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障害福祉
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感染症対策研修【障害福祉版】20分で終わる講師台本・15分訓練・確認テスト20問|放デイ・GH・生活介護

感染症対策 研修と訓練のすべてがここに 障害福祉版 20分台本・15分訓練・確認テスト20問
ユイン
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感染症の研修を任されると、たいてい「手洗いは大事です」「マスクをしましょう」で終わります。コロナを3年経験した職員たちは、もう全部知っている顔をして聞いている。そして冬、夜のグループホームで利用者が嘔吐したとき、誰も手袋とエプロンの場所を即答できない。

この記事は、その研修を20分の研修と15分の訓練に作り直すために書きました。

研修時間に法令上の定めはありません。運営基準が求めているのは、感染症の予防とまん延防止のための研修と訓練を定期的に実施することです。何分やれという条文はありません。そして感染症は、虐待や身体拘束と違って「知っている」と「できる」の差がいちばん大きいテーマです。だからこの記事の主役は講義ではなく、20分で読み切る講師台本と、嘔吐物処理を実際に手を動かしてやる15分の訓練です。

この記事でわかること
  • そのまま読み上げるだけの【20分版・講師台本】(逐語)
  • 机上と実地を組み合わせた15分でできる訓練3本と、その記録の残し方
  • BCP(感染症)の研修・訓練と一体で実施して、年間の回数を減らす組み方
  • 15分×4回の年間シリーズと、動画研修の章立て
  • 放デイ・GH・生活介護で実際に起きる場面別の具体例30と、判断が割れる演習12問
  • 確認テスト20問、研修・訓練の記録様式、発生時の行政報告の基準
同じ形式で、身体拘束適正化研修【障害福祉版】と虐待防止研修【障害福祉版】もまとめています。どれも要件が別なので、研修の記録は分けてください。
Contents
  1. この記事の使い方|まず「20分+15分」の形を選ぶ
  2. 感染症の研修が形だけになる、3つの原因
  3. まず要件を確認する|4つの措置と、BCPとの関係
  4. 研修時間に法令上の定めはない|20分でいい理由
  5. 【20分版・講師台本】そのまま読める逐語スクリプト
  6. 【訓練】15分でできる3本|机上と実地を組み合わせる
  7. 15分×4回の年間シリーズ|流行期の前に寄せる
  8. 研修を動画にして回す|ただし訓練の実地は集まる
  9. 放デイ・GH・生活介護で実際に起きる場面30
  10. 【演習】この場面、どう動く?|研修で配る12問
  11. 【確認テスト20問】研修の最後に配る理解度チェック
  12. 発生時の初動と行政報告|管理者が流行期の前に読む節
  13. 感染対策委員会と指針を、現実的に回す
  14. 研修・訓練の記録様式
  15. 運営指導で見られるポイントと、記録のNG5
  16. よくある質問
  17. まとめ
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この記事の使い方|まず「20分+15分」の形を選ぶ

感染症対策の研修20分と訓練15分を同じ日に続けて行い、年2日で研修2回・訓練2回をそろえる基本形の図

先に地図を置きます。この記事は長いので、全部読む必要はありません。感染症がほかの研修と違うのは、「研修」と「訓練」が別々の義務になっていることです。なので、最初に決めるのは研修と訓練をどう組み合わせるかです。

4つの形。迷ったら「20分研修+15分訓練」を同じ日に、年2回
形 こういう事業所 読むところ
20分+15分
(おすすめ)
時間が取れない。ほとんどの事業所 【20分版・講師台本】を読み上げ、続けて「嘔吐物処理の実地訓練」を15分。計35分で研修と訓練が1回ずつ終わります。感染症は研修・訓練とも年2回以上なので、これを年2日
15分×4回 流行期に合わせて手厚くしたい 「15分×4回の年間シリーズ」。流行前の10〜11月に訓練を寄せる形
動画+実地 シフトがそろわない・多拠点 「研修を動画にして回す」。研修は動画でよいが、訓練の実地部分だけは集まってやるという設計です
外部研修+伝達 自分で話す自信がない 後述のFAQ。ただし訓練は外部研修で代わりになりません。自事業所の物品と動線でやる必要があります
長い研修がよい研修ではありません。感染症はとくにそうです。60分の講義を聞いた職員より、15分で1回、手袋とエプロンを実際に着けて嘔吐物(模擬)を処理した職員のほうが、夜勤で確実に動けます。

どの形でも、共通で使うもの

準備するのはこの5つだけ
使うもの どこにあるか
嘔吐物処理セット 実物を1セット。研修のために新しく買うのではなく、ふだん置いてあるセットをそのまま持ってくるのがポイントです(中身が欠けていることが分かるので)
演習の設問 「【演習】この場面、どう動く?12問」——自事業所に関係する3問だけ抜きます
確認テスト 「【確認テスト20問】」——20分版なら10問に絞って構いません
研修・訓練の記録様式 「研修・訓練の記録様式」——研修と訓練で紙を分けます
場面別の具体例30 「放デイ・GH・生活介護で実際に起きる場面30」——レジュメの材料。全部は配らず、近いものを数件選びます
後半の「発生時の初動と行政報告」「委員会と指針」は、初回は読まなくて構いません。ただし管理者は、流行期に入る前に一度だけ「行政報告の基準」に目を通しておいてください。発生してから調べると、確実に遅れます。

感染症の研修が形だけになる、3つの原因

感染症の研修が形だけになる3つの原因と、研修で削ったもの・残したものの図

台本に入る前に、なぜ感染症の研修は効かないのかを整理しておきます。原因が分かっていれば、20分でも外しません。

原因1:「コロナで全部知っている」から始まる

手洗い、マスク、換気、消毒。職員はもう知っています。知っていることを20分聞かされると、研修は「確認作業」になり、誰も頭を使いません。

でも、知っていることと、夜勤で1人のときに順番どおりにできることは別です。手袋を外すとき、外側を素手で触っていないか。嘔吐物をアルコールで拭いていないか。「知っているのにできていない」ところだけを扱うのが、この記事の研修の考え方です。

原因2:「研修」をやって「訓練」をやった気になる

感染症対策は、研修と訓練が別々の義務です。研修は知識、訓練は発生したときに動けるかどうかの確認。講義を聞いただけでは訓練をしたことになりません。

そして運営指導で見られたとき、いちばん抜けているのが訓練の記録です。「研修の中で説明した」は訓練になりません。机上でも実地でも、役割分担を確認したり、実際に手を動かしたりした記録が要ります。

原因3:「職員が感染源になる」話をしない

障害福祉の事業所に感染症を持ち込むのは、多くの場合、利用者ではなく職員と、外から来る人です。送迎、家族、実習生、業者。そして、無理して出勤した職員。

ところが研修は「利用者をどう守るか」の話ばかりで、「体調が悪いとき、誰にどう言って休むか」の話をしません。休めない職場では、どれだけ研修をしても広がります。ここを研修で1分でも言うかどうかで、冬の結果が変わります。

この記事の研修で削ったもの・残したもの
削った 残した
感染経路の分類の講義
病原体ごとの特徴の網羅
手洗いの手順の説明
「全員が感染しているかもしれないものとして扱う」という1本の考え方(標準予防策)
嘔吐物処理を実際にやってみること
体調不良のときに休む・言うルール
手洗いの手順は、洗面所に貼ってあるポスターで足ります。研修の時間は、貼り紙では伝わらないことに使ってください。

まず要件を確認する|4つの措置と、BCPとの関係

障害福祉の感染症対策で求められる4つの措置(委員会おおむね3か月に1回以上・指針・研修年2回以上と新規採用時・訓練年2回以上)の図

感染症の予防とまん延防止のための措置は、令和3年度の報酬改定で全サービスの運営基準に入り、3年間の経過措置(努力義務の期間)を経て令和6年4月から義務になっています。放課後等デイサービスなどの障害児通所支援も同じです。求められているのは次の4つで、1つでも欠けていれば運営基準違反です。

