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育児•子育て
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育児に疲れた・限界と感じたら|手が出そうな瞬間の止め方と、今日から頼れる窓口

子どもを守る親へ。虐待防止のための具体的行動と心のケア
ユイン
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いま、手が出そうな人へ。まずこれだけ読んでください。

  1. 子どもの安全が確保できる状態なら、その場を離れてください。別の部屋、玄関、トイレ。ドア1枚はさむだけで変わります
  2. 深呼吸をして、ゆっくり5秒数えてください。窓を開けて風にあたるのも有効です
  3. それでも戻れないなら、電話してください。児童相談所相談専用ダイヤル 0120-189-783(通話料無料)。虐待の通告ではなく、育児の相談のための番号です

この3つは、こども家庭庁(旧厚生労働省)のとりまとめに書かれている対処とほぼ同じです。あなたが思いついた「逃げ」ではありません。国が推奨している行動です。

「育児、疲れた」「もう限界、助けて」。そう検索してここに来たのだと思います。

私は介護福祉士・保育士・サービス管理責任者として働きながら、家では4人の子どもを育てている父親です。仕事では「支援する側」ですが、家では何度も限界を迎えてきました。「もう無理」と声に出したことも、手が出そうになって台所に逃げたこともあります。

この記事は、精神論を書く記事ではありません。①どこからが体罰なのかという線引き、②イライラした瞬間に実際に効く行動、③今日かけられる電話番号、④子どもを物理的に預けられる制度——この4つを、すべて国の公的な文書から確認して並べます。

この記事でわかること
  • どこからが体罰か。国は「どんなに軽いものであっても」と線を引いています
  • 逆に、体罰に当たらない行為。ここを知らずに自分を責めている人がとても多い
  • イライラした瞬間にやることと、言い方を変えるだけで通る7つの型(こども家庭庁のとりまとめより)
  • 今日かけられる番号と、その使い分け。189と0120-189-783は役割が違います
  • 子どもを預ける制度。子育て短期支援事業(泊まりも可)・訪問支援・ファミリーサポート
  • お金で解決することへの罪悪感と、パートナーへの頼み方
Contents
  1. 「疲れた」「助けて」は、限界が近いサインです
  2. どこからが体罰か。国が線を引いています
  3. イライラした瞬間に、実際にやること
  4. 言い方を変えるだけで通る、7つの型
  5. 今日かけられる番号と、その使い分け
  6. 物理的に離れる——子どもを預ける制度
  7. お金で解決することへの罪悪感について
  8. パートナーへの頼り方——「察して」は捨てる
  9. 「消えたい」と思う日が続いているなら
  10. よくある質問
  11. まとめ
  12. あわせて読みたい
  13. 参考にした一次情報
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「疲れた」「助けて」は、限界が近いサインです

最初に、数字をひとつ置かせてください。

こども家庭庁の公表によると、令和6年度に全国236か所の児童相談所が対応した児童虐待の相談は223,691件でした。前年度から1,818件(0.8%)の減少です。公表されている推移を見る限り、この統計がはじめて前年度を下回った年になります。

減ったことは良いニュースです。ただ、この記事で見てほしいのは内訳のほうです。

令和6年度・児童虐待相談対応件数の内訳(こども家庭庁)
種別 件数 割合
心理的虐待 133,024件 59.5%
身体的虐待 52,535件 23.5%
ネグレクト 35,612件 15.9%
性的虐待 2,520件 1.1%
総数 223,691件 100.0%

約6割が「心理的虐待」です。つまり「叩いていないから大丈夫」という線引きは、実態と合っていません。怒鳴る、存在を否定する、きょうだいと比べてけなす——ここが最も多い。逆に言えば、多くの親がいちばん危ないのは、手より先に口だということです。

この数字を出したのは、脅すためではありません。「自分は手を上げていないから関係ない」と思っている人ほど、疲労の底で口が先に出るからです。そしてそれは、限界のサインとして扱っていい。

