【2026年問題】障害児育児の特異点へ。「冬」と「秋」に奇跡が起きる。
こんにちは、6人家族のパパです。 普段は介護福祉士・サービス管理責任者として働きながら、家では保育士資格を持つ父親として子育てに奮闘しています。
みなさん、「2026年問題」と聞いて何を思い浮かべますか? ニュースでは物流や人手不足の危機として報じられますが、障害児を育てる親にとっては、全く別の意味を持つ「運命の年」なんです。
- 3月:ミラノ・コルティナダンペッツォ パラリンピック(冬季)
- 10月:愛知・名古屋 アジアパラ競技大会(夏季)
この2つのビッグイベントが重なる2026年は、日本の「障害者教育」と「バリアフリー環境」が劇的に進化する特異点(シンギュラリティ)になると私は確信しています。
今回は、現場の支援者として、そして一人の親として、2026年が私たちの子供にどんな「希望」をもたらしてくれるのか、3つの視点で解説します。
2026年が「特異点」である3つの理由。東京2020が残した「忘れ物」を取り戻す時

私がこの記事で「特異点(シンギュラリティ)」という強い言葉を使ったのには、明確な根拠があります。 単にイベントが重なるからではありません。 2026年は、日本の障害福祉の歴史において、「量的変化が質的変化に転換するタイミング」だからです。
サビ管として、そして一人の親として断言します。この年を境に、日本社会の「障害」に対する解像度は劇的に上がります。その3つの根拠をお話しします。
1. 東京2020の「無観客」が残した空白を埋めるリベンジ
一つ目の理由は、「接触体験の爆発」です。
覚えていますか? 2021年に開催された東京パラリンピック。 素晴らしい大会でしたが、最大の悲劇は「無観客」だったこと(学校連携観戦も多くが中止されました)。 本来なら、日本中の子供たちがスタジアムで車いす同士がぶつかる音を聞き、義足の跳躍に息を呑むはずでした。その「原体験」が、コロナによってごっそりと抜け落ちてしまったのです。
2026年の愛知・名古屋大会は、コロナ禍明け初となる日本開催の国際パラ競技大会です。 今回は画面越しではありません。 数千人のパラアスリートが、街を歩き、電車に乗り、レストランで食事をします。
障害者が「守られるべき存在」から「圧倒的なパフォーマンスを見せる存在」へ。 東京2020で果たせなかった「リアルな衝撃」が、5年遅れで子供たちの網膜に焼き付けられる。 この遅れてきた衝撃こそが、次世代の価値観を不可逆的に変えるトリガーになります。
2. 名古屋城木造復元問題が突きつける「踏み絵」
二つ目は、愛知で起きている象徴的な事象です。 「名古屋城木造復元におけるエレベーター設置問題」です。
これは単なる建築の話ではありません。日本社会に対する「踏み絵」です。 「伝統(史実)」と「人権(バリアフリー)」、どちらを優先するのか。 2026年の大会開催までに、私たちはこの問いに何らかの答えを出さなければなりません。
これまでの日本なら「予算がない」「技術的に無理」とお茶を濁して先送りにしてきたでしょう。 しかし、アジア中から障害のあるお客様を迎える2026年という期限がある以上、逃げることは許されません。
この議論を通じて、多くの市民が「障害者の移動の権利」について真剣に考えざるを得なくなる。 「障害者がそこにいることを前提とした社会設計」へと、強制的に意識がアップデートされる瞬間。それが2026年です。
3. 「ミラノの風」と「名古屋の熱」が起こす化学反応
三つ目は、3月のミラノ(冬)と10月の名古屋(夏)がセットであることの意味です。
イタリアを含めた欧州のバリアフリー観は、日本とは対照的です。 段差があっても、壊れたエレベーターがあっても、周囲の人が当たり前のように車いすを担ぎ上げます。 「ハード(設備)がダメなら、ハート(人)でカバーすればいい」という精神的バリアフリーの先進国です。
2026年3月、私たちはその光景をミラノ・パラリンピックで見ることになります。 そして半年後の10月、名古屋で自分たちが試されます。
