自立支援医療の負担上限の特例、令和12年3月まで延長案(10/20障害者部会)|10月20日の福祉ニュース
10月20日(火)の午前、社会保障審議会 障害者部会(第160回)が開かれ、厚生労働省が自立支援医療の「経過的特例措置」を令和12年3月末まで延ばす案を示しました。いまの特例は令和9年3月31日で切れる予定です。
同じ部会では、人口が減っている地域で人員基準をゆるめた障害福祉サービスを認める「特定地域」について、どの地域を対象にするかの基準案も出ています。あわせて、障害児・者の支援に取り組む非営利法人向けに、最長3年・最大4,000万円の民間助成の受付が11月1日から始まります。
行き着く先は、利用者の毎月の医療費の上限額と、地方の事業所の人員配置、そして次の事業の資金です。3件をまとめました。
| ニュース | いちばん大事な一行 | いまの段階 |
|---|---|---|
| ①自立支援医療の特例 | 育成医療の中間所得層(上限5,000円・10,000円)と「重度かつ継続」の一定所得以上(上限20,000円)の特例を、令和12年3月末まで延ばす案 | 検討中(変わり得る) |
| ②特定地域の基準 | 特別地域加算等の対象地域に加え、「人口8千人未満かつ人口変化率▲10%未満」または「人口密度50人/㎢未満」の地域を対象にする案 | 検討中(変わり得る) |
| ③洲崎福祉財団 継続助成 | 障害児・者の支援事業に1件あたり最長3年・最大4,000万円。西日本・首都圏の非営利法人が対象 | 11月1日受付開始・12月19日消印まで |
決まっているのは③の募集要項だけです。①②は厚生労働省が障害者部会に出した案の段階です。
①自立支援医療の負担上限の特例、令和12年3月末までの延長案(10/20障害者部会)
検討中令和9年3月31日で切れる予定だった負担上限月額の特例を、3年延ばす案です。延長されなければ、対象の人は毎月の上限額が上がるか、制度の対象から外れます。
特例がかかっているのは「育成医療の中間所得層」と「重度かつ継続の一定所得以上」
厚生労働省は第160回障害者部会の資料3で、自立支援医療の経過的特例措置について「令和12年3月末まで延長することとしてはどうか」と示しました。自立支援医療は、更生医療・育成医療・精神通院医療の3つで、原則1割負担に所得に応じた月の上限額がつく仕組みです。
| 所得区分 | 更生医療・精神通院医療 | 育成医療 | 重度かつ継続 |
|---|---|---|---|
| 生活保護 | 0円 | 0円 | 0円 |
| 低所得1 | 2,500円 | 2,500円 | 2,500円 |
| 低所得2 | 5,000円 | 5,000円 | 5,000円 |
| 中間所得1 (市町村民税所得割33,000円未満) |
総医療費の1割又は高額療養費の自己負担限度額 | 5,000円(特例) | 5,000円 |
| 中間所得2 (同33,000円以上235,000円未満) |
総医療費の1割又は高額療養費の自己負担限度額 | 10,000円(特例) | 10,000円 |
| 一定所得以上 (同235,000円以上) |
対象外 | 対象外 | 20,000円(特例) |
出典:第160回 社会保障審議会 障害者部会(令和8年10月20日)資料3。資料は年収の目安を、夫婦+障害者である子の3人世帯の粗い試算で、中間所得1は約290〜400万円未満、中間所得2は約400〜833万円未満、一定所得以上は約833万円以上としています。
特例は平成18年4月に激変緩和として始まりました。平成21年4月に育成医療の上限を下げ(中間所得2は40,200円→10,000円、中間所得1は10,000円→5,000円)、平成24年4月からは5回延長されて、いまの期限が令和9年3月31日です。
延長の理由として資料が挙げた数字
| 項目 | 平成18年度 | 令和6年度 |
|---|---|---|
| 育成医療の受給者のうち中間所得層の割合 | 84.6% | 83.1% |
| 育成医療(入院)の1人当たり月額総医療費(平均) | 932,376円 | 1,345,763円 |
