退職手当共済(福祉医療機構)の見直し、掛金は2040年度に年25万円超の推計(11/2検討会)、10月31日の福祉ニュース
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そこで、11月2日(月)に第5回が開かれる「社会福祉施設職員等退職手当共済制度の在り方に関する検討会」を、7月16日の第4回までの資料に沿って詳しく見ます。第5回の議題は「これまでの御意見を踏まえた見直しの方向性について」です。
社会福祉法人の約8割が入っている退職金の仕組みで、加入職員は約88万人います。厚生労働省の推計では、今の給付のまま続けると、法人が払う掛金は2040年度に職員1人あたり年25万円を超えます。行き着く先は、法人が毎年払う掛金と、職員が辞めるときに受け取る退職金の額です。
この記事の要点を、30秒で
| 項目 | いちばん大事な一行 | いまの段階 |
|---|---|---|
| ①制度のいま | 16,678法人・882,826人が加入。介護・障害分野の掛金は職員1人あたり年148,500円(令和8年度) | 現行制度 |
| ②支給額の見通し | 令和7年度1,452億円の支給が、令和23年度に2,098億円まで増える推計 | 推計 |
| ③掛金の見通し | 支払準備金は令和9年度で使い切る見込み。2040年度の掛金は年255,300円〜281,400円の推計 | 推計 |
| ④給付の見直し論点 | 最低勤続年数・支給乗率・計算基礎額の上限36万円・「退職前6か月の本俸」で決める方式 | 検討中 |
| ⑤加入の広がり | 職員の加入割合は児童分野87.3%、障害分野52.9%、介護分野28.5% | 公表済み |
②と③は厚生労働省が「現行制度を維持した場合」として出した推計で、④はまだ「どう考えるか」という問いの段階です。決まっているのは、11月2日に見直しの方向性が議論されることだけです。
①制度のいま、16,678法人・約88万人が加入する退職金の仕組み
現行制度社会福祉法人が掛金を払い、独立行政法人福祉医療機構が職員に退職手当金を払う仕組みです。介護・障害分野の掛金は、職員1人あたり年148,500円です。
掛金と加入の数字
厚生労働省社会・援護局福祉基盤課の資料によると、制度は昭和36年の社会福祉施設職員等退職手当共済法でできました。令和7年4月1日時点で16,678法人が入っており、これは社会福祉法人全体の約8割です。
| 項目 | 数字 |
|---|---|
| 職員1人あたり掛金(年額・令和8年度)保育所・措置施設 | 49,500円(国・都道府県の助成あり) |
| 職員1人あたり掛金(年額・令和8年度)介護・障害分野、申出施設等 | 148,500円 |
| 加入施設数・職員数(令和7年4月1日) | 64,624施設・882,826人 |
| 令和7年度の支給 | 82,574人に計1,452.2億円(平均1,758,622円) |
| 加入職員100人未満の法人 | 約9割 |
財政は賦課方式です。その年の退職金を、その年に法人が払う掛金でまかないます。職員ごとに積み立てているわけではないので、法人が契約を解除すると、その職員には退職手当金が出ず、払った掛金も戻りません。
法人の負担は「職員の人数×年148,500円」で効いてくる
掛金は働く時間に関係なく1人いくらで決まっています。職員30人の法人なら、介護・障害分野の掛金だけで年445万5,000円です。
この額が今後どう動くかが、②と③の推計です。加入法人の9割が職員100人未満なので、1人あたり数千円の値上げでも、小さな法人ほど人件費の計画に響きます。
②支給額は令和23年度に2,098億円、令和7年度の1.4倍の推計
推計介護保険が始まった平成12年の前後に大勢入った世代が、これから退職の時期を迎えます。支給額は2040年度ごろに山を迎えます。
支給額の推計(現行制度を維持した場合)
厚生労働省は第4回検討会で、令和4〜6年度の退職率などをもとに、令和27年度(2045年)までの支給額を推計しました。令和7年度以降のさらなるベースアップは見込んでいない、と資料に書かれています。
| 年度 | 支給額 |
|---|---|
| 令和7年度(実績) | 1,452 |
| 令和10年度 | 1,569 |
| 令和15年度 | 1,894 |
| 令和22年度(2040年) | 2,094 |
| 令和23年度(ピーク) | 2,098 |
| 令和27年度(2045年) | 2,050 |
支給総額は、直近10年で1.40倍(平成28年度1,040億円→令和7年度1,452億円)に増えています。退職者数は令和6年度で95,958人でした。
