【サビ管解説】生活介護の仕事内容と給料は?支援員時代の体験談とリアル
突然ですが、あなたは「生活介護」という仕事にどんなイメージを持っていますか?
「高齢者のデイサービスみたいなもの?」 「障害のある方のお世話をする仕事?」 「なんとなく大変そう…」
正直、業界の外からだとイメージしにくいですよね。 でも、断言させてください。生活介護は、単なる「お世話」ではありません。
実は私、かつて生活介護の支援員として、障害支援区分6(最重度)の方々がメインの施設で働いていました。 そこは、他の施設では「対応できない」と断られてしまったような、重い障害や行動障害を持つ方を受け入れる、まさに「最後の砦」のような場所でした。
正直、壮絶でした。でも、そこでの経験があったからこそ、介護福祉士、そしてサービス管理責任者としての「今の私」があります。
今回は、そんな私の実体験とリサーチに基づき、生活介護の仕事内容、給料、向いている人まで、初心者の方にも分かりやすく、かつディープに解説していきます。 これから福祉業界を目指す方、転職を考えている方、必見です!
1. そもそも「生活介護」ってなに?

まずは基本のキから。 生活介護とは、障害者総合支援法に基づく「日中活動系サービス」の一つです。
簡単に言うと、「障害のある方が、昼間の時間を過ごす場所」です。 高齢者介護でいう「デイサービス」に近いイメージですが、対象者や目的が少し違います。
対象となる人は?
主に、常に介護が必要な方々です。
- 障害支援区分3以上(50歳以上は区分2以上)の方
- 身体障害、知的障害、精神障害など、様々な障害を持つ方
特に私がいた施設のように、「区分5」や「区分6」といった最重度の方を専門に受け入れている事業所もあります。こういった場所では、食事やトイレの介助だけでなく、医療的ケアや専門的な行動支援が必要になります。
何をする場所?
法律上の定義では、以下のような支援を行います。
これらを通して、利用者さんが「自分らしく、地域で暮らすこと」を支えるのが生活介護の役割です。
2. 現場のリアル!生活介護の仕事内容

