障害者雇用の人間関係に疲れたあなたへ。サビ管が教える自分を守る5つの対処法

「障害者雇用で働き始めたけれど、職場の人間関係にすっかり疲れてしまった…」 「周りに配慮を求めすぎているのだろうか」 「結局、自分の努力が足りないのかもしれない」
もしあなたが今、そんな風に自分を責めているなら、まずはその必要がないことを知ってください。

私は介護福祉士であり、障害福祉の現場でサービス管理責任者として多くの方の「働く」を支援してきました。
その経験から断言できるのは、あなたが感じている「疲れ」は、決してあなた個人の弱さや努力不足のせいではない、ということです。 障害者雇用の現場では、多くの人があなたと同じように人間関係のストレスに直面しています。実際、障害者の離職理由を調査したデータでは、精神障害者・身体障害者ともに、離職理由の上位には常に「職場の雰囲気・人間関係」が挙げられているのです[1]。
なぜ? 障害者雇用で「人間関係」に疲れてしまう5つの理由

「疲れた」という漠然とした感情を、具体的な「理由」に分解して言語化してみましょう。あなたが感じている困難が、あなただけのものではないことが分かると、少しだけ心が軽くなるはずです。
理由1:周囲の「理解不足」や目に見えない「偏見」
障害の特性、特に精神障害や発達障害、内部障害といった「見えない障害」は、外見からは分かりにくいという困難があります [2]。
そのため、体調の波によってパフォーマンスが落ちたり、特定の作業に時間がかかったりすると、「怠けている」「わがまま」「やる気がない」といった誤解や偏見にさらされることがあります。周囲に悪意がなくても、「知らなかった」というだけで、当事者には「理解されていない」という大きなストレスがかかります。
理由2:業務内容と特性の「ミスマッチ」
理由1の「理解不足」が原因で、企業側が「適切な業務を切り出す」ことが困難な場合に、このミスマッチが発生します。
例えば、発達障害の特性として「曖昧な指示やマルチタスクが苦手」な方に、あえて「臨機応変な窓口対応」を任せてしまう [2]。あるいは、精神障害の特性として「体調の波に合わせた柔軟な勤務」が必要な方に、厳格な勤怠管理を求めてしまう。
こうしたミスマッチが続くと、本人は「期待に応えられない」という強いプレッシャーと、「自分はこの仕事に向いていない」という自己否定感、そして慢性的な疲労を抱え込むことになります [1]。
理由3:「配慮」がいつの間にか「特別扱い」という孤立感に変わる
障害者雇用では「合理的配慮」が求められます。しかし、この配慮が「対話」なしに行われると、かえって孤立感を生む原因になります。
理由4:「配慮」が徐々になくなっていくことへの不満
これは公的な統計データには表れにくい、多くの当事者が「経験」として語るリアルな悩みです。
入社直後は手厚い配慮があった。しかし、数ヶ月が経ち、仕事に「慣れてきた」と見なされると、徐々にその配慮が薄れていく。
「もう大丈夫だろう」「言わなくても分かるはずだ」という周囲の暗黙の期待がプレッシャーとなり、当事者は「以前はしてもらえた配慮を、今さら言い出しにくい」という不満と疲労を蓄積させていきます。
理由5:そもそも「仕事」と「障害へのセルフケア」の両立が大変
健常者でさえ、仕事と日々の体調管理を両立させるのは簡単なことではありません。障害のある方の場合、日々の業務をこなすエネルギーに加えて、自身の障害特性(体調の波、メンタルの落ち込み、疲れやすさ)をコントロールするためのエネルギーが常に必要です。
精神障害のある方の離職理由として、「疲れやすく体力、意欲が続かなかった」が「人間関係」と並んで上位にあること [1] が、この「二重の負担」の過酷さを物語っています。
この二重の負担を常に抱えているため、追加のストレス(=人間関係)への耐性が低くなっているのは、ある意味で自然なことなのです。
今日からできる「セルフケア」:自分を守るための具体的な方法
「疲れた」というサインを無視しないことが第一歩です。ここでは、精神論ではなく、今日から実践できる具体的な「行動」としてのセルフケアをご紹介します。
(ステップ1のタイトル:セルフケア1:フィジカルケア(身体をリセットする)) 心の疲れは、まず身体からケアするのが近道です。特に「睡眠」と「運動」は、科学的根拠に基づいた強力なセルフケアです。
- 快適な睡眠をとる 十分な睡眠は、ストレス解消に不可欠です [4]。質の良い睡眠は、心身の疲労回復に直結します。
- 適度な運動をする 運動にはストレスホルモン(コルチゾール)の分泌を抑える効果があります [4]。無理な筋トレは必要ありません。呼吸を意識したストレッチや、近所の散歩(ウォーキング)でも、脳をリラックスさせる効果が十分に期待できます。
モヤモヤした感情を意図的にリセットする時間を作ります。
- 映画や読書で「泣いたり笑ったり」する あえて泣ける映画や悲しい音楽に浸ることで、「押し殺していた感情」を解放できます。この「カタルシス効果(浄化作用)」によって、心がリセットされます [5]。
- 趣味に没頭する 仕事とは全く関係のない、自分が好きなこと(料理、ゲーム、音楽鑑賞、推し活など)に集中する時間を作ります。
一人で抱え込むことはストレスを増大させます。「話す」か「書く」ことで、感情を外に出しましょう。
- 「誰かに話す」 信頼できる友人、家族、SNSでも構いません。「人に話す(傾聴してもらう)」ことには、不安や苦悩を和らげ、気持ちを落ち着かせる「鎮静化」の効果があります。
- 「書き出す」 ノートに今の気持ちをそのまま書き出す「ジャーナリング(書く瞑想)」が有効です。頭の中のモヤモヤを言語化することで、自分が何に悩んでいるのかを「客観視」できます。
これは最も重要な【JIN:R: マーカー(黄線)】「攻め」のセルフケア【/マーカー】です。「配慮してください」という曖昧なお願いではなく、自分を「守るための武器」として、具体的な提案をしましょう。
セルフケアを試みても「疲れ」が取れない。限界を感じたら、迷わず専門家を頼ってください。それは「逃げ」ではなく、自分を守るための最も賢明な「戦略」です。
もし「伝える」エネルギーすらないなら(新設)
セルフケア1〜5を紹介しましたが、 「もう、そのどれも実行する元気がない」 「『伝える』とか『相談する』とか、考えるだけで疲れる」 という方もいらっしゃると思います。

