【サビ管解説】短期入所(ショートステイ)の仕事と給料は?夜勤手当の真実と看護師不在のリアル
「夜勤があるから稼げるんでしょ?」 「夜は寝ているだけ?」
もしそう思っているなら、この記事を読んで「現実」を知ってください。 私はかつて、生活介護とショートステイが一体になった施設で働いていました。そこは区分6(最重度)の方が多く、夜間も気が抜けない現場でした。
今回は、現役サビ管(サービス管理責任者)の視点と、当時の支援員としての実体験を交えて、ショートステイの仕事内容、シビアな給与事情、そして医療的ケアの壁について、包み隠さず解説します。
1. そもそも「短期入所(ショートステイ)」ってなに?
なぜ必要なの?(目的)
ただの「宿泊所」ではありません。ご家族にとっての「命綱」です。 障害のある方を24時間365日支えるご家族が、冠婚葬祭や自身の休養(レスパイト)のために利用します。「今夜だけはぐっすり眠りたい」というご家族の切実な願いを支える場所です。
どんな人が利用するの?
私がいた施設では、「区分6(最重度)」の方が中心でした。 自閉症で夜間にパニックになる方や、常時の見守りが必要な方など、他の施設では対応が難しい方や中には5歳の小さな子も受け入れていました。
2. 現場のリアル!ショートステイの仕事内容と「医療の壁」
「夜勤って、利用者が寝たら終わり?」 いいえ、重度の方が多い施設では、夜こそが専門性の見せ所です。ただし、やっていいことと悪いことが明確に決まっています。
一日の流れ(夜勤編:16:00〜翌10:00)
| 時間 | 業務内容 | 現場のリアル(ここがポイント) |
|---|---|---|
| 16:00 | 出勤・申し送り | 日中の様子(興奮していたか、便は出たか等)を確認。これが夜の穏やかさを左右します。 |
| 17:00 | 入浴・夕食介助 | お風呂や食事の介助。誤嚥(ごえん)リスクがある方にはつきっきりで対応します。 |
| 19:00 | 就寝準備・服薬 | 【要注意】 薬の管理は超重要。飲み間違いは事故に直結します。 |
| 21:00 | 消灯・巡視開始 | ここからが本番。1時間おき(重度の方はもっと頻繁)に呼吸確認や体位変換を行います。 |
| 深夜 | 緊急対応・事務 | 眠れない方の話し相手になったり、排泄介助を行ったり。空いた時間で記録を書きます。 |
| 6:00 | 起床・整容 | 起こして着替えなどの介助。寝起きの機嫌が悪い方もいるので慎重に。 |
| 9:00 | 送り出し | 日中活動(生活介護や学校)へ送り出し、業務終了。 |
「ショートステイ=医療ケアがあるから大変」と思われがちですが、実は私がいた施設のように「看護師は日勤のみ(夜間不在)」という事業所も多くあります。
そういった施設では、安全を守るために「常時の医療ケア(吸引や経管栄養など)」が必要な方の受け入れはお断りしています。 その代わり、私たちが対峙していたのは、「医療ケアはないが、行動障害(他害・自傷・パニック)が重い方々」でした。
看護師がいない夜、たった数人の支援員でどう命を守るのか。 そのリアルな仕事内容と、現場で生き抜くためのアドバイスを解説します。
① 【受け入れ〜夕方】最大の仕事は「薬と情報の確認」
ショートステイは毎日利用者が入れ替わります。最初の数時間が勝負です。
| 業務内容 | 詳細 |
|---|---|
| 荷物・薬の確認 | ご家族から預かった荷物を確認します。特に「薬」は最重要。種類、回数、食前・食後などを職員2名でダブルチェックします。 |
| 申し送り確認 | 「最近、家でてんかん発作が増えている」「便秘気味でイライラしている」など、ご家族からの情報を頭に入れます。 |
| 入浴・食事介助 | 誤嚥(ごえん)や入浴中の事故がないよう、マンツーマンで支援します。 |
💡 【アドバイス】「薬」だけは絶対に間違えるな!
② 【夜間】看護師がいない「孤独」と「判断」
21時の消灯後、ここからが本当の戦いです。医療職がいないため、私たちの「観察眼」だけが頼りです。
| 業務内容 | 詳細 |
|---|---|
| 巡視(呼吸確認) | 1時間おき(リスクが高い方は15分〜30分おき)に居室を回り、呼吸状態や顔色を確認します。 |
| 不眠・不穏対応 | 「家に帰りたい!」とパニックになる方や、一睡もせず歩き回る方に付き添います。大声を出しても、近隣や他の利用者に迷惑がかからないよう配慮します。 |
| 排泄介助 | 夜尿がある方のオムツ交換やトイレ誘導を行います。 |
💡 【アドバイス】「なんとなく変」を見逃すな!