「実際、どんな一日を過ごすの?」 ここが一番気になるところですよね。一般的な流れと、私が経験した「重度支援」の現場の違いを交えてお話しします。
一般的な生活介護の一日(例)
| 時 間 | 活動内容 |
|---|---|
| 8:30 | 出勤・ミーティング |
| 9:00 | 送迎開始・受け入れ |
| 10:00 | バイタルチェック朝の会・水分補給 |
| 10:30 | 入浴介助または創作活動 |
| 12:00 | 昼食(食事介助)口腔ケア |
| 13:00 | 休憩・リラックス |
| 14:00 | レクリエーションリハビリ・散歩 |
| 15:00 | おやつ・水分補給 |
| 15:30 | 帰りの準備・排泄介助 |
| 16:00 | 送迎開始 |
| 17:00 | 記録作成・清掃 |
| 17:30 | 退勤 |
これだけ見ると「楽しそう!」と思うかもしれません。もちろん楽しい瞬間もたくさんあります。 しかし、私がいた「区分6メイン・ショートステイ併設」の現場は、もう少し「命」や「人生」に向き合う場面が多かったです。
「生活介護の仕事=お世話」と思っていませんか? もちろん介助は大切な業務ですが、プロの支援員が見ている景色は少し違います。
私が働いていた「区分6(最重度)の方がメインの施設」での経験をベースに、具体的な仕事内容と、現場で差がつく「プロのアドバイス」をセットで解説します。
これから働く方、必見です。
① 身体介助(食事・入浴・排泄)
生活の基盤となる、最も重要なケアです。しかし、ただ「洗う」「食べさせる」だけが仕事ではありません。
| 業務内容 | 詳細 |
|---|---|
| 食事介助 | 嚥下機能(飲み込む力)に合わせて、ペースト食や刻み食を提供し、誤嚥(ごえん)しないよう介助します。 |
| 入浴介助 | 脱衣、洗身、洗髪、入浴、着衣の一連の流れを支援します。リフト浴などの機械浴を使うこともあります。 |
| 排泄介助 | トイレ誘導、オムツ交換、ポータブルトイレの処理などを行います。 |
💡 【アドバイス】身体介助は「観察のゴールデンタイム」だ!
身体介助の時間は、利用者さんと1対1になれる貴重な時間です。ここでプロは以下のことをチェックしています。
「作業」としてこなすのではなく、「観察」として向き合う。 これができると支援の質がグッと上がります。
② 日中活動支援(創作・生産・レクリエーション)
「昼間の時間をどう豊かに過ごすか」をデザインする仕事です。
| 業務内容 | 詳細 |
|---|---|
| 創作活動 | 絵画、手芸、書道など。個性を表現する場を作ります。 |
| 生産活動 | 軽作業(部品組み立てなど)や農作業など、工賃が発生する作業を行う場合もあります。 |
| 機能訓練 | 理学療法士などと連携し、歩行訓練や関節可動域の維持など、リハビリを行います。 |
| 余暇活動 | 散歩、音楽鑑賞、スヌーズレン(光や音を楽しむ感覚刺激活動)など。 |
💡 【アドバイス】「暇つぶし」にするな!「選択」を作れ!
重度の障害がある方の場合、どうしても受け身になりがちです。しかし、ただテレビを見せたり、一方的に遊ばせたりするのは「支援」ではありません。
「今日の活動で、利用者さんは一度でも笑ったか? 自分で選んだか?」 常にこれを自問自答してください。QOL(生活の質)を高めるのが私たちのミッションです。
③ 送迎業務
自宅と施設の間を車で送迎します。運転手と添乗員(見守り役)のペアで行うことが多いです。
| 業務内容 | 詳細 |
|---|---|
| 運転・添乗 | 安全運転はもちろん、車内での利用者さんの見守り、乗降介助を行います。 |
| 家族連携 | 送り迎えの際、ご家族とその日の様子や連絡事項を伝え合います。 |
💡 【アドバイス】車内は「密室のコミュニケーション室」
また、ご家族との数分の会話は超重要です。「家での様子」を聞き出すことで、翌日の支援のヒントが得られます。挨拶だけで終わらせず、一言二言会話を交わすスキルが求められます。
④ 事務・記録・計画作成
「現場だけやっていたい」という方もいるかもしれませんが、記録は避けて通れません。
| 業務内容 | 詳細 |
|---|---|
| ケース記録 | その日の利用者さんの様子(食事量、排泄、活動の様子、バイタル)を記録システムに入力します。 |
| ヒヤリハット | 事故になりそうだった事例を報告書にまとめ、再発防止策を練ります。 |
| 会議 | ケース会議や職員会議で、支援方針を話し合います。 |
💡 【アドバイス】記録は「利用者さんを守る武器」になる
「記録なんて面倒くさい」と思いますよね? 私も最初はそうでした。 でも、何か事故やトラブルがあった時、自分たちと利用者さんを守ってくれるのは「正しい記録」だけです。
また、私がサビ管として個別支援計画を作る際、現場スタッフが書いた「日々の記録」が何よりの材料になります。
こうした現場の気づき(記録)の積み重ねが、より良い支援計画を生み出します。あなたの書く一行が、利用者さんの未来を変えるかもしれないのです。
私が経験した「施設」のリアル
私が担当していたのは、他では受け入れ困難とされた重度の方々でした。 そこでの仕事は、単なるケアを超えた「プロフェッショナルな支援」でした。
大変ですか?はい、体力的にも精神的にもハードです。 でも、「どこの施設もダメだったけど、ここに来てから息子が笑うようになった」とご家族に言われた時の感動は、何物にも代えがたいものでした。
3. 【初心者必見】1年目の給料はいくら?手取りのリアルと昇給ロードマップ

「平均32万円」というのは、あくまでベテランも含めた数字です。 では、未経験からスタートした「1年目」の現実はどうなのでしょうか?
これから業界に飛び込むあなたのために、耳障りの良い話だけでなく、少し厳しい「手取りの現実」もお伝えします。
未経験1年目の月収は「約25万〜29万円」が目安
厚生労働省のデータや求人相場を分析すると、1年目の給与相場はこのあたりになります。
| 働き方 | 月収目安(額面) | 手取りイメージ |
|---|---|---|
| 夜勤あり(ショート併設等) | 約27万〜29万円 | 約22万〜24万円 |
| 日勤のみ(生活介護単独) | 約25万〜27万円 | 約20万〜22万円 |
※出典:厚生労働省「令和5年度障害福祉サービス等従事者処遇状況等調査結果」勤続年数別データ等を基に、令和6年度のベースアップ分を加味して推計。
正直に言います。初任給は決して高くありません。 特に日勤のみの場合、手取りが20万円そこそこになることも珍しくありません。「最初からガッツリ稼げる」と思って入ると、痛い目を見ます。
【助言】最初は「勉強代」と思って割り切る
私も最初は、決して高い給料ではありませんでした。 でも、生活介護の現場で学べる「対人支援スキル」や「行動分析の知識」は、お金を払ってでも学ぶ価値がある専門技術です。
最初の数年は「お給料をもらいながら、一生食いっぱぐれない専門スキルを学ばせてもらっている」。 そう割り切って経験を積み、資格という武器を手に入れた瞬間、あなたの市場価値(=給料)は一気に跳ね上がります。
目先の数万円に一喜一憂せず、「3年後の自分」を見据えてキャリアを選んでください。以前よりも給与水準は上がっています。特に、私がいたような重度者対応の施設では、加算が多くつくため、比較的給与が高い傾向にあります。
ですが、私の経験上、年齢が上がるにつれ給与は増えません。
年齢が高いと役職に就き、給与も上がるのです。逆に言うと役職に就かなければ給与はほぼ横ばいで上がる可能性は少ないです。これはほぼ全ての施設に言えることだと思います。
キャリアアップで年収アップ!「サビ管」の道
現場で経験を積み、実務者研修や介護福祉士などの資格を取った後に目指せるのが、「サービス管理責任者(サビ管)」です。
サビ管は、利用者さんの支援計画(個別支援計画)を作成し、スタッフをまとめるリーダー的存在です。責任は重くなりますが、その分給料も上がりますし、デスクワークの比重も増えます。 私もサビ管の資格を持っていますが、現場を知っているサビ管ほど強いものはありません。

