介護の地域区分、公務員の地域手当に合わせる案・経過措置は令和11年度末まで(10/28介護給付費分科会)、10月28日の福祉ニュース
10月28日、厚生労働省の第272回 介護給付費分科会がWeb会議で開かれ、令和9年度介護報酬改定に向けて、地域区分、登録施設介護支援、特定施設入居者生活介護の3つに対応案が出ました。
地域区分は、介護報酬の1単位を何円で計算するかを地域ごとに決める仕組みです。公務員の地域手当が令和7年度から大くくりに変わったのを受けて、介護の側をどう合わせるかの案が、経過措置の期限つきで示されました。
3件とも、行き着く先は事業所の収入の地域差、有料老人ホームのケアマネの配置と記録、特定施設の排泄ケアの計画です。
| ニュース | いちばん大事な一行 | いまの段階 |
|---|---|---|
| ①介護の地域区分 | 令和9年度から公務員の地域手当に合わせるのが原則。上乗せ割合を据え置ける経過措置は令和11年度末まで | 検討中 (変わり得る) |
| ②登録施設介護支援 | 有料老人ホームの入居者を担当する新しいケアマネ事業。ケアマネ1人あたり利用者44人を基準に、地域生活相談員を1人以上置く案 | 検討中 (変わり得る) |
| ③特定施設の排泄支援 | 排泄支援計画を作っている特定施設は28.3%。計画の作成と排泄の状態の改善を報酬で評価する案 | 検討中 (変わり得る) |
3件とも分科会で厚生労働省が示した対応案で、決まったことはまだありません。年末に向けて報酬改定の議論の中で詰められます。
①介護の地域区分、公務員の地域手当に合わせる案。据え置きの経過措置は令和11年度末まで(厚生労働省)
検討中原則は地域手当に合わせ、上乗せ割合が下がる市町村は希望すれば今の割合を令和11年度末まで残せる、という案です。

7区分から5区分になる地域手当に、どう合わせるか
介護報酬の地域区分は、人件費の地域差を報酬に反映するための仕組みで、公務員の地域手当に準拠して決めています。その地域手当が、令和7年度から都道府県単位を基本とする広域化と、7区分から5区分への見直しに入りました。厚生労働省は資料3で、令和9年度以降の級地の決め方として次の案を出しました。
| 項目 | 案の中身 |
|---|---|
| 原則 | 最新の民間賃金を反映した国家公務員または地方公務員の地域手当に準拠して級地を決める |
| 経過措置 | 市町村が希望すれば、今の上乗せ割合と地域手当の範囲内で級地を選べる。令和11年度末まで。令和12年度以降は令和12年度改定のときに市町村の意見を聞き直す |
| 特例の見直し | 隣の市町村との差が大きいときの特例を「5級地差・4級地差ルール」から「3級地差ルール」に改める(3級地以上の差がある地域と隣接していれば、2級地差まで上げ下げできる) |
| このあと | この特例の見直し案を前提に、市町村の意向をもう一度確認してから、令和9年度以降の地域区分を決める |
出典:第272回 介護給付費分科会(令和8年10月28日)資料3 p.10〜11・p.13
いまの介護の地域区分は、1級地20%から7級地3%までの7段階と、上乗せのない「その他」に分かれています。令和6〜8年度で「その他」は1,292自治体、上乗せのある自治体は合わせて449です。
| 回答 | 自治体数 |
|---|---|
| 地域手当に準拠(上乗せ割合は今と変わらない) | 1,088(62.5%) |
| 地域手当に準拠(今より上乗せ割合が上がる) | 438(25.2%) |
| 今と同じ上乗せ割合を希望(経過措置を希望) | 140(8.0%) |
| その他 | 75(4.3%) |
この調査は令和9年度からの地域区分を示したものではなく、見直しの検討のために行ったもの。出典:第272回 介護給付費分科会(令和8年10月28日)資料3 p.9
下がる地域の140自治体が、どこまで据え置けるか
分科会の意見には「支給割合が下がる地域では介護従事者の賃金も下がる」「赤字に転落する事業所が急増する」が並び、事業者団体からは3年ごとの改定にとらわれない経過措置を求める声も出ていました。今回の案の経過措置は令和11年度末までの3年間で、その先は令和12年度の改定で改めて決めることになっています。
個人的には、8.0%の140自治体がどこなのかが気になりました。割合が下がる地域の事業所にとっては、令和12年度に経過措置が切れた後の単価まで見て、給与の組み立てを考えておく必要がありそうです。保育の公定価格の地域区分も同じ人事院勧告を下敷きに見直しが進んでいて、その段取りは10月27日の福祉ニュースでまとめています。
②登録施設介護支援、ケアマネ1人あたり利用者44人を基準に地域生活相談員を置く案(厚生労働省)
検討中有料老人ホームの登録制とセットでできる新しいケアマネ事業の、人員・運営・報酬の骨組みが出ました。
居宅介護支援の事業所が「併せて担う」前提
登録施設介護支援は、改正介護保険法で新しくできるサービスで、登録制の対象になる住宅型有料老人ホームの入居者のケアプラン作成と、地域とのつながりをつくる「地域生活相談」を一体で行います。厚生労働省は資料2で、既存の居宅介護支援事業所が併せて担うことを前提に、次の基準案を示しました。
| 項目 | 案の中身 |
|---|---|
| 介護支援専門員 | 常勤で1人以上。利用者44人に1人が基準(ケアプランデータ連携システムを使う場合は49人に1人) |
| 地域生活相談員 | 1人以上。介護支援専門員の兼務も可。別に置く場合は介護支援専門員か社会福祉主事等の資格が要件 |