「日本のトイレは世界一きれいだけど、誰も声をかけてくれないね」 そんな皮肉な評価で終わるのか、それとも「日本も変わったね」と言わせるのか。
欧州流の「心のバリアフリー」という外圧と、開催国としての責任という内圧。 この2つの圧力が同時にかかる2026年は、日本の閉鎖的な空気を打ち破る最大のチャンスなのです。
だからこそ、私は2026年を「特異点」と呼びます。 私たちの子供が生きる未来は、この1年で決まると言っても過言ではありません。 ただ見守るのではなく、この歴史的な転換点を、親として、当事者家族として、最前線で目撃しようではありませんか。
2026年は「冬」と「秋」に奇跡が起きる。親子で追いかける1年間のロードマップ

世界最高峰の戦いが「半年間のリレー形式」で見られる2026年。 この1年を単なるスポーツ観戦で終わらせないために、保育士とサビ管の視点で「子供の心を揺さぶるポイント」を絞り込みました。
3月:ミラノ・コルティナダンペッツォ パラリンピック(冬季)
開催期間:2026年3月6日(金)~3月15日(日)
まず春先に訪れる冬のパラリンピック。 ここでは「映像のインパクト」と「物語」で子供の心を掴みます。
ここに注目!:「かわいそう」を「かっこいい」に変えるオコジョの『ミロ』
私が保育士として、真っ先に子供に見せたいのが、大会公式マスコットの「ミロ(Milo)」です。
雪山に住むオコジョの男の子なんですが、彼には**「生まれつき片足がない」**という設定があります。 でも、彼は決して悲劇のヒーローではありません。しっぽをバネにして、誰よりも高く飛び、雪山を駆け回ります。
子供に障害のことを話す時、言葉だけでは難しいですよね。そんな時、ミロを見せてあげてください。 「足がないから可哀想」ではなく、「工夫すれば、誰よりも自由になれる」。 そんなパラリンピックの精神が、可愛いキャラクターを通して、すっと子供の心に入ってきます。これは最高の情操教育です。
そして、推したいのが「メカニックのかっこよさ」です。 特にチェアスキー(座位スキー)は、もはや「車いす」ではありません。F1マシンのような金属フレーム、雪煙を上げて時速100kmで滑降する姿。 「なにこれ、ロボットみたい!」 男の子なら間違いなく食いつきます。冬は、その「視覚的な衝撃」をリビングで共有してください。
10月:愛知・名古屋 アジアパラ競技大会(夏季)
開催期間:2026年10月18日(日)~10月24日(土)
そして秋。舞台は私たちの地元、日本へと移ります。 ここで重要なのは、マスコットではありません。「五感で感じるリアル」です。
ここに注目!:テレビでは聞こえない「音」を聞きに行く
アジアパラ競技大会の最大の価値は、「そこに行ける」ことです。 私がなぜ、わざわざ会場へ行くことを強く勧めるのか。それはテレビでは絶対に伝わらない「音」があるからです。
例えば「車いすラグビー」。 テレビ越しだと「ガシャン」という軽い音に聞こえますが、現場で聞く金属音は、内臓に響くような「ドォォォン!!」という爆音です。タイヤが焦げる匂いすら漂ってきます。 あるいは「ゴールボール」。 鈴の音を聞くために、数千人の観客が静まり返り、選手の一挙手一投足に集中するあの静寂。
「障害のある人は守られる存在」 そんな先入観は、あのアスリートたちの圧倒的な「強さ」と「激しさ」を目の当たりにすれば、一瞬で吹き飛びます。
秋の行楽シーズン、ぜひお子さんを連れて会場へ行ってください。 「パパ、すごい音がしたね!」 その一言が聞ければ、この旅は大成功です。チケットを買って、世界が変わる瞬間を目撃しに行きましょう。
可能性が変わる:重度障害でも輝ける「ボッチャ」という希望

「うちは寝たきりだから、スポーツなんて無理」 「意思疎通が難しいから、ルールのある遊びはできない」
もしそう思っているなら、2026年のアジアパラ競技大会で、ある競技を絶対に見てほしいのです。 それが、脳性麻痺など重度の運動機能障害がある人のために生まれたパラスポーツ、ボッチャです。