4. 【元支援員の本音】生活介護に向いている人・向いていない人の決定的な違い

「お年寄りと話すのが好きだから、介護に向いているかな?」 「優しい性格だねって言われるから大丈夫かな?」
面接でよく聞く志望動機ですが、正直に言います。生活介護、特に私がいたような重度の障害を持つ方が多い現場では、一般的な「優しさ」だけでは心が折れてしまうことがあります。
逆に言えば、「口下手だけど観察するのが好き」といった、一見介護とは無縁そうな人が、現場のエースとして活躍することも珍しくありません。
元支援員の視点で分析した、「生活介護の本当の適性」を深掘りします。
あなたはいくつ当てはまる?「資質」チェックリスト
まずは直感で答えてみてください。
3つ以上当てはまった方、あなたは生活介護の「才能」があります。 なぜこれが必要なのか? 理由を解説します。
【適性①】「名探偵」のような観察力と分析力がある人
生活介護、特に重度の方への支援で最も重要なのは、「言葉以外のサイン」を読み取る力です。
私が担当していた区分6の方々は、言葉で「痛い」「トイレに行きたい」と伝えることが難しい方がほとんどでした。 ではどうするか? 私たちは名探偵になります。
このように、「行動」の裏にある「理由(背景)」を推測し、環境を整える。これが強度行動障害支援の基本である「構造化」や「応用行動分析(ABA)」の考え方です。 「なぜ?」を論理的に突き詰められる人は、感情的に怒ったり焦ったりすることが少ないため、利用者さんにとって最高の支援者になれます。
【適性②】「微細な変化」に喜びを感じられる人
この仕事は、営業職のように「今月〇〇万円売り上げた!」という派手な成果は見えにくいです。 しかし、「ミクロな変化」は毎日起きています。
この数ミリの成長を、「なんだ、それだけ?」と思わず、「うわっ!すごい!やったぞ!!」と心から感動できる感性を持っている人。 こういう人は、支援員として長く幸せに働き続けられますし、その熱量は必ず利用者さんに伝わります。
【適性③】「待つ」という支援ができる胆力
子育てや教育にも通じますが、「待つこと」は実は「手伝うこと」よりも遥かに難しいです。
着替えの際、パパッとボタンを留めてあげるのは簡単です。時間もかかりません。 しかし、利用者さんが自分でやろうとしているなら、たとえ5分かかっても、手を出さずにじっと見守る。 この「忍耐力」こそが、相手の自立を奪わないための最大の支援です。
自分のペースや効率を優先せず、相手の時間の流れに身を委ねられる「胆力」がある人は、非常に重宝されます。
正直、ここが「壁」になるかも(向いていない人の特徴)
逆に、以下のようなタイプの方は、特に重度対応の現場ではミスマッチを起こしやすいです。
【結論】「オタク気質」な人こそ、輝ける世界
ここまで読んで、「自分は根っからの聖人君子じゃないしな…」と思ったあなた。大丈夫です。 むしろ、何かに没頭できる「オタク気質」な人や、物事を深く考える「理系脳」な人の方が、私がいたような専門性の高い現場では活躍していたりします。
「人の心と行動の謎を解き明かす、終わりのない旅」 そう捉えられる人にとって、生活介護はこれ以上なく知的で、刺激的なフィールドです。
5. まとめ:生活介護は「人生を支える」クリエイティブな仕事
生活介護の仕事について、少しイメージが湧きましたか?
私が経験した「最重度の方々を受け入れる施設」での日々は、決して楽なものではありませんでした。 しかし、「誰も受け入れてくれなかった人を受け入れ、その人の人生を肯定する」という経験は、私自身の人生観を大きく変えてくれました。
もしあなたが、 「人の役に立ちたい」 「誰かの人生に深く関わる仕事がしたい」 「専門スキルを身につけて、食いっぱぐれない自分になりたい」
そう思っているなら、生活介護の世界はあなたを歓迎してくれます。 介護福祉士や保育士の資格を持っている方はもちろん、未経験からでもスタートできます。
この記事が、あなたの新しい一歩のきっかけになれば嬉しいです。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました!
参考文献・出典 :障害者総合支援法 厚生労働省 障害福祉サービス等報酬改定検討チーム資料、令和6年度障害福祉サービス等従事者処遇状況等調査結果を参照


