介護職に特定最低賃金は導入される?2026年の最新状況と、処遇改善加算で給料が上がるしくみ【介護福祉士が解説】
「介護職にも特定最低賃金ができたら、給料は上がるの?」「処遇改善加算が増えたと聞くけれど、自分の給料はあまり変わらない」。ニュースで賃上げの話を聞くたびに、そう感じていませんか。
この記事では、介護福祉士・サービス管理責任者として介護と障害福祉の現場に関わってきた立場から、介護職の「特定最低賃金」の最新の状況と、実際に給料を動かしている「処遇改善加算」のしくみを、2026年の制度改正にあわせてまとめました。
- 「特定最低賃金」と「地域別最低賃金」の違い
- 介護職の特定最低賃金は、いまどうなっているか
- 介護職と全産業平均の給料の差(最新データ)
- 2026年6月の臨時改定で変わった処遇改善加算
- 自分の職場で、加算がきちんと給料に回っているかの確かめ方
- この記事を更新した2026年10月の時点で、介護職を対象にした特定最低賃金は設けられていません。国は2025年3月に「検討する」と表明しましたが、具体的な金額や時期は決まっていません。
- 介護職の給料を実際に引き上げているのは、介護報酬の「処遇改善加算」です。2026年6月の臨時改定で、介護職員は最大で月1.9万円の賃上げを目指す内容になりました。
- ただし加算をどう配るかは事業所ごとに違うため、同じ仕事でも職場によって給料に差が出ます。
「特定最低賃金」とは?地域別最低賃金との違い
最低賃金には、2つの種類があります。

図:地域別最低賃金と特定最低賃金
| 地域別最低賃金 | 特定最低賃金 | |
|---|---|---|
| 対象 | その都道府県で働くすべての人 | 決められた産業で働く人 |
| 決まり方 | 毎年、国の目安をもとに都道府県ごとに決まる | その産業の労働者や使用者の申出を受けて、最低賃金審議会で話し合って決まる |
| 金額 | 2026年度は全国加重平均で時給1,177円(前年度から56円アップ) | 地域別最低賃金より高い金額にする |
| 例 | 「○○県 時給○○円」 | 「○○県 鉄鋼業」「○○県 自動車小売業」など |
特定最低賃金は、2025年3月末の時点で全国に224件あります(厚生労働省)。ただし、その多くは製造業や小売業などで、介護の分野にはまだありません。
特定最低賃金で知っておきたい3つのポイント
その産業の「中心になる仕事」をする人が対象
特定最低賃金は、その産業で働く全員ではなく、主な業務につく「基幹的労働者」に適用されます。多くの特定最低賃金では、18歳未満や65歳以上の人、入って間もない見習い期間の人、清掃などの補助的な仕事の人は対象外とされています。
高いほうが適用される。逆転すると意味がなくなる
地域別最低賃金と特定最低賃金の両方が当てはまる人には、金額の高いほうが適用されます。地域別最低賃金は毎年上がりますが、特定最低賃金は申出がなければ見直されません。そのため、地域別最低賃金に追い抜かれて、実質的に意味がなくなっている特定最低賃金もあります。
はじまりは「労使の申出」
特定最低賃金は、国が一方的に決めるものではありません。その産業の労働者の代表(労働組合など)や使用者からの申出があって、はじめて審議がはじまります。介護の職場は労働組合のない事業所が多く、誰が申し出て、誰と話し合うのかが課題の1つといわれています。なお、医療・介護の労働組合(日本医療労働組合連合会)は、医療・介護で働く人の全国一律の特定最低賃金をつくるよう求める活動をしています。
なお、2026年度の地域別最低賃金は、都道府県ごとに2026年10月1日から順次新しい金額に変わっています。パートや非常勤で働いている方は、自分の時給が新しい最低賃金を下回っていないか、一度確かめておきましょう。
介護職の特定最低賃金は、いまどうなっている?
