中山間地域等加算の見直し案、通所介護も特別地域加算の対象へ(11/6給付費分科会)|11月8日の福祉ニュース
今日は日曜日で、省庁や審議会からの新しい発表はありません。
そこで今日は、11月6日の社会保障審議会介護給付費分科会(第274回)に出た中山間地域等の加算の見直し案を、資料2に沿って詳しく見ます。11月6日の記事では一文だけ触れた資料です。
いまの加算は訪問系が中心で、デイサービスなどの通所系は大部分が対象の外にあります。資料には、送迎の距離や費用、加算がどれだけ取られているかの数字がそろって出ました。行き着く先は、通所の送迎のコストをどこで見るかと、過疎地で小規模の事業所が続けられるかです。
| 論点 | いちばん大事な一行 | いまの段階 |
|---|---|---|
| ①いまの3つの加算 | 特別地域加算は15/100、小規模事業所加算は10/100。この2つは通所系が対象外 | 現行の制度 |
| ②通所の送迎の負担 | 最も遠い利用者宅までの距離(中央値)は、振興山村で19.0km、東京23区で4.6km | 調査結果(公表済み) |
| ③加算の取られ方 | 訪問介護で特別地域加算を請求した事業所は3.3%(35,343事業所中1,174) | 統計(令和7年11月審査分) |
| ④対応案 | 2つの加算の対象に通所系を加える案。小多機などの区域外のサービスは総合マネジメント体制強化加算の要件に | 検討中(変わり得る) |
決まっているのは①の現行制度と、②③の調査・統計の数字だけです。④は「〜してはどうか」と問いかける対応案で、加算率などの評価の水準はまだ示されていません。
①中山間地域等の加算は3種類、通所系が取れるのは1つだけ(現行制度)
確定いまの介護報酬には、中山間地域等向けの加算が3つあります。通所介護・通所リハビリテーション・認知症対応型通所介護・地域密着型通所介護が取れるのは、3つ目の「居住する者へのサービス提供加算」だけです。
3つの加算の率と、対象になる事業所
厚生労働省老健局が資料2で整理した現行制度です。率はいずれも所定単位数に掛ける割合です。
| 加算 | 率 | 算定する条件 | 通所系 |
|---|---|---|---|
| 特別地域加算 | 15/100 | 離島振興対策実施地域・振興山村・豪雪地帯などの「厚生労働大臣が定める地域」にある事業所がサービスを提供したとき | 対象外 |
| 中山間地域等における小規模事業所加算 | 10/100 | 地域区分が「その他」で、特別地域加算の対象ではない中山間地域等にある小規模の事業所が提供したとき | 対象外 |
| 中山間地域等に居住する者へのサービス提供加算 | 5/100 | 中山間地域等に住む利用者に、通常の事業の実施地域を越えて提供したとき | 対象 |
「小規模」の線も資料に書かれています。訪問介護は延べ訪問回数が月200回以下、訪問入浴介護は月20回以下、訪問看護は月100回以下、定期巡回は月5人以下です。小多機・看多機には回数の線がありません。
特別地域加算と小規模事業所加算には、別に、低所得の人の利用者負担を10%から9%に下げる軽減措置(予算措置)があります。
通所系が外れてきた理由
資料は、訪問系は職員が一軒ずつ訪ねる一方で、通所系は利用者を送迎して複数の人にまとめて提供する、という提供形態の違いを挙げています。送迎の費用は通所系の基本報酬に含まれている、という整理です。
ただ、分科会の意見には「豪雪地域や中山間地域等では、点在する利用者宅への送迎にコストがかかる」「規模を大きくして効率化することも難しい」という声が並んでいます。今回の対応案は、この声に資料の数字で答えた形です。
②通所介護の送迎、最も遠い利用者宅まで振興山村で中央値19.0km(調査結果)
確定厚生労働省が資料2に載せた、老人保健健康増進等事業と令和8年度改定検証調査の結果です。中山間地域等の通所介護は、最も遠い利用者宅までの距離が東京23区の2.5〜4倍あり、ガソリン代と車両の費用を重いと答えた事業所が多く出ました。
地域ごとの送迎距離と、重いと感じる費用
| 地域 | 中央値 | 回答事業所数 |
|---|---|---|
| 振興山村 | 19.0km | 73 |
| 離島 | 15.0km | 43 |
| 過疎地 | 14.5km | 150 |
| 豪雪地帯 | 11.5km | 124 |
| その他 | 8.0km | 140 |
| 東京23区 | 4.6km | 109 |
出典:令和7年度老人保健健康増進等事業「特別地域加算等の在り方に係る調査研究事業」(第274回 資料2の8ページ)
費用の面では、通所介護の事業所に「特に負担が大きいと感じる費用」を聞いています(n=907)。上位はガソリン代75.7%、人件費71.9%、車両の調達・維持管理64.3%でした。
そのうえで資料は、中山間地域等の通所介護は収支差率がマイナスの事業所の割合が高く、月のサービス提供回数が200回以下の事業所に絞るとその割合がさらに高くなる、と書いています。人件費率はすべての地域で全国平均を上回りました。
送迎の費用は、いま基本報酬の中に埋もれている
19.0kmは、一番遠い1軒までの片道の距離です。送迎は迎えと送りで毎日往復するので、この差は車とガソリンと職員の時間にそのまま乗ってきます。それでも報酬上は、送迎の費用は都市部と同じ基本報酬の中に含まれています。
通所の送迎については、10月14日の分科会で出た送迎減算・共同送迎の見直し案もあります。あちらは送迎のやり方、今回は送迎がかさむ地域の評価で、組み合わせて読むと「送迎の費用をどこで見るか」の全体が見えてきます。
③加算を請求した事業所は訪問介護で3.3%、小多機の小規模事業所加算は11.3%(令和7年11月審査分)