| 「重度かつ継続」一定所得以上の支給決定件数 | 78,813件 | 132,392件 |
| うち精神通院医療 | 72,237件 | 120,541件(91.0%) |
出典:第160回 障害者部会 資料3。令和6年度の支給決定件数は、精神通院医療2,666,159件、更生医療294,191件、育成医療10,884件です。
資料は他の制度との釣り合いも挙げています。小児慢性特定疾病の医療費助成は、育成医療の特例と同じ額を本則で定めています。難病の医療費助成も、更生医療・精神通院医療の特例と同じ額を本則で定めています。
精神科に通う人の12万件に関わる話
「重度かつ継続」の一定所得以上で特例を使っている132,392件のうち、120,541件が精神通院医療です。資料の表では、この区分は特例が無ければ「対象外」です。特例が切れると、この人たちは自立支援医療を使えなくなります。
相談支援や就労支援の場で、利用者から「受給者証の更新で上限が変わるのか」と聞かれることがあるかもしれません。いまは延長の「案」の段階なので、延長が決まるまでは、令和9年3月31日という期限と、延長案が出ていることをそのまま伝えるのが正確です。
個人的には、育成医療の入院が1人当たり月134万円を超えている数字が気になりました。子どもの手術を控えた家庭にとって、上限が5,000円か1割かは大きな差です。
②人口減少地域の「特定地域」、人口8千人未満などの基準案(10/20障害者部会)
検討中人員基準をゆるめた特例的な障害福祉サービスを置ける地域を、どう決めるかの案です。都道府県が市町村の意向を聞いて指定する形が想定されています。
6月に公布された改正法でできた「特定地域」という枠
社会福祉法等の一部を改正する法律(令和8年法律第51号、6月25日公布)で、障害者総合支援法に「特定地域障害福祉サービス」、児童福祉法に「特定地域通所支援」が入りました。特定地域は「人口の減少その他の主務省令で定める基準に該当する地域として都道府県が定めるもの」とされ、その基準の考え方が今回の資料2です。
| 段 | 対象にする地域 |
|---|---|
| 1 | いまの特別地域加算(加算率15%)や基準該当サービス(離島等の特例)の対象地域は、全部対象にする |
| 2 | それ以外で、次のどちらかを満たす地域(市町村の全域または一部) ・人口8千人未満で、かつ人口変化率が▲10%未満 ・人口密度が50人/㎢未満 |
| 3 | 1・2に当たらなくても、特定のサービス類型の事業所が無い、事業所がわずかで廃止を検討している、など現に基盤の維持が難しい地域は、都道府県が市町村の意見を聞いて指定できる |
出典:第160回 社会保障審議会 障害者部会(令和8年10月20日)資料2。2の基準は、特別地域加算等の対象市町村の中央値(人口7,416人、人口変化率▲10.3%、人口密度45.9人/㎢、令和7年国勢調査)を考慮したもの。2をあてはめると、加算等の対象外から新たに各7市町村が該当するとしています。
新しい類型では、事業所は市町村に登録し、報酬は全国一律の報酬を基準に市町村が決めます。地域の実情に応じた包括的な評価も選べる形です。どのサービスを対象にし、人員配置基準をどこまでゆるめるかは、障害福祉報酬改定検討チームで議論するとしています。
「ゆるめる」ための前提条件が3つある
資料は、この類型を例外的な扱いとし、次の3つを前提に挙げています。
- 自治体が人材確保や業務効率化などの施策を講じたうえで、それでもサービス維持のためにやむを得ない場合とする
- ICT機器の活用や、同一法人の併設事業所間などの連携体制があることを前提に、管理職や専門職の常勤・専従要件を緩和する
- 市町村の関与・確認や、配置職員の専門性への配慮を前提とする
国が基準を定めている基準該当サービスとして資料に並んでいるのは、居宅介護、重度訪問介護、同行援護、行動援護、生活介護、短期入所、自立訓練、就労継続支援B型、児童発達支援、放課後等デイサービスです。対象サービスも、あわせて検討するとされています。