追い詰められる背景は、国も把握しています

こども家庭庁のとりまとめ「体罰等によらない子育てのために」は、体罰をしてしまう背景を3つに分けて整理しています。親の人格の問題として書かれていないのが、この資料の良いところです。

追い詰められる3つの背景(とりまとめより)
  • 子どもの年齢や特性等に関わること……一生懸命向き合っているのにいつまでも泣き止まない/何度言っても言うことを聞かない、動いてくれない/年齢に応じた発達・行動が見られない
  • 保護者の心配事や負担感、孤独感等に関わること……仕事や介護、家族関係でストレスが溜まっている/周囲に相談したり頼りにできる人がいない/小さい子どもが複数いるがサポートが得られない
  • これまでの体験や周囲の言動等に関わること……自分自身もそうやって育ってきた/大人としてなめられてはいけないと感じている/子どもが言うことを聞かないのは親が甘いからだと責められた

2つ目と3つ目は、あなたの外側で起きていることです。孤立と、他人からの言葉。ここを放置したまま「イライラしない方法」を探しても、効きが悪いのは当然です。

なお、お子さんの発達に気になるところがあって「何度言っても伝わらない」という状態が続いているなら、それは育て方の問題ではない可能性があります。1歳半健診で「様子を見ましょう」と言われたら|次の3か月でやることや、子どもの感覚過敏への対応|6つの感覚別チェックと、学校に配慮を求めるときの伝え方も見てみてください。原因が分かると、しんどさの質が変わります。

どこからが体罰か。国が線を引いています

これは体罰ではありません。危険から守る・けんかを止める

「叩いてはいけない」と言われても、どこからが体罰なのかが分からないと、判断できません。ここは国が明確に書いています。

令和元年6月に成立した児童福祉法等の改正法で体罰が許されないものであることが法定化され、令和2年4月1日から施行されました。そして令和4年12月には、民法から親権者の懲戒権の規定(旧822条)が削除されています。「しつけだから」という理由づけは、法律の側からもう消えています。

たとえしつけのためだと親が思っても、身体に、何らかの苦痛を引き起こし、又は不快感を意図的にもたらす行為(罰)である場合は、どんなに軽いものであっても体罰に該当し、法律で禁止されます。これは親を罰したり、追い込むことを意図したものではなく、子育てを社会全体で応援・サポートし、体罰によらない子育てを社会全体で推進することを目的としたものです。

こども家庭庁「体罰等によらない子育てのために ~みんなで育児を支える社会に~」

後半をもう一度読んでください。「これは親を罰したり、追い込むことを意図したものではなく」と書いてあります。この法律は、親を摘発するために作られたものではありません。

「これらは全て体罰です」(とりまとめに挙げられている例)
  • 言葉で3回注意したけど言うことを聞かないので、頬を叩いた
  • 大切なものにいたずらをしたので、長時間正座をさせた
  • 友達を殴ってケガをさせたので、同じように子どもを殴った
  • 他人のものを取ったので、お尻を叩いた
  • 宿題をしなかったので、夕ご飯を与えなかった
  • 掃除をしないので、雑巾を顔に押しつけた

「お尻なら」「1回だけなら」という例外はありません。食事を与えないことも体罰に入ります。ここは意外に思う人が多いところです。

さらに、体罰以外の「心を傷つける行為」も同じとりまとめに挙げられています。こちらのほうが、日常でやってしまいやすい。

「子どもの心を傷つける行為」として挙げられている例
  • 冗談のつもりで、「お前なんか生まれてこなければよかった」など、子どもの存在を否定するようなことを言った
  • やる気を出させるという口実で、きょうだいを引き合いにしてけなした

とりまとめは「子どもをけなしたり、辱めたり、笑いものにするような言動は、子どもの心を傷つける行為で子どもの権利を侵害します」としています。先ほどの統計で心理的虐待が6割だったのは、ここが日常に紛れ込みやすいからです。

