褒め方・叱り方より大切な「信頼関係」を築く5つの習慣

「褒めて伸ばす」と聞いて褒めても、子どもが調子に乗るだけ… 「叱るときは短く」と実践しても、全然響いていない…
子育てや支援において、「褒め方」「叱り方」のテクニックは無数にありますが、それを実践してもうまくいかない、と感じていませんか?
こんにちは。保育士であり、介護福祉士、サービス管理責任者(サビ管)、そして家では4児のパパとして日々奮闘している、私です。
結論から言います。 テクニックが響かないのは、その「土台」ができていないからです。
その土台とは、「日常のコミュニケーションによって築かれた、絶対的な信頼関係(アタッチメント)」です。

普段、自分の話を全く聞いてくれない上司に、いきなり「君のためだ」と叱られても響かないですよね。それと同じです。
これは子育てだけでなく、私が働く「障害福祉の支援現場」でも全く同じです。
この記事では、
- なぜ「信頼関係」が「褒める・叱る」より重要なのか(公的根拠)
- 保育・支援現場で実践する「信頼を築く」5つの習慣
- 信頼があるからこそ響く「褒め方・叱り方」のコツ
を、私の専門的知見と実体験に基づき、徹底的に解説します。 テクニックに走る前に、まずは「土台」を見直しませんか?
褒めることと叱ることはどちらも必要
子どもが成長するうえで、良い行動を認め、間違いを正すことは重要です。しかし、極端にどちらかに偏ると、子どもは本当に認められていると感じにくくなってしまいます。
過度に褒めすぎると…
- 失敗を恐れる:褒められることに慣れてしまうと、失敗しても「認めてもらえないかも」と不安になり、挑戦を避けるようになります。
- 承認欲求が強くなる:常に褒められることを期待し、認められないとやる気が失われるケースもあります。
過度に注意しすぎると…
- 自信を失う:厳しく注意されすぎると、子どもは「自分はダメなんだ」という自己評価に陥りやすくなります。
- 萎縮して親の顔色ばかり気にする:指摘や叱責ばかりだと、子どもは自分の意見を言えなくなり、親に依存するようになってしまいます。
両者のバランスを保つために、日常的なコミュニケーションが非常に重要です。どちらのアプローチも、「普段から子どもとどう接しているか」が根底にあると言っても過言ではありません。
日々のコミュニケーションが育む信頼関係


なぜ、日常のコミュニケーションが「土台」になるのでしょうか。
それは、子どもの心の根幹をなす「アタッチメント(愛着)」、すなわち「自分はこの人に守られている」「無条件に受け入れられている」という安心感を育むためです。
国の育児指針(こども大綱など)でも、この「アタッチメントの形成」が子どもの健やかな成長の基盤であると明記されています。
「褒められるからやる」「叱られるからやらない」という条件付きの関係ではなく、「何があっても、この人は自分の味方だ」という絶対的な安心感(アタッチメント)こそが、子どもの自己肯定感を育て、行動変容(=成長)を促すのです。
(参考:こども家庭庁「こども大綱」)
信頼関係の基盤は「日常の会話」にあり
子どもは、日常的に親としっかり会話を交わすことで、安心感と信頼を学びます。例えば、毎日の夕食時に「今日はどうだった?」と子どもの話をじっくり聞くことで、子どもは自分の気持ちを安心して表現できるようになります。
具体例:
- 目を見て話す
親が子どもと目を合わせながら話すと、子どもは「私のことを大切に思ってくれている」と感じます。 - 子どもの話を最後まで聞く
子どもの小さな悩みや成功、失敗のエピソードをしっかり聞くことで、子どもは自分が尊重されていると実感できます。 - 何気ないスキンシップ
毎日のハグや軽いタッチ、笑顔での会話など、物理的なふれあいも信頼関係を強化します。 - 感謝の言葉を伝える
「ありがとう」「助かったよ」といった言葉は、子どもが自分の行動の意味を理解し、肯定感を育む大切な要素です。
このような日常のコミュニケーションが土台になっていれば、いざ良い行動を褒めたり、間違いを正したりする際にも、子どもはそれを前向きに受け止めやすくなります。
例えば、普段から「君の頑張っている姿、ちゃんと見てるよ」と言葉にしている親の元では、たとえ「今は間違ったけど、次は頑張ろう」と伝えられても、子どもは「親が本当に気にかけてくれている」と感じ、成長につなげることができるのです。
褒める・叱るのバランスの重要性
褒める時のポイント
子どもの良い行動を認めるときは、具体的に何が良かったのかを伝えることが大切です。
具体例:
- 「お片付け、ちゃんとできたね!自分でやるって本当にすごいよ」
- 「今日のお手伝い、ありがとう!あなたが頑張ってくれたおかげで、家族みんなが笑顔になったよ」
こうした具体的な褒め方は、子どもの自信とやる気をさらに引き出し、次の行動につながります。
叱る時のポイント
一方、間違いや不適切な行動を注意する際は、子どもの人格を否定せず、行動だけを改善する方向で指摘することが重要です。
具体例:
- 「今日は少し乱暴だったね。でも、次はもっと優しくできるといいね」
- 「このやり方は危ないから、どうしたらもっと安全にできるか一緒に考えよう」
このように、叱る際にも「共に考える」という姿勢を見せると、子どもは叱責を自己否定と感じず、学びに変えられます。
日常コミュニケーションは「支援現場」そのものである


