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障害福祉の生産性向上、時短より「ムラ」を見る国のマニュアルと素案の測り方(11/6検討会資料)|11月7日の福祉ニュース

障害福祉の生産性向上 時短よりムラを見る 福祉ニュース 2026年11月7日
ユイン
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今日は土曜日で、省庁の新しい発表はありません。そこで今日は、昨日の記事で入口だけ紹介した障害福祉の生産性向上ガイドライン素案を、検討会の資料に沿って詳しく見ます。

11月6日の第2回検討会には、素案のほかに参考資料が5本付きました。そのうちのマニュアルは、時間を減らせたかどうかではなく、業務の偏りである「ムラ」を見るよう書いています。

資料の進め方には、取組や成果を評価する仕組みの検討も入っています。行き着く先は、業務の書き出し方、タイムスタディの取り方、機器の補助を申請する順番です。

📅 2026年11月6日(金)開催🏛 障害福祉分野における人材確保・生産性向上に関する検討会(第2回)
この記事の4点を、30秒で
話題 いちばん大事な一行 いまの段階
①ムラの見方 ムラは3つ(時間帯・職員間・属人化)、背景は4つの構造的要因。時短を主軸にしないと明記 発行済み(2026年4月)
②3事業所の数字 定員10名の事業所で管理業務が1人1日138分。記録と連絡を分散させた例 実施済み(事例)
③測り方 素案の調査票は10分単位。国の実証は5日間の調査を前後で計3回。個人の評価には使わない 検討中(素案)
④目標と補助 ICT活用等の事業所を2029年に90%以上へ。補助率は3/4など 公表済み(令和7年6月のプラン)

ガイドラインはまだ素案で、内容は今後の議論で変わります。①②と④の目標は素案より前に公表された資料で、11月6日の検討会に参考資料として配られたものです。

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①「時短を主軸にしない」国のマニュアル、ムラ3つと構造的要因4つ(2026年4月発行)

発行済み厚生労働省の事業の検討委員会が作ったマニュアルが、第2回検討会の参考資料4として配られました。見る対象は業務時間の長さではなく、時間帯・職員・判断の3つのばらつきです。

マニュアルが「ムラ」と呼んでいるもの

マニュアルは「『時間短縮』や『削減効果』のみを主軸とする整理は採りません」と書いています。理由は、支援内容が多様であること、利用者の特性が一律でないこと、支援の成果が短期の数値に出にくいことの3つです。

そのうえで、ムリ・ムダ・ムラの3Mのうち、特にムラに着目するとしています。ムラの中身は次の3つです。

  • 時間帯による業務の偏り
  • 職員間の負担の偏在
  • 判断や対応の属人化

例として挙がっているのは、放課後等デイサービスの夕方です。支援・送迎準備・記録・連絡がこの時間帯に重なると説明しています。

ムラの背景にある4つの構造的要因の図解。時間配分、役割分担、情報の流れ、判断プロセス
図:ムラの背景にある4つの構造的要因(出典:第2回 障害福祉分野における人材確保・生産性向上に関する検討会・令和8年11月6日 参考資料4)
ムラの背景にある4つの構造的要因(マニュアル21〜22ページを短くしたもの)
要因 何を見るか 記録の業務での例 連絡調整での例
時間配分 どの時間に、どの業務が集まっているか 記録が後追いになり、業務後に集中して残業につながる 相手が不在で探す、折り返しを待つ
役割分担 業務の担い方の偏り 担当制で情報が分散し、細かなニュアンスが共有されない 管理者や専門職など特定の職員に連絡が集中する
情報の流れ 情報がうまく流れているか 同じ内容の共有が何度も発生する 同じ内容の共有が何度も発生する
判断プロセス 基準やルールが共有されているか 記録の粒度や表現がそろわない 報告の範囲や緊急性の基準が不明確で、判断が個人に寄る