逆に、体罰に当たらないこと

ここを知らずに、必要以上に自分を責めている人がとても多い。とりまとめは、体罰に該当しない行為も明記しています。

ただし、罰を与えることを目的としない、子どもを保護するための行為(道に飛び出しそうな子どもの手をつかむ等)や、第三者に被害を及ぼすような行為を制止する行為(他の子どもに暴力を振るうのを制止する等)等は、体罰には該当しません。

こども家庭庁「体罰等によらない子育てのために」

道路に飛び出そうとした子の腕を強くつかんだ。きょうだいを叩こうとした手を押さえた。それは体罰ではありません。親の仕事です。

判定の軸は「罰を与えることが目的かどうか」です。危険から守るために体を押さえるのは保護。言うことを聞かせるために痛みを与えるのが体罰。この一線で考えてください。

「マルトリートメント」という広い概念

とりまとめにはもうひとつ、知っておくと楽になる考え方が載っています。マルトリートメント(大人の子どもへの不適切な関わり)という、虐待を広く捉えた概念です。3つのレベルに分けられています。

マルトリートメントの3つのレベル
レベル 内容
A(要保護)
レッドゾーン
子どもの命や安全を確保するため児童相談所が強制的に介入し、子どもの保護を要するレベル
B(要支援)
イエローゾーン
軽度な児童虐待で、問題を重症化させないために児童相談所など関係機関が支援していくレベル
C(要観察)
グレーゾーン
児童虐待とまではいかないが、保護者の子どもへの不適切な育児について、地域の関係機関等が連携して啓発や教育を行い支援していく必要があるレベル

この記事を読んでいる人のほとんどは、Cかそれ以前だと思います。そしてCに対する国の方針は「介入」ではなく「支援」です。相談したら子どもを取り上げられる、というイメージは、ここでは当てはまりません。

イライラした瞬間に、実際にやること

限界が近いときの順番。気づく・しんどさを見る・深呼吸・その場を離れる・電話する

理屈は分かっても、渦中では効きません。ここからは行動の話です。

とりまとめの「保護者自身の工夫」に書かれていることを、順番に並べ直しました。この順番でやってください。

限界が近いときの順番
  • ①「いま自分は怒っている」と気づく。とりまとめは「否定的な感情が生じたときは、まずはそういう気持ちに気付き、認めることが大切です」としています。感情を止めるのではなく、名前をつけるだけで速度が落ちます
  • ②原因が子どもか、自分かを分ける。「自分の体調の悪さや忙しさ、孤独感など、自分自身のことが関係しているのか」を振り返る。寝不足の日は、同じ行動でも3倍腹が立ちます
  • ③体に働きかける。深呼吸する/ゆっくり5秒数える/窓を開けて風にあたる。とりまとめに挙げられている具体策です
  • ④その場を離れる。安全が確保できるなら、別の部屋へ。とりまとめも「時には保護者自身が休むことも、大切です」としています
  • ⑤それでも収まらないなら、人に投げる。次章の番号にかけてください

①②を飛ばして③だけやると、たいてい失敗します。「これは子どものせいじゃなくて、自分が限界だからだ」と一度言語化するのが、いちばん効きます。

「その場を離れる」が使えるのは、子どもの安全が確保できる場合だけです。乳児をベッドやサークルなど安全な場所に寝かせてから離れてください。お風呂、階段の近く、高いところの上には残さないこと。数分で戻る、という前提を自分に課してください。

「言うことを聞かない」には理由があります

とりまとめは、この点にまるごと1項目を割いています。

子どもの「言うことを聞かない」にもいろいろな理由が考えられます。保護者の気をひきたい、子どもなりに考えがある、言われていることを子どもが理解できていない、体調が悪いなど、様々です。「イヤだ」というのは、子どもの気持ちです。こうした感情を持つこと自体はいけないことではありません。(中略)重要なことでない場合、今はそれ以上やり合わない、というのも一つの方法かもしれません。