感染症対策で求められる4つの措置(通所・居住・入所系)
措置 頻度 ポイント
①委員会 おおむね3か月に1回以上
+流行時期などに随時
結果を従業者に周知徹底する。オンライン可。専任の感染対策担当者を決める(看護師が望ましいとされる)
②指針 整備 平常時の対策と発生時の対応を書く。厚労省の感染対策指針作成の手引き・ひな形がそのまま使えます
③研修 年2回以上
+新規採用時に必ず
感染対策の基礎的な知識と、指針に基づく衛生管理・衛生的な支援。研修の実施内容も記録する。調理や清掃を委託している場合は、委託先の人にも指針を周知する
④訓練 年2回以上 役割分担の確認と、感染対策をしたうえでの支援の演習。机上と実地を組み合わせる
回数は、虐待防止や身体拘束より多いので注意してください。虐待防止・身体拘束の研修は年1回以上ですが、感染症は研修も訓練も年2回以上です。居宅介護などの訪問系は、委員会がおおむね6か月に1回以上、研修・訓練が年1回以上と扱いが分かれます。新規採用時の研修も、通所・居住・入所系は「必ず感染対策研修を実施することが重要」とされています(訪問系は「望ましい」)。入職者が出るたびに実施し、1人1枚の記録を残してください。

従業者とは、支援員だけではない

研修の対象は全従業者です。感染症の研修では、ここが虐待や身体拘束以上に重要になります。調理担当は食中毒の、送迎の運転手は車内感染の、清掃担当は嘔吐物処理の当事者だからです。パート・非常勤・宿直専任も含めて、受講率の分母に入れてください。

減算はあるのか|BCP未策定減算とつながっている

誤解が多いので、はっきり書きます。感染症対策は義務です。ただ、虐待防止(未実施で1%減算)や身体拘束のような「感染症対策未実施減算」という独立した減算がないだけです。未実施は運営基準違反として、運営指導で文書指導や改善報告の対象になります。「減算がないから後回し」は通りません。

ただし、隣にある業務継続計画未策定減算(令和6年度改定で新設)とは地続きです。

業務継続計画(BCP)未策定減算の要点
項目 内容
減算率 施設・居住系は所定単位数の3%、その他のサービスは1%
対象になる状態 感染症と非常災害の両方の業務継続計画が策定されていない、または計画に従って必要な措置が講じられていない
経過措置 令和7年3月31日までは、感染症の予防及びまん延防止のための指針と非常災害に関する具体的計画があれば減算しない扱いでした。この経過措置はすでに終わっています
つまり、感染症の指針だけで乗り切れた期間は終わりました。今は感染症のBCPそのものが必要です。まだ指針しかない事業所は、研修より先にBCPの策定を確認してください。

BCPの研修・訓練と、一体でやってよい

ここが実務でいちばん効くポイントです。BCPにも研修と訓練(それぞれ年1回以上)の義務がありますが、感染症のBCPの研修・訓練は、感染症対策の研修・訓練と一体的に実施して差し支えないとされています。

年間で見ると、ここまで減らせる
やり方 年間の実施 中身
別々にやる 6本 感染症研修×2/感染症訓練×2/BCP研修×1/BCP訓練×1(BCPは年1回以上)
一体でやる 4本
(年2日で済む)
研修×2:うち1回で「発生時に誰が何をするか(BCPの役割分担)」を扱う
訓練×2:うち1回を発生時シミュレーション(机上)にしてBCP訓練を兼ねる
「20分研修+15分訓練」を同じ日に、年2日
一体で実施した場合は、記録にそう書いてください。「感染症対策研修(感染症BCP研修を兼ねる)」のように、研修名に両方が入っていないと、BCPの研修をやった証拠になりません。自然災害のBCPは別なので、こちらは防災訓練などと組み合わせます。

研修時間に法令上の定めはない|20分でいい理由

感染症対策研修を20分にしても削ってはいけない3つ(標準予防策・嘔吐物は塩素系・休む言う)の図

「感染症の研修は1時間くらいやるもの」と思われがちですが、研修時間を定めた条文はありません。運営指導で見られるのは時間ではなく、次の6点です。

運営指導で見られるのは、この6点
  1. 研修と訓練を、それぞれ年2回以上実施しているか(前回からの間隔)
  2. 新規採用時に実施しているか(入職日と実施日。新規採用時は「必ず」とされています)
  3. 全従業者が受けているか(名簿と分母。欠席者のフォロー)
  4. 内容が指針に沿っているか(レジュメ・内容欄)
  5. 訓練が机上と実地の組み合わせになっているか(訓練記録)
  6. 委員会の結果が研修に反映されているか(委員会議事録との接続)
どれも時間の長さとは関係ありません。20分でも、この6点に答えられる記録があれば説明は通ります。逆に90分やっても、記録がなければ説明は通りません。

20分で削ってはいけない3つ

ここだけは、どんなに短くしても残す
残すもの 理由
①全員を「感染しているかも」として扱う 標準予防策の考え方です。「この人は大丈夫」と判断して素手で触ったところから広がります。障害福祉では、本人が症状を言葉で伝えられないことが多いので、なおさら大事です
②嘔吐物・便は、アルコールではなく塩素系で ノロウイルスにはアルコールが効きにくい。ここを間違えると、処理した職員から広がります。知っているつもりの職員が、いちばん間違えるところです
③体調が悪いときは、休む・言う 誰に、何時までに、どう連絡するか。休んだ人を責めないと、管理者が研修で言うこと。これがないと、残りの知識が全部無駄になります

削ってよいもの

感染経路(接触・飛沫・空気)の分類の講義、病原体ごとの潜伏期間の一覧、法律の成り立ち。必要な人がマニュアルで引けばよい内容です。厚生労働省の「障害福祉サービス施設・事業所職員のための感染対策マニュアル」をレジュメの参考資料として示しておけば足ります。

「20分では短すぎると言われないか」という質問には、こう答えてください。「研修は20分。そのかわり、訓練を15分、別に実地でやっています。」研修だけ長くして訓練をしていない事業所より、はるかに説明が通ります。

【20分版・講師台本】そのまま読める逐語スクリプト

感染症対策研修20分版の時間配分(導入・考え方・3問・嘔吐下痢・休む言う・1つ決める)の図

ここが本命です。そのまま読み上げて20分になるように書いてあります。〔 〕は自分の事業所の言葉に置き換える場所です。準備するのは、レジュメ1枚(標準予防策の要点と連絡先)、後述の演習から3問だけ抜いた紙、そしてふだん置いてある嘔吐物処理セットの実物です。

20分の配分
時間 内容 ねらい
0〜2分 導入 「知っていることはやらない」と宣言する。手洗いの説明はしない
2〜6分 1本の考え方 標準予防策を「全員を、感染しているかもしれない人として扱う」の一言で渡す
6〜12分 その場で3問 演習の設問を3問だけ。挙手で答え、割れたところだけ話す
12〜16分 嘔吐・下痢が出たら 処理セットの実物を見せながら、最初の5分の動き。発生時の役割分担(BCP)もここで
16〜18分 休む・言う 体調不良時の連絡先を実名と時刻で言い切る
18〜20分 1つ決める 「この冬、うちで変えること」を1つだけ決める

0〜2分:導入

[読み上げ]

今日は感染症対策の研修です。20分で終わります。このあと15分、実際に手を動かす訓練をします。

最初に言っておきます。今日は、手洗いの手順の説明はしません。マスクの話もしません。皆さん、コロナで3年やってきて、もう知っていますよね。

今日やるのは、知っているのに、いざというときにできていないことだけです。

1つ質問します。答えは心の中でいいです。今、夜勤中に利用者さんが廊下で吐いたとします。嘔吐物を処理するセットは、どこにありますか。中に何が入っていますか。

〔※5秒待つ〕

——即答できた人は、たぶん半分くらいだと思います。今日の研修は、そこの話です。

この問いで会場の空気が変わります。「知っている話」から「できていないかもしれない話」へ移すのが、最初の2分の唯一の仕事です。

2〜6分:1本の考え方

[読み上げ]