「忙しい」を、どう言葉に直すか

要因の説明で目を引くのは、役割分担の欄の書き方です。人手不足そのものではなく担い方の偏りを見る、判断プロセスの欄も能力の問題ではなく基準の共有を見る、となっています。個人的には、職員に説明するときの言葉としてそのまま使えると感じました。

解決策の検討では、業務が集中する時間帯の仕事を2つの軸で仕分けます。「誰が実施するか」と「時間を動かせるか」です。検討の順番も、機器を選ぶ前に、なくせる・まとめられる・順番や担当を替えられる業務がないかを見るよう書かれています。

機器を検討するときの視点は、課題に合っているか、現場で動かせるか、続けられるかの3つです。導入後3か月程度の習得期間を設ける、紙1枚の簡易マニュアルを機器のそばに置く、といった具体例も載っています。導入しないという選択肢も比べるよう書かれています。

②定員10名で管理業務が1日138分、滋賀県米原市の3事業所の見える化(マニュアルの事例)

実施済みマニュアルには、社会福祉法人ひだまり(滋賀県米原市)の3事業所の事例が載っています。業務量調査で偏りを出してから、スマートフォン・音声入力・インカムを入れた流れです。

調査で出た数字と、変わったこと

マニュアルの事例1〜3(調査結果の数字は1人1日あたりの平均業務時間)
事業所 見える化で分かったこと 変わったこと
陽空ひだまり
放課後等デイサービス
利用定員10名
管理業務138分、送迎運転77分。13時までと17時以降に送迎が集中し、16〜17時に支援・連絡・送迎準備・記録が重なる 連絡と記録がその場でできるようになり、連絡調整は11時・14時・17時などに分散。「働きやすくなった」は5名中4名
青空ひだまり
放課後等デイサービス・児童発達支援
1日20名
送迎運転が突出し、医療処置や他の間接業務も上位。学校からの引き継ぎ情報は、戻ってから支援しながら口頭で伝えていた 会議中心の共有から現場での即時共有へ。ケアの直後に記録でき、後追い記録が減少
大空ひだまり
生活介護
1日20名
見守り33分、医療処置32分、機械浴30分。16時台に記録と連絡調整が集中し、リーダー層がサービス終了後に30〜60分程度かけて後記録 夕方に集中していた記録が分散。入浴介助中や夜勤でもインカムで応援を呼べるように

大空ひだまりでは、職員ごとの操作の習熟度を「星取表」で見えるようにし、できる職員ができない職員を支える形をとりました。陽空ひだまりでは、手が離せない職員がインカムで伝えた内容を別の職員が代わりに入力する体制を作っています。

少なく見える業務ほど、疑ってみる

3つの中でいちばん気になったのは青空ひだまりの分析です。調査では連絡調整の時間が少なく出ましたが、連携が不要だったわけではなく、十分な相談や確認の時間を取れず短い伝言ですれ違っていた、と振り返っています。数字が小さい業務が楽な業務とは限らない、という例です。

残った課題も書かれています。音声入力の精度や環境によっては手入力を併用する必要があること、インカムと電話の使い分け、複数の事業所で勤務する職員のログイン切り替えです。

なおマニュアルは、事例は成功モデルや標準解ではなく、成果の大小で評価しないと断っています。3事業所とも同じ法人で、全国の平均でもありません。送迎の時間を見直すなら、送迎加算の要件と記録の書き方も合わせて確認しておくと、記録の項目を削りすぎずに済みます。

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③タイムスタディは10分単位、国の実証は5日間の調査を計3回(素案・資料1)

検討中厚生労働省とこども家庭庁の素案は、業務時間の測り方を調査票の例つきで示しました。同時に「個人の能力や働きぶりを評価するものではない」と注意書きを置いています。

素案の調査票と、国の実証で測っているもの

素案共通編の調査票の例は、10分ごとに、どの業務に何分使ったかを書く形です。分類は次の7項目で、取組の前と後で同じ調査をして比べます。

  • 直接支援時間(送迎、利用者・家族との連絡調整を含む)
  • 記録・文書作成、請求等の事務作業
  • 申し送り、利用者・職員間の連絡調整
  • 支援準備(支援計画の検討、利用調整、スタッフの配置等の検討)
  • その他の間接業務
  • 休憩・待機・仮眠
  • その他