私がサビ管として、そして一人の親として、なぜこれほどまでにボッチャを推すのか。 その理由は、この競技だけが持つ「残酷なほどに美しいルール」にあります。
1. 「アシスタントはコートを見てはいけない」という衝撃のルール
ボッチャには、自分でボールを投げることができない選手のための「BC3」というクラスがあります。 このクラスでは、「ランプ」と呼ばれる滑り台のような勾配具を使ってボールを転がします。
選手一人ではランプを動かせないので、「スポーツアシスタント」という介助者がつきます。 ここまでは想像がつきますよね。でも、ここからがボッチャの真髄です。
試合中、アシスタントはコートに背を向け続けなければなりません。 ボールがどこに転がったのか、敵のボールがどこにあるのか、アシスタントは一切見ることができないのです。もちろん、選手に「もう少し右だよ」なんてアドバイスすることも禁止。話すことすら許されません。
これは何を意味するのでしょうか。 それは、「全ての結果責任は、選手(子供)にある」ということです。
普段の生活で、障害のある子供たちはどうしても「受け身」になりがちです。 「お茶飲む?」「トイレ行く?」と、親や支援者が先回りしてケアをしてしまいますよね。
でも、ボッチャのコート上では違います。 「ランプを右に3ミリ動かして」 「高さはこれくらい」 「ボールをセットして」
全てを選手自身が決断し、指示しなければなりません。 たとえ失敗しても、それはアシスタントのせいではなく、自分の指示の結果。 この「ヒリヒリするような自己決定権」こそが、子供の魂を強烈に震わせるのです。
2. 「氷上のチェス」ならぬ「床上の格闘技」
ボッチャは、白いジャックボール(目標球)にいかに自分のボールを近づけるかを競うスポーツですが、その戦略性は将棋やチェスに匹敵します。
ミリ単位の精度と、何手も先を読む頭脳戦。 重度の身体障害があり、指先一本しか動かせないような選手が、世界ランカーとして君臨し、鋭い眼光で戦況を見つめる姿。 それは「リハビリ」の延長などではありません。紛れもない「トップアスリート」の姿です。
2026年、愛知・名古屋の会場(日本ガイシホールなどが予定されています)で、その静寂と熱狂を肌で感じてください。 「あの子、身体は動かないけど、頭の中ではこんなにすごい作戦を考えていたんだ」 そんな発見が、親御さんの子供を見る目さえも変えてしまうかもしれません。
3. 家にあるもので今すぐ始められる「おうちボッチャ」
2026年を待つ必要はありません。ボッチャは家でもすぐに始められます。 正式なボールセット(数万円します)がなくても大丈夫です。
リビングで、寝転がったままのお子さんの横に段ボールの滑り台を置き、ボールを転がしてみる。 「どっちが白に近いかな?」と家族で競ってみる。 それだけで、立派なボッチャ体験です。
2026年のアジアパラ競技大会では、日本代表「火ノ玉ジャパン」の活躍も期待されています。 今のうちから家族でルールを覚えて、2026年には「ほら、今のスーパーショットだよ!」と親子で盛り上がる。 そんな未来を、今から作っていきませんか?
まとめ:2026年をゴールにせず、スタートにするために
- 学校教育で「障害」の捉え方が変わる
- 街のバリアフリーが加速し、家族のお出かけが楽になる
- 重度障害があっても輝ける「選択肢」が見つかる
この変化の波に乗り遅れないために、まずは関心を持つことから始めましょう。 私のブログでは、今後もサビ管・保育士の視点で、2026年に向けた「本当に役立つ情報」を発信し続けます。
一緒に、子供たちの未来の選択肢を広げていきましょう!
参考文献・出典
- 公益財団法人愛知・名古屋アジア・アジアパラ競技大会組織委員会 公式サイト(実施競技一覧、学校連携事業)
- 観光庁「ユニバーサルツーリズムの促進」令和6年度予算概算要求など
- 日本ボッチャ協会 公式サイト