介護職への特定最低賃金は、2025年3月に国会で取り上げられ、当時の厚生労働大臣が「どういう対応ができるか検討を進める」と表明したことで注目されました。
その後も議論は続いていますが、介護職の特定最低賃金の金額や始まる時期は決まっていません。新しい情報が出たら、この記事でもお知らせします。
介護ならではの難しさ|給料の元は「公定価格」
介護の分野で特定最低賃金がすぐに決まらない理由の1つが、介護事業所の収入(介護報酬)は国が決める公定価格だということです。
- 一般の会社は、人件費が上がれば商品の値段を上げられます。
- 介護事業所は、利用料を自由に上げることができません。
- そのため、最低賃金だけを先に上げても、介護報酬が上がらなければ経営が苦しくなり、かえって人を減らすことにつながるおそれがあります。
実際に、東京商工リサーチの調べでは、2024年に倒産した介護事業者は172件で過去最多となり、その約半数が訪問介護でした。報酬が上がらないまま人件費だけが上がると、特に小さな事業所ほど続けるのが難しくなります。
もし導入されたら、給料はどう変わる?
特定最低賃金は「これより下げてはいけない」という下限です。影響の受け方は、今の時給によって変わります。
| 今の給料 | 考えられる影響 |
|---|---|
| 最低賃金に近い時給のパート・非常勤 | 新しい下限まで時給が引き上げられるので、いちばん効果を感じやすい |
| 下限よりかなり高い常勤 | 直接は変わらない。ただし、新人や非常勤の時給が上がると、全体の給料表を見直すきっかけになることがある |
たとえば、時給が50円上がった場合、月160時間働く人なら月8,000円、年間で約9.6万円の差になります(計算の例です)。
こうした事情から、国は介護職の賃上げを、主に介護報酬の「処遇改善加算」を引き上げる方法で進めています。
介護職の給料は、全産業平均とどれくらい差がある?
厚生労働省の「賃金構造基本統計調査」をもとにした最新の数字(2026年4月公表)では、次のようになっています。
| 2024年 | 2025年 | |
|---|---|---|
| 介護職員 | 30.3万円 | 31.4万円 |
| 全産業平均(役職者をのぞく) | 38.6万円 | 39.6万円 |
| 差 | 8.3万円 | 8.2万円 |
※賞与をふくめた1か月あたりの給与。出典:厚生労働省「賃金構造基本統計調査による介護職員の賃金について」
介護職員の給料は1年で約1.1万円上がりましたが、全産業平均も上がっているため、差は月8万円あまりでほとんど縮まっていません。物価や他の産業の賃上げに追いつけていないことが、国が2026年度に「臨時の改定」をした理由の1つです。
また、処遇改善加算をとっている事業所を対象にした「介護従事者処遇状況等調査」(2024年度)では、介護職員の平均給与額は前年より1万3,960円(4.3%)増えています。ただしこの調査は加算をとっている事業所だけが対象なので、業界全体がこれだけ上がったとはいえません。
給料の差が、人手不足につながっている
- 介護職員の数は、2023年度にはじめて前の年より減りました(約212万人)。
- 国の見通しでは、介護職員は2026年度に約240万人、2040年度に約272万人必要です。2022年度(約215万人)からふえなければ、2040年度には約57万人足りなくなる計算です。
給料の差が縮まらないと、他の仕事に人が流れ、人手不足がさらに進みます。だからこそ、国は3年に1度の改定を待たずに賃上げを急いでいます。
介護職の給料を上げるしくみ「処遇改善加算」とは
処遇改善加算は、職員の給料を上げることを条件に、事業所の介護報酬に上乗せされるお金です。
- 事業所は、毎年「処遇改善計画書」を自治体に出し、加算でもらった額以上を、職員の賃金改善にあてる必要があります。
- 使い終わったら「実績報告書」を出し、本当に賃金改善にあてたかを報告します。
- キャリアパス(役職や資格に応じた給料のしくみ)や、働きやすい職場づくりの取り組みなど、上の区分ほど条件が多く、もらえる額も多くなります。
以前は「処遇改善加算」「特定処遇改善加算」「ベースアップ等支援加算」の3つに分かれていました。2024年6月からは「介護職員等処遇改善加算」(障害福祉では「福祉・介護職員等処遇改善加算」)の1つにまとめられ、区分はⅠ〜Ⅳになっています。古い名前で説明している記事や求人もあるので、注意しましょう。
介護職の処遇改善のあゆみ
| 時期 | 主なできごと |
|---|---|
| 2009年 | 介護職員処遇改善交付金がはじまる |
| 2012年 | 交付金が介護報酬の「処遇改善加算」になる |
| 2019年10月 | 経験・技能のある職員を評価する「特定処遇改善加算」ができる |
| 2022年10月 | 基本給などを上げるための「ベースアップ等支援加算」ができる |
| 2024年6月 | 3つの加算が「介護職員等処遇改善加算」に一本化 |
| 2026年6月 | 臨時改定。対象が介護従事者全体に広がり、上乗せの区分ができる |
2026年6月の臨時改定で、何が変わった?