国も同じ方法で実証を進めています。資料1によると規模は20事業所程度で、目的には今後の報酬改定の検討に使う根拠の収集が挙がっています。スケジュールのイメージは8月から11月までです。

国の実証の調査項目(第2回検討会 資料1を短くしたもの)
調査 方法 見ていること
タイムスタディ 事前に5日間、導入後に5日間×2回。職員の業務状況を記録 総業務時間、支援時間、間接業務の時間の変化
訪室回数(夜間見守りのみ) 5日間、利用者ごとの訪室回数などを記録 訪室回数、不安行動への支援回数の変化
職員向け調査 アンケート 心理的負担、モチベーション、支援の質など
利用者数調査 管理者が把握 利用者の増減がデータに影響していないか
業務時間等調査 勤務記録から把握 所定外労働時間の変化
ヒアリング 職員・管理者 数値で捉えられない状況、定着の課題、支援への影響

実証のテーマごとの事業所数は、記録・請求ソフトが7、ビジネスチャットが4、夜間見守りが5です。AI活用はサービス類型ごとに3と書かれています。記録・請求ソフトの効果測定の例には、業務時間のほか、離職率、利用者満足度、経常利益率、加算取得状況が並んでいます。

測ることへの不安は、資料にも書かれている

令和9年度報酬改定に向けた関係団体ヒアリング(計53団体)の書面では、効率化が目的になることによる人員削減や直接支援時間の削減、支援の画一化、監視感、デジタル格差への懸念が出ました。評価のために帳票を増やさず、既存の記録・勤怠・請求などから集計すべきだという意見が中心です。

素案はこれを受ける形で、タイムスタディの注意点を2つ置いています。職員個人の能力や働きぶりの評価に使わないこと、必要な支援の時間まで減らさないことです。記録に時間がかかる職員を問題にするのではなく、同じ内容を別の書式に何度も書くといった業務の進め方を見る、という説明です。

報酬でどう評価するかは、今回の資料にもまだ書かれていません。個人的には、事業所で測るならこの注意点を最初に職員へ伝えておかないと、正確な記録は集まらないのではと思います。AIについても、ヒアリングでは支援方針や緊急時対応の最終判断は人が行うべきという意見で、協力者からは生成AIの記録は職員が確認して責任を持つ必要があるという意見が出ています。

④ICT活用の事業所を2029年に90%以上へ、機器の補助は3/4(省力化投資促進プラン・素案のコラム)

公表済み厚生労働省が令和7年6月13日に公表したプランの目標と、素案に載った令和8年度時点の補助の目安です。新しい決定ではありませんが、ガイドラインの背景にある数字として並べます。

国の目標と補助の目安

省力化投資促進プラン―障害福祉―の目標(令和7年6月13日 厚生労働省)
項目 策定時の現状 2026年 2029年
ICT活用等で業務量を縮減する事業所 32.3% 50% 90%以上
都道府県のワンストップ窓口の設置数 4 10以上 47
代表的な補助金・助成金(素案 共通編のコラム。令和8年度時点の目安)
制度 対象となる主な費用 補助率・上限の目安
障害福祉分野の介護テクノロジー導入支援事業 見守り機器等、記録ソフト・タブレット等のICT機器 補助率3/4。上限は障害者支援施設210万円、グループホーム150万円、その他120万円、ICT100万円
同事業のパッケージ型導入支援 複数のテクノロジーを一体的に導入し業務改善に取り組む場合 補助率3/4。1事業所あたり最大1,000万円
業務改善助成金(厚生労働省) 最低賃金の引上げと合わせて行う設備投資 助成率4/5または3/4。上限は最大600万円
都道府県・市町村の独自補助 自治体が独自に行う福祉機器・ICT機器の導入支援 自治体ごとに設定
中小企業デジタル化・AI導入支援事業 業務効率化に資するITツール 申請枠により異なる