こども家庭庁「体罰等によらない子育てのために」

最後の一行が、実務的にはいちばん強い。「今はそれ以上やり合わない」を、国が方法のひとつとして認めています。引き下がるのは負けではありません。

言い方を変えるだけで通る、7つの型

怒鳴る回数を減らすいちばん確実な方法は、怒鳴らなくても済む伝え方に変えることです。とりまとめの「子どもとの関わりの工夫」7項目を、現場で使える形に整理しました。

こども家庭庁が挙げている7つの工夫
工夫 中身 具体的にどうするか
①耳を傾ける 気持ちや考えを受け止めてもらえた体験で、子どもは落ち着く 「あなたの考えはそうなのね」と一度受けてから、自分の考えを伝える
②理由を考える 「言うことを聞かない」にもいろいろな理由がある 気をひきたい/考えがある/理解できていない/体調が悪い、のどれかを疑う
③発達を見る 年齢や成長の状況によって、できることとできないことがある 「言われていることが理解できず、結果として『言うことを聞かない子』に見える」ことがある
④環境を変える 叱らないで済む環境をつくる 触られたくないものは見えないところ・届かないところへ。片付けは置き場所を決める
⑤注意をそらす 気持ちの切り替えが難しいことがある 待つ/場面を切り替える(家から出て散歩する等)
⑥肯定文で伝える 大声で怒鳴るより伝わる 「走らないで」ではなく「ここでは歩いてね」。穏やかに、近づいて、落ち着いた声で
⑦具体的に褒める 何が良いのかを具体的に 「いい子だね」ではなく「靴をそろえて脱いでいるね」。寝る前など落ち着いたタイミングでもよい

全部やろうとしなくていいです。④と⑥だけで、怒る回数はかなり減ります。④は子どもを変える必要がないので、いちばん失敗しません。

とりまとめに載っている、そのまま使える声かけ

同じ資料のコラムに、具体的な声かけ例が3つ載っています。これは印刷して冷蔵庫に貼ってもいいくらいです。

「こんなときどうする」(とりまとめのコラムより)
場面 声かけの例 なぜ効くか
出かける時間になっても支度をしない 「出かける時間だね。そろそろこの服に着替えよう」→(着替えられたら)「自分でちゃんと着替えられたね。じゃあ、次はカバンを持ってきてね」 「支度」とひとくくりにすると、何からやってよいか分からない。やることを区切って、やりやすいことから具体的に伝える
座ってほしいときに座ってくれない 「床か、この椅子か、どちらかに座ってね」 指示されてばかりだと反発したくなる。複数の選択肢を提示して、子どもの意思を尊重する
よく忘れ物をしてしまう 「忘れ物を減らす方法を一緒に考えよう」 行動を批判せず、関係しそうなことを変える。大事な持ち物は玄関の真ん中に置く、持ち物リストで見える化する

3つに共通しているのは、「子どもを変える」のではなく「状況を変える」という発想です。親が変えられるのは、自分の言い方と環境だけ。ここに労力を集中させるほうが、結果的に早い。

その前に——「時間がない」が原因なら、家事を減らすのが最短です

ここまで書いてきた工夫は、心に数秒の余裕があってはじめて使えるものです。そして、その数秒を奪っているのは、たいてい子どもではなく家事です。

実は、こども家庭庁のとりまとめ自体が、対処のひとつとして「NPO、企業等の様々な支援(ファミリーサポート、家事代行サービス等)を検討するのも一つです」と書いています。外注は、国が挙げている選択肢です。後ろめたく思う必要はありません。

我が家は6人家族で、いちばん効いたのは「手を離せる家電」を入れたことでした。夕方のいちばん荒れる時間帯に、コンロの前に立たなくてよくなるだけで、家の中の空気が変わります。

