退職手当共済の見直し案、財政均衡期間は2040年頃まで・支給の「加入1年以上」引上げへ(11/2検討会)、11月2日の福祉ニュース
11月2日(月)の夕方、厚生労働省で「社会福祉施設職員等退職手当共済制度の在り方に関する検討会」の第5回が開かれました。資料の題は「これまでの御意見を踏まえた見直しの方向性について」。4月から続いた議論が、とりまとめに向けた段階に入りました。
同じ日、こども家庭庁は11月4日の放課後児童クラブの専門委員会の資料を先に公開しています。放課後児童支援員の研修を勤続3年・5年・10年で組み直し、処遇改善の補助とつなげる案です。
行き着く先は、社会福祉法人が毎年払う退職共済の掛金と、職員が辞めるときに受け取る退職手当金、そして放課後児童支援員の研修と給与です。
| ニュース | いちばん大事な一行 | いまの段階 |
|---|---|---|
| ①退職手当共済の見直し | 財政均衡期間を「おおむね5年」から「2040年頃まで」へ。支給対象の「加入1年以上」は引き上げる方向 | 検討中(変わり得る) |
| ②放課後児童支援員の研修 | 研修を採用からおおむね3年・5年・10年の3段に整理し、令和10年度からキャリアアップ処遇改善事業の要件と連動させる案 | 検討中(変わり得る) |
| ③放課後児童クラブ・児童館の基準 | 放課後児童支援員の基礎資格に、こども家庭ソーシャルワーカーなどを追加。令和9年4月1日施行 | 確定(公布済み) |
| ④秋の褒章 | こども家庭庁の推薦分は3名(藍綬2名・黄綬1名)。11月3日付で発令 | 公表済み |
③は内閣府令(令和8年内閣府令第90号)として10月1日に公布済みで、11月4日の専門委員会には「報告」として出されます。①と②は、検討会・専門委員会に示された案の段階です。
①退職手当共済の見直しの方向性、財政均衡期間は「2040年頃まで」(第5回検討会)
検討中掛金は2040年頃までを見通して決め、給付は「加入1年以上で支給」を引き上げる、という方向が厚生労働省から示されました。
第4回の「問い」が、第5回で「〜してはどうか」に変わった
厚生労働省社会・援護局福祉基盤課は、11月2日の第5回検討会に資料1「これまでの御意見を踏まえた見直しの方向性について」を出しました。7月16日の第4回では「どのように考えるか」という問いだった論点に、事務局としての案が付きました。
第4回までの推計(2040年度の掛金は職員1人あたり年255,300円〜281,400円)は、10月31日の福祉ニュースで表にまとめています。今回はその続きで、「では、どう直すか」の部分です。
| 論点 | いまの仕組み | 示された方向性 |
|---|---|---|
| 財政均衡期間 | おおむね5年間 | 2040年頃までを見据えて設定する |
| お金が足りない年 | 支払準備金の取り崩し | 必要に応じて福祉医療機構の借入も使う。長期借入も可能にする |
| 掛金の上げ方 | 5年ごとに設定 | 引上げ幅の平準化と、一定期間の掛金の見通しの提示を検討 |
| 分割納付 | 毎年5月末までに一括納付 | 資金不足のおそれがあり「慎重な検討が必要」 |
| 支給対象 | 加入1年以上 | 支給対象となる加入年数の引上げを検討。今いる職員には施行日前日の退職を仮定した額を保障する経過措置 |
| 計算基礎額の上限 | 36万円 | 近年の賃金上昇を踏まえて見直しを検討 |
| 役職を降りたとき | 退職前6か月の本俸平均で計算 | 給与が下がる前の期間は、下がる前の給与で計算するなど |
| 加入期間の合算 | 退職後3年以内に復帰 | 3年以内の要件の延長を検討 |
| 財政検証 | 仕組みなし | 法定化し、一定期間ごとに外部有識者らが掛金・給付水準を検討 |
出典:第5回 社会福祉施設職員等退職手当共済制度の在り方に関する検討会 資料1(令和8年11月2日)
何年に引き上げるかは、資料1には書かれていません。第4回の構成員の意見としては「3年〜5年以上にすることはやむを得ない」「5年未満を不支給とすることが妥当ではないか」が載っています。財政均衡期間についても「特例的にこの期間は、15年程度の中長期とすることが望ましい」という意見が紹介されています。
資料2では、掛金を上乗せして給付も上乗せする選択制や、今は認められていない中小企業退職金共済(中退共)との重複加入をどう考えるか、という論点も出ています。
短期で辞める人・役職を降りる人の扱いが変わる
あわせて出た参考資料の数字です。役職を降りて給与が下がる前に一度退職し、退職手当金を受け取る実態がある、という指摘への答えが「下がる前の給与で計算する」案です。
| 項目 | 数字 |
|---|---|
| 令和6年度の退職者 | 95,958人 |