感染症対策の考え方は、たくさんあるように見えて、実は1本です。

「全員を、感染しているかもしれない人として扱う。」

これを標準予防策といいます。熱がある人だけ、咳をしている人だけに気をつけるのではありません。血液、便、尿、吐いたもの、痰や唾液、傷のある皮膚。これに触れるときは、相手が誰であっても、手袋をする。それだけです。

なぜ全員なのか。理由は2つあります。

1つは、症状が出る前から、うつすことがあるからです。元気そうに見えても、感染していることがあります。

もう1つは、ここが障害福祉ならではのところですが、利用者さんは、具合が悪いことを言葉で伝えられないことが多いからです。「お腹が痛い」と言えない方もいます。いつもより静か、いつもより落ち着かない、それがサインのこともあります。「あの人は大丈夫」という判断が、いちばん危ない。

それから、手袋について1つだけ。手袋を外したあとも、手を洗ってください。手袋は、外すときに手が汚れます。手袋をしたから大丈夫、ではありません。

ここを4分で切ってください。感染経路の分類や病原体の説明を始めると、確実に15分かかります。知識の網羅ではなく、「全員を」という1本の考え方だけを渡すのがこの台本の設計です。

6〜12分:その場で3問

後述の【演習】から、自分の事業所に関係する3問だけを選んで印刷してください。放課後等デイサービスならQ1・Q4・Q9、グループホームならQ2・Q6・Q11、生活介護ならQ3・Q7・Q10が議論になりやすい組み合わせです。

[読み上げ]

では、紙を見てください。3つの場面があります。それぞれ「このままでいい」「まずい」、どちらか手を挙げてください。

先に言っておきます。割れたら成功です。割れるということは、うちの中でやり方がそろっていないということです。それが分かるのが、今日の収穫です。

〔※1問ずつ読み上げ、挙手を取る。全員が同じ答えなら「そろっていますね」で次へ。割れた問題だけ、それぞれに理由を1人ずつ聞く〕

〔※最後に〕今、割れた場面は、次の委員会で、うちとしてのやり方を決めます。決まったら、また皆さんに伝えます。

3問すべてに解説をつけないでください。時間が足りなくなります。全員一致の問題は飛ばし、割れた問題だけに時間を使うのがこのパートのコツです。

12〜16分:嘔吐・下痢が出たら

[読み上げ・処理セットを手に持って]

これが、うちの嘔吐物処理セットです。ふだんは〔◯◯〕に置いてあります。中身を出します。

〔※手袋、マスク、エプロン、ペーパータオル、ビニール袋、塩素系の消毒液を1つずつ出す。足りないものがあれば、その場で「足りませんね」と言う〕

利用者さんが吐いたとき、最初の5分でやることは4つです。

1つ目、周りの人を離す。吐いたものは、思っているより遠くまで飛んでいます。

2つ目、窓を開ける。

3つ目、手袋・マスク・エプロンを着けてから、近づく。素手で先に拭かない。

4つ目、外側から内側に向かって、静かに拭き取る。拭いたあとは、アルコールではなく、塩素系の消毒液です。ノロウイルスには、アルコールが効きにくいからです。

そして処理が終わったら、〔責任者の役職・氏名〕に報告してください。2人目、3人目が出たときに、誰が何をするかは、うちの計画で決めてあります。〔※BCPの役割分担表を見せる。「連絡係は◯◯、利用者の対応は◯◯、物品の確認は◯◯」〕

このあとの訓練で、これを実際にやってもらいます。

処理セットは研修用に新しく用意しないでください。ふだん置いてあるものを持ってくると、手袋のサイズが合わない、消毒液の期限が切れている、エプロンがない、といったことがその場で分かります。それが見つかれば、この研修は成功です。

16〜18分:休む・言う

[読み上げ]

最後に、いちばん大事なことを言います。

事業所に感染症を持ち込むのは、多くの場合、私たち職員です。

だから、お願いします。熱がある、吐いた、下痢をしている。家族がそうなっている。そういうときは、出勤する前に連絡してください。

連絡先は、〔役職・氏名〕、電話番号は〔◯◯〕です。〔◯時〕までに連絡をください。レジュメの下に書いてあります。

そして、休んだ人を責めることは、絶対にしません。人が足りなくなる日は、こちらで何とかします。無理して来てもらって広がるほうが、何倍も大変です。

この「休んだ人を責めない」は、管理者本人が自分の口で言ってください。講師が別の人でも、この1分だけは管理者に代わってもらう価値があります。職員が休めるかどうかは、研修の知識ではなく、この一言で決まります。

18〜20分:1つ決める

[読み上げ]

今日の話を聞いて、この冬、うちで変えることを1つだけ書いてください。大きなことでなくていいです。

たとえば、「処理セットを2階にも置く」「手袋のサイズをそろえる」「送迎車にも処理セットを積む」。そういうことで十分です。

〔※紙を回収する〕

書いてもらったものは、次の委員会でまとめて、どれをやるか決めて、結果をお知らせします。それでは、このあと訓練に移ります。

この台本で、よくある失敗3つ

やりがちな失敗と、その直し方
失敗 直し方
結局、手洗いの説明から始める 「知っているでしょう」で飛ばしてください。手洗いの説明をすると、職員はそこで聞くのをやめます。貼り紙で足ります
処理セットを見せずに言葉で説明する 実物を持ってきてください。「どこにあるか」「何が足りないか」が分かることが、この研修のいちばん実務的な成果です
「休む」の話を省略する 時間が押したら、削るのは演習の問題数のほうです。休む・言うの2分は削らないでください

【訓練】15分でできる3本|机上と実地を組み合わせる

感染症対策の訓練3本(嘔吐物処理の実地・発生時シミュレーションの机上・防護具の着脱)の図

訓練は、机上と実地を適切に組み合わせることが求められています。「実地」と聞くと大がかりに聞こえますが、15分で終わるもので十分です。訓練は年2回以上なので、下の3本から1回は実地、1回は机上を選ぶと、組み合わせの要件も自然に満たせます。20分版研修の直後にやるなら、訓練Aがいちばん合います。

訓練A(実地・15分):嘔吐物処理

準備と進め方
時間 やること
準備 床に新聞紙を敷き、模擬の嘔吐物を置く(水で溶いた片栗粉やおかゆに、食紅を少し)。ふだんの処理セットを、ふだんの置き場所に置いたままにしておく
0〜2分 「今、ここで利用者さんが吐きました」とだけ言い、1人を指名して、処理セットを取りに行くところから始めてもらう。説明はしない
2〜8分 指名された人が処理する。他の職員は見ながら、「ここはうちのやり方と違う」と思ったところをメモする
8〜12分 メモを出し合う。とくに見るのは①周りの人を離したか ②手袋より先に何かを触っていないか ③外側から内側か ④手袋を外すときに外側を素手で触っていないか ⑤最後に手を洗ったか
12〜15分 足りない物品、置き場所、手順のずれをその場で書き出す。これが訓練記録の「課題」欄になります
蛍光塗料(手洗いチェック用のローション)が手に入る場合は、模擬の嘔吐物に混ぜると、終わったあとにブラックライトで飛び散りと手の汚れが見えます。一度見ると、職員の手順は確実に変わります。
消毒液を使う場合は、実際に希釈してみるところまでやってください。家庭用の塩素系漂白剤は製品によって濃度が違います。「ペットボトルのキャップ何杯を、何mlの水に」という自事業所の作り方を、処理セットに貼っておくのが、この訓練のいちばんの成果物です。嘔吐物や便の処理には濃いめ(0.1%程度)、ドアノブなどの環境の消毒には薄め(0.02%程度)が目安とされています。

訓練B(机上・15分):発生時シミュレーション

感染症BCPの訓練と一体で実施できるのがこの形です。紙1枚とホワイトボードで足ります。

状況カード(読み上げて、5分ずつ区切る)
  1. 【月曜 朝】利用者のAさんが、登所して30分後に嘔吐した。熱は37.8度。
    → 誰が何をするか。Aさんをどこで待たせるか。家族にはいつ誰が連絡するか。
  2. 【月曜 夕方】Aさんと同じグループの利用者Bさんも、下痢の症状が出た。職員のCさんが「自分もお腹の調子が悪い」と言っている。
    → Cさんを帰すか。明日の人員は足りるか。他の利用者と家族への連絡は。
  3. 【火曜 朝】職員2名が欠勤の連絡。利用者の症状は計5名に増えた。
    → サービスを縮小するか。どの業務をやめ、どの業務は続けるか。行政への報告は必要か。
各段階で、ホワイトボードに「誰が」を名前で書いていきます。「管理者が」ではなく「◯◯さんが」。名前が埋まらないところが、あなたの事業所のBCPの穴です。