この「土台(信頼関係)がすべて」という考え方は、子育てだけでなく、私が働く「障害福祉の支援現場」の根幹そのものです。
私は管理者兼サービス管理責任者(サビ管)として、支援計画の作成やスタッフの指導も行いますが、そこで最も重要視するのが、支援者と利用者様(お子さん)との「信頼関係(ラポール)」です。
例えば、
- 信頼関係がない支援者からの「指示」: (例:「時間だから片付けましょう」) → 利用者様にとっては「命令」「支配」でしかなく、反発やパニック(問題行動)の原因になります。
- 信頼関係がある支援者からの「指示」: (例:「〇〇さん、時間だから片付けようか」) → 利用者様にとっては「安心できる人からの提案」となり、スムーズに行動に移せることが多々あります。

厳しい指摘や指導(=叱る)が許されるのは、それを遥かに上回る「日常の承認(=褒める・認める)」と「コミュニケーション」がある支援者だけです。
介護福祉士、保育士、サビ管、そして4児のパパとして、私が断言します。
人を動かすのは「テクニック」ではなく、「信頼」です。す。子どもも大人も、認められていると感じる環境の中でこそ、どんなアドバイスも心に響くのです。
実践のための具体的なコミュニケーション術
では、日々の子育てや職場で実践できる、具体的なコミュニケーション術をいくつか紹介します。
① 「目を見て話す」
ポイント:
子どもや部下と話すときは、必ず相手の目を見てコミュニケーションを取ること。
理由:
目を見ながら話すと、相手は自分が尊重され、大切にされていると感じやすくなります。

【支援者Tips】 ただし、発達障害(特にASD)のお子さんの中には、目を合わせることが「苦痛」な場合があります。その際は無理強いせず、横に並んで座る(並列)ことで、視線のプレッシャーなく本音を話してくれることも多いです。
② 「最後までしっかり聞く」
ポイント:
相手が話し始めたら、途中で遮らず最後まで話を聞く。
理由:
「自分の意見が大事にされている」と感じることで、信頼関係が深まり、後で注意やアドバイスを受け入れやすくなります。

【支援者Tips】 子どもが何かを訴える時、その言葉の中に「答え」と「要求」が全て入っています。大人が「それはね…」と結論を急がず、「傾聴(けいちょう)」に徹することが、支援の第一歩です。
③ 「日常のスキンシップを欠かさない」
ポイント:
抱擁やハグ、軽いタッチなど、身体的なふれあいも大切に。
理由:
物理的な接触は、安心感と信頼感を直接伝える最もシンプルな方法です。子どもだけでなく、部下との間でも「心の距離」を縮める効果があります。

【支援者Tips】 ハグなどのスキンシップは「幸せホルモン(オキシトシン)」を分泌させ、ストレスを軽減する科学的根拠があります。保育現場で、不安そうな子の背中をそっとさするのも、このためです。
④ 「感謝の言葉を伝える」
ポイント:
何気ない日常の中で、「ありがとう」「助かったよ」といった感謝の言葉を積極的に伝える。
理由:
認められることで自信が生まれ、ポジティブな行動を促すサイクルが形成されます。