医療ケアができなくても、「トリアージ(緊急度の判断)」は支援員の仕事です。
- 「いつもはいびきをかくのに、今日は静かすぎる…(無呼吸?)」
- 「体が異常に熱い気がする…(発熱?)」
- 「視線が定まらず、一点を見つめている…(てんかんの前兆?)」
③ 【緊急時】行動障害(パニック)への対応
私がいた区分6メインの現場では、これが日常茶飯事でした。
| 業務内容 | 詳細 |
|---|---|
| 自傷・他害対応 | パニックになり、自分の頭を叩いたり、スタッフに噛み付こうとしたりする方を安全に制止し、クールダウン(落ち着ける場所への誘導)を行います。 |
| 環境調整 | 刺激を減らすため、照明を落としたり、静かな部屋へ誘導したりします。 |
💡 【アドバイス】「戦う」のではなく「守る」
パニックになっている利用者さんを力で押さえつけようとしてはいけません。余計に興奮させるだけです。 強度行動障害支援の鉄則は、「受容」と「安全確保」です。
- 否定しない:「帰りたかったんだね」と気持ちを受け止める。
- 距離を取る:他害が届かない距離を保ちつつ、見守る。
- 道具を使う:噛みつきがある場合は、クッションなどを盾にして自分の身を守る。
一人だけの現場は「観察力」が命
いかがでしたか? 「医療ケアがない=楽」ではありません。 むしろ、医療のプロがいない分、私たち支援員が「利用者の命の予兆」を最前線で感じ取らなければなりません。
この3つを徹底できれば、あなたはどんな重度の方の夜でも守れる、プロの支援員になれます。 大変ですが、朝を迎えてご家族にお返しする時の「無事でよかった」という安堵感は、この仕事だけの特権ですよ。
3. 【給与の真実】常勤は「昼と夜の二刀流」!夜勤手当が家計の命綱
「ショートステイの求人」を探すと、時給の高い夜勤専従バイトばかりが出てきませんか? 実は、正社員(常勤)としてショートステイ専属で働くケースは非常に稀です。
多くの施設では、私のように「日中は生活介護、夜はショートステイ」という兼務(シフト併用)スタイルが基本になります。
この働き方の「稼ぎの構造」と「リアルな給与明細」を解剖します。
① 常勤のリアルな働き方:「日勤+夜勤」のハイブリッド
私がいた施設もそうでしたが、常勤職員のスケジュールはこうなっています。
つまり、「生活介護の職員として働きながら、助っ人として夜勤もこなす」というイメージです。 逆に言えば、夜勤だけをひたすらこなすのは「夜勤専従(非常勤・バイト)」の方々で、常勤職員には日中の支援スキルや事務能力も求められます。
② 給与シミュレーション:夜勤手当が「月3万円」の差を生む
では、この働き方で給料はどうなるのでしょうか。 「日勤のみの職員」と「夜勤あり(兼務)の職員」で比較してみましょう。
| 項目 | Aさん(日勤のみ・生活介護専属) | Bさん(夜勤月5回・兼務) |
|---|---|---|
| 基本給 | 180,000円 | 180,000円 |
| 処遇改善手当 | 30,000円 | 30,000円 |
| 資格手当 | 10,000円 | 10,000円 |
| 夜勤手当 | 0円 | 30,000円(@6,000円×5回) |
| 月収(額面) | 220,000円 | 250,000円 |
| 年収差(概算) | 基準 | +360,000円 |
※金額は一例です。地域や法人により異なります。
見ての通り、基本給などは同じでも、夜勤手当だけで年間30〜40万円近い差がつきます。 たかが数万円と思うかもしれませんが、手取り20万そこそこの業界において、このプラス3万円は生活防衛のための「命綱」です。
私のような子育て世帯にとって、この「夜勤手当」があるからこそ、なんとか家計を維持できているのが現実です。
③ 「夜勤専従(バイト)」じゃダメなの?
「そんなに夜勤がお得なら、夜勤専従のバイトでいいじゃん」と思うかもしれません。 確かに、夜勤専従(1回2〜3万円など)は効率よく稼げますが、「常勤(正社員)」ならではのメリットも捨てがたいのです。
④ 結論:体力があるうちは「兼務」で稼げ!