3枚目の「どの業務をやめるか」で、議論がいちばん止まります。それでいいのです。BCPに書いてある優先業務と、現場が思っている優先業務がずれていることが分かるのが、この訓練の収穫です。

訓練C(実地・10分):防護具の着脱

新規採用者向けや、訓練Aの前段として使えます。2人1組で、1人が着けて外し、もう1人がチェック表を見るだけです。

着脱チェック表(相手が見る)
順番 見るところ できた
着ける前 手を洗ったか(または手指消毒) □
着ける エプロン → マスク → 手袋の順か。手袋が最後 □
外す① 手袋から外したか。片方の手袋の外側をつまみ、裏返して外したか □
外す② もう片方は、素手の指を手袋の内側に入れて外したか □
外す③ エプロンの前面(汚れた面)に触れずに外したか □
外したあと 手を洗ったか □
着ける順番は、事業所で採用しているマニュアルや物品によって違うことがあります。自事業所の指針・マニュアルと順番がそろっているかを、この訓練の前に一度確認してください。「外すときは手袋から、外したら手を洗う」は共通です。

15分×4回の年間シリーズ|流行期の前に寄せる

感染症対策の年間シリーズ例(5月研修・8月机上訓練・11月研修と実地訓練・2月振り返り)の図

感染症は、虐待や身体拘束と違って季節がはっきりしています。ノロウイルスとインフルエンザは冬、食中毒は夏。だから年間シリーズは均等に割らず、流行の前に寄せるのがコツです。感染症は研修2回・訓練2回(年2回以上ずつ)が必要です。これを、委員会に合わせた年4回の枠に割り振ります。委員会(おおむね3か月に1回)の直後に15分残す形にすると、委員会の周知も同時に済みます。

年間シリーズの組み方(例)
時期 テーマ 中身
5月 研修①
食中毒と夏の体調管理
調理・おやつ・弁当の管理、休む・言うルール。調理担当と送迎担当も必ず入れる。委員会の直後
8月 訓練①(机上)
発生時シミュレーション
訓練B。感染症BCP訓練を兼ねると記録に書く。委員会の直後
11月 研修②+訓練②(実地)
20分版+嘔吐物処理
20分版台本(BCP研修を兼ねる)と訓練A。ノロの流行前に必ず実地で。この日だけ35分
2月 振り返り
(上乗せ)
この冬に起きたことを場面で振り返る。要件の回数には数えなくてよい上乗せ回。実際に起きたことを訓練Bの状況カードに差し替えると、いちばん効きます
記録には「研修①」「訓練②(実地)」のように、どの要件の何回目かをはっきり書いてください。すべて「感染症研修」と書くと、研修2回・訓練2回がそろっているかが読み取れません。

記録のルール

シリーズで回すときの記録ルール5つ
  • 1回1枚。4回分を1枚にまとめない
  • 研修と訓練は紙を分ける。同じ日にやっても2枚
  • 分母は全従業者。調理・送迎・清掃・事務を含む
  • BCPと一体でやった回は、研修名にそう書く(例:「感染症対策訓練(感染症BCP訓練を兼ねる)」)
  • 委員会と同じ日でも、議事録と研修記録は分ける

研修を動画にして回す|ただし訓練の実地は集まる

シフトがそろわない、拠点が多い。そういう事業所では、研修を動画にするのが現実的です。研修は事業所内で行うものでも差し支えないとされ、方法は限定されていません。動画視聴でも、個人ごとの視聴記録があれば実施として説明できます。

ただし感染症には、ほかの研修にない注意点が1つあります。動画で済むのは「研修」だけで、「訓練」の実地部分は動画では代わりになりません。手袋を外す手順は、見るのとやるのとで全く違うからです。

章立て|5分以内×4本

動画の構成(20分版台本がそのままナレーション原稿になります)
本 長さ 中身
①全員を、かもしれない人として 4分 標準予防策の1本の考え方。台本の「2〜6分」
②この場面、どう動く? 5分 演習の3問。動画を止めて考えてもらう。答えは視聴後の話し合いで
③嘔吐・下痢が出たら 5分 自事業所の処理セットと置き場所を撮る。中身を1つずつ出して見せる
④休む・言う 3分 管理者が自分で話す。連絡先・連絡の時刻・「休んだ人を責めない」
③と④は、必ず自事業所で撮ってください。処理セットの置き場所と、休むときの連絡先は、外部の動画には絶対に出てきません。そしてこの2本が、実際の発生時にいちばん効きます。①②は外部の動画で代えても構いません。

厚生労働省の研修動画を使う場合

厚生労働省は、「障害者支援施設及び障害福祉サービス事業所等職員のための感染症対策の研修会動画」を公開しています。①の代わりに使えます。使う場合も、③④の自事業所パートを足すことと、視聴記録を個人単位で残すことは同じです。動画の利用条件は掲載ページで確認してください。

視聴後の5分と、視聴管理表

視聴したあとに、この3つだけ聞く
  1. 処理セットは、どこにありますか。(口頭で答えてもらう)
  2. 体調が悪いとき、誰に、何時までに連絡しますか。
  3. ②の3問で、自分の答えと違ったものはありましたか。
1と2に答えられなければ、動画を見たことになっていません。この3問に答えられたことを、視聴管理表の「確認」欄に書きます。
視聴管理表(例)
氏名 職種 視聴日 確認者 確認(3問) 訓練参加日
〔氏名〕 支援員 10/3 〔責任者〕 3問とも回答。処理セットの位置を2階と誤答→訂正 11/12
〔氏名〕 送迎 10/5 〔責任者〕 車内の処理セットがないことが判明→委員会へ 11/12
〔氏名〕 調理 10/8 〔責任者〕 3問とも回答 欠席→11/20個別
「訓練参加日」の列を必ず作ってください。動画で研修を済ませた職員が、訓練の実地に参加しているかをこの1枚で追えます。

動画化で、よくある失敗

やりがちな失敗3つ
失敗 直し方
動画だけで訓練も済ませたことにする 訓練の実地は、動画では代わりになりません。訓練A(15分)だけは集まってやる
「全員に共有した」で終わる 個人ごとの視聴日と確認の記録がないと、実施の証明になりません
外部の動画だけを流す 処理セットの置き場所と連絡先が抜けます。③④の自事業所パートを足してください
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放デイ・GH・生活介護で実際に起きる場面30

レジュメの材料です。全部は配らず、自事業所に近いものを3〜5件選んでください。一般的な「感染経路の説明」より、自分の職場の場面のほうが確実に記憶に残ります。

放課後等デイサービス・児童発達支援(10)

子どもの事業所で起きやすい場面
場面 なぜ危ないか・どうするか
1 送迎車の中で嘔吐 車内に処理セットがない事業所が多い。座席の布に染みたものは拭き取りだけでは残る。車ごとにセットを積む
2 おやつの手づかみ・取り分け 大皿から手で取る形は、1人の手から全員に広がる。個包装か、職員が取り分ける
3 おもちゃを口に入れる 口に入れたおもちゃは、その日のうちに分けて洗う。「口に入れたもの」を入れるかごを決めておく
4 トイレ介助のあとの手洗い 子どもの手洗いを見届けて、職員自身が洗うのを忘れる。介助が続く時間帯ほど抜ける
5 学校で流行している 学校や学級の閉鎖情報は、保護者より先に入ることは少ない。学校との連絡や連絡帳で拾う仕組みを作る
6 「朝は元気だった」 登所後に熱が上がる。保護者への連絡とお迎えまでの待機場所を先に決めておく
7 マスクをつけられない 感覚過敏などでマスクができない子に、無理にさせない。そのぶん距離と換気と職員側の対策で補う
8 きょうだいが感染症 本人に症状がなくても、家庭内で広がっていることがある。利用の目安を保護者と事前に共有しておく
9 手洗いを嫌がる 水や石けんの感覚が苦手な子もいる。手順を絵カードにする、ウェットシートで代えるなど個別に
10 プール・水遊び 下痢の症状がある日は入らない。その判断を誰がするかを決めておく