今日かけられる番号と、その使い分け

どこにかければいいのか。0120-189-783・189・こども家庭センター

相談先が分からない、という状態そのものが負荷です。番号と役割を、先に決めておいてください。

電話の使い分け
窓口 番号 何のための番号か
児童相談所
相談専用ダイヤル
0120-189-783
(通話料無料)
育児の相談のための番号です。こども家庭庁は「育児、里親、ヤングケアラーなどこどもの福祉に関する様々な相談」と説明しています。まずここ
児童相談所
虐待対応ダイヤル
189
(通話料無料)
虐待の相談・通告用。かけるとお近くの児童相談所につながります。匿名でもよく、相談した人と内容の秘密は守られます
24時間子供
SOSダイヤル
0120-0-78310
(通話料無料)
いじめやその他の子どものSOS全般。24時間受付(年中無休)
子どもの人権110番 0120-007-110
(通話料無料)
いじめや虐待など、子どもの人権問題。平日8:30〜17:15

いちばん大事なのは1行目です。「189は虐待を通報する番号だから、自分がかけたら通報したことになるのでは」と怖がって、どこにも相談できない人がいます。育児がしんどいだけなら、0120-189-783のほうです。この2つの使い分けは、ほとんど知られていません。

なお189は、令和元年12月3日から通話料が無料になっています。以前「お金がかかるから」とためらった記憶がある方は、情報が古いです。

電話より、顔の見える窓口がいい人へ

対面で相談できる場所
窓口 役割 こんなときに
こども家庭センター 市区町村の母子保健機能と児童福祉機能を一体化した窓口。対象者と一緒にニーズ・目標・支援内容を話し合い、サポートプランを作る 何から相談すればいいか分からないとき
保健センター
(保健師)
母子の心と体の健康を守る専門職。健診だけが仕事ではありません 健診で顔を合わせている人がいるとき。心理的にいちばんハードルが低い
地域子育て支援拠点 児童福祉法に基づき市区町村等が実施。子育てひろば・子育て支援センターとも呼ばれ、親子が気軽に集い相談できる場 まだ元気があるうち。後述しますが、これが重要です

こども家庭センターは、令和4年改正児童福祉法で市区町村の設置が努力義務になった比較的新しい窓口です。こども家庭庁のポータルサイトによると、令和8年4月1日時点で1,496自治体(85.9%)が設置済み。未設置の245自治体(14.1%)では、従来の子育て世代包括支援センターや児童福祉担当課が窓口になります。

「困ってからでは、相談する気力がない」

とりまとめの中で、私がいちばん大事だと思っている一文がこれです。

また、子育てには、気力・体力をとても使います。そのため、困ってから相談に行こうと思っても、その気力が湧かなくなってしまうこともあります。落ち着いているときに、地域子育て支援拠点など、子どもを連れて出かけられる場所に出かけてみることも一つの方法です。

こども家庭庁「体罰等によらない子育てのために」

これは現場感覚とも完全に一致します。相談に来る時期は、一様に遅い。そして遅れた分だけ、選べる手段が減ります。

だから、いま比較的落ち着いているなら、使わなくていいので一度だけ場所を見に行っておいてください。「あそこに行けばいい」と知っているかどうかで、本当に限界が来た日の行動が変わります。

物理的に離れる——子どもを預ける制度

気持ちの整理では、どうにもならない段階があります。そのときに必要なのは、物理的に距離を取ることです。制度としてちゃんとあります。

親が休むために使える公的な制度
制度 内容 どんな休み方ができるか
子育て短期支援事業
(ショートステイ)
保護者の疾病その他の理由により家庭においてこどもを養育することが一時的に困難となった場合等に、児童養護施設等において一定期間、養育・保護を行う 泊まりで預けられる。数日単位でまとまった休息が取れる
子育て世帯訪問支援事業 訪問支援員が、家事・子育て等に不安・負担を抱えた家庭の居宅を訪問し、不安や悩みを傾聴するとともに、家事・子育て等の支援を実施する 家に来てもらう。外に出られない状態でも使える
ファミリー・サポート・センター 地域の会員同士で、子どもの預かりや送迎などを助け合う仕組み(市区町村が実施) 数時間単位。習い事の送迎や急な用事に
一時預かり/
保育所等の一時保育
保育所・幼稚園・地域子育て支援拠点などで、一時的に子どもを預かる 日中の数時間。リフレッシュ目的で使える自治体も多い