介護報酬は、ふだんは3年に1度見直されます。次の改定は2027年度ですが、物価や賃金の上昇に対応するため、2026年6月に臨時の改定が行われました。

図:2026年6月の臨時改定(介護)
対象が「介護職員」から「介護従事者」へ
これまでの処遇改善加算は、主に介護職員の給料のためのものでした。2026年6月からは、事務職員・調理員・看護職員・ケアマネジャーなど、事業所で働く幅広い職種が対象になりました。全体で月1.0万円(3.3%)の賃上げを目指します。
生産性向上に取り組む事業所には上乗せ
介護ロボットやICT(記録のタブレット化など)の活用、ほかの事業所との協働化などに取り組む事業所の介護職員には、さらに月0.7万円(2.4%)が上乗せされます。そのための上位の区分が新しくつくられました。
介護職員は最大で月1.9万円の賃上げ
上の2つと定期昇給(0.2万円)を合わせて、介護職員は最大で月1.9万円(6.3%)の賃上げになるように設計されています。
訪問看護や居宅介護支援にも加算ができた
これまで処遇改善加算がなかった訪問看護・訪問リハビリテーション・居宅介護支援(ケアマネ事業所)などにも、新しく加算が設けられました。
障害福祉サービスでも2026年6月に臨時改定があり、障害福祉従事者全体に月1.0万円、生産性向上に取り組む事業所の福祉・介護職員に月0.3万円の上乗せで、福祉・介護職員は最大で月1.9万円(定期昇給0.6万円をふくむ)の賃上げを目指す内容です。相談支援の事業所にも、新しく加算ができました。
※「最大」は上位の区分をとった場合の国の想定です。実際の金額は、事業所がとる加算の区分や配り方によって変わります。
加算が増えても、給料が上がらないのはなぜ?