賃上げが進むほど、推計より支給は増える
退職手当金は退職前の本俸で決まるので、賃金が上がれば支給も増えます。この推計はベースアップを入れていないので、処遇改善で本俸が上がっていくなら、実際の支給は表より多くなる側に振れます。
資料も、賃金や勤続年数の上振れ、退職者数の増加を「掛金増」の要因として挙げています。2,098億円は、上限ではなく低めの見通しとして読むのがよさそうです。
③掛金は2040年度に年255,300円〜281,400円の推計、支払準備金は令和9年度で底をつく
推計これまでは支払準備金を取り崩して掛金の値上げを抑えてきました。その準備金を令和9年度に使い切ると、令和10年度から掛金が大きく上がる見通しです。
2通りの上げ方で示された掛金
厚生労働省は、毎年度の収支を合わせる上げ方と、毎年同じ額ずつ上げる上げ方の2通りで、2040年までの掛金を示しました。令和9年度は、支払準備金を全部取り崩すと仮定した額です。
| 年度 | 毎年度の収支を合わせる場合 | 毎年同じ額ずつ上げる場合 |
|---|---|---|
| 令和8年度(現行) | 148,500円 | 148,500円 |
| 令和9年度 | 156,600円(+8,100円) | 156,600円(+8,100円) |
| 令和10年度 | 180,300円(+23,700円) | 166,200円(+9,600円) |
| 令和11年度 | 資料に数字の記載なし | 175,800円(+9,600円) |
| 令和22年度(2040年) | 255,300円 | 281,400円 |
収支を毎年合わせると、令和10年度に1年で23,700円上がり、その後も年によって上げ幅がばらつきます。毎年9,600円ずつ上げる形にすると上げ幅はならせますが、2040年度の額は281,400円と高くなります。
財政均衡期間を5年から延ばすかが、値上げのペースを決める
今の法律は、掛金を「おおむね5年を通じ財政の均衡を保つ」ように決めることになっています。論点の1つ目は、この期間を5年より長くするかどうか、長くするなら何年か、です。構成員からは「10年またはそれ以上」という意見が出ています。
あわせて、掛金の上げ方とスケジュールを前もって示すこと、分割納付など支払いの負担を軽くする工夫も論点に入っています。構成員からは、処遇改善加算を法人の判断で掛金に充てられるようにする案や、年に複数回に分けて納める案が出ました。
個人的には、令和10年度の「+23,700円」が気になりました。職員30人の法人なら、1年で71万1,000円の負担増です。何年分の上げ方が先に示されるかで、来年度以降の予算の組み方が変わります。
④給付の見直し論点、最低勤続年数・支給乗率・上限36万円
検討中掛金を抑えるには、払う側だけでなく受け取る側の額も論点になります。今は在籍1年以上で支給され、計算基礎額の上限は36万円です。

今の計算方法と、支給額の例
退職手当金は「退職前6か月の本俸平均額(計算基礎額)×在籍期間に応じた法定の支給乗率」で決まります。支給乗率は、長く勤めるほど有利になるように作られています。
| 勤続年数 | 計算基礎額 | 支給乗率 | 退職手当金の見込額 |
|---|---|---|---|
| 5年 | 19万円 | 2.6100 | 約50万円 |
| 10年 | 22万円 | 5.2200 | 約115万円 |
| 20年 | 28万円 | 20.4450 | 約572万円 |
| 30年 | 32万円 | 36.1050 | 約1,155万円 |
| 40年 | 36万円 | 46.5450 | 約1,676万円 |
厚生労働省が第4回に示した、給付側の論点は次の4つです。
- 支給対象となる最低勤続年数の見直し(今は在籍1年以上)
- 支給乗率の見直し(類似制度と比べながら)
- 計算基礎額の上限36万円の見直し(近年の賃金上昇を踏まえて)
- 退職直前の給与だけで計算する方式の見直し(高齢者の雇用延長など、働き方の多様化を踏まえて)
「勤続3年未満は不支給」案と「支給率は維持を」の両方が出ている
構成員の意見は割れています。人材定着と財政の健全性から「勤続3年未満又は5年未満を不支給とする方向で見直す必要がある」という意見がある一方、給付率を下げると勤続意欲が下がる可能性があるとして、支給率はできるだけ維持してほしいという意見も出ています。