注目してほしいのは1行目の「その他の理由」です。病気でなければ使えない制度ではありません。そして子育て世帯訪問支援事業は、目的として「虐待リスク等の高まりを未然に防ぐ」ことが明記されています。つまり限界が来る前に使う想定で作られた制度です。

子育て短期支援事業は、令和4年の児童福祉法改正を受けて令和6年度から、親子入所等支援・入所希望児童支援・専用人員配置支援が拡充されています。制度が広がっている最中なので、「数年前に聞いた話」と今の運用は違う可能性があります。窓口で確認してください。

「預けるなんて」と思ってしまう人へ

私が現場で何度も見てきたのは、倒れてから初めて預けるというパターンです。これは、いちばん子どもに負担がかかる順番です。知らない場所に、いきなり、親が不在の状態で預けられることになります。

逆に、元気なうちに一度使っておくと、子どもにとって「知っている場所」ができます。本当に必要になった日に、そこへ行けるようになる。これは保険と同じ考え方です。

「使うほどではない」と思っているときが、いちばんの使いどきです。

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お金で解決することへの罪悪感について

ここは公的文書の話ではなく、私見です。

家事代行、ベビーシッター、宅配、時短家電、外食。これらを使うことに罪悪感を持つ人は、かなり多い。「自分が頑張ればタダで済むことに、お金を払っている」という感覚です。

この感覚を、一度だけ計算に置き換えてみてください。

「頑張ればタダ」は、本当にタダか
  • 夕方の1時間を買い戻すのに、月に数千円かかったとします
  • その1時間で、怒鳴る回数が週に3回減ったとします
  • 怒鳴らずに済んだ日が、1か月で12日ぶん増える計算になります

この12日は、お金では買い戻せない側の資産です。支出を「サボり」ではなく「子どもとの関係への投資」として見ると、判断が変わります。私自身、ここを切り替えるのに数年かかりました。

それでも「うちにはそんな余裕がない」という場合は、先にお金の側を点検してください。使える制度を取りこぼしていることが、かなりあります。【2026年度】子育てでもらえるお金一覧|申請しないと消える制度と期限の早見表に、申請しないと消える制度と期限をまとめました。

パートナーへの頼り方——「察して」は捨てる

「手伝ってくれない」という相談の多くは、よく聞くと「言っていない」か、「伝わる形で言っていない」のどちらかです。

これは相手をかばっているのではありません。疲れているときほど、人は要求を抽象的にします。「少しは手伝ってよ」は、受け取る側には何の指示にもなっていません。

伝わる頼み方に変える
伝わらない言い方 伝わる言い方
「少しは手伝ってよ」 火曜と木曜の寝かしつけを代わってほしい」(曜日と作業を指定する)
「もう限界なんだけど」 今週、1時間だけひとりになる時間がほしい。土曜の午前でいい?」(時間と量を出す)
「私ばっかり大変」 朝の30分がいちばんきつい。ここだけ一緒にやってくれると助かる」(時間帯を特定する)
「なんで気づかないの」 気づいてほしいんじゃなくて、お願いしたい。これとこれ、どっちならできる?」(選ばせる)

右側に共通しているのは、「いつ・何を・どのくらい」が入っていることと、相手に選ばせていることです。前の章で出てきた「床か、この椅子か、どちらかに座ってね」と、構造はまったく同じです。

それでも動かないパートナーの場合

正直に書きます。伝え方を変えても動かない相手は、います。その場合、説得に時間を使うのはもったいない。パートナーを変えるより、外部の手を増やすほうが早いです。

前章の子育て世帯訪問支援事業やファミリー・サポート・センターは、まさにここで使えます。「頼れる人が家の中にいない」は、制度が想定している状況です。とりまとめも、追い詰められる背景として「周囲に相談したり頼りにできる人がいない」を挙げています。

パートナーからの暴力・暴言がある場合は、話が変わります。子どもの前で配偶者に暴力を振るうこと(面前DV)は、子どもへの心理的虐待として扱われます。その状況なら、まず自分と子どもの安全の確保が先です。こども家庭センター、女性相談支援センター(旧・婦人相談所)、警察に相談してください。

