本気で子どもを守る親へ。虐待を止める“気づき”と“行動”のすべて
ニュースで「虐待死」という言葉を見るたびに、胸が締めつけられる。
あの子は、どれほど助けを求めていたのだろう。
でも──その悲しい現実は、“遠い誰か”の話じゃない。
育児のストレス、仕事の疲れ、夫婦のすれ違い。
たったひとつの「余裕のなさ」が、誰かを追い詰めてしまうことがある。
だからこそ、私たち親が「気づく」こと、「行動する」ことが命を救う。
子どもを守れるのは、制度でも学校でもなく、まずは“私たち親”なんです。
この記事は、感情論や精神論ではありません。 私の支援現場での経験と、「こども家庭庁」や「厚生労働省」が示す公的な根拠に基づき、虐待を止めるために本当に必要な「気づき」と「行動」のすべてを解説します。
「しつけ」と「虐待」の明確な違いから、迷わず助けを求める方法(189)まで。 子どもを守るための具体的な行動を、一緒に確認していきましょう。
“虐待”は特別じゃない。どの家庭にも潜む危険

「虐待」と聞くと、多くの人は「ニュースの中の話」だと思う。
けれど、実際に起きている虐待の多くは、“普通の家庭”の中で起きている。
きっかけは、ほんの小さなこと。
- 夜泣きが続いて、眠れなかった日。
- 言うことを聞かない子どもに、思わず大声を出してしまった日。
- 仕事と家事と育児に追われて、「もう無理」と心が折れそうになった日。
その「小さなストレス」が積み重なると、
心のどこかで、“怒り”が“支配”に変わっていく。
「しつけのつもりだった」
「あの時は余裕がなかった」
後になってそう言う親の多くが、本当は“誰よりも子どもを愛していた”。
虐待は、悪意のある人だけがすることではない。
だからこそ、気づいた瞬間に“立ち止まる勇気”が必要なんです。
【公的な根拠】「児童虐待」の4つの定義
そもそも「虐待」とは何でしょうか。こども家庭庁(児童虐待防止法)は、虐待を以下の4つに明確に定義しています。
- 身体的虐待: 殴る、蹴る、叩く、激しく揺さぶる、やけどを負わせる 等
- 性的虐待: 子どもへの性的行為、性的行為を見せる、性器を触る・触らせる 等
- ネグレクト(保護の怠慢): 食事を与えない、ひどく不潔にする、重い病気でも病院に連れて行かない、家に閉じ込める 等
- 心理的虐待: 言葉による脅し、無視、きょうだい間での差別的扱い、子どもの目の前で家族に暴力をふるう(面前DV) 等
「しつけのつもり」でも、これらの行為は法的に「虐待」と定義されています。
(参考:こども家庭庁「児童虐待防止対策」)
子どもが発しているSOSサインを見逃さない
子どもは言葉で「助けて」と言えません。
でも、身体と行動で、必ずサインを出しています。
たとえば──
- 最近、笑顔が減った
- よくお腹が痛い・頭が痛いと言う
- 小さな声で「ごめんなさい」と繰り返す
- 急に甘えなくなった、もしくは過剰に甘えるようになった
- 朝の準備に時間がかかる、目を合わせたがらない
こうした変化を「反抗期」や「気まぐれ」と片づけてしまうと、
子どもの心のSOSを見逃してしまうかもしれません。
大切なのは、子どもの“いつもと違う”に気づくこと。
そして、すぐに「どうしたの?」と優しく声をかけること。
その一言が、子どもにとって“世界で一番安心できる瞬間”になるのです。
子どもは、怒られたいわけでも、わがままを言いたいわけでもありません。
「わかってほしい」「そばにいてほしい」──ただそれだけなんです。
親として本気でできる5つの行動
「子どもを守る」とは、ただ抱きしめることではありません。
日常の中で、守り続ける“意志と行動”の積み重ねです。
以下の5つの行動は、今日から誰にでも始められる“守る力”です。
① 子どもの言葉を「疑わずに信じる」
子どもが何かを訴えたとき、
「そんなはずない」「大げさだよ」と否定してしまうと、
子どもの心は一瞬で閉ざされます。
どんなに小さなことでも、まずは「話してくれてありがとう」と伝えましょう。
それが、子どもにとって“安全な場所”をつくる第一歩です。
② 「しつけ」の名で怒りをぶつけない
しつけとは、怒鳴ることでも、恐れさせることでもありません。
「伝える」ことと「怒る」ことを混同しないようにすることが大切です。
もし怒りが込み上げたら、深呼吸して5秒間黙る。
たったそれだけでも、感情の暴走を止められます。
「しつけ」のための体罰も法律で禁止されています
記事の②で「『伝える』ことと『怒る』ことを混同しない」と書きましたが、これは精神論ではなく、法律(児童虐待防止法 第14条)で定められたルールです。
2020年4月から施行された改正法により、親権者による「体罰」は、たとえ「しつけ」のためであっても明確に禁止されました。
厚生労働省のガイドラインでは、
- 「どんなに軽いものであっても体罰に該当」する
- 「体罰等が子どもの成長・発達に悪影響を与えることは科学的にも明らか」 と示されています。
「しつけだから」という大義名分で手を上げることは、法的にも医学的にも許されない「虐待」なのです。
とは言え、「頭では分かっていても、どう伝えればいいか分からない…」と悩んでしまいますよね。
虐待を防ぐ第一歩は、「怒る」以外のコミュニケーションを知ることです。
私が介護福祉士・保育士として実践してきた「褒め方・叱り方」よりも大切な「信頼関係を築く習慣」については、こちらの記事で詳しく解説しています。