上限36万円については、令和6年度の退職者のうち本俸月額36万円以上の人が3,055人(約3.2%)いました。令和3年度の約2.7%より増えています。厚生労働省のまとめでは、長く勤めた人に相当の退職手当を払う今の骨格は維持すべきとしたうえで、上限額は全体の給付水準と一緒に検討する、と整理されています。
働く側から見ると、最低勤続年数が3年や5年になれば、短く勤めて辞めた人の退職金がなくなります。転職先を比べるとき、退職金の欄は「制度に入っているか」だけでなく、何年勤めると出るのかまで確かめる必要が出てきそうです。求人票の見方はサビ管・児発管の転職と年収の記事でもまとめています。
⑤加入の広がり、介護分野は職員の28.5%、障害分野は52.9%
公表済み厚生労働省が第4回に出した資料によると、社会福祉法人で働く人のうち、この制度に入っている人は全体で48.9%です。分野によって差が大きく、介護分野は3割を切っています。
分野ごとの加入割合
| 分野 | 職員数 | 被共済職員数 | 加入割合 |
|---|---|---|---|
| 保護施設 | 5,852 | 5,228 | 89.3% |
| 児童分野 | 419,614 | 366,307 | 87.3% |
| 障害分野 | 386,718 | 204,492 | 52.9% |
| 介護分野 | 875,468 | 249,153 | 28.5% |
| 合計 | 1,687,652 | 825,180 | 48.9% |
職員数は令和6年10月1日の調査(常勤換算)、被共済職員数は令和6年4月1日時点です。国・都道府県の掛金への助成は、高齢者関係の施設・事業で平成18年、障害者関係で平成28年に廃止されました(廃止前に入っていた職員分は継続)。
今も助成があるのは保育所や措置施設です。保育所・認定こども園の助成は「令和8年度までに改めて結論を得る」とされています。
加入者が減ると、残った法人の掛金が上がる
賦課方式なので、入っている法人が減れば、1人あたりの負担は重くなります。構成員からは、毎年掛金を上げると法人の負担が増え、加入を続けてもらえるかに懸念がある、という意見が出ています。
論点には「新規に加入してもらうための工夫」も入っています。一部の職員だけ入れている法人が、希望すれば残りの職員を全員新しく入れられる仕組みがあることを周知する、という意見もありました。掛金の値上げと加入の減り方は、セットで見ておく話です。
今日のまとめ
退職手当共済の見直しは、「2040年度ごろまで支給が増え続ける」という推計から始まっています。掛金をどのペースで上げるか、給付をどこまで見直すか、公費をどうするか、が同時に論点になっていて、11月2日にその方向性が出てきます。
法人にとっては令和10年度以降の掛金、職員にとっては何年勤めればいくら出るか、がそれぞれ変わり得る話です。労働時間のルールの見直しは10月30日の記事で扱いました。報酬改定とは別のところで、働く条件の土台が動いています。
次に見ておきたい日程です。
- 11月2日(月)16:30〜18:30……社会福祉施設職員等退職手当共済制度の在り方に関する検討会(第5回)。議題は「これまでの御意見を踏まえた見直しの方向性について 等」。YouTubeでライブ配信あり(10月28日の記事の日程でも触れました)
- 秋ごろ(第4回時点の予定)……検討会のとりまとめ。社会保障審議会福祉部会に報告
参考にした一次情報
| 資料名 | 出どころ |
|---|---|
| 「社会福祉施設職員等退職手当共済制度の在り方に関する検討会」(第5回)を開催します | 厚生労働省(令和8年10月27日) |
| 社会福祉施設職員等退職手当共済制度の在り方に関する検討会(開催状況) | 厚生労働省 社会・援護局 |
| 資料1 これまでの主な御意見(まとめ) | 厚生労働省 社会・援護局福祉基盤課(令和8年7月16日) |
| 資料2 現行制度を維持した場合の将来推計及び次期制度改正に向けた論点について | 厚生労働省 社会・援護局福祉基盤課(令和8年7月16日) |
| 参考資料2 社会福祉施設職員等退職手当共済制度の実施状況 | 厚生労働省 社会・援護局福祉基盤課(令和8年7月16日) |
| 参考資料5 今後の検討会スケジュール | 厚生労働省 社会・援護局福祉基盤課(令和8年7月16日) |
| 参考資料6 社会福祉施設職員等退職手当共済制度の現状及び課題について | 厚生労働省 社会・援護局福祉基盤課(令和8年7月16日) |
②③の支給額・掛金は「現行制度を維持した場合」の推計の一例で、④の給付の見直しは検討会で「どう考えるか」と問われている段階です。資料にも今後の議論で変わり得ると明記されています。最終的な取り扱いは公表資料でご確認ください。