「消えたい」と思う日が続いているなら

疲労と、気分の落ち込みは、途中まで見分けがつきません。ただ、次のような状態が2週間以上続いているなら、疲労ではなく医療の話です。

受診を考えたほうがいいサイン
  • 子どもが寝たあとも眠れない、朝起きられない日が続く
  • 食べられない、または食べ続けてしまう
  • 子どもをかわいいと思えない日が続く
  • 何をしても楽しくない。以前は好きだったことに興味が湧かない
  • 「自分がいないほうがいい」と考える

受診先は、産後1年以内なら産婦人科、それ以降は心療内科・精神科、かかりつけ医、保健センターのいずれでも構いません。どこでもいいので、いちばんハードルが低いところに。「親の心の状態を相談すること」は、子どもの支援の一部です。

カウンセリングについても、ひとこと。これは最終手段ではなく、最初の選択肢に入れていいものです。自治体の相談窓口で無料または低額のカウンセリングを案内してくれる場合があるので、まず聞いてみてください。

なお、障害のあるお子さんを育てていて、周囲の言葉や視線のほうがしんどいという場合は、しんどさの成り立ちが少し違います。その場合は発達の特性と愛着形成の違いとは?親の心を軽くする3つの支援のほうが近いかもしれません。「育て方が悪いからだ」と言われて苦しんでいる方に読んでほしい記事です。

よくある質問

Q. 相談したら、子どもを連れて行かれませんか

A. これがいちばん多い誤解です。子どもの保護が必要なのは、マルトリートメントで言うA(要保護)レッドゾーン——命や安全の確保が必要なレベルです。「イライラして怒鳴ってしまう」「疲れて何もできない」という状態は、国の整理では支援の対象であって、介入の対象ではありません。むしろ相談しないまま悪化させるほうが、その線に近づきます。

Q. 一度叩いてしまいました。もう取り返しがつきませんか

A. とりまとめは、体罰等の悪影響について書いたうえで、こう続けています。「一方で、その後の適切な関わりや周囲の人々の支援により、悪影響を回復し、あるいは課題を乗り越えて成長することも報告されています」。過去は変えられませんが、ここから先の関わりは効きます。大事なのは、繰り返さない環境を作ることです。

Q. 189にかけたら、記録が残って不利になりませんか

A. こども家庭庁は189について「通告・相談は、匿名で行うこともでき、通告・相談をした人、その内容に関する秘密は守られます」としています。そもそも、育児がしんどいという相談なら0120-189-783(児童相談所相談専用ダイヤル)のほうが目的に合っています。こちらも通話料無料です。

Q. 「しつけ」と「体罰」の線引きが、まだよく分かりません

A. 「罰を与えることが目的かどうか」で分けてください。道路に飛び出しそうな子の手をつかむのは、罰ではなく保護なので体罰ではありません。一方、「言うことを聞かせるために」痛みや不快感を与えるなら、どんなに軽くても体罰です。とりまとめは「身体に、何らかの苦痛を引き起こし、又は不快感を意図的にもたらす行為(罰)」と定義しています。

Q. 怒鳴るのはやめられません。どこから手をつければいいですか

A. 言い方より先に、環境を変えてください。とりまとめの④「叱らないで済む環境づくり」です。触られたくないものを見えないところにしまう、片付けの置き場所を決める。子どもを変えなくていいので、いちばん失敗しません。次に⑥の「肯定文で伝える」。「走らないで」を「ここでは歩いてね」に変えるだけです。

Q. 上の子にばかり強く当たってしまいます

A. とりまとめは「他のきょうだいとは著しく差別的な扱いをする」ことを心理的虐待の例に挙げています。ただ、これは責めるための情報ではなく、自覚できていれば修正できるという意味に取ってください。対策は難しくありません。短時間でいいので、その子と1対1になる時間を作ること。コンビニに一緒に行くだけでも変わります。「あなたの番が来る」と分かっていれば、待てる子は多いです。