(参考:厚生労働省「体罰等によらない子育てのために」)
③ 自分を責めすぎない
完璧な親なんていません。
「怒ってしまった」「余裕がなかった」──それも現実です。
でも、そこから立ち直る力を持つことが、本当の強さです。
自分を責めるより、次にどう行動するかを考えましょう。
④ 苦しいときは「助けて」と言っていい
子どもを守るためには、まず親が守られることが必要です。
「189(いちはやく)」という児童相談所全国共通ダイヤルがあります。
通報だけでなく、相談でも利用OK。匿名でも大丈夫です。
「自分が怒ってしまいそう」「子どもの扱いに悩んでいる」──
そんな時こそ、勇気を出して電話してください。
「189」は“相談”と“匿名”OKです
「189(いちはやく)」について、こども家庭庁は「児童相談所虐待対応ダイヤル」と定めています。
ここで非常に重要なのは、189が「通報(通告)」専用ダイヤルではない、ということです。
こども家庭庁の公式サイトにも、
- 「虐待かも」と思った時などに、すぐに「通告・相談」ができる
- 「通告・相談」は、匿名(とくめい)で行うこともでき、秘密は守られる
- 通話料は無料
と明記されています。
「自分が怒ってしまいそう」という親御さん自身からの「相談」も受け付けています。「通報される」と怖がる必要はありません。
これは、あなたと子どもを守るための公的なセーフティネットです。
(参考:こども家庭庁「児童相談所虐待対応ダイヤル「189」について」)
⑤ 他の家庭にも、優しいまなざしを向ける
虐待は、家庭の中で静かに起きています。
だからこそ、周囲の“大人の気づき”が命を救うこともあります。
泣き声、あざ、怯えた表情──
「おかしい」と感じたら、迷わず通報していいのです。
それは“告げ口”ではなく、“命を守る行動”です。
親が本気で子どもを守ると決めた瞬間から、
その家庭はもう、希望のある場所になります。
怒りを抑えられないとき、助けを求める勇気を