グループホーム(10)

住まいの場で起きやすい場面
場面 なぜ危ないか・どうするか
11 夜中に居室で嘔吐 夜勤は1人。処理セットの置き場所を夜勤者が知っているか。応援を呼ぶ基準と連絡先
12 共用トイレが1つ 下痢の症状がある人が出たら、トイレを分けられるか。分けられないなら、使用後の消毒の手順
13 タオルの共用 洗面所のタオルを共用している。ペーパータオルか個人用に
14 汚れたシーツ・衣類の洗濯 嘔吐物や便がついたものを、そのまま洗濯機に入れる。先に下洗いと消毒。下洗いは手袋・エプロンで
15 食事を一緒に作る 利用者と職員が一緒に調理する場面。体調が悪い人は調理に入らないルールを、利用者にも分かる形で
16 日中活動先で流行 通所先で出た情報が、夜のホームに届いていない。日中の事業所との連絡経路を決めておく
17 家族の面会・帰省から戻る 帰省先で感染して戻ることがある。戻った日の体調確認を記録に残す
18 症状を言わない・言えない 「お腹痛い」と言えない。食事量・トイレの回数・表情の変化を申し送りで拾う
19 居室に閉じこもってもらえない 症状がある人に居室で過ごしてもらうのが難しい場合がある。無理に閉じ込めない(身体拘束・虐待の問題になります)。共用スペースの使い方と消毒で補う
20 服薬介助 薬を手のひらに出して渡す。介助の前後の手洗い。症状がある人の介助は最後に回す

生活介護・就労系(10)

日中活動の場で起きやすい場面
場面 なぜ危ないか・どうするか
21 食事介助で複数人を順番に 1人終わるごとに手指衛生。エプロンを替えずに次の人へ行っていないか
22 おむつ交換の連続 手袋を替えずに2人目へ。1人1組、外したら手を洗う
23 入浴の順番 皮膚に症状がある人、下痢の症状がある人は最後に。浴槽の清掃も
24 作業で使う道具の共用 軍手、はさみ、エプロン。共用のものは誰がいつ洗うかを決める
25 食品を扱う作業 パンや弁当の製造・販売。下痢・嘔吐の症状がある人は作業に入らない。利用者本人が言えない場合の確認方法も
26 送迎の乗り合わせ 車内で咳をしている人がいる。換気と座席の配置。症状がある人の送迎は別便にできるか
27 痰の吸引・経管栄養 医療的ケアがある人は、本人が重症化しやすい。担当職員の体調管理を特に厳しく
28 てんかん発作時の対応 とっさに素手で口元に触れる。発作時もまず手袋が取れる位置に置いておく
29 ボランティア・実習生 外から来る人の体調確認を職員と同じ基準でしているか
30 昼休みの職員の休憩室 職員どうしでマスクを外して食事をする場面で広がる。職員間の感染が、そのまま人員不足になる
19番は、感染症対策と身体拘束・虐待防止がぶつかる場面です。「感染を防ぐため」でも、鍵をかけて居室から出られないようにすれば身体拘束にあたりえます。研修で1回は触れておくと、発生時の現場の判断がぶれません。

【演習】この場面、どう動く?|研修で配る12問

そのまま印刷して配れる設問です。20分版なら3問だけ抜いて使ってください。放課後等デイサービスならQ1・Q4・Q9、グループホームならQ2・Q6・Q11、生活介護ならQ3・Q7・Q10を軸にすると議論になります。

「目安」は一般的な感染対策の考え方に沿った整理で、自事業所の指針・マニュアルが優先です。研修のねらいは正解当てではなく、自事業所の中でやり方が割れている場所を見つけることです。割れたら、それを委員会で決めてください。
Q1|放課後等デイサービスの送迎中、車内で子どもが嘔吐した。車には処理セットを積んでいない。運転手はティッシュで拭き取り、次の子を迎えに行った。
目安まずい 拭き取っただけでは、座席や床にウイルスが残ります。次に乗る子が触れます。
どうすればよかったか:車ごとに処理セットを積む。嘔吐があったら、その便の送迎を終えたあとで塩素系で消毒してから次の送迎に使う。拭き取った運転手自身の手洗いも。
Q2|グループホームの夜勤中、1人目の嘔吐を処理した30分後に、別の利用者も嘔吐した。夜勤は1人。朝まで1人で対応した。
目安判断が割れる 1人で処理できる量なら、朝まで対応することもありえます。ただし2人目が出た時点で、集団発生の入り口です。
どうすればよかったか:「2人目が出たら、夜中でも〔責任者〕に電話する」と決めておく。応援を呼ぶ基準が決まっていないことが問題です。
Q3|生活介護の昼食で、職員が3人の利用者の食事介助を順番に行った。同じ手袋のまま、3人目まで介助した。
目安まずい 手袋は「職員を守る」だけでなく、利用者から利用者へ運ばないためのものです。同じ手袋のまま次の人に触れると、手袋が感染を運びます。
どうすればよかったか:1人ごとに手指衛生。手袋を使うなら1人ごとに交換し、外したら手指衛生。
Q4|放課後等デイサービスで、子どもの体温が37.6度。本人は元気で遊んでいる。保護者に連絡したが、仕事で迎えは2時間後になると言われた。
目安判断が割れる 迎えを待つのはやむを得ません。問題は2時間どこで過ごしてもらうかです。
どうすればよかったか:他の子と離れて過ごせる場所と、付き添う職員を事前に決めておく。お迎えの目安(何度以上で連絡するか)を、利用開始時に保護者と共有しておく。
Q5|職員の子どもがインフルエンザと診断された。職員本人には症状がない。人が足りないので、本人は出勤すると言っている。
目安判断が割れる 症状がなければ出勤とする事業所が多いと思います。ただし数日間は、発症する可能性を前提にした対策が必要です。
どうすればよかったか:出勤する場合は、マスクの着用、毎日の体調確認、症状が出たらすぐ帰る、を約束する。家族が感染したときの出勤の目安を、指針か就業ルールに書いておくと、毎回迷いません。
Q6|グループホームで、下痢の症状がある利用者がいる。トイレは共用の1つだけ。特に何もしていない。
目安まずい 共用トイレは、便を介した感染がいちばん広がりやすい場所です。
どうすればよかったか:トイレを分けられるなら分ける。分けられないなら、使用のたびに便座・レバー・ドアノブ・手すりを塩素系で消毒する。タオルは共用をやめてペーパータオルに。
Q7|利用者が嘔吐した。職員は手袋をして拭き取り、アルコールで床を消毒した。
目安まずい ノロウイルスにはアルコールが効きにくいとされています。嘔吐物の消毒は塩素系(次亜塩素酸ナトリウム)が基本です。
どうすればよかったか:処理セットに塩素系の消毒液と、その作り方を入れておく。「手指はアルコール、嘔吐物は塩素系」を分けて覚える。
Q8|嘔吐と下痢で休んでいた調理担当の職員が、症状がおさまった翌日から調理に復帰した。
目安判断が割れる ノロウイルスは、症状がおさまったあとも一定期間、便にウイルスが出るとされています。出勤そのものより、調理に入るかどうかが論点です。
どうすればよかったか:復帰後しばらくは調理を外れる、入る場合は手洗いを特に徹底する、など調理担当の復帰の目安を決めておく。
Q9|放課後等デイサービスで、感覚過敏のためマスクをつけられない子がいる。他の保護者から「マスクをさせてほしい」と言われた。
目安判断が割れる 無理にマスクをさせると、本人にとって大きな負担になり、場合によっては不適切な支援になります。
どうすればよかったか:本人にさせない代わりに、換気・距離・職員側の対策で補っていることを具体的に説明する。個別の事情は伏せたうえで、「一人ひとりに合わせた対策をしている」と伝える。
Q10|生活介護で利用者がてんかん発作を起こし、よだれと嘔吐があった。職員はとっさに素手で口元を拭い、横向きにした。
目安判断が割れる 本人の安全が最優先で、とっさの対応自体は責められません。問題は手袋がすぐ取れる位置にないことです。
どうすればよかったか:発作がある方の近くには、手袋を常に置いておく(ポケットに1組入れておく事業所もあります)。素手で触れたら、終わったあとすぐ手を洗う。
Q11|グループホームで、インフルエンザと診断された利用者が、居室から何度もリビングに出てくる。職員は居室のドアに外から鍵をかけた。
目安まずい 感染予防が目的でも、自分で開けられない部屋に閉じ込めることは身体拘束にあたりえます。3要件と手続きがなければ、虐待の問題になります。
どうすればよかったか:本人に分かる形で説明し、居室で過ごしやすくする工夫をする。出てきた場合は、リビングの時間帯を分ける、換気と消毒で補う。感染対策の指針に、こうした場合の考え方を書いておく。
Q12|利用者30名の生活介護で、同じ週のうちに嘔吐・下痢の症状がある利用者が11名になった。管理者は「保健所から何も言われていないから」と、行政への報告をしていない。
目安まずい 社会福祉施設等では、同一の感染症や食中毒(疑いを含む)の患者が10名以上、または全利用者の半数以上発生した場合などに、市町村等の主管部局への報告と保健所への連絡が求められています。報告は、言われてからするものではありません。
どうすればよかったか:報告の基準を、管理者が流行期の前に確認しておく。詳しくは後述の「発生時の初動と行政報告」。

