子育てのイライラを減らすコツ|怒鳴りそうな瞬間の止め方と、イライラしにくい家のしくみ【保育士が解説】
「何回言ったらわかるの!」と大きな声を出してしまい、子どもが寝たあとに「また怒ってしまった」と落ちこむ。子育てをしていると、そんな日は誰にでもあります。
この記事では、保育士・介護福祉士として子どもと関わってきた立場から、子育てのイライラを減らすコツをまとめました。気合いや我慢で乗り切る方法ではなく、イライラが起きにくい家のしくみと、カッとなった瞬間の止め方、そして頼れる窓口まで、具体的に紹介します。
- イライラが強くなりやすい3つの理由
- イライラしやすい場面ごとの、先にできる対策
- 子どもを変えるより「しくみ」を変える4つの工夫
- カッとなった瞬間の止め方と、怒ってしまったあとのやり直し方
- 親の余裕を取り戻すために使える支援と相談先
「このままだとたたいてしまいそう」と感じるときは、まず子どもの安全を確かめて、その場を少し離れてください。そのうえで、児童相談所の相談ダイヤル「189」(24時間・通話料無料)など、話を聞いてもらえる窓口があります。育児に疲れた・限界と感じたらの記事で、止め方と窓口をくわしくまとめています。
子育てでイライラするのは、悪い親だからではありません
わが子を大切に思っていても、イライラはします。むしろ、真剣に向き合っている人ほどイライラしやすいものです。イライラが強くなりやすい理由は、大きく3つあります。

図:イライラが強くなりやすい3つの理由
余裕がない|疲れ・寝不足・時間に追われている
疲れているときや寝不足のときは、同じ出来事でもイライラを感じやすくなります。朝の出発前や夕方のごはん前など、時間に追われる時間帯にイライラが集中しやすいのもこのためです。イライラが増えてきたら、「自分の余裕が減っているサイン」と考えてみてください。
わが子だから|よその子なら流せることも許せない
よその子がお店で騒いでいても「元気だな」と思えるのに、わが子だと強く腹が立つ。これはよくあることです。わが子のことは自分のことのように感じやすいため、周りの目や「ちゃんと育てなきゃ」という気持ちが重なって、イライラが大きくなります。
できるはず|期待と実際のずれ
「これくらい言えばわかるはず」「もう5歳なんだからできるはず」。こうした期待と、子どもの実際の姿がずれたときにイライラが起きます。子どもは、わかっていても気持ちの切り替えや、待つことがまだ難しい時期にいます。期待を少し下げるだけで、イライラは減ります。
イライラは、親として失格だというしるしではありません。大切なのはイライラをゼロにすることではなく、イライラが起きにくい工夫をすることと、イライラしても子どもを傷つける行動にしないことです。
イライラしやすい場面と、先にできる対策
イライラは、毎日だいたい同じ場面で起きます。どの場面でイライラしているかがわかると、先回りして手を打てます。
| 場面 | よくあること | 先にできる対策 |
|---|---|---|
| 朝の支度 | 着替えない、遊び始める、出発に間に合わない | 服は前の晩に着る順番に重ねておく。支度の順番を絵や写真で貼る |
| 片づけ | 何度言っても片づけない | しまい方を「箱に入れるだけ」にする。おもちゃの量を減らす |
| ごはん | 食べない、立ち歩く、遊び食べ | おやつの時間と量を見直す。食べる時間を区切って、終わったら下げる |
| テレビ・ゲーム | やめられない、取り上げると泣く | 始める前に終わりの時間を約束する。タイマーを使う |
| 寝かしつけ | なかなか寝ない、何度も起きてくる | 寝る前の流れ(お風呂→歯みがき→絵本)を毎日同じ順番にする |
| きょうだいげんか | 取り合い、たたき合い | 取り合いになりやすいおもちゃは順番をタイマーで決める。空腹の時間帯は別々に遊ばせる |
いつ、どこで、何がきっかけでイライラしたかを、3日ほどスマホにメモしてみてください。「夕方6時台に集中している」「空腹のときが多い」など、自分のパターンが見えてきます。パターンがわかれば、その時間だけ家事を減らすなどの対策が立てやすくなります。
子どもを変えるより、しくみを変える
イライラがたまると、つい子どもの性格や行動を変えようとしてしまいます。でも、子どもに「がんばらせる」のは、親にとっても子どもにとってもエネルギーがいります。それより、子どもが自然に動きやすいしくみを作るほうがラクです。保育の現場でもよく使われる工夫を4つ紹介します。

図:子どもを変えるより、しくみを変える
2つから選ばせる|「着替えなさい」より「どっちを着る?」
「着替えなさい」と言うと、「着替える・着替えない」の言い合いになりがちです。「青いシャツと赤いシャツ、どっちを着る?」と聞くと、着替えることは前提のまま、子どもは自分で選んだという気持ちになれます。選択肢は2つまでにすると選びやすくなります。
時間を見せる|「早くして」より「タイマーが鳴ったらおしまい」