【支援者Tips】 「ありがとう」は、相手に「あなたは役に立つ存在だ」という「役割(自己有用感)」を与える最強の言葉です。自己肯定感の低いお子さんには、特に意識して伝えることが重要です。
⑤ 「一緒に考える姿勢を持つ」
ポイント:
間違いを指摘するときは、一方的に否定するのではなく、「どうすれば良くなるか」を一緒に考える。
理由:
叱るだけでなく、共に解決策を模索することで、子どもも部下も「自分の成長を応援してもらっている」と実感できます。

【支援者Tips】 これぞ「強度行動障害支援」の基本です。問題行動(パニック)を叱るのではなく、「なぜその行動が起きたか」を本人と一緒に考え、「叱る」から「解決する」へとステージを変えることが、私たち専門職の仕事です。
子育てだけじゃない!日常コミュニケーションの大切さを再認識

ここまで、家庭内での子育てにおける具体的なコミュニケーションの方法について解説してきました。
しかし、この考え方は子育てに限らず、職場や友人関係、パートナーシップなど、あらゆる人間関係に共通するものです。
たとえば、上司が部下に対して普段から「どうしている?」と気軽に話しかけ、意見を尊重する環境を作れば、厳しい指摘も部下は「自分を伸ばすため」と受け入れやすくなります。
逆に、常に注意ばかりをしていると、部下は発言を控えるようになり、チーム全体のパフォーマンスに悪影響が出るかもしれません。
このように、「認めること」と「正すこと」のバランスは、人間関係全般において非常に重要です。
子どもも大人も、信頼と安心感があれば、どんな指摘も「私のために言ってくれている」と感じるものです。
まとめ:信頼の土台(アタッチメント)があれば、テクニックは不要になる

結局、良い行動を認めること(褒める)と、間違いを正すこと(叱る)はどちらも必要です。 しかし、その大前提として、普段からの丁寧なコミュニケーションによる「信頼の土台(アタッチメント)」がなければ、どちらも子どもの心には響きません。
保育士として、介護福祉士、サビ管、そして4児のパパとして、私(ユイン)がたどり着いた結論です。
テクニック(褒め方・叱り方)を学ぶ前に、まず土台(信頼関係)を築くこと。 そのために、この記事で紹介した5つの習慣を、ぜひ今日から意識してみてください。
- 目を見て話す(特性にも配慮)
- 最後までしっかり聞く(傾聴)
- 日常のスキンシップを欠かさない(安心感)
- 感謝の言葉を伝える(自己有用感)
- 一緒に考える姿勢を持つ(問題解決)

この「信頼の土台」さえあれば、子どもはあなたの言葉を信じ、前向きに受け止めてくれます。
もし、この土台作りを意識しても、特定の場面(例えば「謝る」こと)で困難さが残る場合は、それは「信頼」の問題ではなく、その子固有の「障害特性」が影響しているのかもしれません。
その場合は、叱るのではなく、その「特性」に合わせた専門的なアプローチが必要です。
「謝れない子」の背景にある特性と、具体的な支援アプローチについては、こちらの記事で詳しく解説しています。夕で身につくものではありませんが、継続していくことで、子どもの心にも、職場の人間関係にも、必ずプラスの効果をもたらしてくれます。

最後に

子育てや職場のコミュニケーションは、私たちの日々の行動の積み重ねです。
良い行動を認め、間違いを正すことはもちろん大切ですが、それ以上に大事なのは、日常の何気ない会話やふれあい、共感の積み重ねです。
家庭での信頼関係がしっかりと築かれていれば、たとえ厳しい指摘をしたとしても、子どもはそれを「自分の成長のため」と理解してくれます。
また、職場でも同様に、普段からのコミュニケーションがあることで、上司からの指摘も前向きに受け止められるようになります。
私自身、子育ての現場でも、部下との関係でも、常に「相手を認める」「共に考える」という姿勢を心がけています。これが、短期的な成果だけでなく、長期的な信頼関係や成長につながると信じています。
皆さんも、今日から意識してみてください。
たった一言「ありがとう」と伝えるだけで、未来は変わるかもしれません。
子どもの笑顔、部下の成長、そして職場全体の活気、すべては日々のコミュニケーションから生まれるのです。
最後までお読みいただき、ありがとうございます。
この記事が皆さんの子育てや職場のコミュニケーション改善の一助となれば幸いです。
ぜひ、あなた自身の体験や気づきをコメントで教えてくださいね。