【確認テスト20問】研修の最後に配る理解度チェック

そのまま印刷して使える◯×問題です。研修記録の「理解度の確認」欄は、これを添付するだけで埋まります。20分版なら前半10問で十分です。新規採用時の研修にも使えます。

解説を伏せて印刷し、回収後に読み上げてください。間違いが多かった問題は、次の研修か訓練のテーマにします。点数を人事評価に使うことはしないでください。使うと、次から誰も本気で答えません。

基本編(1〜10問)

Q1|標準予防策とは、感染症と診断された利用者に対して行う対策のことである。
× 標準予防策は、感染症の有無にかかわらず、すべての人の血液・体液・排泄物などを感染の可能性があるものとして扱う考え方です。診断された人だけではありません。
Q2|手袋をして介助した場合、手袋を外したあとの手洗いは省略してよい。
× 手袋を外すときに手が汚れることがあります。外したら必ず手指衛生。
Q3|ノロウイルスには、アルコール消毒が効きにくいとされている。
◯ 嘔吐物や便の処理には塩素系(次亜塩素酸ナトリウム)を使います。このテストでいちばん大事な1問です。
Q4|嘔吐物を処理するときは、内側から外側に向かって拭き取る。
× 外側から内側へ。内側から拭くと、汚れを広げます。
Q5|嘔吐物の処理では、まず周りの人を離し、換気をしてから、防護具を着けて近づく。
◯ 吐いたものは思っているより広く飛んでいます。素手で先に拭かない。
Q6|症状がなければ、感染症をうつすことはない。
× 症状が出る前や、症状がおさまったあとにもうつすことがあります。だから「全員を」対象に対策します。
Q7|感染症対策の研修と訓練は、どちらか一方を実施すれば足りる。
× 研修と訓練は別々の義務です。講義を聞いただけでは訓練をしたことになりません。
Q8|感染症対策の研修と訓練は、どちらも年1回実施すれば足りる(放デイ・GH・生活介護の場合)。
× 通所・居住系は研修も訓練も年2回以上です。虐待防止や身体拘束(年1回以上)と混同しやすいところです。あわせて、新規採用時には必ず感染対策研修を実施します。
Q9|送迎の運転手や調理担当は、支援に直接入らないので研修の対象外である。
× 対象は全従業者です。車内の嘔吐、食中毒の当事者になるのは、むしろこの職種です。
Q10|体調が悪いときに無理をして出勤することは、責任感のある行動として望ましい。
× 事業所に感染症を持ち込むのは、多くの場合職員です。休む・言うことが、利用者を守る行動です。

実務編(11〜20問)

Q11|嘔吐物で汚れたシーツは、他の洗濯物と一緒にすぐ洗濯機で洗えばよい。
× 先に汚れを落とし、消毒してから洗います。下洗いも手袋・エプロンを着けて行います。
Q12|防護具を外すときは、手袋から外す。
◯ いちばん汚れているのは手袋です。手袋を最初に外し、最後に手を洗うが基本です。
Q13|家庭用の塩素系漂白剤は、どの製品でも同じ濃度なので、希釈の方法は共通でよい。
× 製品によって濃度が違います。自事業所で使う製品に合わせた作り方を処理セットに貼っておきます。
Q14|利用者が自分で体調不良を言えない場合、食事量やトイレの回数、表情の変化も体調のサインになる。
◯ 障害福祉ではとくに大事です。「いつもと違う」を申し送りで拾うことが早期発見になります。
Q15|感染予防のためであれば、症状のある利用者の居室に外から鍵をかけてもよい。
× 自分で開けられない部屋に閉じ込めることは、目的が感染予防でも身体拘束にあたりえます。3要件と手続きがなければ虐待の問題になります。
Q16|感染症の業務継続計画(BCP)の研修・訓練は、感染症対策の研修・訓練と一体で実施することができる。
◯ 一体的に実施して差し支えないとされています。記録には、両方を兼ねていることを明記します。
Q17|訓練は、実際に手を動かす実地訓練でなければならない。
× 机上の訓練も認められています。ただし机上と実地を適切に組み合わせることが求められています。
Q18|食事介助で複数の利用者を順番に介助するとき、同じ手袋のまま続けてよい。
× 手袋が感染を運びます。1人ごとに交換し、手指衛生。
Q19|同じ感染症の患者が利用者の中で10名以上出た場合などは、行政への報告が求められる。
◯ 社会福祉施設等での感染症等の発生時には、一定の基準を超えたら市町村等への報告と保健所への連絡が求められています。基準は後述します。
Q20|処理セットは、研修や訓練のときに新しく用意すればよい。
× ふだんの置き場所にあるセットを使って訓練してください。中身が欠けている、期限が切れている、を見つけるのも訓練の目的です。
採点と、記録への書き方
  • 点数は記録しなくて構いません。記録するのは「提出人数」と「誤答が多かった問題」だけ
  • 誤答が集まりやすいのはQ3(アルコール)・Q4(拭く向き)・Q8(回数)・Q12(外す順番)・Q15(鍵)です
  • Q15を間違えた職員が多い場合は、身体拘束適正化研修で扱い直してください

発生時の初動と行政報告|管理者が流行期の前に読む節

感染症発生時の初動5ステップと、社会福祉施設等の行政報告が必要になる基準の図

ここは研修で職員に話す内容ではなく、管理者と感染対策担当者が知っておく内容です。発生してから調べると、確実に遅れます。

最初の24時間でやること

発生時の初動(1人目〜2人目)
  1. 症状のある人を分ける。利用者なら別室や居室、職員なら帰宅
  2. 記録を始める。いつ、誰に、どんな症状が出たか。利用者と職員を1枚の表に、日付順に。これが後で保健所に聞かれる情報のすべてになります
  3. 家族・主治医に連絡する。利用者の受診の要否を相談
  4. 消毒の範囲を広げる。トイレ、ドアノブ、手すり、共用のテーブル
  5. 2人目が出たら、BCPを開く。人員・優先業務・連絡体制を、計画に書いたとおりに動かす
2の「記録」がいちばん抜けます。発症日、症状、受診の有無、診断名を1行ずつ。これがあれば、保健所への連絡も行政への報告も、この表を見せるだけで済みます。

行政への報告が求められる基準

社会福祉施設等では、感染症や食中毒が発生した場合に、次のいずれかに当てはまると、市町村等の社会福祉施設等主管部局への報告と、保健所への連絡が求められています(厚生労働省「社会福祉施設等における感染症等発生時に係る報告について」)。