「もう限界だ」「このままじゃ、手が出そう」
そんな瞬間があるかもしれません。
でも、それは“ダメな親”の証拠ではありません。
限界を自覚できるあなたは、まだ子どもを守る側に立っています。
💔怒りの正体は「孤独」と「疲れ」
子どもに向けているつもりの怒り、
実は、自分に向けていることが多いのです。
「うまくできない」「誰も助けてくれない」
その苦しさが、怒りに姿を変えて爆発する。
だから、怒りを抑えるには、まず自分を救うこと。
🌱できること①:その場を離れる
感情があふれそうな瞬間、まずその場を離れる勇気を。
10秒でもいい。別の部屋に行く、外に出る、水を飲む。
たったそれだけで、破壊の連鎖を止められる。
🤝できること②:誰かに話す
誰かに話すことは、「弱さ」ではなく「強さ」です。
189(いちはやく)への相談はもちろん、
地域の子育て支援センター、スクールカウンセラー、
友人、家族、ママ友、パパ友──誰でも構いません。
言葉にすることで、自分の怒りを客観視できるようになります。
🧭できること③:カウンセリングや支援を受ける
「もう少し頑張れる」
そう思って無理を重ねるほど、心は疲弊していきます。
公的機関には無料相談や親向けプログラムもあります。
それは“治療”ではなく、“成長のサポート”です。
あなたが怒りを手放そうとするその姿こそ、
子どもにとって何よりの希望です。
怒りを抑えられない親ではなく、助けを求められる親であってください。
もし、あなたの怒りの原因が「どう接しても、子どもが応えてくれない気がする」という苦しさにあるなら、それは「愛着形成」や「発達障害」の特性が関係しているかもしれません。
「私の育て方のせい?」と自分を責めてしまう前に、正しい知識を持つことで、親御さんの心がフッと軽くなることがあります。
“守る”は連鎖する──親の勇気が、未来を変える
子どもを守りたい──その思いが、日に日に重くのしかかる。
朝の準備に追われ、仕事に押し潰され、夕方には疲れ切ってしまう。
「もう限界……」と、誰にも言えないまま、心がすり減っていく。
でも、ここで覚えてほしい。
あなたは悪い親ではありません。
怒ってしまう日があっても、イライラしてしまう夜があっても、それは「親として頑張っている証拠」です。
子どもは敏感です。親の余裕のなさも、ストレスも、すぐに気づきます。
そして、親が自分を責め続けるほど、子どもも自分を責めるようになってしまう。
大事なのは、「頑張っている自分」をまず認めること。
小さなことでもいい、笑った、話を聞いた、抱きしめた──
その一つひとつが、子どもを守る大きな力になるのです。

未来へのメッセージ

子どもを守る親の勇気は、決して一人の力ではありません。
あなたの小さな一歩が、家族の未来を変え、次の世代に希望をつなぎます。
怒りや疲れを抱えながらも、子どもを抱きしめるその手。
話を聞き、目を合わせ、笑顔を返すその瞬間。
それが、“守る連鎖”の始まりです。
今日のあなたの勇気は、必ず子どもに届く。
そして、その勇気は、未来を明るく照らす光となるのです。
子どもを守るのは、他でもない“あなた”です。
どうか、諦めず、迷わず、今日も一歩を踏み出してください。
まとめ:あなたの「小さな行動」が、必ず子どもを守る力になる

「虐待」という重いテーマの記事を、最後まで読んでくださり本当にありがとうございます。
もしかしたら、この記事を読んで「自分も虐待をしているかも…」と苦しくなった方や、「近所のあの子が心配だ…」と胸を痛めている方もいるかもしれません。
でも、そう感じている時点で、あなたは「子どもを守る側」に立っています。
この記事でお伝えしたかったことは、たった3つです。
- 「しつけ」のための体罰は、法律で禁止された「虐待」であること。
- 子どものSOSサイン(笑顔が減る、怯える等)に気づくこと。
- 迷わず「189」に電話すること。匿名で、相談だけでも大丈夫だということ。

どうか、一人で抱え込まないでください。 「助けて」と声を上げることは、親として、大人としての「勇気ある行動」です。
この記事が、今この瞬間も苦しんでいる子どもと、そして親であるあなた自身を救う「はじめの一歩」になることを、心から願っています。