国が加算を増やしても、「自分の給料はあまり変わらない」と感じる人は少なくありません。主な理由は次の3つです。
事業所が上の区分をとっていない
加算には区分があり、条件を満たせない事業所は低い区分しかとれません。2026年の上乗せも、生産性向上などに取り組む事業所だけが対象です。
配り方は事業所ごとに違う
加算でもらった額は、全額を職員の賃金改善にあてるルールです。ただし、誰にどれだけ配るか(経験の長い介護福祉士に多めに、など)や、毎月の手当にするか賞与にするかは、ルールの範囲で事業所が決めます。
基本給ではなく、一時金で払われている
年に1〜2回の一時金で払われていると、毎月の給料が上がった実感はもちにくくなります。2024年の一本化で、加算の一部は毎月の給料(基本給や毎月の手当)で払うことが求められるようになりました。
自分の職場で、加算が給料に回っているか確かめる方法
加算がきちんと給料に回っているかは、次のポイントで確かめられます。

図:加算が給料に回っているか 4つの確かめ方
| 確かめること | 見るところ・聞き方 |
|---|---|
| どの区分をとっているか | 事業所の重要事項説明書や、自治体に出している届出で確かめられます。「うちは処遇改善加算のⅠですか?」と聞いてみましょう |
| 給与明細のどこに入っているか | 「処遇改善手当」などの名前で毎月入っているか、基本給にふくまれているか、賞与で払われているかを確認します |
| 賃金改善の内容が知らされているか | 加算をとる事業所は、賃金改善の内容を職員に知らせることが求められています。説明がない場合は、上司や事務担当に聞いてかまいません |
| 2026年6月以降に上がったか | 臨時改定のあと、手当や基本給が変わったか、5月と6月以降の明細を見くらべてみましょう |
説明を求めても答えてもらえない、加算をとっているはずなのに賃金改善がまったく見えない、という場合は、事業所を指定している都道府県や市区町村の介護保険の担当課に相談する方法もあります。給料の未払いなど労働条件の問題は、労働基準監督署の相談窓口に相談できます。
処遇改善計画書のしくみは、処遇改善計画書の書き方の記事でくわしく説明しています。
給料を上げたいときに考えたい3つの方法
加算のしくみがわかると、介護職が給料を上げる方法も見えてきます。
資格をとる・役割を広げる
多くの事業所では、介護福祉士の資格や、リーダーなどの役割に応じて手当が決まっています。キャリアパスのしくみがある職場なら、何をすれば給料が上がるのかを上司に確かめておきましょう。
今の職場で、加算の配り方を確かめる
上の確かめ方で、職場の加算の区分と配り方を知るだけでも、「自分の給料が低いのか、そもそも職場の区分が低いのか」がわかります。
上の区分をとっている職場を選ぶ
転職を考えるなら、求人票の基本給だけでなく、処遇改善加算の区分と、どう配っているかを面接で確かめましょう。障害福祉の分野に移ると給料や働き方がどう変わるかは、高齢から障害福祉への転職の記事でまとめています。
よくある質問
特定最低賃金ができたら、介護職の給料は上がりますか?
今の最低賃金に近い時給で働いている方は、上がる可能性があります。ただし、特定最低賃金は「これより下げてはいけない」という下限なので、すでにそれより高い給料の人は、直接は変わりません。また、介護報酬が上がらなければ事業所の経営が苦しくなるため、処遇改善加算などとセットで考える必要があります。
処遇改善加算は、パートや非常勤ももらえますか?
もらえます。加算は常勤だけのものではなく、非常勤の職員も賃金改善の対象です。配り方は事業所ごとに決まっているので、勤め先に確かめてみましょう。
2026年6月の改定で、事務職員の給料も上がりますか?
2026年6月から、処遇改善加算の対象が介護職員だけでなく介護従事者全体に広がりました。事務職員や調理員なども対象になりますが、実際にいくら上がるかは、事業所の加算の区分と配り方によって変わります。
あわせて読みたい:年収を上げるキャリアの順番
最低賃金や処遇改善で底上げされても、大きく年収を上げるには資格と役職が必要です。未経験から年収500万円をめざす順番をまとめています。
まとめ
- 介護職の特定最低賃金は、2026年10月時点ではまだ決まっていません。
- 介護職員の給料は全産業平均より月8万円あまり低い状態が続いています。
- 国は、処遇改善加算を引き上げる方法で賃上げを進めていて、2026年6月の臨時改定で介護職員は最大月1.9万円、対象も介護従事者全体に広がりました。
- 加算の区分と配り方は職場ごとに違うので、給与明細と職場の説明で確かめることが大切です。
制度は毎年のように変わります。「自分の給料は国の制度どおりに上がっているのか」を確かめることが、給料を上げる第一歩になります。
参考:厚生労働省「最低賃金制度の概要」「令和6年度介護従事者処遇状況等調査結果」「賃金構造基本統計調査による介護職員の賃金について」、令和8年度予算に関する大臣折衝事項(介護報酬・障害福祉サービス等報酬の臨時改定)、中央最低賃金審議会・各地方最低賃金審議会の答申(2026年度)