小さな子どもにとって「あと5分」は、どれくらいなのかがわかりにくいものです。キッチンタイマーや、残り時間が色で減っていくタイマーを使うと、目で見て終わりがわかります。「この曲が終わるまでにくつ下をはこう」のように、歌を使うのもおすすめです。
片づけは1回の動作で|「箱にポイ」でOKにする
「ふたを開けて、分けて、並べて、棚に戻す」は、子どもには工程が多すぎます。ふたのない大きな箱に入れるだけでよしとすると、片づけのハードルが一気に下がります。箱に中身の写真を貼っておくと、どこに戻すかもわかりやすくなります。
前もって伝える|急に「おしまい」と言わない
楽しい遊びを急に止められると、大人でも嫌なものです。「あと2回すべったら帰ろうね」「長い針が6になったらおしまい」と、終わりを前もって伝えておくと、切り替えがスムーズになります。
「子どもに〇〇させる」ではなく、「子どもが〇〇しやすい形にする」と考えると、注意する回数そのものが減ります。注意する回数が減れば、イライラする回数も減ります。
発達がゆっくりな子や、特性のある子への伝え方は、発達障害の子どもとの関わり方の記事でも、言いかえの例とあわせてまとめています。
カッとなった瞬間の止め方
しくみを整えても、カッとなる瞬間はあります。そのときに子どもを傷つける行動にしないための、3つのステップです。

図:カッとなった瞬間の3ステップ
- 数える:怒りを管理する方法(アンガーマネジメント)では、カッとなった直後の数秒をやり過ごすことが大切だと言われます。心の中でゆっくり6まで数える、深く息をはく、などで最初の勢いをやり過ごします。
- 離れる:子どもの安全を確かめたうえで、トイレや別の部屋に少しだけ離れます。数分、子どもから目を離しても大丈夫な状況なら、離れることは「逃げ」ではなく、子どもを守る行動です。
- あとで話す:伝えたいことは、お互いが落ち着いてから、短く1つだけ伝えます。興奮しているときに長く叱っても、子どもには届きにくいものです。
「いま、わたしはかなり怒っている」「顔が熱くなっている」と、自分の状態を心の中で言葉にすると、少し冷静になれることがあります。「今日はもう閉店」と心の中で宣言して、家事を手放すのも1つの方法です。
2020年4月から、親による体罰は法律で禁止されています(児童虐待防止法・児童福祉法の改正)。2022年12月には民法も改正され、親の「懲戒権」の規定がなくなりました。こども家庭庁(当時は厚生労働省)の資料でも、体罰や暴言は子どもの心と体の発達に悪い影響を与え、言うことを聞かせる効果より害のほうが大きいとされています。止められそうにないときは、ひとりで抱えこまず、下の相談先を頼ってください。
怒ってしまったあとのやり直し方
どれだけ気をつけていても、怒ってしまう日はあります。大切なのは、そのあとどうするかです。
- 落ち着いたら、「さっきは大きな声を出してごめんね」と伝える
- 怒った理由は、短く1つだけ。「道路に飛び出すと危ないから、止めたかったんだよ」
- 抱きしめる、一緒に絵本を読むなど、いつもの関係に戻る時間をつくる
親が素直にあやまる姿は、子どもにとって「失敗してもやり直せる」「まちがえたらあやまればいい」ということを学ぶ機会になります。怒ってしまったことより、やり直せたことに目を向けてください。
ふだんの関係づくりについては、子どもとの信頼関係を築く5つの習慣の記事でまとめています。
親の余裕を取り戻す|60点で十分です
飛行機の非常時の案内では、「まず大人が酸素マスクをつけてから、子どもにつけてください」と説明されます。子育ても同じで、親に余裕がないと、どんな工夫も続きません。
家事のハードルを下げる
- 総菜や冷凍食品、レトルトの日があってもいい
- 洗濯物はたたまず、かごから着てもいい
- 部屋が多少散らかっていても、子どもは困らない
1日10分、自分のための時間をつくる
子どもが起きる前の10分にコーヒーを飲む、好きな音楽を聞きながら家事をするなど、短くてもかまいません。「自分の機嫌を自分で取る」ことは、さぼりではありません。家族の笑顔を守るための大切な仕事です。
預ける・頼るための支援を使う
| 一時預かり | 保育園などで、理由を問わず短い時間子どもを預かってもらえる。リフレッシュ目的でも使える自治体が多い |
|---|---|
| ファミリー・サポート・センター | 地域の協力会員に、送り迎えや短時間の預かりを頼める(有料) |
| 子育て短期支援(ショートステイ) | 親の体調不良や育児疲れのときに、施設などで子どもを数日預かってもらえる |
| こども家庭センター | 2024年4月から市区町村に設置が進められている、妊娠・子育ての相談窓口。使える支援の紹介も受けられる |
使える支援や料金は自治体によって違います。お住まいの市区町村のホームページや子育て窓口で確かめてください。
イライラが止まらないときは、体と心のサインかもしれません
しくみを整えても、休んでも、イライラがおさまらない。そんなときは「気持ちの持ち方」ではなく、体や心の不調が隠れていることがあります。