地方で事業所を続けている法人にとっては、サービス管理責任者や児童発達支援管理責任者の常勤・専従要件がどこまで動くかが一番の関心どころだと思います。一方で、連携体制が前提なので、1法人1事業所で続けているところが使えるかどうかは、まだ資料からは読めません。
同じ改正法でできた仕組みとして、有料老人ホームの登録制や、身寄りのない高齢者の死後事務支援もまとめています。
③洲崎福祉財団の継続助成、最長3年・最大4,000万円の受付は11月1日から(12月19日消印まで)
12月19日消印まで物品購入ではなく、効果が出るまで1年以上かかる事業そのものに出る助成です。10月20日に全国社会福祉協議会の助成情報にも掲載されました。
募集の概要(財団の応募要領どおり)
| 名称 | 令和8(2026)年度 継続助成 |
| 主催 | 公益財団法人 洲崎福祉財団 |
| 対象事業 | 効果/実績が表れるまで1年以上を要し、助成終了後も継続的発展が期待される事業。物品購入や改修工事などを主とする事業は不可。テーマはA「既存福祉サービスの強化・拡大」、B「新規福祉サービスの創造」 |
| 対象団体 | 営利を目的としない法人格をもつ団体(社会福祉法人、特定非営利活動法人、非営利型の一般社団・一般財団法人など)。活動年数や年間収益、利用者数は不問 |
| 対象エリア | 本店所在地が西日本(三重県・滋賀県・京都府以西)または首都圏(埼玉県・千葉県・東京都・神奈川県) |
| 助成金額 | 年度総額1億4,000万円(10件程度)。1件あたり年間上限は1年目2,000万円、2年目・3年目は各1,000万円(下限は各年200万円) |
| 助成期間 | 2027年6月から最長2030年3月まで。申請年数は3年間か2年間(1年間は不可) |
| 受付期間 | 2026年11月1日〜2026年12月19日(消印)。郵送 |
| 選考 | 2027年1月〜4月。最終審査で法人代表者のオンラインプレゼンテーション。採否通知は2027年5月 |
| 申込先 | 洲崎福祉財団 継続助成 応募要領 |
出典:公益財団法人 洲崎福祉財団「継続助成 応募要領」。同一年度に一般助成と継続助成を併願することはできません。申請は1法人1件で、提出書類(9点)に不備があると審査の対象外になります。
どんな法人が出すと合っているか
応募要領の例には、他地域・他団体に広がる取り組み、多職種の連携で支援者を確保・育成する仕組みづくり、障害児者の家族の就労や社会参加を進める事業、制度の狭間の実態調査などが並んでいます。車両や機器を買いたい、という使い方には向きません。
提出書類には直近3年間の事業報告書と決算書、組織相関図、費用の根拠となる見積書などが入っています。受付開始まで12日あるので、決算書類と見積もりを先にそろえておくと、12月の繁忙期に慌てずに済みます。
今日のまとめ
①②は、どちらも「いまある支えをどう続けるか」の案でした。①は利用者の医療費の上限を3年延ばす話、②は人が集まらない地域でサービスそのものを残すための話です。③は、制度の報酬では届きにくい新しい取り組みに、民間のお金で3年かけて挑める枠です。
次に見ておきたい日程です。
- 11月1日(日)……洲崎福祉財団 継続助成の受付開始
- 12月19日(土)……洲崎福祉財団 継続助成の受付締切(消印)
- 令和9年3月31日……自立支援医療の経過的特例措置のいまの期限(ここは決まっています)
参考にした一次情報
- 社会保障審議会障害者部会(第160回)の資料について|厚生労働省(令和8年10月20日)
- 資料3 自立支援医療の経過的特例措置について(PDF)|厚生労働省(令和8年10月20日)
- 資料2 障害福祉分野における特定地域(中山間・人口減少地域)の考え方について(PDF)|厚生労働省・こども家庭庁(令和8年10月20日)
- 継続助成 応募要領|公益財団法人 洲崎福祉財団
- 助成情報|全国社会福祉協議会(令和8年10月20日掲載)
①自立支援医療の特例延長と②特定地域の基準は、障害者部会に厚生労働省が出した案の段階です。資料にも「〜してはどうか」と書かれており、今後の議論で変わり得ます。最終的な取り扱いは公表資料でご確認ください。