| うち合算制度の利用を申し出た人 | 3,748人(退職者の3.9%) |
| 令和6年度に合算制度で復帰した人 | 2,671人 |
| 定年制度がある法人 | 98.8%(60歳52.2%・65歳41.0%) |
| 役職定年制度等がある法人 | 23.0% |
| 再雇用制度がある法人 | 91.6% |
出典:第5回検討会 参考資料1(福祉医療機構の集計値)、参考資料2(全国社会福祉法人経営者協議会の調査、令和8年4月1日時点、n=418)
個人的には、「加入1年以上」の引上げがいちばん現場に響くと感じています。1〜2年で辞める職員の分は、これまで法人が掛金を払い、本人も退職手当金を受け取っていました。引上げが決まれば、採用時に「何年勤めれば出るか」を説明し直すことになります。
一方で、合算制度の「3年以内」が延びれば、一度離れて戻ってくる人には有利になります。就業規則の退職金の条文を見直す時期が来そうなので、とりまとめの数字は読んでおいたほうがよさそうです。
②放課後児童支援員の研修を「3年・5年・10年」に整理、令和10年度から処遇改善と連動する案(こども家庭庁)
検討中都道府県ごとにばらばらだった研修を勤続年数で3段に分け、月額約1.5万〜3万円の賃金改善の要件につなげる案です。
研修の中身は、都道府県で1〜5科目から20科目以上まで差がある
こども家庭庁は11月2日、11月4日(水)16:00からの「児童厚生施設及び放課後児童クラブに関する専門委員会(第8回)」の資料を公開しました。資料3が「放課後児童支援員等資質向上研修事業について」です。
こども家庭庁の調査(44都道府県が回答)では、資質向上研修を実施しているのは42県(95.5%)。年間の開催は「1〜5科目」が22県(52.4%)、「20科目以上」が5県(11.9%)でした。実施していない理由には「量の確保を優先せざるを得ない状況」も挙がっています。
案では、採用からおおむね3年前後を「テーマ別研修」、5年前後を「リーダー研修」、10年前後か事業所長的立場を「マネジメント研修」とします。研修は1回60〜90分程度を想定し、オンラインの活用も検討する、としています。
| 対象 | 年額 | 研修案の段階 |
|---|---|---|
| 放課後児童支援員 | 131千円(月額約1万円) | 認定資格研修 |
| 経験おおむね3年以上・一定の研修を受講 | 198千円(月額約1.5万円) | テーマ別研修 |
| 経験おおむね5年以上・一定の研修を受講 | 263千円(月額約2万円) | リーダー研修 |
| 経験おおむね10年以上・研修を受講した事業所長的立場 | 394千円(月額約3万円) | マネジメント研修 |
支援の単位ごとの上限は919千円。補助率は国・都道府県・市町村が各1/3。出典:第8回 児童厚生施設及び放課後児童クラブに関する専門委員会 資料3(令和8年11月2日公開)
令和9年度は準備期間、効いてくるのは令和10年度から
「今後の進め方(案)」では、令和8年度に研修体系を整理して自治体に周知し、令和9年度は実施準備期間、令和10年度からキャリアアップ処遇改善事業の要件と連動させる、という順番です。
科目の例には「障害(発達障害等)の理解と障害のあるこどもの育成支援」「苦情解決、カスタマーハラスメントへの対応」「ICT・DXを活用した業務改善」が並んでいます。勤続3年・5年の職員がいるクラブは、どの研修が「一定の研修」に当たるのかを、市町村に確かめておくと安心です。
③放課後児童支援員の基礎資格にこども家庭ソーシャルワーカー等を追加、令和9年4月1日施行(内閣府令第90号)
確定放課後児童クラブと児童館で働ける人の資格の幅が広がります。あわせて、職員による虐待と性暴力防止の義務の日程も資料に並びました。
追加される2つの資格要件
こども家庭庁の資料4によると、「放課後児童健全育成事業の設備及び運営に関する基準」と「児童福祉施設の設備及び運営に関する基準」(児童厚生施設関係)を改正する内閣府令が、令和8年10月1日に公布されました。施行は令和9年4月1日です。パブリック・コメントは6月24日〜7月23日に行われ、意見は33件でした。
- こども家庭ソーシャルワーカーの資格を持つ人
- 大学(専門職大学の前期課程の修了を含む)・大学院・外国の大学を卒業した人などで、1年以上児童福祉事業に従事した人
放課後児童支援員は、この基礎資格に加えて都道府県知事等の研修の修了が必要なのは変わりません。児童館の「児童厚生員」にも同じ2つが加わります。放課後児童クラブは市町村の条例、児童厚生施設は都道府県等の条例の改正を経て施行されます。
| 項目 | 中身 |
|---|---|
| 職員による虐待の通報義務など | 令和7年10月1日施行(放課後児童健全育成事業・児童館なども対象) |
| こども性暴力防止法 | 令和8年12月25日施行予定 |