もう何もかもが面倒で、朝起きるのがやっとだ…
その状態は、あなたの心が「バッテリー切れ」を起こしているサインです。 そんな時に必要なセルフケアは、「何もしない」こと、そして「戦略的に休む」ことです。
休職は「戦略的撤退」という最強のセルフケア
まず、医療機関(セルフケア5)を受診し、医師の診断書(休職診断書)をもらうことを最優先にしてください。
休むことに罪悪感を覚える必要は一切ありません。 それは「逃げ」ではなく、完全に動けなくなる前に自分を守る「戦略的撤退」です。
「休職」=「終わり」ではない。次への準備期間
休職期間中は、心と体を休めることが最優先です。しかし、それと同時に、生活を守るための手続きも進めましょう。
「人間関係に疲れた」職場で無理に働き続けるよりも、一度しっかり休んでリセットし、復職するか、あるいは「もっと自分に合う環境(転職)」を探す方が、あなたの人生にとっては遥かにプラスになります。
\\「就職経験がない」「ブランクがある」方もOK!就労移行支援Cocorport//
\\面倒な書類作成から面接サポートまで!障害者の就・転職ならアットジーピー【atGP】//
まとめ:小さな「セルフケア」を、自分を「ケア」できた自分を褒めよう
【出典・参考文献】
[1] 独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構 障害者職業総合研究センター (2017). 「障害者の就業状況等に関する調査研究」 [2] 厚生労働省. 「合理的配慮指針(障害者差別解消法)」 [3] 独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構. 「障害者雇用の現状と課題」 [4] 厚生労働省. 「こころの耳:ストレス軽減ノウハウ」 [5] 独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構 障害者職業総合研究センター (2022). 「障害のある人のキャリア形成と職場における人間関係」