「日中の生活介護」と「夜間のショートステイ」。 頭も体も切り替えが必要で、正直ハードです。生活リズムを整えるのも一苦労です。
「夜勤専従(バイト)」は稼げる?単価の相場と落とし穴
「常勤じゃなくて、夜勤だけのバイトで稼げばいいんじゃない?」 そう思う方もいるかもしれません。確かに求人サイトを見ると「1回2万円!」のような魅力的な数字が並んでいます。
しかし、結論から言うと、「夜勤専従(非常勤)」はおすすめしません。 その理由を、リアルな給与相場から紐解きます。
① 夜勤専従(非常勤)の日給相場
地域や施設によりますが、障害者施設(ショートステイ・グループホーム)の夜勤1回あたりの相場は以下の通りです。
| 施設タイプ | 日給相場(1回あたり) | 特徴 |
|---|---|---|
| 一般的 | 15,000円 〜 18,000円 | 最も多い価格帯。正直、拘束時間(16時間など)を考えると割安です。 |
| 高待遇 | 20,000円 〜 25,000円 | 人手不足の施設や、重度対応など負担が大きい現場に多いです。 |
② 「月収」で見ると意外と低い
仮に、高待遇の「1回22,000円」のバイトが見つかったとしましょう。 身体への負担を考えて、限界ギリギリの月10回(週2〜3回)入ったとします。
- 22,000円 × 10回 = 月収220,000円
いかがでしょうか? 昼夜逆転して体を酷使しても、月収は22万円。ここから税金が引かれます。 常勤(兼務)の月収(25万〜)には届きませんし、何より「ボーナス(賞与)」がありません。
③ お勧めできない「致命的な3つの理由」
独身の方や、副業(Wワーク)なら夜勤専従はアリです。しかし、私のような大黒柱には以下のリスクが大きすぎます。
結論: 「目先の日給2万円」に釣られてはいけません。 家族の未来を守るなら、大変でも「常勤(兼務)」でボーナスとキャリアを取りに行くのが正解です。
4. ショートステイ「夜勤」の向いている人・向いていない人の決定的な違い
「夜型人間だし、静かな夜勤は楽そうだな」 もしそんな軽い気持ちで考えているなら、少し待ってください。
私がいたような「看護師不在・重度対応」の現場では、夜勤者に求められるのは体力だけではありません。 もっと根本的な、「たった一人で命を守る覚悟」があるかどうか。
5つのチェックリストにしました。 あなたはいくつ当てはまりますか?
✅ ショートステイ適性チェックリスト
直感で答えてみてください。
【診断結果】3つ以上なら、あなたは「夜の守護神」になれる
なぜこの資質が必要なのか? 現場のリアルと絡めて解説します。
① 「指示待ち人間」はお断り(Q1)
昼間の業務なら、何かあればすぐに上司や看護師に相談できます。しかし、夜勤は違います。 目の前で利用者が嘔吐した時、パニックになった時。 看護師はいません。管理者は家です。 「誰かが決めてくれるまで待つ」のではなく、「今、この瞬間の最善」を自分で決断できる人。 この「自律心」こそが、夜勤者最強のスキルです。
② 「ビビリ」な人ほど優秀な才能(Q2)
「私、鈍感だから動じません」という人は、実は夜勤に向いていません。 医療ケアができない支援員にとって、最大の武器は「違和感センサー」です。
- 「あれ? いつものイビキが聞こえない(無呼吸?)」
- 「部屋の匂いがいつもと違う(失禁や嘔吐?)」
この「なんとなく変だ」というサインに気づけるのは、少し心配性なくらい繊細な人です。 私が現場で信頼していたのは、豪胆な人よりも「ちょっとした変化で報告してくる人」でした。
③ メンタルの強さは「鈍感力」にあり(Q3)
重度の障害がある方の夜は、予測不能です。 夜中に突然「運動会」が始まったり、排泄物を壁に塗られたり…。 いちいちショックを受けて落ち込んでいては、身が持ちません。
「うわー、派手にやったねぇ(笑)」 こうやって心の中で苦笑いしながら、テキパキと片付けられる「胆力」と「切り替えの早さ」を持つ人は、長く健康に働き続けられます。
④ 「一人の時間」を楽しめるか(Q4, Q5)
夜勤は孤独です。巡視の合間、シーンとした事務所で一人過ごす時間が長いです。 これを「寂しい」と感じるか、「誰にも邪魔されず自分のペースで仕事ができる」とポジティブに捉えられるか。 また、夜勤明けの平日休みを使って、役所に行ったり、空いているカフェに行ったりと、不規則なシフトをメリットに変えられる人は、この仕事が天職になります。
⚠️ 正直、ここが「壁」になるかも(向いていない人)
逆に、以下のようなタイプの方は、ショートステイの夜勤(特にワンオペ)は避けたほうが無難です。
向いている人
5. まとめ:夜の安らぎを守る「黒子」になれ
ショートステイの仕事は、華やかではありません。 給料も、夜勤というハードワークの対価としては「高い!」とは言えないのが本音です。
しかし、私たちが夜通し見守ることで、ご家族は安心して眠ることができます。 そして、利用者さんが朝起きて「おはよう」とあくびをした時、「ああ、今日も無事に朝を迎えられた」という静かな達成感があります。
もしあなたが、「派手さはなくていい。誰かの当たり前の生活を、影で支える仕事がしたい」と思うなら、ショートステイは最高の職場になるでしょう。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました!
参考文献・出典
- 厚生労働省「障害福祉サービス等従事者処遇状況等調査」(※平均値ではなく、基本給等の内訳を参照し分析)
- 喀痰吸引等研修について(厚生労働省)