Q. 夫(妻)が体罰を容認していて、話が合いません

A. 感情で戦わず、事実を置いてください。令和元年6月の児童福祉法等改正で体罰は法定で禁止され、令和2年4月1日から施行されています。令和4年12月には民法の懲戒権の規定も削除されました。「自分もそう育てられた」は、もう根拠になりません。それでも折り合わないなら、こども家庭センターや保健センターに第三者として入ってもらうほうが早いです。

まとめ

この記事の要点
  • 手が出そうなら、その場を離れる。深呼吸、5秒数える、窓を開ける。国が挙げている対処です
  • 体罰は「どんなに軽いものであっても」禁止。ただし危険から守るために体を押さえるのは体罰ではありません
  • 相談対応件数の約6割は心理的虐待。危ないのは手より先に口、というのが実態です
  • まずかけるのは0120-189-783(児童相談所相談専用ダイヤル・通話料無料)。189とは役割が違います
  • 迷ったらこども家庭センター。サポートプランを一緒に作ってくれます
  • 預ける制度はある。子育て短期支援事業は泊まりも可。訪問支援は「虐待リスクを未然に防ぐ」ための事業です
  • 外注は国も挙げている選択肢。とりまとめ自体が家事代行・ファミリーサポートに言及しています
  • 「困ってから」では気力が湧かない。落ち着いている今のうちに、場所を1つ見ておく

最後に、現場で長くやってきて確信していることを書きます。

「この親御さんは強いな」と思う人は、もともと強かったわけではありません。どこかの時点で誰かに頼った人です。頼れる先を見つけた人が、結果として長く走れている。ただそれだけです。

今日、全部はできません。この記事の中から、ひとつだけ選んでください。番号をスマホに登録する。窓口の場所を調べる。パートナーに曜日を指定して頼む。それで十分です。

あわせて読みたい

参考にした一次情報

  • こども家庭庁「体罰等によらない子育てのために ~みんなで育児を支える社会に~」(令和2年2月・体罰等によらない子育ての推進に関する検討会とりまとめ)
  • こども家庭庁「令和6年度 児童相談所における児童虐待相談対応件数」(福祉行政報告例を基に作成)
  • こども家庭庁「児童相談所虐待対応ダイヤル『189』について」/「関連サービスの相談窓口」
  • こども家庭庁「子育て短期支援事業について」「子育て世帯訪問支援事業について」
  • こども家庭庁「こども家庭センターポータルサイト」(設置状況は令和8年4月1日時点)
  • 児童福祉法等の一部を改正する法律(令和元年6月成立・令和2年4月1日施行/体罰の禁止)
  • 民法等の一部を改正する法律(令和4年12月成立/懲戒権の規定の削除)

※制度の名称・有無・利用条件・費用は自治体によって異なります。金額や運用は記事作成時点のもので、最終的な判断はお住まいの市区町村の窓口でご確認ください。

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ABOUT ME
室長:ユイン
室長:ユイン
介護福祉士・保育士・サビ菅

福祉の専門知識 × 現場10年 × 4児パパ。
机上の空論ではない情報を発信しています。

グループホーム・放課後等デイサービスの施設長・管理者を20代から経験。現在も現場の最前線に立ちながら、4人の子どもを育てる6人家族の父として、福祉と子育ての両方をリアルな目線で書いています。

  • 支援歴10年以上、管理職は20代後半から GH施設長 / 放課後等デイ管理者
  • 実務者研修・強度行動障害研修の講師資格あり 研修講師として登壇経験多数
  • 4人の子どもを育てる現役の福祉職パパ 6人家族 / 子育て × 仕事の両立を実践中
資格
  • 介護福祉士
  • 保育士
  • サービス管理責任者
  • 3級ファイナンシャル・プランニング技能士
  • 実務者研修教員講習会修了
  • 強度行動障害支援者養成研修(基礎・実践)
  • 防火管理者(甲種)
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