プランには法人の優良事例も載っています。全国の平均ではなく、それぞれの法人の報告です。

  • 社会福祉法人スプリングひびき(佐賀市):介護ロボットの活用で、身体的な負担を理由とする離職者が5年間で29.4%から0%に。定年(66歳)後も勤務内容を変えず続けたいスタッフは43.6%から73.8%に
  • 社会福祉法人京都ライフサポート協会(京田辺市):社会福祉士の初任給29.3万円、一般職員の平均年収500万円以上。離職率は20年間で3.1%

都道府県の体制づくりも動いています。令和8年9月29日の第1回自治体担当者連絡会には46都道府県と1中核市が参加し、長野・滋賀・大分の3県がサポートセンターの設置例を紹介しました。自治体向けマニュアルは令和8年度中に作る予定です。

買う前に確認しておきたいこと

素案は、購入前の申請が必要な制度が多く、購入後では対象外になる場合があると注意しています。補助されるのは費用の一部で、使い続ける費用は残ります。月額の目安は昨日の記事の費用の表に載せました。

申請には、目的、対象の仕事、機器、期待する効果をまとめる必要があります。①の書き出しをしてあれば、そのまま申請の材料になります。募集時期や条件は自治体ごとに違うので、機器を選ぶ前に都道府県の案内を見ておくとよさそうです。

手続きの負担については、プランに電子申請のシステムを令和9年度中を目途に整備する方向が書かれています。開発の入札は10月21日の記事で取り上げました。

今日のまとめ

資料を通して読むと、国の説明は一貫しています。時間を減らすことを目的にせず、どこに業務が偏っているかを先に書き出し、機器はそのあとで選ぶという順番です。一方で、目標には業務量の縮減という言葉があり、実証は報酬改定の根拠集めも兼ねています。素案の注意書きが、評価の仕組みを作る段階でも守られるかどうかは、これからの資料で確かめる必要があります。

来週以降の日程です。介護福祉士の受験票の手続きは、期限が近いので入れておきます。

  • 11月9日(月)……社会保障審議会介護保険部会(第138回)
  • 11月11日(水)……労働政策審議会障害者雇用分科会(第145回)
  • 11月13日(金)……第39回介護福祉士国家試験の受験者:受験票に新しい氏名・現住所を反映させる変更届の到着期限(ここは決まっています)
  • 12月11日(金)……同試験の受験票を投函。12月21日(月)になっても届かなければ試験センターへ電話(ここは決まっています)
  • 令和9年1月31日(日)……第39回介護福祉士国家試験(ここは決まっています)
  • 令和9年2月……第2回自治体担当者連絡会(予定)
  • 令和9年3月15日(月)13:00〜16:00……障害福祉現場における生産性向上推進フォーラム。会場とオンライン、1,200名を想定(予定)

参考にした一次情報

③のガイドライン素案は検討段階の資料で、資料にも今後の議論で変わり得る前提で書かれています。補助の内容は令和8年度時点の目安です。最終的な取り扱いは公表資料でご確認ください。

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室長:ユイン
室長:ユイン
介護福祉士・保育士・サビ管
福祉の現場 × 4児の父親
福祉と子育てを、現場の目線で。
グループホーム・放課後等デイサービスでの支援・管理経験をもとに、福祉の制度や働き方、子育てに役立つ情報を発信しています。
支援歴10年以上
20代後半から、グループホームの施設長・放課後等デイサービスの管理者を経験。
4児の父親
現場で働きながら4人の子どもを育て、仕事と子育ての両立に向き合っています。
資格・研修
介護福祉士保育士サービス管理責任者
3級ファイナンシャル・プランニング技能士実務者研修教員講習会 修了強度行動障害支援者養成研修(基礎・実践)防火管理者(甲種)
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