| 睡眠不足 | 夜泣きや寝かしつけで眠りが細切れになると、それだけで感情のブレーキがききにくくなります。まずは昼寝や家族との交代で、まとまった睡眠を確保するのが近道です。 |
|---|---|
| 月経前の不調(PMS) | 生理の前になるとイライラや落ちこみが強くなり、始まると軽くなる。毎月くり返すなら、婦人科で相談できます。 |
| 産後うつ | 出産後のお母さんのおよそ10人に1人に起こるといわれ、お父さんにも起こることが分かっています。「産後だから仕方ない」とがまんしなくていい不調です。 |
| うつ・不安 | 気分の落ちこみ、何をしても楽しくない、眠れない・食べられないといった状態が2週間以上続くときは、心療内科や精神科、保健センターに相談してください。 |
どれも、治療や支援で軽くなるものです。「自分がだめだからイライラする」と責める前に、体と心を休ませる手立てを考えてみてください。
つらいときの相談先
| 相談先 | こんなときに |
|---|---|
| 189(いちはやく) | 児童相談所の相談ダイヤル。24時間・通話料無料。手が出そうなとき、子育てがどうしてもつらいとき |
| 親子のための相談LINE | こども家庭庁のLINE相談。子育てや親子関係の悩みを、匿名で文字で相談できる(受付時間は地域による) |
| こども家庭センター・保健センター | 子育ての相談全般。保健師などに、家庭訪問や支援の紹介をお願いできる |
| かかりつけ医・心療内科など | 眠れない、気分の落ちこみが続くなど、親自身の心と体が心配なとき |
よく聞くイライラの悩み|考え方の例
Yahoo!知恵袋やSNSでは、子育てのイライラについてこんな悩みがよく見られます。個々の投稿をそのまま載せるのではなく、よくある悩みをまとめて書き直しています。
「夫(パートナー)は怒らないのに、私ばかりが怒っている」
子どもと過ごす時間が長い人ほど、注意する場面も増えます。怒る回数の差は、性格の差というより担っている量の差であることが多いです。
- イライラしやすい時間帯(朝・夕方)だけでも、担当を分ける
- この記事の「しくみ」を家族で共有し、同じやり方で声をかける
- 週に1回でも、ひとりになれる時間を交代でつくる
「生理前や寝不足の日は、別人のようにイライラする」
体調によってイライラが強くなるのは自然なことです。イライラしやすい日がわかっているなら、その日は予定と家事を減らすと決めておくのも1つの方法です。つらさが強い場合は、婦人科や心療内科で相談できます。
「怒ったあと、子どもの寝顔を見て毎晩泣いてしまう」
それだけ子どもを大切に思っている証拠です。ただ、自分を責める日が続くと、余裕がさらに減ってしまいます。翌朝「昨日はごめんね」と伝えて、やり直すことに目を向けてください。落ちこみが2週間以上続く、眠れないなどのときは、早めに相談先を頼りましょう。
よくある質問
Q. 子どもにイライラしてしまうのは、愛情が足りないからですか?
いいえ。イライラは、疲れや時間のなさ、期待とのずれなどから起きるもので、愛情の量とは別の問題です。愛情があるからこそ、真剣になってイライラすることもあります。
Q. 怒鳴ってしまったら、子どもの心に傷が残りますか?
一度怒鳴ったことで、すべてが決まるわけではありません。大切なのは、落ち着いたあとにあやまり、いつもの関係に戻ることです。ただ、怒鳴る・たたくが毎日のように続く場合は、子どもへの影響が心配です。ひとりで抱えこまず相談してください。
Q. 叱らないと、わがままに育ちませんか?
「叱らない」ことと「何も伝えない」ことは違います。危ないことやいけないことは、短く、落ち着いて、行動について伝えれば十分です。大きな声や長いお説教は、かえって伝わりにくくなります。
Q. 発達の特性があるのか、子どもの反応が強くて毎日がつらいです。
切り替えが極端に苦手、かんしゃくが長く続くなど、気になる様子があれば、市区町村の保健センターや子育て窓口で相談できます。関わり方のヒントは発達障害の子どもとの関わり方の記事でもまとめています。
まとめ
- イライラは悪い親のしるしではなく、余裕がなくなっているサイン
- イライラしやすい場面を知って、先回りして対策する
- 子どもを変えるより、2択・タイマー・箱にポイ・前もって伝えるなどのしくみを変える
- カッとなったら数える・離れる・あとで話す。怒ってしまったら「ごめんね」でやり直す
- 親の余裕を取り戻すために、預ける・頼る支援と相談先を使う
完璧な親を目指す必要はありません。60点の日が続けば十分です。部屋が散らかっていても、夕ごはんがレトルトでも、最後に子どもと笑い合えれば、その日は合格です。
- こども家庭庁「体罰等によらない子育てのために」
- こども家庭庁「児童相談所虐待対応ダイヤル「189」」「親子のための相談LINE」
- 法務省「民法等の一部を改正する法律(懲戒権に関する規定の見直し)」
- こども家庭庁「こども家庭センター」「子育て短期支援事業」「一時預かり事業」