| 管理者 | 実務経験5年以上の常勤専従の介護支援専門員(居宅介護支援と同じ) |
| 運営基準に足すもの | 登録有料老人ホームとの密接な連携、利用者負担額の受領、ホームから受けた情報も踏まえたケアプラン作成、地域生活相談をケアプランに位置づけて実施状況を記録 |
| 基本報酬 | 居宅介護支援と同じ枠組みを前提に、地域生活相談と集合住宅であることを踏まえて設定。逓減制は居宅介護支援との合計人数で判断し、低い単価は利用者全体に分散して適用 |
出典:第272回 介護給付費分科会(令和8年10月28日)資料2 p.30〜34
地域生活相談で求める中身は5つです。成年後見や高齢者等終身サポート事業も含めた地域資源のリスト化、利用者への情報提供と参加の促し、外出の障壁を除く支援の調整、行き先や時間のホームとの共有、利用状況の把握です。
「囲い込み」を外から崩すための記録
資料は、住宅型有料老人ホームの「囲い込み」が課題になっていることを正面から書き、ホームから独立した立場でケアプランをつくることを運営基準で担保するとしています。新しく増える仕事の中心は、地域生活相談の内容をケアプランに書き、その実施を記録することです。
施行時期は、有料老人ホームの登録制が始まった後、既存のホームが登録へ移る経過措置期間が終わるころを想定しています。10月12日の福祉ニュースで見た検討会のまとめでは、登録制の施行が令和9年12月、既存ホームの移行の経過措置の終了が令和10年12月の予定でした。前回は登録の要件まで、今回はそのホームの入居者を担当するケアマネの側の基準が出た、という順番です。
③特定施設の排泄支援、計画を作っているのは28.3%。計画と改善を評価する案(厚生労働省)
検討中介護付き有料老人ホームなどの特定施設に、特養などにある排せつ支援加算に近い評価を入れる方向です。
取り組みは8割弱、計画まで作るのは3割弱
厚生労働省は資料1で、特定施設入居者生活介護の論点を3つ挙げました。数字が出たのは排泄と認知症です。
| 論点 | 資料の数字 | 対応案 |
|---|---|---|
| 排泄支援 | 排泄リズムを把握した介助などの取り組みは8割弱の事業所。排泄支援計画を作っているのは28.3%。計画を作った入居者のうち、排尿・排便のどちらかが改善しどちらも悪化していない人は平均で5割以上 | 入居者ごとの排泄支援計画の作成・見直しと、排泄の状態の改善を評価する |
| 認知症 | 認知症日常生活自立度Ⅱ以上の入居者が5割以上。認知症介護実践リーダー研修などの修了者を置く施設は一部 | 認知症への対応力強化をテーマにした回で改めて議論 |
| 住宅型からの移行 | 外部サービス利用型は、算定できる加算が一般型より限られることが活用の進まない理由に挙がる | 移行した事例を調べて事業者と自治体に周知。外部サービス利用型の質の取り組みを把握する |
出典:第272回 介護給付費分科会(令和8年10月28日)資料1 p.11・p.20
3つ目の論点は職員配置です。利用者が減っても前年度の平均値で職員を置く決まりのため、実態より手厚く置かないと人員欠如減算になりうる、という問題が挙げられ、利用者の増減に応じた柔軟な配置として横断的事項の回で議論するとしています。
「やっている」を書類にできるかどうか
8割弱がやっている取り組みと、3割弱しか作っていない計画の間の差は、報酬がつくかどうかの差になりそうです。排泄リズムの記録をすでに取っている施設なら、それを計画と見直しの形に整えるところから準備できます。
特養などで先に入っている排せつ支援加算は、計画の作成で区分Ⅰ、状態の改善で上位区分という組み立てです。特定施設に入るときに同じ形になるかは、まだ資料に書かれていません。
今日のまとめ
3件とも「有料老人ホームのまわり」と「地域の差」の話でした。登録制と新しいケアマネ事業で住宅型ホームの外からの目を増やし、特定施設には質の取り組みを報酬で評価し、地域区分で人件費の地域差を引き直す。介護報酬改定の議論が、サービスの枠組みそのものに入ってきています。
次に見ておきたい日程です。
- 11月2日(月)16:30〜18:30……社会福祉施設職員等退職手当共済制度の在り方に関する検討会(第5回)
- 11月4日(水)16:00〜18:00……こども家庭庁 児童厚生施設及び放課後児童クラブに関する専門委員会(第8回)
- 令和8年内……有料老人ホームの登録制の政省令の公布(予定)
- 令和11年度末……地域区分の経過措置の期限(案)
参考にした一次情報
- 第272回社会保障審議会介護給付費分科会(web会議)資料(厚生労働省(令和8年10月28日))
- 資料3 地域区分(PDF)(厚生労働省(令和8年10月28日))
- 資料2 登録施設介護支援(PDF)(厚生労働省(令和8年10月28日))
- 資料1 特定施設入居者生活介護(PDF)(厚生労働省(令和8年10月28日))
- 第272回社会保障審議会介護給付費分科会(Web会議)を開催します(厚生労働省(令和8年10月27日))
- 「社会福祉施設職員等退職手当共済制度の在り方に関する検討会」(第5回)を開催します(厚生労働省(令和8年10月27日))
- 児童厚生施設及び放課後児童クラブに関する専門委員会(第8回)(こども家庭庁(令和8年10月28日掲載))
①地域区分の見直し、②登録施設介護支援の基準、③特定施設の排泄支援の評価は、いずれも分科会で示された対応案の段階で、資料にも今後の議論で変わり得ると明記されています。最終的な取り扱いは公表資料でご確認ください。