報告が必要になる場合
基準 内容
ア 同一の感染症や食中毒による、またはそれが疑われる死亡者・重篤患者が1週間以内に2名以上
イ 同一の感染症や食中毒の患者、またはそれが疑われる者が10名以上、または全利用者の半数以上
ウ ア・イに当たらなくても、通常の発生動向を上回る感染症等の発生が疑われ、特に施設長が報告を必要と認めた場合
「疑われる者」も数に入ります。診断が出そろうのを待たないでください。報告先の部署名・電話番号・様式は自治体によって違うので、流行期の前に確認して、BCPの連絡先一覧に書いておいてください。小規模な事業所では「半数以上」に早く届きます。定員10名なら5名です。

利用や出勤の再開の目安

職員の出勤停止については、法律で一律に決まった日数はありません(食品を扱う業務などは別の規制があります)。事業所で目安を決めて、指針か就業のルールに書いておく必要があります。参考になるのが、学校保健安全法の出席停止の基準です。放課後等デイサービスの子どもは学校でこの基準が適用されているので、学校と事業所で扱いがずれないようにする意味もあります。

学校保健安全法の出席停止期間(参考)
感染症 出席停止の期間の基準
インフルエンザ 発症した後5日を経過し、かつ、解熱した後2日(幼児は3日)を経過するまで
新型コロナウイルス感染症 発症した後5日を経過し、かつ、症状が軽快した後1日を経過するまで
感染性胃腸炎(ノロなど) 一律の日数の定めはなく、症状により医師が判断。ただし症状がおさまった後も便からウイルスが出ることがあるとされるので、調理や食事介助への復帰は慎重に
これは学校の基準であって、福祉事業所の職員に直接適用されるものではありません。自事業所の目安を決めるときの参考として使ってください。

感染対策委員会と指針を、現実的に回す

研修・訓練とセットで義務になっているのが、委員会と指針です。ここも、条件は思っているより緩いことを知るだけで動き出します。

委員会:思っているより、条件は緩い

よくある思い込みと実際
よくある思い込み 実際
単独の会議を新たに立てないといけない 原則は他の委員会と独立して設置します。ただし、関係する職種や扱う事項が相互に関係の深い会議体があれば、一体的に設置・運営して差し支えないとされています。事業所会議の時間を使う場合も、議事録は「感染対策委員会」として独立させるのが安全です
集まって対面でやらないといけない テレビ電話装置等(オンライン)でも可です
医師や看護師がいないと成立しない 必須ではありません。構成は幅広い職種が望ましく、感染対策担当者は看護師が望ましい、外部の感染管理の専門家を積極的に活用することが望ましいとされています。看護師がいない事業所は、協力医療機関や保健所の助言を議事録に残す形でも意味があります
毎月やらないといけない 通所・居住・入所系はおおむね3か月に1回以上(訪問系は6か月に1回以上)。加えて、流行の時期などに必要に応じて随時開きます
現実的な最小構成は、「5月・8月・11月・2月の事業所会議の最後20分を感染対策委員会にし、その直後に15分の研修か訓練をつける」です。これで委員会4回・研修2回・訓練2回が年4日で片づきます。虐待防止・身体拘束の委員会と同じ日にしても構いませんが、議事録は委員会ごとに分けてください。

委員会で話すこと|そのまま議事次第に使える4項目

議事次第(例)
議題 話すこと
①発生状況 前回からの感染症の発生(利用者・職員)、欠勤の状況、地域の流行状況
②研修・訓練の結果 演習で割れた場面、確認テストで誤答が多かった問題、訓練で見つかった物品の不足。ここで事業所としてのやり方を決める
③物品と環境 処理セットの中身と置き場所、防護具の在庫、消毒液の期限
④指針・BCPの見直し ①〜③を受けて、指針とBCPに書き足すこと・直すこと
委員会の結果は従業者に周知徹底することが求められています。議事録の末尾に「◯月◯日の申し送りで全職員に周知(欠席者には◯月◯日に個別に伝達)」と1行書くだけで、周知の記録になります。

指針:ひな形を使って、自事業所の言葉にする

厚生労働省が「障害福祉サービス事業所等における感染対策指針作成の手引き」と指針のひな形を公開しています。ゼロから作る必要はありません。ただし、ひな形をそのまま綴じただけの指針は、研修で使えません。

ひな形に、必ず自事業所の情報を書き足すところ
  • 感染対策担当者の役職と氏名
  • 処理セットの置き場所(フロアごと、送迎車ごと)
  • 職員が体調不良のときの連絡先と連絡の時刻
  • 行政報告と保健所の連絡先
  • 居室で過ごしてもらうのが難しい利用者への対応の考え方(身体拘束にならない範囲で)
この5つが書いてあれば、指針がそのまま研修のレジュメの裏付けになります。研修で言ったことと指針に書いてあることがずれていないかは、運営指導でも見られます。

研修・訓練の記録様式

そのままコピーして使える様式です。研修と訓練で紙を分けるのが、感染症の記録でいちばん大事な点です。

様式1:感染症対策研修 実施記録

研修実施記録(そのまま転記して使えます)
欄 記入例 注意点
研修名 感染症対策研修(第2回)
(感染症BCP研修を兼ねる)
年2回のうち何回目か、または「新規採用時」かを書く。BCPと一体で実施したなら、そのことも
実施日時 〔◯年◯月◯日〕
17:30〜17:50(20分)
前回から間があきすぎていないか。時間が20分でも問題ありません
実施方法 集合研修/動画視聴 実態どおりに書く
講師 〔役職・氏名〕 外部研修なら主催者名と研修名
対象/受講者 全従業者〔◯〕名中
〔◯〕名受講
分母は調理・送迎・清掃・事務を含む全従業者。名簿を添付
欠席者対応 〔◯〕名欠席。
〔◯月◯日〕に動画視聴予定
空欄にしない
内容 ①標準予防策(全員を対象とする考え方、手袋の外し方)
②場面演習3問(送迎車内の嘔吐・食事介助・共用トイレ)
③嘔吐物処理の手順と発生時の役割分担(BCP)
④体調不良時の連絡ルール
3行以上。「感染症について」の1行では中身を疑われます
使用資料 レジュメ1枚
演習用紙
確認テスト
現物を添付
理解度の確認 確認テスト実施(提出〔◯〕名)。Q3の誤答が多く、塩素系とアルコールの使い分けを補足 結果の要約を1行
次回への申し送り 処理セットの手袋のサイズが1種類のみ→委員会で追加を検討 この欄があると、研修が単発でないことが伝わります

様式2:感染症対策訓練 実施記録

訓練実施記録(研修記録とは別の紙に)
欄 書くこと
訓練名 感染症対策訓練(第2回・実地) ※BCPと一体なら「感染症BCP訓練を兼ねる」と併記
実施日時・場所 〔◯月◯日〕17:50〜18:05(15分)/〔1階廊下〕
形式 実地/机上のどちらか(または両方)を明記。年2回の中で両方がそろっていることが見えるように
想定 例:夜勤中に利用者が廊下で嘔吐。夜勤者1名で対応
参加者 氏名と役割(処理役・観察役など)
確認した手順 周囲の人を離す/換気/防護具の着用/外側から内側へ拭き取り/塩素系で消毒/手袋から外す/手指衛生/報告
見つかった課題 ここがいちばん大事な欄です。例:処理セットのエプロンが切れていた。消毒液の作り方が貼っていない。手袋を外すときに外側に触れていた
改善策と期限 例:エプロンを補充(〔◯月◯日〕まで、担当〔◯◯〕)。作り方を処理セットに貼る
「見つかった課題」が空欄の訓練記録は、訓練をしていないのと同じに見えます。何も見つからなかったなら、「課題なし。前回の課題(◯◯)が改善されていることを確認」と書いてください。