| BCPがある放課後児童クラブ | 64.5%(令和7年5月1日時点) |
| BCPがある児童館 | 56.7%(令和3年10月1日時点) |
| 児童館の種別 | 小型児童館・児童センター等を「児童館」に統一し、広域支援機能のあるものを「大型児童館」に(令和9年4月1日施行) |
出典:第8回 児童厚生施設及び放課後児童クラブに関する専門委員会 資料4(令和8年11月2日公開)
採用の窓口が広がる一方、12月25日の準備が先に来る
大学卒で1年以上児童福祉事業に従事した人が対象に入るので、児童福祉の分野で働いてきた人を、放課後児童支援員の候補として見られるようになります。ただし施行は令和9年4月で、市町村の条例改正が前提です。
先に来るのは12月25日のこども性暴力防止法です。BCPがあるクラブは64.5%で、業務継続計画は基準上まだ努力義務です。保育所では義務化の案が出ているので、10月27日の福祉ニュース(保育所のBCP義務化案)もあわせて読むと流れがつかめます。
④秋の褒章、こども家庭庁の推薦は3名(11月3日付発令)
公表済み児童養護施設・保育園・認定こども園で長く働いてきた3名が受章します。
藍綬褒章2名・黄綬褒章1名、全員が現職
こども家庭庁は11月2日、令和8年秋の褒章の受章者名簿(11月3日付発令)を公表しました。内訳は藍綬褒章2名、黄綬褒章1名の計3名で、3名とも女性です。
| 褒章 | 功績概要 | 現職 | 都道府県 |
|---|---|---|---|
| 藍綬 | 児童福祉功績 | 児童養護施設の施設長 | 京都府 |
| 黄綬 | 業務精励(保育士) | 保育園の園長補佐 | 鳥取県 |
| 藍綬 | 児童福祉功績 | 認定こども園の園長 | 佐賀県 |
出典:こども家庭庁「令和8年秋の褒章受章者一覧について」(令和8年11月2日)
黄綬褒章は「業務精励」、現場の保育士に向けた枠
黄綬褒章の功績概要は「業務精励(保育士)」で、園長補佐として保育の現場に立っている人が対象です。施設長や園長だけでなく、現場で長く働いた保育士にも出る褒章だということは、もう少し知られてよいと思いました。
3名の勤め先は、児童養護施設・保育園・認定こども園と分かれています。社会的養護と保育の両方から選ばれている点も、名簿から読み取れます。
今日のまとめ
今日の4件は、どれも「長く働く人をどう評価するか」の話でした。退職手当共済は短期の支給を絞って長期勤続を手厚くする方向、放課後児童支援員は勤続3年・5年・10年の研修と賃金改善をつなげる案、褒章は長年の勤務そのものへの表彰です。基礎資格の拡充は、その入口を広げる側の改正です。
次に見ておきたい日程です。
- 11月3日(火・祝)……秋の褒章の発令
- 11月4日(水)16:00〜18:00……児童厚生施設及び放課後児童クラブに関する専門委員会(第8回)。YouTubeでライブ配信
- 11月5日(木)15:00〜17:00……障害福祉サービス等報酬改定検討チーム(第68回)。議題は計画相談支援・障害児相談支援・横断的事項
- 11月6日(金)11:00〜13:00……障害福祉分野における人材確保・生産性向上に関する検討会(第2回)。議題は生産性向上ガイドライン等。オンライン・YouTube配信
- 次回以降……退職手当共済の検討会「とりまとめに向けた議論②」→とりまとめ(福祉部会に報告)
- 12月25日(金)……こども性暴力防止法の施行予定
参考にした一次情報
- 第5回社会福祉施設職員等退職手当共済制度の在り方に関する検討会 資料(厚生労働省(令和8年11月2日))
- 資料1 これまでの御意見を踏まえた見直しの方向性について(PDF)(厚生労働省社会・援護局福祉基盤課(令和8年11月2日))
- 資料2 制度の基本的な在り方に関わる課題について(PDF)(厚生労働省社会・援護局福祉基盤課(令和8年11月2日))
- 参考資料1 加入期間合算制度の利用状況(PDF)/参考資料2 社会福祉法人における定年制度等の実施状況(PDF)(厚生労働省(令和8年11月2日))
- 参考資料4 今後の検討会スケジュール(PDF)(厚生労働省(令和8年11月2日))
- 児童厚生施設及び放課後児童クラブに関する専門委員会(第8回)(こども家庭庁(令和8年11月2日掲載・11月4日開催))
- 令和8年秋の褒章受章者一覧について(こども家庭庁(令和8年11月2日))
- 第68回障害福祉サービス等報酬改定検討チーム/第2回障害福祉分野における人材確保・生産性向上に関する検討会(厚生労働省)
①の退職手当共済の見直しの方向性と、②の放課後児童支援員の研修体系・処遇改善事業との連動は、検討会・専門委員会に示された案の段階です。資料にも今後の議論で変わり得ると明記されています。最終的な取り扱いは公表資料でご確認ください。


