービス事業所等における新型コロナウイルス感染症発生時の業務継続ガイドライン」
・厚生労働省「社会福祉施設等における感染症等発生時に係る報告について」
・厚生労働省「障害者支援施設及び障害福祉サービス事業所等職員のための感染症対策の研修会動画」
・厚生労働省「令和6年度障害福祉サービス等報酬改定における主な改定内容」
・厚生労働省「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく指定障害福祉サービスの事業等の人員、設備及び運営に関する基準について」(解釈通知)
・こども家庭庁「児童福祉法に基づく指定通所支援の事業等の人員、設備及び運営に関する基準について」(解釈通知)
・学校保健安全法施行規則
本記事は上記をもとに、障害福祉の実務向けに整理したものです。研修・訓練・委員会の頻度や報告先は、サービス種別と指定権者によって扱いが異なる場合があります。必ず自治体の集団指導資料と出典元でご確認ください。