確定介護給付費等実態統計をもとに老健局老人保健課が集計した算定状況です。どの加算も、請求している事業所はサービス全体の数%にとどまります。
サービス別の算定事業所数
| サービス | 請求事業所数 | 特別地域加算 | 小規模事業所加算 | 居住者へのサービス提供加算 |
|---|---|---|---|---|
| 訪問介護 | 35,343 | 1,174(3.3%) | 598(1.7%) | 323(0.9%) |
| 訪問看護 | 17,427 | 458(2.6%) | 123(0.7%) | 416(2.4%) |
| 居宅介護支援 | 35,634 | 1,697(4.8%) | 73(0.2%) | 932(2.6%) |
| 小規模多機能型居宅介護 | 5,258 | 260(4.9%) | 592(11.3%) | 80(1.5%) |
| 通所介護 | 24,315 | 対象外 | 対象外 | 303(1.2%) |
| 通所リハビリテーション | 7,655 | 対象外 | 対象外 | 233(3.0%) |
出典:介護給付費等実態統計(令和7年11月審査分)より老健局老人保健課作成(第274回 資料2の16ページ)。割合は請求事業所数に対する算定事業所数。
「取れるのに取っていない」事業所がどれだけあるか
分科会の意見には「加算対象となっている事業者が取得に至らない理由を分析し、取得しやすい環境を整備すべき」というものがありました。この表は、対象地域にある事業所のうち何割が取っているか、ではなく全事業所に対する割合なので、取りこぼしの大きさまではここから読めません。
自分の事業所の所在地や利用者の住所が対象地域に入るかどうかは、指定権者の自治体が案内している地域一覧で確かめられます。居住者へのサービス提供加算は通所系でもいま取れる加算なので、通常の事業の実施地域を越えて送迎している事業所は、一度見ておく価値があると思います。
④通所系を特別地域加算・小規模事業所加算の対象に加える案、小多機などは区域外の提供を評価へ(第274回 対応案)
検討中厚生労働省が示した対応案は大きく3つです。どれも加算率や単位数はまだ出ておらず、評価の水準はこれからの議論になります。
資料に書かれた3つの対応案
| 対象 | 対応案 |
|---|---|
| 通所系サービス | 特別地域加算と中山間地域等における小規模事業所加算の対象に通所系を加える。その際、訪問系との提供形態の違いを踏まえた評価にする |
| 小多機・看多機・定期巡回 | 中山間地域等で、区域外指定を受けて市町村の区域を越えて広域にサービスを展開することを、総合マネジメント体制強化加算の算定要件に加える |
| 小規模多機能型居宅介護の人員 | 通いの3:1の配置基準は維持しつつ、訪問の利用者の有無にかかわらず日中1人以上置く訪問職員の配置を、実態に即してどう考えるか(論点として提示) |
総合マネジメント体制強化加算は、令和6年度改定で加算(Ⅰ)1,200単位が新設され、加算(Ⅱ)は1,000単位から800単位に見直されています。今回の案は、この加算の要件の選択肢に「区域外での広域的な展開」を足すものです。
背景の数字も出ています。看護小規模多機能型居宅介護の事業所がある市町村は、全国1,741のうち471(27.1%)で、ない市町村は1,265(72.7%)。小多機の区域外の提供に必要な支援として、訪問と通いの移動コストを補う加算・補助がそれぞれ55.2%(n=96)でした。
利用者の負担が増える、という問題は残っている
加算は利用料に跳ね返ります。資料に並んだ意見にも「へき地・離島等に住む人の自己負担が高まる」「介護報酬で評価するのか、自己負担に影響しない補助金などの公費で対応するのか議論が必要」という指摘がありました。島根県や長崎県などからは、国による別枠の財政支援を求める要望も出ています。
通所系が対象に入れば、同じデイサービスでも住んでいる地域によって利用料が変わることになります。事業所の側は、加算が付いたときに利用者や家族へどう説明するかまで考えておく必要がありそうです。個人的には、評価の水準と一緒に、低所得の人の軽減措置を通所系にも広げるかどうかが気になっています。
今日のまとめ
4つの論点に共通しているのは、「同じ報酬で、遠くまで行く事業所」をどう支えるかです。訪問系にはあった地域の評価を通所系にも広げ、小多機などには市町村をまたぐ提供を評価する、という方向が資料で示されました。
一方で、加算率や単位数、利用者負担への配慮はまだ空欄です。人口減少地域の新しいサービスの枠組み(特定地域サービス)は、11月6日の記事で取り上げた資料1-2で別に議論されています。
まだ決まっていないこと:
- 通所系に付ける場合の加算率(訪問系と同じ15/100・10/100になるのか、別の水準か)
- 通所系の「小規模」の線をどこに引くか(訪問介護は月200回以下)
- 利用者負担の軽減措置(10%→9%)を通所系にも広げるか
- 小多機の訪問職員の配置をどこまで緩めるか
参考にした一次情報
- 第274回社会保障審議会介護給付費分科会(資料)|厚生労働省(令和8年11月6日)
- 【資料2】人口減少・サービス需要の変化に応じたサービス提供体制の構築(中山間地域等における加算、地域特性を背景としたサービス提供の効率化、事業者・従事者の不足への対応)|厚生労働省老健局(令和8年11月6日)
④の対応案(通所系を加算の対象に加える案、総合マネジメント体制強化加算の要件の追加、小多機の訪問職員の配置)は、検討段階の資料です。資料にも「〜してはどうか」と問いかける形で書かれており、今後の議論で変わり得ます。最終的な取り扱いは公表資料でご確認ください。