様式3:新規採用時研修の記録

新規採用時研修 記録(1人1枚)
欄 書くこと
対象者 氏名・職種・入職日
実施日 配属前か、入職後すぐ。新規採用時の感染対策研修は「必ず」とされています。流行期に入職した人ほど急ぐ
内容 標準予防策/処理セットの場所と中身/体調不良時の連絡ルール/防護具の着脱(訓練C)
確認 確認テスト10問、着脱チェック表
実施者 感染対策担当者または管理者の氏名
新規採用者には、防護具の着脱を1回だけでも実際にやってもらってください。動画だけで済ませると、最初の嘔吐処理で必ず手順が崩れます。

運営指導で見られるポイントと、記録のNG5

指摘されるのは、ほぼ記録です。感染症で特に多いNGを5つ挙げます。

感染症対策の記録・NG5
NG 何が問題か 直し方
研修・訓練が年1回しかない 虐待防止などと同じ年1回で済ませている 通所・居住・入所系は研修・訓練とも年2回以上。訓練は研修とは別の紙に記録する
訓練が机上だけ 「机上と実地の組み合わせ」になっていない 年に1回は実地(嘔吐物処理など)を入れる
BCPと一体でやったのに書いていない BCPの研修・訓練をやった証拠にならない 研修名・訓練名に「感染症BCP研修(訓練)を兼ねる」と書く
分母に調理・送迎が入っていない 全従業者への実施にならない 全従業者の名簿で分母を作る
委員会議事録に周知の記載がない 「従業者への周知徹底」が欠ける 議事録末尾に周知の方法と日付を1行

よくある質問

Q|感染症の研修と、虐待防止・身体拘束の研修を同じ日にまとめて実施してもいいですか。
A 実施はまとめて構いませんが、記録は必ず分けてください。それぞれ別の要件です。ただし回数が違うことに注意してください。虐待防止・身体拘束は年1回以上ですが、感染症は研修・訓練とも年2回以上です。「感染症20分+訓練15分」を年2日取り、そのうち1日に虐待防止・身体拘束の20分ずつを足す、という組み方が現実的です。
Q|研修と訓練は、同じ日に続けてやってもいいですか。
A 構いません。むしろ20分の研修で手順を聞いた直後に15分の実地訓練をやるのが、いちばん定着します。記録だけは研修と訓練で分けてください。
Q|外部の感染症研修に参加すれば、要件を満たせますか。
A 研修については、受講記録を残し、参加できなかった職員に伝達または動画視聴をしてもらえば説明できます。ただし訓練は、自事業所の物品と動線でやらないと意味がありません。外部研修の演習は、自事業所の訓練の代わりにはならないと考えてください。
Q|動画研修で要件を満たせますか。
A 研修は満たせます。個人ごとの視聴記録と、視聴後の確認を残してください。訓練の実地部分は、動画では代わりになりません。視聴管理表に「訓練参加日」の列を作っておくと、両方を1枚で追えます。
Q|感染症対策は義務ですか。していないと減算になりますか。
A 義務です。令和6年4月から、委員会・指針・研修・訓練のすべてが全サービスで義務になっています。ただし4つの措置そのものに独立した減算はなく、未実施は運営基準違反として指導の対象になります。ただし業務継続計画未策定減算(施設・居住系3%、その他1%)とつながっています。感染症の指針があれば減算しないという経過措置は令和7年3月31日で終わっているので、感染症のBCPが策定されているかを確認してください。
Q|感染症BCPの研修・訓練と、感染症対策の研修・訓練は別にやる必要がありますか。
A 一体的に実施して差し支えないとされています。研修で発生時の役割分担を扱い、訓練で発生時シミュレーション(机上)と嘔吐物処理(実地)をやれば、両方を兼ねられます。記録にそう書くことを忘れないでください。
Q|研修と訓練は、年に何回必要ですか。
A 放課後等デイサービス・グループホーム・生活介護・就労系などは、研修も訓練も年2回以上、委員会はおおむね3か月に1回以上です。居宅介護などの訪問系は、研修・訓練が年1回以上、委員会がおおむね6か月に1回以上です。そして新規採用時には必ず感染対策研修を実施します(訪問系は「望ましい」)。
Q|委員会には医師や看護師が必要ですか。
A 必須ではありません。外部の専門家を積極的に活用することが望ましいとされているので、協力医療機関や保健所に相談した内容を議事録に残すだけでも意味があります。
Q|パートや送迎の運転手も研修を受けないといけませんか。
A 対象です。感染症では特に、送迎車内の嘔吐、調理での食中毒の当事者になるのがこの職種です。受講率の分母に入れ忘れていないか確認してください。
Q|「コロナで分かっている」と職員が聞いてくれません。
A 知っていることは説明しないでください。この記事の20分版台本は、手洗いやマスクの話をしない前提で書いてあります。「処理セットはどこにありますか」という1つの質問から入ると、知っているのにできていないところに話が移ります。
Q|職員が体調不良でも休みたがりません。
A 研修で知識を足しても変わりません。管理者が「休んだ人を責めない」「人が足りない日はこちらで何とかする」と自分の口で言うこと、そして実際に休んだ人を責めないことです。研修の2分と、その後の1回の対応で、職場の空気は決まります。
Q|虐待防止や身体拘束の研修記事もありますか。
A あります。同じ形式で、虐待防止研修【障害福祉版】と身体拘束適正化研修【障害福祉版】をまとめています。義務づけられている研修の全体像は、【障害福祉】令和6年度報酬改定で義務化された研修で確認してください。

まとめ

最後に、この記事でいちばん伝えたいことを5つだけ。

感染症の研修を、明日やるとしたら
  1. 研修は20分、訓練は15分でいい。ただし年2回ずつ。時間に法令上の定めはありませんが、回数は虐待防止・身体拘束より多い。研修と訓練は別々に記録します
  2. 手洗いの説明はしない。「処理セットはどこにありますか」から始めて、知っているのにできていないことだけを扱います
  3. 嘔吐物は塩素系で、外側から内側へ。これだけは実際に手を動かして覚えてもらいます
  4. 休む・言う。連絡先を実名で言い、「休んだ人を責めない」を管理者が自分の口で言います
  5. BCPと一体で回す。感染症BCPの研修・訓練は一体で実施でき、年間の回数を減らせます。記録にそう書くこと
感染症対策は、研修の知識より物品の置き場所と、休める職場かどうかで結果が決まります。研修のあとに処理セットの中身が1つ補充されたら、それがこの研修のいちばんの成果です。

この記事の台本・設問・テスト・様式は、すべてコピーして自事業所用に書き換えて使ってください。〔 〕の中を自分の事業所の言葉に置き換えたら、それはもう自事業所の研修資料です。

参考にした一次情報

・厚生労働省「障害福祉サービス施設・事業所職員のための感染対策マニュアル」(入所系・通所系・訪問系)
・厚生労働省「障害福祉サービス事業所等における感染対策指針作成の手引き」
・厚生労働省「障害福祉サービス事業所等における新型コロナウイルス感染症発生時の業務継続ガイドライン」
・厚生労働省「社会福祉施設等における感染症等発生時に係る報告について」
・厚生労働省「障害者支援施設及び障害福祉サービス事業所等職員のための感染症対策の研修会動画」
・厚生労働省「令和6年度障害福祉サービス等報酬改定における主な改定内容」
・厚生労働省「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく指定障害福祉サービスの事業等の人員、設備及び運営に関する基準について」(解釈通知)
・こども家庭庁「児童福祉法に基づく指定通所支援の事業等の人員、設備及び運営に関する基準について」(解釈通知)
・学校保健安全法施行規則

本記事は上記をもとに、障害福祉の実務向けに整理したものです。研修・訓練・委員会の頻度や報告先は、サービス種別と指定権者によって扱いが異なる場合があります。必ず自治体の集団指導資料と出典元でご確認ください。

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室長:ユイン
室長:ユイン
介護福祉士・保育士・サビ管
福祉の現場 × 4児の父親
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20代後半から、グループホームの施設長・放課後等デイサービスの管理者を経験。
4児の父親
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介護福祉士保育士サービス管理責任者
3級ファイナンシャル・プランニング技能士実務者研修教員講習会 修了強度行動障害支援者養成研修(基礎・実践)防火管理者(甲種)
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